【2023年最新】日本の出生率 これまでの推移と今後への影響・対策は?

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近年、日本でますます問題視されている少子高齢化。要因のひとつは出生率低下であるが、先進国をはじめとした諸外国において同様の問題は起こっているのだろうか。日本の出生率・合計特殊出生率や世界の出生率、出生率低下による日本社会への影響について考えてみよう。

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2023.03.27
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2023年の日本の出生率・合計特殊出生率

まず、出生率とひとくちにいっても、「出生率」と「合計特殊出生率」の2種類があることを確認しておこう。「出生率」とは、“年齢や性別の区別なく、その年に生まれた人口1,000人あたりの出生数”のこと。一方「合計特殊出生率」は、“その年における15~49歳の女性の各年齢別出生率を合計したもの”を指す。後者の方が、年少者や高齢者など出生に直接影響しない人たちが含まれていないことから、より正確な指標であるとされている。

厚生労働省の人口動態統計月報(令和4年10月分)によると、2022年1月〜10月の日本の出生率は、6.5。2021年の6.7よりも低下していることがわかる。また、2022年6月に発表された、「令和3年(2021) 人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、2021年の合計特殊出生率は1.30。こちらも前年の1.33よりも低下している。

“日本の出生率・合計特殊出生率が低い”ということを、漠然と理解している人は少なくないが、これらの数値は世界と比べるとどのくらい低いのだろうか。世界銀行が現在発表しているデータによれば、2020年の合計特殊出生率世界ランキングによると、日本は212位中194位。世界と比較しても、日本の合計特殊出生率が極めて低いことがわかる。

【2022年】日本の出生率 少子化が加速する日本と世界の動向

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これまでの日本の出生率 推移と理由

日本の人口は、戦後の第1次ベビーブーム(1947〜1949年)や第2次ベビーブーム (1971〜1974年)等を経て、しばらく増加傾向にあったが、2008年に人口のピークを迎えて以降、減少傾向にある。

終戦による旧植民地からの引き上げや出征から男性が帰国したことによって起こったとされる、第1次ベビーブーム期の合計特殊出生率は、4.3。第2次ベビーブーム以降は2.1台を推移し、1975年からは緩やかな低下を続け、2005年には過去最低である1.26まで落ち込んだ。2013〜14年の経済状況や雇用情勢の好転の影響もあってか、2015年には1.45まで上昇。以降は、再び減少が続いている。

都道府県別 出生率ランキング

順位都道府県出生率
1位沖縄10.0
2位愛知7.4
3位滋賀7.4
4位福岡7.4
5位熊本7.4
6位鹿児島7.4
7位佐賀7.3
8位宮崎7.2
9位東京7.1
10位岡山7.1
11位福井7.0
12位大阪7.0
13位長崎6.9
14位鳥取6.8
15位広島6.8
16位兵庫6.7
17位島根6.7
18位香川6.7
19位大分6.7
20位神奈川6.5
21位石川6.5
22位埼玉6.4
23位三重6.4
24位千葉6.3
25位山梨6.3
26位長野6.3
27位京都6.3
28位岐阜6.2
29位宮城6.1
30位栃木6.1
31位静岡6.1
32位和歌山6.1
33位山口6.1
34位徳島6.1
35位愛媛6.1
36位群馬6.0
37位富山6.0
38位奈良6.0
39位高知6.0
40位福島5.9
41位茨城5.9
42位新潟5.8
43位北海道5.6
44位山形5.6
45位青森5.4
46位岩手5.4
47位秋田4.6

1位の沖縄が10.0であるのに対し、もっとも低い秋田では4.6と大きな差がある。また、比較的九州の出生率が高く、北海道・東北が低い傾向にあることから、地域によっても差があることが見て取れる。

日本の出生率・合計特殊出生率について述べてきたが、世界ではどうだろうか?フランス、アメリカ、スウェーデン、イギリス、ドイツ、イタリアといった、先進国のデータを見てみると、どの国も日本同様1960年代までは2.0以上の水準であったが、1970〜80年ごろにかけて、低下傾向となっている。しかし、1990年ごろからは、緩やかに上昇する国も見られる。

とくに回復が目覚ましいのが、フランスとスウェーデン。1990年代には1.5〜1.6台までに低下したものの、2000年代後半には、2.0前後まで上昇している。この背景には、家族手当等の経済的支援だけでなく、保育の充実や育児休業制度にも力を入れた「両立支援」の施策が影響しているようだ。しかし、両国とも2010年ごろから再び低下し始め、2020年にはフランス1.82、スウェーデン1.66まで下がっており、出生率回復の難しさがうかがえる。

出生率低下による3つの影響

人口減少による経済規模の縮小

出生率低下に伴う人口減少は、経済の需要と供給、両面において影響が出るだろう。まず、少子化によって労働力人口が減り、経済成長を支える要素のうちのひとつ、「労働投入」が減少。2010年代には米国の7割ほどの水準にあった一人当たりの実質GDP(国内総生産)は、2050年代には米国の6割程度まで低下するといわれている。人口減少が継続し生産性が停滞した場合には、2040年代以降マイナス成長となることが見込まれているのだ。

また、社会保障の負担や経済規模縮小による所得の伸び率低迷なども考えられる。その影響を受けると、2050年代までには現役一世帯当たりの消費増加率が現在の半分程度まで落ちるとされてあり、人口と経済がマイナスの影響を与え合う「縮小スパイラル」に陥るリスクが懸念されている。

少子高齢化に伴う医療・福祉の労働力不足

出生率低下に伴う労働力人口の減少によって、いま以上に労働力不足が進み、頭を抱える企業も増えるだろう。なかでも、高齢化が進む日本では、福祉や医療の需要増加に伴う人手不足が深刻な問題のひとつである。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)における医療従事者不足もいまなお解決していないが、今後も慢性的な人手不足が続くことが予想されている。厚生労働省が発表した、2025年までの看護職員の需要と供給のシミュレーションによれば、2025年には185万人〜225万人の看護職員が必要とされているが、実際の働き手は180万人ほどにとどまるとされいるのだ。

介護職においても、一般的に賃金や、体力面からほかの職業よりも人材を確保しにくいといわれており、こちらも今後の人手不足が深刻な問題である。

現役世代への社会保障負担の増大

少子高齢化と聞いて、社会保険料の負担や将来もらえる年金について不安を抱えている人も少なくないだろう。

実際、1950年には、65歳以上1人を支える現役世代の人数が12.1人であったが、少子高齢化により2020年では2.1人にまで減っている。今後高齢化が進み、2065年には、1.3人にまで減少することが予想されているのだ。

支える側と支えられる側の人口の偏りが大きくなることで、年金や医療、介護などの社会保障に関するアンバランスが一段と強まることが懸念される。

日本の出生率低下における今後の予測と対策

2023年2月28日に発表された「人口動態統計速報(令和4年(2022)12月分)」によれば、2022年の出生数は79万9,728人(前年比5.1%減)と過去最少で80万人を下回った。これは1899年の統計開始以来はじめてのことで、国の推計よりも10年ほど早い。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大による影響が大きいといわれているが、このままのペースで少子化が進めば、前述した経済規模縮小や労働力不足、社会保障制度はもちろん、国家財政の維持も厳しくなることが避けられないだろう。

これまで日本政府は、1994年のエンゼルプランや2003年の少子化社会対策基本法、2004年の子ども・子育て応援プランなどさまざまな対策を続けてきたが、どれも試算通りとは言い難い成果であった。

現在は、人生100年時代の到来を見据え、高齢者や子育て世代、子ども、現役世代まで広く安心を支えていくとして全世代型社会保障の構築を目指す「全世代型社会保障改革」を掲げている。不妊治療の保険適用や、待機児童解消、男性育児休業取得促進などに取り組むそうだ。

経済的支援だけでなく保育や育児制度の支援も強化することで、前述したフランスとスウェーデンのように出生率回復することを強く願いたい。

※掲載している情報は、2023年3月27日時点のものです。

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