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「有害な男らしさ」とは、「男はこうあるべきだ」という偏った男らしさを設定し、男らしくない行動や思想をバカにしたり、排斥すること。近年、ステレオタイプな「男らしさ」の概念が、男性自身の心身の健康に害を及ぼしたり、女性蔑視や性暴力に発展する可能性があると指摘されている。
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「有害な男らしさ」とは、「男は強くたくましくあるべき」など偏った男らしさの規範を設定し、それに背く行動や思想、表現を排斥すること。あるいはそうした負の側面を持つ男らしさの規範そのもの。
「有害な男らしさ」は、1980年代後半、アメリカの心理学者が男性運動において提唱した「Toxic Masculinity(トキシック・マスキュリニティ)」を直訳した言葉である。当時は、男性が感情を抑えることでときに暴力的な行動に至ることを指しており、トキシック・マスキュリティ(=男性性の悪い部分)を抑制し、男としてのプライドを取り戻そうと投げかけられていた。
近年、女性が性被害を告白する#Me Too運動の広がりを背景に、旧来的な男らしさが性差別などにつながっているのではないかと指摘されている。さらには、男性のメンタルヘルスにも悪影響を与えていると問題視され、この言葉が注目を集めるようになったのだ。
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「男らしさ」を良しとする男性社会において、強くなくてはいけないというプレッシャーは、自身だけでなく他者にまで悪影響を及ぼしている。例として次のような問題が挙げられる。
男性同士のコミュニティーにおいて、「有害な男らしさ」はときに価値観の共有に使われる。例えば、仲間うちで乱暴な言動を使ったり、女性へのセクハラネタで盛り上がるなど。しかし、既存の男らしさに共感できなかったり、ピンクやかわいらしいものが好きな男の子は「女々しい」と「男らしくない」というレッテルを貼られ、いじめの原因となってしまうことも。
従来的な男らしさを善とするコミュニティーでは、異性が恋愛対象でない男性は「男らしさ」からは外れているとみなされがち。仲間間の友情を証明するために同性愛を否定しあうの結果、同性愛嫌悪を加速させ差別へと結びつく恐れがある。
有害な男らしさは、実は男性のメンタルヘルスに大きな影響を与えている。自分の中の不安や弱さを否定し、辛いときに誰にも相談できずに苦しんでいる男性は多いのだ。アメリカでは、男性の自殺率は女性のおよそ3.5倍だという。男らしさをキープしなければという緊張から、精神的に追いつめられてしまうことが原因だと考えられている。
精神的に追い詰められた男性は、行き詰まった結果、その不満や無力感を暴力で訴える傾向が高いという結果も出ている。アメリカの銃乱射事件の容疑者は、約97%が男性だという。
「有害な男らしさ」は、男性だけでなく女性にとっても次のような問題を引き起こす。
「男は強くたくましい」という「有害な男らしさ」へのこだわりは、ともすれば「男性は女性よりも上」という差別意識を生み出し、女性蔑視へとつながる。「男は仕事、女は家庭」という考えも、ジェンダー平等を妨げるものだ。
男性社会の中で振る舞ってきたように女性に接することで、女性へのセクハラ・パワハラ問題につながる。
映画やドラマなどにおいて、男性から女性への性加害は男らしさとして描かれるシーンも少なくない。さらに、「有害な男らしさ」による女性蔑視や、「男は女をモノにする」といった価値観は、女性の意思を無視した性暴力を生む危険性をはらんでいる。
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一般的に男性の多くは、子どもの頃「男の子なんだから泣くな」「男なら弱音を吐くな」などと教えられる。また、周囲の大人の会話からジェンダー規範を学び、その刷り込みが是正されないまま、「有害な男らしさ」を宿していくと考えられている。
大人になってからも、「一家の大黒柱であれ」や「男は仕事をするべき」という偏った意見がはびこる社会によって、ステレオタイプな「男らしさ」に縛られてしまうのではないか。
これまで、古い男らしさを押し付けられ、多様性を奪われていた男性は少なくないはず。有害な男らしさからの解放は、女性差別をなくすだけでなく、男性にとっても生きやすい未来をつくり出す。
「男性らしさ」「女性らしさ」という、身体的なジェンダーによってカテゴライズされるような固定概念は取り払い、互いの個性を尊重しあうような社会を築き上げていきたい。
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