カミングアウトの本当の意味とは? 使い方やLGBTQ+との関係も解説

手のひらに書かれた虹とハート

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自分の秘密を打ち明けるときに使う「カミングアウト」という言葉。本来はLGBTQ+において使われる言葉だ。この記事ではカミングアウトの語源や本来の意味に触れ、カミングアウトの重要性、LGBTQ+との関係、カミングアウトされる側に求められることを解説していく。

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2024.05.22
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カミングアウト 本来の意味とは

吹き出しのようなライト

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「カミングアウト」とは、自分がセクシュアルマイノリティであることを周囲に打ち明けること。LGBTQ+の当事者により使われる言葉である。

カミングアウトの語源は英語の「coming out of the closet」という表現からきている。自分の性的指向や性自認などの秘密を隠している状態を、比喩的に「クローゼットに隠れている(in the closet)」と表現し、それを公にすることを「クローゼットから外に出る」と表現したことに由来する。

日本では「カミングアウト」という言葉がLGBTQ+に限定されず、拡張してさまざまな事柄にも使われる傾向がある。だが本来の意味を踏まえて使われるべき言葉である。

性的マイノリティ「LGBTQ+」とは

LGBTQ+は、性的指向や性自認に関するマイノリティグループを包括する用語だ。レズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシュアル(Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)、クエスチョニング(Questioning)もしくはクィア(Queer)の頭文字をとったもので、最後に多様性を表すプラス(+)が加えられている。例えば無性愛者(アセクシュアル/Asexual)や全性愛者(パンセクシュアル/Pansexual)などが含まれる。

さまざまな性的マイノリティやジェンダーマイノリティを包括する用語であり、欧米でのカミングアウトは一般的に、自らがLGBTQ+であることを他人に打ち明けることを指す。

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カミングアウトは1回で終わらない

女性が窓辺に座って考え事をしている様子

Photo by Kelly Sikkema on Unsplash

カミングアウトは、自らの性的指向や性自認について他人や社会に打ち明けることだ。またカミングアウトする相手は、親や兄弟、友人、会社の同僚、パートナーなど、さまざまな関係や立場である。

一対一の個人に対してカミングアウトする場合もあれば、家族や友人、職場の同僚など複数人の前でカミングアウトするケースもある。そのためカミングアウトは一度だけでなく、人生のなかで複数回に渡ることも考えられる。

さらにはカミングアウトを行うことは、社会的な偏見や差別、家族や友人など親しい人から理解されない恐れ、拒絶される可能性など、当事者の精神的負担が常につきまとう。そのため、カミングアウトする相手を慎重に選ぶ人も多い。

カミングアウトとアウティングの違い

カミングアウトとアウティングは、どちらも性的指向や性自認に関する情報を他人に伝えることであるが、その意味や影響は大きく異なる。

まず、カミングアウトは、本人が自らの意志で他人にセクシュアルマイノリティであることを明かすことだ。自らのアイデンティティについて自分自身で打ち明けることが重要なポイントだ。

一方のアウティングは、第三者がLGBTQ+当事者の性的指向や性自認に関する情報を勝手に暴露する行為だ。当事者の意志に反してプライバシーを侵害し、自らの意思でカミングアウトする権利を奪う、極めて当事者を傷つける行動である。

カミングアウトの現状

夕暮れの街

Photo by Ilya Mirnyy on Unsplash

日本の職場におけるカミングアウトの現状は、結論からいうとまだ認知度が低く、カミングアウトすることに対するハードルが高いといえる。

職場でのカミングアウトの状況として、自身が性的マイノリティであることを誰かに伝えている割合は、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルを合わせて約7.3%であり、トランスジェンダーの場合は約15.8%だ。多くの性的マイノリティの当事者は、自身の性的指向や性自認について職場の人に伝えていない。そのため企業が当事者のニーズを把握することが難しく、個人が性的マイノリティであるかどうかの情報が少ないため、適切な対応が進みにくい。

実際に企業が、性的マイノリティの存在を認知しているかどうかについて、約41.4%が「いないと思う」、約29.9%が「わからない」と回答している。「認知している」は13.4%にとどまった。(※1)

カミングアウトのメリットとリスク

カミングアウトすることには心理的なハードルが高く、その背景には拒絶や否定などのリスクがある。しかし、周囲に打ち明けられないことで孤独を感じる人も多い。ここでは、カミングアウトすることのメリットとリスクをそれぞれ解説する。

カミングアウトすることのメリット

・心理的解放感
カミングアウトすることで、これまで一人で抱えていたストレスや不安が解消される。自分を隠す必要がなくなり、自由に自分を表現できるようになるため、心理的な解放感を得られる。

・周囲からのサポートの獲得
カミングアウトすることで、性的マイノリティのコミュニティに参加する機会が得られる。他の当事者や支援者とのつながりを築くことで孤立感を軽減し、精神的な支えが得られる。また社会に認知されることで、社会保障なども推進される可能性がある。

・自分らしさの表現
カミングアウトは、自分らしさの表現につながる。他者に自分のアイデンティティを明確に伝えることで、自分自身がより認識され、本来の自分として生きられるようになる。

カミングアウトすることのリスク

・社会的差別や偏見
性的マイノリティに偏見をもつ人もおり、カミングアウトすることで社会や職場での差別を受ける可能性がある。

・人間関係の損失
カミングアウトすることで、一部の人間関係が損なわれる可能性がある。家族や友人、同僚など、一部の人が性的マイノリティであることを受け入れられない場合、疎遠になることも考えられる。

・職場での影響
性的マイノリティへの意識や理解が低い職場では、差別やハラスメントにさらされることで、仕事上の評価やキャリアに悪影響を及ぼすリスクもある。

・アウティングのリスク
カミングアウトすることで、プライバシーが侵害されるリスクが高まる。カミングアウトした相手が、アウティングしてしまう可能性も考慮したい。

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国際カミングアウト・デー(National Coming Out Day)とは

虹色の旗

Photo by Cecilie Bomstad on Unsplash

10月11日は国際カミングアウト・デー(National Coming Out Day)だ。性的指向や性自認に関するカミングアウトを祝う日であり、世界中でLGBTQ+に関するイベントや支援が行われる。

1988年に心理学者のロバート・アイヒベルクとレズビアンの活動家ジーン・オリーリによって提唱されたのが始まりで、最初の年には全米18州でイベントが開催され、その後も賛同する州が増え、やがて世界中に広がっていった。

国際カミングアウト・デーの目的は、カミングアウトに対する肯定的な雰囲気をつくり、性的マイノリティの人々が恐れや偏見によって抑圧されることなく、自分らしく人生を送ることにある。

国際カミングアウト・デーでは、コミュニティや学校などさまざまな場所で集会やパレードなどのイベントが行われ、身近な場所に性的マイノリティがいることを訴えかける。また、すでにカミングアウトを行った当事者や支援者が公の場でカミングアウトについてのストーリーや体験を共有することで、カミングアウトに関する啓発活動などが行われる。

カミングアウトできる社会のために 私たちができること

対話する女性たち

Photo by Christina @ wocintechchat.com on Unsplash

誰もが自分らしく生きるために、カミングアウトは有効な手段の一つである。しかしこれまで説明してきた通り、LGBTQ+が権利を獲得するまでの道のりは長く、日本もまだまだ取り組みを始めようといった段階にある。当事者が自由にカミングアウトできる社会を実現するために、私たちにできることを考えていきたい。

ただしカミングアウトは、あくまで手段の一つであることにも注意したい。なかにはカミングアウトを必要としない、したくないと考えるLGBTQ+がいることを踏まえ、決して強制されるものではないことを断っておく。

「LGBTQ+」の正しい知識を身につける

LGBTQ+に関する正しい知識を身につけることで、誤った見方や思わぬ発言で当事者を傷つけてしまうといったリスクを回避できる。LGBTQ+の言葉の意味や当事者の思いや葛藤、歴史や政治的な背景について理解を深めることが求められる。

差別や偏見に立ち向かう

LGBTQ+は差別や偏見の対象となることがあり、こういったリスクがカミングアウトを難しくしている。カミングアウトできる社会を築くためには、多様性を受け入れる寛容な社会であることが欠かせない。差別的な発言や行動に対して沈黙せず、声を上げて反対することや、差別や偏見に対する教育活動に参加することで社会を変えていくことができる。当事者でなくても、差別や偏見に立ち向かうことはできるのだ。

カミングアウトはしっかりと受け止めていままで通り接する

カミングアウトした当事者に対して、いままで通りの尊重と関係を提供することも大切だ。カミングアウトは、当事者にとって勇気の必要な行動である。その決断を尊重し、これまで通りの関係を提供することで、当事者の心理的な安全性が保たれる。

認知活動に参加する

当事者以外がLGBTQ+の認知活動に参加することで、カミングアウトできる社会につながるだろう。パレードやイベントや署名活動など規模の大きなものから、SNSで支援団体をフォローするなど、さまざまなアクションがある。自分にできることから取り組みたい。

カミングアウトしている人と交流する

カミングアウトしている人々との交流を深めることで、よりリアルにLGBTQ+当事者たちのことが理解できる。日本においても自治体や支援団体が、LGBTQ+との交流機会を設けている。

カミングアウトはすべての人に関わる言葉

会話する男性

Photo by LinkedIn Sales Solutions on Unsplash

カミングアウトという言葉は、性的マイノリティ当事者だけでなく、すべての人に関わる言葉だ。勇気を持ってカミングアウトした人に、誤った対応や言葉がけをすると意図せず傷つけてしまうことになる。理解と正しい対応がこれからの社会に求められており、私たちひとりひとりが実践していく必要がある。

またカミングアウトと同様に、ふだん私たちが何気なく使っている言葉が、当事者たちを傷つけることもあると知ろう。時代によって用語の意味や使われ方は変わるが、なるべく新しい情報をインプットし正しい言葉を選んで使用したい。

※掲載している情報は、2024年5月22日時点のものです。

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