少子高齢化の影響をわかりやすく解説 日本の現状や解決策、海外の対策も紹介

年老いた男性に抱えられる赤ちゃん

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2023年上半期の出生数が2000年以降で最少を更新した。日本では少子高齢化が急速に進行しており、社会に影響をおよぼしはじめている。少子高齢化は決して他人事ではなく、私たち一人ひとりの未来に大きく関わっている。本記事では少子高齢化の影響や現状、対策についてわかりやすく解説しよう。

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2023.09.04
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少子高齢化の現状

おばあちゃんと赤ちゃんが触れ合う様子

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全人口における若年齢者の割合が減少することを「少子化」という。対して、高齢者の割合が増加することを「高齢化」という。少子化と高齢化が同時に進行している状態が「少子高齢化」であり、日本ではまさに少子高齢化が進んでいる状況だ。以下で少子化と高齢化それぞれの定義をおさえ、日本の現状を把握しよう。

少子化とは

少子化とは、文字通り、子どもの数が低下傾向にあることを指す。人口学においては、1人の女性が一生の間に産む子どもの数を表した「合計特殊出生率」が、人口を維持するために必要な水準を相当期間下回っている状況を少子化と定義している。(※1)

合計特殊出生率が下回った状態が継続すると、人口減に転じる。日本における、合計特殊出生率上の人口減に傾く目安の数値は2.08前後。「2022年の人口動態統計(概数)」によると、2022年の合計特殊出生率は1.26で過去最低を記録した。(※2)1970年代半ば以降、少子化の状態が続いているのが現状だ。

高齢化とは

人口を年齢別に分けたときに、15歳未満を「年少人口」、15歳以上65歳未満を「生産年齢人口」、65歳以上を「老年人口」といい、65歳以上を「高齢者」と表している。高齢化とは、人口に占める65歳以上の高齢者の割合が高まっている状態を指す。

高齢化には段階があり、高齢化率を尺度に以下のように定義されている。

高齢化率が7%超:高齢化社会
高齢化率が14%超:高齢社会
高齢化率が21%超:超高齢社会

日本では、1970年に高齢化社会に突入。その後、1994年に高齢社会、2007年に超高齢社会へと移行している。総務省の発表によると、2022年の高齢化率は29.1%で過去最高だった。(※3)

出生率が低下し高齢化率が増加している

高齢化は先進国で起こりやすい共通の問題だが、日本では、諸外国に例を見ないスピードで高齢化が進行している。それに伴い、社会保障費の増加や医療・介護業界の逼迫など、さまざまな問題が懸念されている。あわせて年々少子化が加速。少子高齢化が急速に進行しているのが現実だ。

近い将来、1人の若者が1人の高齢者を支える厳しい社会に突入することが予想されており、対策が急務である。日本における少子高齢化問題は、ますます深刻な状況だ。

【2023年最新】日本の出生率 これまでの推移と今後への影響・対策は?

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少子高齢化の要因

少子高齢化には、さまざまな社会的要因が絡んでいる。以下で、代表的なものを3つ見てみよう。

非婚化・晩婚化など結婚観の変化

まずは、結婚観の変化だろう。ひと昔前は「結婚するのは当たり前」「結婚したらすぐに子どもを産む」といった風潮があった。しかし、女性の社会進出や若年層の経済的不安定などを理由に、価値観が多様化している。

内閣府の調査によると、結婚していない理由において、男性は「結婚後の生活資金が足りない」「結婚資金が足りない」などの経済的な理由が目立つ。一方で、女性は、「自由や気楽さを失いたくない」や「必要性を感じない」などの、ライフスタイルを優先したい姿勢が見てとれる。(※4)

結婚していない理由内閣府調査

出典:内閣府ホームページ

また、仕事と子育てを両立するための環境が整っているとはいえない現代、出産や子育てがキャリア形成の妨げになると感じる女性も多く、それも非婚化・晩婚化につながっている。婚姻件数が減少し、初婚年齢が高くなるにつれ、出生数が下がるのは自然の流れだろう。

子育てにおける経済的不安

上でも触れたが、若年層の経済的不安定が少子化に大きく影響している。大学進学や習いごとを含め、子どもの生活には膨大な費用がかかる。経済的な不安から、子どもを持つことを諦める選択をする人も多いだろう。内閣府による「令和3年度 人生100年時代における結婚・仕事・収入に関する調査」では、実際にそうした回答が多く見られている。

さらには、出産後に以前と同様の働き方をできるとも限らない。同調査では、第一子が生まれたあとの働き方において、理想と現実にギャップが生じていることがわかる。「夫婦ともに原則フルタイム」での働き方を望むにも関わらず、できないケースが多く発生しているのだ。(※5)子どもを産むことが収入減につながりやすい社会構造も相まり、子どもを持たない選択が増えている。

ベビーブームで生まれた人の高齢化

出生数が一時的に急増することをベビーブームという。日本では終戦後の1947年〜1949年に第1次ベビーブーム、第1次で生まれた赤ちゃんが大人になった1971年〜1974年に第2次ベビーブームが起きている。

第1次ベビーブーム期の年間出生数は約270万人。合計特殊出生率は4.32を記録した。第1次ベビーブームで生まれた世代は、2012年〜2014年に65歳を迎え、高齢者となった。一方で、ベビーブーム期以外の出生数は変化しながらも落ち着いており、1975年以降は減少傾向だ。(※6)出生数の減少が続くなかで、ベビーブームで生まれた人々が一気に高齢化し、総人口に対する高齢者の割合が急増した。

少子高齢化の影響

杖をつく高齢者の手

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少子高齢化の影響は、全世代に波及し、深刻化すると経済・社会基盤が崩壊する可能性がある。具体的な影響を以下で3つ取り上げる。

労働人口の減少によって経済成長が鈍化する

経済活動は、労働人口によって大きく左右される。少子高齢化がこのまま進行すると、労働人口の減少によって、経済における成長率が低くなる。経済規模の縮小も余儀なくされ、国内市場が縮小する。そうすると、さらに成長が鈍化し、悪循環が生じてしまう。

社会保障制度の維持が難しくなる

いまのまま少子高齢化が進行すると、2060年ごろには、高齢者1人を現役世代1人で支える「肩車社会」が到来するといわれている。高齢化が進むと、年金や医療費などの社会保障費が増大する。高齢者に対する現役世代の人数が減れば減るほど、現役世代の税負担が増え、可処分所得の減少につながる。現役世代の人口減により税収が減ると、公共サービスの縮小を余儀なくされる可能性もあるかもしれない。

また、年金額が今後減少していくこともあり得るだろう。肩車社会の到来により、給付と負担のアンバランスは今後強まっていく見込みだ。

地方都市の高齢化が進む

地方都市の高齢化が進むと、地域活動を支える世代が減少し、地域コミュニティが弱体化する。利用者が減ることで、行政サービスの維持が難しくなる可能性もあるだろう。

産業に関しても同様だ。高齢化に伴い、倒産や廃業、事業撤退のリスクが高まっていく。地方から大都市への人口移動が加速すると、人口急減や高齢化の進行がさらに深刻化することも考えられる。

少子高齢化の対策

両親と手をつなぐ赤ちゃん

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2003年に少子化社会対策基本法が成立し、長期的な視点での少子化対策が講じられている。2023年には岸田首相が「異次元の少子化対策」を表明し、若い世代の所得向上や経済的支援の強化を推し進める考えを示した。ただ、出生数は低下の一途をたどっており、いまひとつ、成果に結びついていないのが現状だ。以下では、少子高齢化、なかでも少子化に必要な対策を改めて整理してみよう。

子育て支援の充実

少子化対策に子育て支援の充実は不可欠だ。女性の社会進出が進む一方で、子育て支援の体制が不十分な状態が続いている。子育てと仕事の両立が難しい状況は、子どもを持たない、あるいは理想の子ども数を諦める選択に紐づきやすい。育児休業制度の充実や労働時間の短縮のほか、必要なときに利用できる保育サービスの充実や、地域社会における子育て支援体制の整備など、子育てと仕事の両立支援が求められている。

子育て支援とひとくちにいっても、アプローチはさまざまあるだろう。子どもを持ちたいにも関わらず持てない状況を細かく把握して反映した、本質的な政策が必要なのだ。

教育に関する経済的負担の軽減

塾や習いごと、大学進学など、子どもの教育にかかる費用は膨大だ。子育てにおける経済的な不安を払拭するためにも、教育費をはじめとする経済的負担の軽減が重要である。

異次元の少子化対策で経済支援として検討されているのは、児童手当の拡充だ。中学生までだった支給を高校卒業まで引き上げる案や所得制限の撤廃、多子世帯への加算によって、経済的な支援を厚くする方向で検討している。

ほかにも、幼児教育・保育の無償化を中心に、一部世帯の高校無償化・大学無償化など、教育における経済的負担の軽減策が行われている。

雇用環境の改善

雇用環境の改善も少子化対策において欠かせない要素のひとつだ。両立支援の一環として、長時間労働の抑制や有給休暇取得の促進など、ワークライフバランスを意識した環境を整える必要がある。女性が出産後のキャリアを中断せずに済む対策も重要とされる。リモートワークや時短勤務などの柔軟なワークスタイルの推進も、子育てしやすい社会に直結しているといえるだろう。

海外の少子高齢化対策

パソコンを目の前に子どもを抱っこする女性

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北欧諸国やフランスには、政策により少子化を克服した実績がある。海外の少子高齢化対策にはどのようなものがあるのだろう。内閣府がまとめている事例にもとづき、具体例を紹介する。(※7)

事例1|フランス

フランスは家族給付の水準が手厚いのが特徴であり、とくに、第3子以上の子を持つ家庭を優遇している。経済的支援にプラスして、1990年代以降は保育の充実に力を入れた。さらに現在は、両立支援を重点的に実施。出産・子育てと就労に関して、選択肢を持てるような環境整備を行っている。

事例2|スウェーデン

スウェーデンは、約40年にわたって経済的支援と両立支援を進めてきた。多子加算を適用した児童手当制度や柔軟な保育サービスのほか、1974年には世界ではじめて両性が取得できる育児休業の収入補填制度を導入した。また、社会全体で子どもを育む体制の整備も進めている。

事例3|アメリカ

高い出生率を維持しているアメリカでは、基本的には、国は家族政策に介入していない。税制の所得控除を除いて公的な制度やサービスがなく、その分民間のサービスが発達しているのが特徴だ。

アメリカのケースでは、環境要因も大きい。アメリカでは、子育て前後のキャリアの継続が比較的容易とされている。また、男性の家事参加が比較的高いのも、出生率に関係していると考えられている。

少子高齢化とSDGs

少子高齢化の影響は社会全体に波及するため、SDGsとも関わりが深い。とくに、SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」の項目と密接に関わっている。

例えば、少子高齢化の影響を防ぐための取り組みは、ワークライフバランスの確立に大いに関係する。整備された労働環境があると、やりがいや生産性に直結し、社会全体の発展につながるともいえるだろう。多様な働き方が認められるようになり、創造的な活動に時間を割けると、それが新しいアイデアや発想のもとになるかもしれない。一人ひとりがいきいきと働ける労働環境を整備することは、持続可能な社会の実現のための大きな一歩でもあるのだ。

少子高齢化の影響を回避するためにできることは何か

少子高齢化の対策としてさまざまな施策が講じられているが、いまひとつ変化につながっていないのが現状。少子高齢化が深刻化し負のスパイラルに陥ると、簡単には解消できない。もはや待ったなしの状況であり、早急に対策をしていい方向へ立て直すことが重要だ。

日本が危機的状況を脱するには、いまどれだけ本気で取り組めるかにかかっている。私たちや将来世代が生活を続けていくために、できることは何だろう。例えば、政策に興味を持って、選挙に行くのもひとつのアクションだ。社会全体の問題だからと諦めてしまわずに、目の前の小さなことから着々と取り組もう。

※掲載している情報は、2023年9月4日時点のものです。

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