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日本はいま、人口減少や高齢化の問題に直面している。そして、より深刻なのは過疎地域だ。これまでに過疎対策は行われてきたものの、問題を解消するまでには至っていない。この記事では、過疎とは何か、日本の現状と起きている問題、活性化するための方法と実際に行われている過疎対策を紹介する。
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過疎とは、人口が減ることにより地域の生活水準や生産機能の維持が困難になる状態をいう。具体的には、過疎法(「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」を含む5つの過疎に関する法)第2条と第41条の要件に該当する市町村を指す。(※1)
過疎地域の要件(人口要件)
長期要件(下記2つのいずれかに該当すること)
・40年間(S50~H27)の人口減少率28%以上
・40年間(S50~H27)の人口減少率23%以上、かつH27の高齢者比率35%以上、またはH27の若年者比率11%以下
中期要件
25年間(H2~H27)の人口減少率21%以上
※この他に、財政力指数、公営競技収益に関する要件もある。
過疎地域では、教育や医療、防災などが十分に行き届かないほか、担い手不足により生産機能の低下などの問題が起きている。
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過疎地域には、5つの特徴がある。1つずつ確認していこう。
1つ目の特徴は、人口減少が進んでいることである。地域から若者が流出し、転出者が転入者を上回る社会減だ。さらに、死亡者が出生者を上回る自然減も進行している。
2つ目は、高齢化が深刻であることだ。日本全国の高齢化率は、令和2年の時点で28.0%であった。過疎地域では高齢化がより進み、39.7%と高い割合になっている。(※2)
3つ目は、農村漁村などが荒廃していることである。上記2つの理由により、地域における働き手が減り、耕作放棄地が増えているほか、森林の荒廃も進んでいる。
4つ目は、地域産業が停滞・衰退していることだ。農村漁村などの荒廃と関連して、かつて地域を支えた農林水産業が衰退している。また、新たな事業所の建設なども望めない状況だ。
5つ目は、公共サービスの質が低下していることである。上記4つの特徴により、道路や下水道、医療、生活交通などの公共サービスを十分に受けられないのが実態だ。
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次に、日本の過疎地域の現状を確認していこう。全国に占める過疎市町村の人口の割合は、9.2%とわずかである。一方、面積は63.2%と半分を超えている。
■過疎市町村の数、人口・面積(令和4年4月1日現在)
市町村数:885(51.5%)
人口:11,646(9.2%)
面積:238,762キロ平方メートル(63.2%)
※カッコ内は全国に占める割合(※3)
このように、全国の市町村の約半数が過疎の問題を抱えている。過疎地域が置かれている状況は厳しいが、過疎はその地域だけの問題ではない。農山漁村地域の多い過疎地域は、自然環境の保全や健全な水源の確保などの役割を果たしている。これらを守っていくために、過疎対策を行う必要があるだろう。
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過疎地域の特徴や現状から、対策が必要であることは前述の通りだ。現在、過疎法や法令などにより、過疎地域の支援が行われている。そのうち、自主財源に乏しいことと、福祉・医療に格差があることについて触れておく。
令和4年度版 過疎対策の現況によると、過疎関係市町村の歳入に占める地方税収の割合は12.6%と、全国の29.3%と比較して極端に低い。
自主財源は、教育や下水道、福祉など、地域社会に必要なサービスを提供するほか、文化・スポーツ施設など、生活の質を高める。豊かな財源は、過疎地域のさまざまな問題の解決につながる。
同じく令和4年度版 過疎対策の現況によると、過疎地域における人口1万人当たりの専門家医師数は、耳鼻咽喉科0.3人(0.8人)、産婦人科・産科0.4人(0.9人)、眼科0.5人(1.1人)*と全国と比較して少ない。*カッコ内は全国の数値
福祉・医療は、人々が安全・安心に暮らすために不可欠なサービスだ。自主財源の確保と併せて考えなければならない問題の1つである。
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過疎地域の問題は、地域を活性化することで解決に近づけられる。そのためには、何をしたらいいのだろうか。5つの方法を紹介する。
1つ目は、移住や定住の支援・促進である。過疎法第25条には、過疎地域の持続的発展のため、移住や定住の促進や人材育成をするとある。自治体によっては、移住・定住する人を対象に補助金を支給する制度もある。外から人材を呼び込むことも1つの対策である。
2つ目は、地域やその人々と関わる関係人口を増やす取り組みである。農村の棚田のオーナーになる、オフィスや住居のサポートがある自治体でローカルベンチャーを起こす、イベントのボランティアサポーターになるなど、関わり方はさまざまだ。
3つ目は、ニッチなローカルビジネスをつくり出すことである。例えば「葉っぱビジネス」がある。徳島県上勝町では、刺身や吸い物をあしらう料理の飾り「つまもの」の生産・販売を行っている。高齢者や女性が活躍するビジネスとして、町の基幹産業へと成長した。
4つ目は、環境活動に取り組むことだ。視察に訪れる人などの関係人口を増やす狙いがある。岡山県新庄村の「バイオマス真庭ツアー」は、SDGs学習コースなどを設けている。
5つ目は、企業を誘致することである。テレワークの普及に伴い、立地条件に縛られないオフィスが増えた。低いコストでオフィスを提供することで、過疎地域に人を呼び込む。
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過疎地域を活性化する方法はさまざまなものが考えられるが、実際に行われている過疎対策の例を見ていこう。
過疎地域自立促進特別措置法は、過疎対策に必要な特別措置を定めた法律だ。地域の自立促進や住民の福祉向上、雇用の拡大などを目的としている。
同法は、過疎地域に対していくつかの支援措置を定めている。例えば、国税の特例や地方税の減収補てん措置、ハード・ソフト事業を対象とした過疎対策事業債の発行、公立小中学校、保育所などへの国庫補助率のかさ上げなどだ。
福島県川内村は、支援金を支給する移住支援事業を行っている。条件は次の2つのいずれも満たしていることだ。
■支給要件
・移住する直近10年のうち通算5年以上東京23区に在住または通勤していた
・福島県が運営する「Fターンサイト」に掲載された「移住支援対象求人」により就職した
世帯の申請の場合は100万円、単身は60万円が支給される。その他にも、就業先や世帯に関する条件などが定められている。(※4)
特定非営利活動法人グリーンバレーは、場所を選ばない働き方のできる企業を徳島県神山町に誘致した。2005年、総務省の加入者系光ファイバ網設備整備事業により、高速インターネット回線を配備。2010年には、サテライトオフィス第1号を開設している。
2012年には、神山町史上初となる社会動態人口12名の増加を達成。徳島県内のサテライトオフィスの数と地元の雇用人数は、2014年時点で23社47名である。(※5)
兵庫県佐用町の「ファブラボ西播磨」(運営母体:合同会社デジコ)は、自由にモノづくりをする場として、2017年に活動を開始した。廃校になった小学校の一室で、機械や工具を利用したモノづくりが行われている。技術的なスキルをこの場で地域の人に還元することで、エンジニアや企業を誕生させるのが目的だ。
ファブラボは、マサチューセッツ工科大学のニール・ガーシェンフェルド教授が著書で紹介したのが始まりであり、いまでは世界に広がっている。(※6)
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過疎地域は、人口減少や公共サービスの質の低下など、さまざまな問題を抱えている。これらを解消していくためには、引き続き対策が必要だ。
一方で、過疎地域の面積は約6割と半分を超えている。過疎地域の森林や農地は、自然環境の保全や健全な水源の確保などの役割を果たしている。つまり、過疎地域だけの問題ではない。ひとりひとりが、この問題について考えていく必要があるだろう。
※1 過疎関係市町村都道府県別分布図|総務省
※2 令和4年度版 過疎対策の現況 ( 概 要 版 ) 令和6年3月 総 務 省 地域力創造グループ過疎対策室
※3 「過疎」のお話|一般社団法人全国過疎地域連盟
※4 川内村移住支援事業について|川内村公式ホームページ
※5 働き方の変化(テレワーク)を活用した地方創生|日本の田舎をステキに変える「サテライトオフィスプロジェクト」等|ICT地域活性化ポータル|総務省
※6 Fab Lab West harima
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