ステレオタイプとは? その影響や身近な具体例、克服する方法を解説

Stereotype

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偏見や差別を生む原因として問題視される「ステレオタイプ」。そもそも「ステレオタイプ」とはなにから生まれ、どういう意味をもつのだろうか。私たちも知らず知らずのうちに影響を受けている、身近なところに溢れる「ステレオタイプ」。もたらす影響や具体例、克服する方法を解説する。

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2024.05.09
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ステレオタイプとは

型にはめる

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ステレオタイプとは、多くの人に浸透している固定観念や思い込み、先入観のことを指す。「女はか弱くておとなしい」や「日本人はメガネをかけていてまじめ」など、性別や人種、国籍など、ある属性を持つ人に対してあたえられるイメージもそのひとつだ(※1)。

これは、アメリカのジャーナリスト・政治評論家であるウォルター・リップマンが普及させた概念だ。人権啓発用語辞典によれば、ステレオタイプには次の特徴があるとされている。

・過度に単純化されていること
・不確かな情報や知識に基づいて誇張され、しばしばゆがめられた一般化・カテゴリー化であること
・好悪、善悪、正邪、優劣などといった強力な感情を伴っていること
・新たな証拠や経験に出会っても、容易に変容しにくいこと

ステレオタイプの語源

ステレオタイプは、印刷業界で使われていた言葉「ステロ版(鉛板・stereotype)印刷」が語源だ。ステロ版印刷とは、文字や線画・写真を圧してつくった紙型に、鉛の合金を流し込んでつくった原版を用いる。型を抜いてつくられたかのように、まったく同じ印刷物が大量生産できる印刷技術だ。

それを「マスメディアがイメージを大量生産する」という意味の例えとして用いられるようになった。マスメディアによってあるイメージがつくられ、それが拡散され多くの人に広がるうちに、そのイメージがステレオタイプとして定着するという考え方だ(※1)。

最初に提唱したリップマンが100年ほど前に、この「ステレオタイプ」という言葉を使ったことがはじまりである。

バイアスとの違い

ステレオタイプと似ている言葉に「バイアス」がある。バイアスとは「先入観」や「偏見」という意味。例えば「バイアスがかかる」という言葉は、物事を判断する際に事前の情報やイメージに大きく影響されること。「ジェンダーバイアス」という言葉は、男女の役割について無意識に固定的な思い込みや偏見を持つことで、「女性は結婚したら家庭に入り子育てをしなければならない」といった思い込みが生まれることだ。

どちらも「先入観」という意味では同じだが、ステレオタイプは無意識にパターン化されたイメージや考え方のことであり、バイアスはステレオタイプに基づく評価や感情を含み、傾向として捉えることと言える。

ステレオタイプが生まれる理由

なぜ、ステレオタイプが生まれるのか。それは相手のことを知らない、わからないという不安を解消するためと考えられる。

人はわからないものや知らないものに対して不安を抱く。すべての人やものを個別に把握するには大きな労力と時間が必要だ。そのため、ある一定のグループや集団に対して固定された共通のイメージを持つことで"とりあえず理解"し、わからない・知らない不安から開放されることを期待するのだ。

性別・国籍・年齢・職業・家族構成・血液型・体型・人種・性別といった属性に対して経験やメディアから得た情報などをもとにカテゴライズやラベリングをする。そのカテゴライズやラベリングが、ステレオタイプとなるのだ。

ステレオタイプの影響

人種差別

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ステレオタイプが社会や個人に与える影響には、どんなことがあるか解説しよう。

偏見や差別を生み出す

ステレオタイプでは、人に対する見方に偏った価値観が加わってしまう。自分の目でみた事実で判断せず、メディアや他の誰かが発した情報に捉われてしまうことは、それが偏った意見やイメージの場合は思わぬ偏見や差別につながる。広く浸透したイメージや概念は払拭することが難しく、事実を正しく捉え直したり、新しく更新することを阻害してしまう。

個人の可能性を制限する

ステレオタイプは、型にはめた考え方である。それにより人を単純化し、その人自身の特性や性質をないものにしてしまいがちだ。そして個人の可能性を制限してしまうことにもなりかねない。

人間関係を築くためには、頭ごなしに決めつけてはいけない。一人ひとりが持つ多様な個性を尊重することが大切だ。

社会の分断が起きる

人種や地域、年齢、職業のステレオタイプでは、社会の分断が起こるきっかけになる可能性がある。また、ステレオタイプによって社会問題に発展するケースも出てきている。実際に、ある人種の犯罪率が高いというステレオタイプがある。

ステレオタイプの具体例

男の子と女の子

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ここでは、ステレオタイプの具体例について、ジャンル別に紹介しよう。

性別

・男性は仕事、女性は家庭
・男性は地図が読める、女性は地図を読むのが苦手
・男の子は青、女の子はピンク
・男は力持ち、女はか弱い
・男性は理系科目が得意、女性は文系科目が得意

性別によって「男性だから〇〇」「女性だから〇〇」とひとくくりにしたり、固定観念や思い込みをするのが、性別によるステレオタイプだ。昨今ではこれを「ジェンダー・ステレオタイプ」という。なかでも「男らしい」「女らしい」という言い方は、個々の特性や得意なことを無視した表現だ。

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年齢

・ミニスカートは若い人がはくもの
・老人はパソコンやITが苦手
・老人は頑固
・若者は流行に敏感


「エイジズム」とも呼ばれるのが、年齢に基づくステレオタイプだ。年齢のステレオタイプでは、年を重ねた人に対する偏見や差別も目立つ。介護現場や看護現場で高齢患者に幼児語で話しかけるなども該当し、高齢化が進む日本社会でも問題になっている。また、若い人へのステレオタイプもある。

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人種や国籍

・アメリカ人は自己主張が強い
・イタリア人は陽気
・ドイツ人は勤勉
・日本人は真面目
・日本人はメガネをかけている


ある人種や国籍に対しての固定観念や思い込みの例だ。これらは文化的な固定観念、テレビやインターネットなどのメディアの情報、個人的な経験などによって形成される。たとえばある人種の犯罪率が高いというステレオタイプを持った場合、それに該当する人物を捜査対象にするという問題が世界中で発生している。

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地域

・関西人はおもしろい
・京都の人は本音と建前を使い分ける
・東北の人は素朴で我慢強い
・沖縄の人は時間にルーズ


出身地や住んでいる地域をもとにしたステレオタイプだ。実際にはその地域に住んでいる人全員に当てはまるわけがないのに、数名の人に該当しただけ、もしくはマスメディアなどを通して耳にしただけで、無意識にイメージを抱いてしまうステレオタイプである。

職業

・保育士や看護師は女性がやる仕事だ
・営業職は体育会系男子がやる仕事だ
・銀行員はメガネをかけている


こういった職業へのステレオタイプもある。たとえば科学者というと"もじゃもじゃとした白髪の男性で白衣を着ている"とイメージするのも、職業のステレオタイプのひとつだ。また職種だけでなく、アルバイトやパートタイム職員、派遣社員といった雇用形態へのステレオタイプもある。

学歴

・学歴が低い人は仕事ができない
・高学歴だと仕事ができる
・東大卒は運動ができない
・美大生は絵がうまい


学歴による固定観念が、学歴のステレオタイプだ。日本社会は学歴社会であるため、学歴のステレオタイプがしばしば見られる。また、学歴のステレオタイプは学歴差別にもつながりかねない。

ステレオタイプを克服する方法

交流する

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では、ステレオタイプを克服するにはどうしたらよいのか。その方法を紹介していこう。

固定観念や先入観を認める

自分のなかに、ステレオタイプがある可能性を自覚しておくこと。そして、固定観念や先入観をもっていることを認めることが、ステレオタイプを克服する第一歩だ。

多様な人々と交流する

家族や友人のほか、さまざまな人と交流することで、自分の持つステレオタイプを中和できる。人とたくさん話すことで事実や認識のずれに気づければ、固定観念を防ぐことができるのだ。

複数の情報を確認する

世にあまたある情報をそのまま受け入れず、偏った情報ではないか、真実かどうかを確認し、見極めるようにしよう。たとえばニュースひとつとっても、テレビのニュース番組、新聞、インターネット記事では切り取り方が異なる。複数の情報にあたり、さまざまな見方や解釈を得ることで、ステレオタイプに陥ることを防げる。

自分に置き換えて考える

自分がステレオタイプに当てはめられたらどんな気分になるのかを、考えてみるのも一案だ。そうすることでステレオタイプへの問題意識が高まり、克服していけるだろう。

ステレオタイプをなくそう

偏見や差別をなくす

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ステレオタイプは、偏見や差別、社会の分断を引き起こす可能性がある。よって、ステレオタイプは手放しによいものとはいえないだろう。

人や物事を見るときには自分自身にステレオタイプがある可能性を常に自覚し、固定観念にはめて考えていないか注意しながら、意識して自分の考えをコントロールしていくことが大切である。

※掲載している情報は、2024年5月9日時点のものです。

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