ファブラボとは 世界で注目されるラボの背景と日本の3事例

FABLABの焼印が施された木製品

Photo by Alexandre Debiève

ファブラボは、誰でも気軽にものづくりに親しめる場所として、近年注目を集めている。デジタルファブリケーションを含む、多様な工作機械を備えた次世代型実験工房だ。注目の背景にはどのような事情が隠されているのか?日本の事例3つとともに解説する。

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2022.02.28
目次

ファブラボ(Fab Lab)とは

ファブラボ(Fab Lab)とは、多様な工作機械を備えた次世代型実験工房である。ラボに用意されているのは、3Dプリンターやレーザーカッターなど、一般家庭では導入できないデジタルファブリケーション(パソコン制御のデジタル工作機械)だ。これらを利用できる環境を一般市民に向けて解放することで、「自分たちの使うものを、使う人自身がつくる文化」の醸成を目指している。

ファブラボの「ラボ」は「laboratory」、つまり「実験室」や「研究室」を表している。「ファブ」には2つの単語の意味がかけ合わされており、「Fabrication(ものづくり)」と「Fabulous(楽しい・愉快な)」である。自由で楽しいものづくりからは、多くの成果が生み出されるだろう。

ファブラボの取り組みは、2000年前後にスタートしたものだ。アメリカ・マサチューセッツ工科大学(MIT)のニール・ガーシェンフェルド教授の手で始められた。当初、この取り組みはボストンの貧困地区とインドの貧しい農村地区でスタートした。その後ものづくり活動をつなぐ世界的ネットワークとして成長してきた。(※1)

日本では、全国に17のファブラボが存在しているが、そのバックグラウンドはさまざまだ。政府や市、大学や美術館、科学館に図書館など、さまざまな団体がファブラボの取り組みを支援。またNPOやNGOのほか、個人の支援によって設置されたラボも存在するのだ。(※2)

ファブラボの取り組みの背景にあるのは

ニール・ガーシェンフェルド教授によるファブラボの取り組みの背景にあったのは、MITで行われた「How to Make(Almost)Anything」という講座である。講座名を直訳すると「(ほぼ)何でもつくる方法」だ。

現代社会において、日々進化するテクノロジー。IT業界において、とくにその流れは顕著である。ITテクノロジーの進化は、「もの→データ化」という流れを生み出した。生活のあらゆる場面でデジタル化が進むとともに、ものづくりへの親しみが薄れたという側面もある。しかし、我々の生活をより豊かにしていくためには、やはり「データ→もの」という方向性も欠かせないのだ。

こうした流れのなかで注目を集めるようになったのが、ファブラボである。無料もしくは金銭に代わる交換条件をもとに開かれるラボは、ものづくりを通じた地域住民のコミュニケーションの場になり得るのだ。

アイデアを自分で形にできるようになれば、現在抱えている問題を、自分自身や地域の力で解決できるかもしれない。住民同士でやりとりしながらものづくりをすれば、ノウハウの共有によるスキル向上も目指せるだろう。

今後の世界経済のなかで強い競争力を身に付けるためには、IoTやSTEM教育(科学・技術・工学・数学の4分野に力を入れた教育)が欠かせない。ファブラボは、多彩な人材育成のためのプラットフォームとしても注目されているのだ。

進化するファブラボ 日本の事例3つ

ここからは、日本のファブラボの実情に迫ってみよう。過去と現状について、3つの事例をもとに解説する。

ファブラボ鎌倉/神奈川県(2011年~)

2011年にオープンしたファブラボ鎌倉は、日本でもっとも古いラボの一つである。既存のデジタルファブリケーションに、鎌倉ならではの社会的、文化的文脈と深みを与えているのが特徴。初めてラボを利用する人向けの講座も充実しており、子どもから大人まで、幅広い世代の人材育成にも積極的に取り組んでいる。

ラボは125年前の歴史的建造物に入居。建物のメンテナンスをする代わりに機材利用が可能になる「朝ファブ」で注目を集めている。(※3)

ファブラボ太宰府/福岡県(2014年~)

2014年、地元企業である「ホームセンターグッデイ」がオープンしたファブラボ。企業内に設置された、珍しいタイプのラボである。運営元のホームセンターが掲げる「家族でつくるいい一日」という理念をもとに、くらしの中のものづくりをテーマに各種活動を行っている。

利用の際には会員登録と初回講習を受ける必要があり、利用時にはその都度料金を支払う仕組み。ものづくりに興味を抱いてもらうための体験会や、各種講座も開講中だ。(※4)

ファブラボ品川/東京都(2018年~)

東京都品川区にあるファブラボ品川は、東急大井町線中延駅前に位置する立地のよいラボだ。こちらのラボの最大の特徴は、作業療法士が運営に参画している点だ。作業療法とものづくりを組み合わせることで、障害など、困難を抱えた人々にとって必要なアイテムの製作を実現している。

ファブラボ品川の特徴的な取り組みは、「Makeathon(メイカソン)」である。「つくる」と「マラソン」を組み合わせた言葉だ。メイカソンのメンバーは、障害のある方やその支援者(Need Knower)たちである。当事者たちが6〜8人程度でチームを組み、試作品づくりに励んでいる。(※5)

ファブラボの取り組みを知り自身も参加してみよう

2011年には、国内にわずか2カ所しかなかったファブラボ。その取り組みはあっという間に広がり、いまでは非常に多くの人々が、自由にものづくりに取り組める環境が整ってきている。

一言で「ファブラボ」と言っても、どこも同じというわけではない。運営の実態や考え方にはラボごとの特徴が反映されており、それもまた、ファブラボならではの味わいの一つと言えるだろう。「もっと気軽にものづくりを楽しんでみたい」と思ったら、身近なファブラボに参加してみてはどうだろうか。

※掲載している情報は、2022年2月28日時点のものです。

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