深刻化する「空き家」問題とは? 現状と対策を考える

灰色の木造家屋

Photo by Dan Meyerson on unsplash

日本では年々増え続ける空き家が社会問題となっている。その背景には、少子高齢化や人口減、相続、老朽化など、さまざまな理由がからみあう。空き家問題が引き起こす社会的・経済的影響とは何か。空き家問題の現状や課題、個人ができる対策をみていこう。

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2024.05.29
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空き家問題とは

庭とごみのある家

Photo by Bruno Guerrero on unsplash

そもそも「空き家」とは

空き家問題とは、放置された空き家が景観の悪化を招いたり、悪臭や害虫の発生源となったり、犯罪リスクを高めたりする問題のこと。これは日本全国で起こっている身近な問題で、都市部でも地方部でも存在する。

空き家の定義については、「空家等対策の推進に関する特別措置法第2条第1項」(※1)により、「空家等」とは、「建築物またはこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるものおよびその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む)」となっている。ただし、国や地方公共団体が所有するもの、または管理するものは除く。

具体的には、1年間を通して人の出入りの有無や、水道・電気・ガスの使用状況などから総合的に見て「空き家」かどうか判断される。

日本の空き家問題の現状

日本の空き家問題は深刻化している。総務省の2023年10月時点の調査(※2)によると、国内の住宅総数に占める空き家の割合は過去最高の13.8%で、空き家の数も5年間で50万戸増の899万戸と過去最多になった。

とくに問題となっているのが「放置空き家」で、これは長期にわたって不在で使用目的がない空き家を指す。2003年からの20年間で、1.8倍に増えている。放置空き家は建物の劣化が進みやすく、景観の悪化や悪臭・害虫の発生、倒壊の危険といった問題につながる可能性がある。

空き家は人口減に歯止めがかからない地方を中心に増加傾向にあり、少子高齢化による人口減の影響を受けている。都道府県別にみると空き家率がもっとも高かったのは、和歌山県と徳島県(21.2%)で、次いで山梨県(20.5%)、鹿児島県(20.4%)、高知県(20.3%)と続く。このように、日本全国で空き家問題が顕在化しており、地域ごとに深刻さの度合いは異なる。この問題に対する対策が求められている。

空き家問題が引き起こすさまざまな影響

金属が積まれた暗い部屋

Photo by Mateusz Butkiewicz on unsplash

治安の悪化

空き家は不審者や犯罪者の隠れ家や活動拠点となりやすい。また、不法侵入や窃盗、放火などの犯罪行為の対象となりやすく、地域の治安悪化につながる。

火災リスクの増大

空き家は放火の対象にされたり、電気設備の劣化やガス漏れなどから火災が発生する可能性もある。放置されたごみや雑草が燃えやすい状況をつくり出すため、火災のリスクが高まる。

衛生上・景観上の問題

空き家やその周辺は管理が行き届かないため、雑草の繁茂やごみの散乱、害虫の発生など、衛生的な問題を引き起こす。また、空き家の存在は地域の景観を損ね、地域全体のイメージを低下させる可能性がある。

近隣家屋への損害のリスク

空き家が老朽化し、台風や地震などで倒壊すると、近隣の家屋や通行人に被害を及ぼす可能性がある。空き家からの悪臭や害虫の発生などが近隣住民の生活環境を悪化させる可能性がある。

不動産価値の低下

空き家が多い地域では、その地域全体の不動産価値が低下する傾向がある。空き家が増えることで周辺環境が悪化し、住宅地としての魅力が減少しまうためだ。

土地の機会損失

土地、建物が有効利用されなくなると、機会損失が生じる。これは、その土地が他の有益な目的に使われる機会を失うことを意味する。

「空き家問題」が起きる原因 その背景にあるもの

森の中の廃墟の航空写真

Photo by Noah Silliman on unsplash

日本全国で起きている空き家問題。空き家が年々増加していることが原因だが、その背景には何があるのか。以下でみていこう。

人口減少と高齢化

日本では人口減少により、総世帯数よりも住宅ストック数が大きく上回っている。(※3)単純に買い手・借り手がいないと、いかに家を売りたい・貸したいと思っても空き家になってしまう。空き家所有者を対象に空き家にしておく理由について調査したところ、「買い手・借り手の少なさ」や「更地にしても使い道がない」といった理由が挙げられた。

また、高齢者が増えることも空き家の増加につながる。高齢者が老人ホームや子どもの家に転居することで、それまで住んでいた家が空き家になってしまうケースだ。都市部に住む子どもの家から距離が離れていると管理も不十分になり、放置されてしまいがちになる。

相続問題

空き家所有者が「空き家」を取得するに至った経緯は、半数以上が相続によるもの。親など家の所有者が亡くなった際に、別の場所に住む子どもや法定相続人が相続するといったケースだ。空き家所有者の3割が車や電車で1時間以上かかる遠隔地に住んでいるというデータからも、相続した空き家に自身が住むことも、頻繁に管理・維持をすることも難しいことが想像できる。(※3)

売却を考えても、住宅が痛んでいたり設備や建具が古いなどの理由から買い手がつかず、空き家として所有し続けるケースも少なくない。また、解体するにもコストがかかり、労力や手間もかかることから、避ける相続人も多い。

なお、相続した空き家の譲渡所得の特別控除が拡充・延長され(※4)、相続した家屋や敷地を売った場合、一定の要件に当てはまれば最高3,000万円まで控除できる特例もある。相続により空き家を持つことになった場合は、固定資産税や管理コストの負担、不法侵入や火災などの近隣トラブルリスクに留意しておく必要がある。そして、税制措置を正しく理解し、最適な方法を選択できるようにしたい。

建物の老朽化

老朽化した建物や昭和55年以前、新耐震基準以前に建設された家も、空き家増加の原因となっている。売却や賃貸、二次利用を見込まない状態とされる空き家のうち、4分の3が昭和55年以前に建てられたものだ。(※3)

こういった空き家は倒壊や破損による近隣への危害など、空き家問題の直接的な原因となる。空き家が増加するだけでなく、危険な空き家を増やす原因にもなるため、全国でとくに危険視されている。

空き家問題を解決するためにできること

建物の前に置かれたごみの山

Photo by Nadiia Ganzhyi on unsplash

社会的背景から今後も増え続けることが予想される空き家。空き家がある限り、空き家問題はついてまわる。では、今後どのような対策をしていけばいいのか。私たち自身が「空き家問題」を引き起こさないためには、どうしたらいいのか。次のような対策を知っておくことで、いざというときに適切な選択が可能になる。

早めに相続対策を行う

空き家問題の一因は、相続が適切に行われないこと。相続人が明確でない、または相続人が空き家の管理を適切に行わない場合、家は放置され、問題が生じる。そのため、早めに相続対策を行うことが重要だ。具体的には、遺言書の作成や生前贈与を活用して、相続財産や管理責任を明確にすることが有効。

賃貸やシェアハウスなどに活用する

空き家を賃貸物件やシェアハウスとして活用することで、空き家が社会資源となり、空き家問題の解決に寄与する。シェアハウスはとくに若者や単身者に人気があり、空き家を有効に利用する一方で、地域コミュニティの活性化にも寄与する。

行政の空き家対策制度を利用する

各自治体は空き家問題の解決に向けてさまざまな支援制度を設けている。これらの制度を活用することで、空き家の活用や適切な管理が促進される。具体的には、補助金や助成金の提供、空き家バンクの運営、空き家対策の相談窓口の設置などがある。

空き家バンクに登録する

空き家バンクは、空き家を貸したい人と借りたい人をマッチングするサービス。空き家バンクに登録することで、空き家の有効活用が促進され、空き家問題の解決に寄与する。

空き家をリフォームする

空き家をリフォームした後、シェアハウスや民泊施設などに再利用することもできる。これにより、空き家が新たな価値を持つとともに、地域の魅力向上にも寄与する。

適切な対策が求められる空き家問題

人口減や高齢化社会の影響、新築住宅を好む日本人の傾向や相続問題など、空き家が増え続ける背景にはさまざまな要因がある。空き家は、そのものの問題だけでなく、周辺にも悪影響を及ぼしてしまう。空き家を放置することなく適切に管理し、早めに「仕舞う」(除去)・活かす (活用)の行動に移すことが求められている。(※5)

空き家は、視点を変えれば、地域の活性化や社会資源の有効活用に寄与できる可能性も秘めている。所有者は、自身の状況や地域の状況に応じて、適切な対策を選択し、実行することが求められる。

※掲載している情報は、2024年5月29日時点のものです。

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