集落とは? 抱える問題と解決のためにできること

夕暮れ時の緑の芝生の上の家々

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日本各地には、数多くの集落が存在する。固有の生活や文化を守りながら続いてきた集落の多くがいま、消滅の危機に直面している。限界集落や過疎集落と呼ばれるそれらの集落が抱える問題とは何か。解決のための国や企業の取り組みと、私たちができることを考える。

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2024.06.23

集落とは

南国の住居

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集落について決まった定義はないが、一定の土地に社会的なまとまりが形成された住民生活の基本的な生活単位のことを指すことが多い。国土交通省の調査によると、1集落あたりの平均人口は182.6人、平均世帯数は68.6世帯だ(※1)。

集落の主な機能は、農林地や地域固有の資源や文化を維持・管理する「資源管理機能」、農林漁業などの地域の生産活動の維持・向上を図る「生産補完機能」、地域住民同士が相互に扶助しあいながら生活の維持・向上を図る「生活扶助機能」の3つである。

集落と村の違い

「集落」と「村」の違いは、規模や組織構造にある。集落は一定の場所に住む人々の小規模な集合体を指し、正式な自治体組織を持たないことがほとんどだ。

一方の「村」は行政区画として認識される自治体で、地方自治法に基づいて正式に組織されている。村は集落よりも規模が大きく、複数の集落を含んでいることがある。また村長や村議会などの行政機関を持ち、地域全体の運営や発展を担当している。

限界集落とは

限界集落とは、住民の半数以上が65歳以上であり、若者の流出によって社会的共同生活の維持が難しくなった集落のことだ。1988年に、大野晃氏が提唱した。2019年時点では、全国で454の集落が10年以内に消滅する可能性があり、2,744の集落がいずれ消滅の可能性があるとされている(※2)。今後も、少子高齢化などが原因で限界集落は増えていくだろう。

過疎集落とは

過疎集落とは、人口の減少や高齢化により社会的・経済的な機能が衰退している集落のこと。過疎集落では、住民の減少により学校や医療施設、商店、公共交通などの社会基盤が維持できないため、生活環境が悪化している。とくに若者の都市部への流出が進み、高齢者率が高くなっているため、地域の活力が失われて農業や林業などの伝統的な産業が衰退する。

日本の過疎集落・限界集落が抱える問題

民家

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過疎集落や限界集落では、さまざまな課題を抱えている。具体的にどのような問題があるのだろうか。

人口減少と高齢化

過疎集落や限界集落では、多くの若者が教育や就業機会を求めて都市へ転出する。その結果、高齢者率が高くなり地域の経済活動が縮小するため、社会基盤が維持できなくなる。また出生数も減少するため、子どもの数が減り、学校や保育施設が閉鎖することも若者を遠ざける悪循環を生む。

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インフラの老朽化と維持の困難さ

人口が減少すると税収が減り、自治体の予算が縮小するため、道路や橋・道などのインフラの維持や修繕に十分な資金が確保できなくなる。また、インフラの点検や修繕を行う人材が不足し、老朽化が進行する。

地域コミュニティの弱体化

過疎集落や限界集落では地域内での交流や支援活動を担う中核となる世代が不足し、地域行事や共同作業が難しくなる。また高齢化が進むと、住民が身体的に活動に参加できなくなるため、地域のつながりが希薄になる。

空き家の増加と空き家問題

2023年時点で全国の空き家の数は900万戸であり、1978年の268万戸と比較しても大幅に増加していることがわかる(※3)。とくに過疎集落や限界集落では、空き家の増加が顕著になっている。空き家が増加すると集落内の景観や治安が悪化し、災害時の危険性も高まる。

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文化や伝統の継承の難しさ

人口が減少し高齢者率が高くなると、伝統行事や文化的な技術を次世代に伝える機会が少なくなる。また集落内での交流や教育が不足し、地域固有の文化や伝統が廃れる。文化や伝統を守るための担い手が減少すると、日本古来の貴重な遺産が失われることが危惧される。

農耕地の衰退と自給率の低下

人口が減少し農業従事者の高齢化が進むと、農耕地の管理や維持が難しくなり、荒廃する農地が増加する。また農業技術や知識、ノウハウの継承が困難となり生産性が低下するため、地域の自給率が低下し地域全体の活力が失われる。

過疎集落・限界集落問題への対策と取り組み例

道路

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過疎集落や限界集落を活性化させるために、どのような取り組みが行われているのだろうか。

古民家や空き家を活用した観光事業

兵庫県の篠山町では、篠山城の城下町全体を宿泊施設や飲食店などに改装し、地域文化や歴史を実感できる複合施設を展開した。また兵庫県の限界集落「集落丸山」でも、3棟の古民家を改修し、日本の暮らしを体験できる滞在施設を展開している(※4)。このように過疎集落や限界集落では、古民家や空き家を活用した観光事業によって地域活性化を目指している。

ICTを活用した生活の質向上と企業誘致

総務省では、ICTを活用した「ふるさとテレワーク」を推進している。地方自治体と地元企業が協力して都市部の企業を誘致し、地方に設けたサテライトオフィスなどでテレワークを行ってもらうというもの。地方への人口流入と地域活性化が期待されている。

また、福島県会津若松市では、中山間地域において各世帯にあるテレビを活用し、市政情報や地域情報の閲覧や、オンデマンド型バスの予約が可能な生活支援システムを構築。(※5)宮城県石巻市では、東日本大震災から得た教訓を電子的に記録・共有することで、防災教育へ貢献した。(※6)このように過疎集落や限界集落においても、ICTを活用することで生活の質が向上し、抱えている課題を解決することが可能となる。

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空き家バンクの活用

空き家バンクとは、自治体が地元の空き家情報を収集・公開し、住んでみたい人へ空き家を提供する制度だ。一般的に空き家バンクは自治体が運営しているが、民間団体やNPO法人などが運営したり、自治体が企業やNPO法人と連携したりしていることもある。空き家バンクを通じて世界中から空き家に住みたい人を募集することで、空き家の減少に寄与している。

イベントの開催

近年は、埼玉県行田市の「田んぼアート」(※7)や島根県出雲市の「まちあそび人生ゲーム」(※8)などのさまざまなイベントが、全国各地で開催されている。過疎集落や限界集落がイベントを開催することで、地域の文化や魅力を認知してもらうだけでなく、地域経済の活性化にもつながる。

都市との交流促進

岡山県西粟倉村では、「百年の森林」事業を通じて、都市部の企業や住民との交流を深める施策を実施している(※9)。過疎集落や限界集落は、都市との交流を促進することで、都市からの転入を増やし人口の増加を目指している。

日本の集落を守るためにできること

森に建つ小屋

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日本の集落を守るために、私たちには何ができるだろうか。

二地域居住や移住

二地域居住とは、都市と地方の両方に住まいを持ち、都市と地方を行き来しながら生活することだ。これにより過疎地域に新たな人流と経済活動をもたらし、地域の活性化が期待できる。また都市からの移住を促進することで、若い世代や子育て世帯が地方に定住し、地域社会の維持と伝統の継承が可能となる。

特産品の購入や応援

日本の集落を守るためには、その地域特産の商品を積極的に購入し、応援することも効果的だ。地域の特産品を購入することで地域経済を支援し、地元の農家や手工業者の生活基盤を強化できる。

イベントや観光地に足を運ぶ

地域のイベントや観光地へ積極的に足を運んでほしい。地域の祭りやイベントに参加することで、地元の文化や伝統を体験し、地域経済を活性化させられる。

SNSなどでの発信

地域の魅力や活動を積極的にSNSなどで発信することも効果的だ。地元の風景や特産品、伝統行事などを写真や動画でシェアすることで、多くの人に興味を持ってもらえる。また地域の取り組みやイベント情報を定期的に発信することで、観光客や移住希望者を呼び込める。

集落を守り日本らしさを守る

夕日に照らされた五重塔

Photo by Tianshu Liu on Unsplash

日本各地には古くから多数の集落があり、固有の生活や文化を守りながら存続してきた。しかし、進む少子高齢化により、限界集落・過疎集落と呼ばれる消滅の危機に瀕した集落が増加している。住む人が減り高齢化率が高くなった集落は、インフラの維持の難しさや空き家問題など、さまざまな課題を抱えている。そこにいまなお住む、残された人々が安心して住み続けることができるよう、行政や民間企業、そして私たち個人ができる対策が求められている。

※掲載している情報は、2024年6月23日時点のものです。

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