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ICTとは、情報通信技術のこと。デジタル化が進む現代においてなくてはならない技術であり、"誰一人取り残さない社会"の実現においても必要不可欠だ。本記事では、ICTの意味や似た言葉との違いをわかりやすく解説。私たちに身近な分野での具体的な活用例も紹介する。
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ICTとは、日本語で「情報通信技術」。インターネットを活用し、情報をやり取りする技術の総称であり、人と人、人とモノをつなぐ役割を果たしている。私たちがふだん行っているスマホでのコミュニケーションやパソコンでの書類のやり取りも、ICTを活用することで成り立っている。現代における私たちの生活は、ICTなくして成り立たない。
日本が目指すべき未来社会の姿として、「Society 5.0」が提唱されている。内閣府が定めるSociety 5.0の定義は、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会」。
情報社会であるSociety 4.0の先を行く新たな社会であり、超スマート社会とも呼ばれている。(※1)いま、新たな社会の実現に向けて、さまざまな人やモノをつなげるICTを駆使し、あらゆる面をよりよくする“多様な幸せ”の追求が模索されている。
IT(Information Technology)は、「情報技術」と訳される。デジタルデータを扱う技術や機器の総称で、パソコンやスマートフォンなどのハードウェア、アプリケーションやインフラなどもITだ。日本では2000年ごろから使われている。
近年、ITに代わって主流になってきたのがICT。国際的には、ITよりもICTのほうが定着している。明確に区別されているわけではなく、同義として使われることも多い。ITが技術や機器を指すのに対し、ICTはコミュニケーションの要素を重視しているのがポイント。メールやSNSなど、ITの活用方法を指すイメージで捉えるとわかりやすい。
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、デジタル技術を活用し、生活をよりよくしていくこと。ビジネスシーンで使われることが多く、ビジネスモデルやサービスを改革していく際に用いられる。「ビジネスにAI予測を活用し、在庫管理をスムーズにする」「講義をオンラインにすることで、講師の働き方を柔軟にする」などは、DXの一例である。
DXとICTはデジタル技術を活用する点で共通しているが、DXがICTを内包していると捉えられる。情報通信技術であるICTを活用して、変革(DX)するイメージだ。
IoT(Internet of Things)は、日本語では「モノのインターネット」。パソコンやスマホに限らず、あらゆるモノをインターネットにつなぐ技術を指す。スマートスピーカーで家電を操作するスマートホームなどがわかりやすい例だろう。インターネットとモノがつながることで、遠隔からの管理が可能になる。
一方 ICTは、人と人、人とモノをつなぐ。ICTとIoTは、人を介しているかどうかが大きな違いといえる。
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ここまでICTの定義を説明してきたが、私たちの生活ではどのように活用されているのだろうか。以下で、各分野ごとに一つひとつ解説する。
近年は、アナログ形式で行なっていた授業にデジタルやITの技術を取り入れた"ICT教育"が広く導入されている。なかには、ICT教育カリキュラムを導入している幼稚園も存在するほどだ。
電子黒板やプロジェクター、タブレットなどの電子通信機器を活用しながら行なう授業手法で、動画や音声を含んだ魅力的な教材の活用、板書やプリントを配るといった時間の削減、インターネットを活用した能動的な情報の収集など、生徒にも教師にもメリットが多い。
また、児童や生徒の管理にもICTが役に立つ。出欠確認や保護者との連絡、作成した資料の再利用など、教員の働き方改革につながる点でも注目されている。
医療分野においては、オンライン診療の導入が加速している。オンライン診療が普及すれば、何らかの事情で通院が難しい患者や医療過疎地域の対応が可能になる。医療従事者の感染リスクを軽減できる点でも有効だろう。
また、近年は、オンライン受付システムを導入している医療機関が増えてきた。Web上で簡単に受付ができ、現地で待つ必要がないため、受診がスムーズになる。院内での感染予防にもつながる。
深刻な人手不足が課題となっている介護分野では、厚生労働省がICT化を推進。紙媒体でのやり取りを削減し、ICTをインフラとして導入することを求めている。具体的には、利用者に関する記録や計画書の作成、事業所内での情報共有などへの活用だ。コミュニケーションや作業の効率化を図ることで、人手不足への対応とサービスの質を向上させる狙いがある。(※2)
少子高齢化に伴い、一人暮らしの高齢者が増加しているが、その点においても、見守りを行うアプリや機器などのICTツールが普及してきている。今後、ICT機器に慣れた高齢者が増えてくると、もっと幅広い活用が可能になるだろう。
国土交通省では、建設現場における生産性の向上や安全性の確保を目的とする取り組み「i-Construction」を推進している。3本柱のひとつにICTの全面的な活用を掲げ、産官学関係者による協議会を設置。(※3)作業の効率化や働き方の改善のために、検討が進められている。
例えば、ドローンの導入は、危険なエリアの調査をスムーズにし、事故のリスクを防ぐことにつながる。センサーによるデータ収集の分析や、それを活かした事業プロセスの改善などにICTが活用されている。
農業分野では、先端技術を活用した「スマート農業」が推進されている。センサーや農業用ドローン、自動走行農機の活用は、生産性の向上や効率的な体制づくりに活かされる。
ICTを活用し、省力化しながら生産性を向上した事例も多数ある。データを見える化して予測に活かしたり、管理システムによって異常を検出したりなど、ICT企業とタッグを組んでの取り組みも進められている。(※4)
漁業分野では、水温管理や漁場予測、流通の合理化のためのICT活用が行われている。山口県では、2017年7月から漁場予測システムの運用を実施。海水温観測データや漁獲記録を解析して、漁場予測を行っている。予測結果はインターネットで提供されている。(※5)
災害発生時に住民に対して情報提供を行う「Lアラート(災害情報共有システム)」は、2019年に全都道府県での運用が実現した。避難指示の発令や状況の配信などが行われ、インフラとしての機能を担う。(※6)
ほかにも、被災者の情報収集や安否確認を容易にするために、防災拠点における無料Wi-Fiの提供など、環境整備も進められている。
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生活におけるさまざまな分野をよりよく変化させるための手段として期待されているICT。ICT化は、サステナブルな社会の実現にどう紐づいているのだろうか。各分野の活用例を頭に入れたうえで、以下で改めて整理していこう。
文部科学省では、「令和時代のスタンダード」として、1人1台端末環境の整備を進めている。「GIGAスクール構想」は、特別な支援を必要とする子どもを含め、誰一人として取り残さずに育成することを目的としている。教育にICTを取り入れることで、教師と児童の力を最大限引き出すことも狙いのひとつ。より最適な形で、一斉学習・個別学習・協働学習を行うことを可能とする。
ICTの活用によって、遠隔教育が充実することも期待されている。海外との連携でより深みのある学びが可能になるほか、入院中や離島の子どもたち、何らかの事情により学校へ通えない子どもたちも教室へアクセスできるようになるだろう。(※7)
ICTの活用によって時間や場所の制限なく働けるようになると、地方の活性化や機会の創出につながる。総務省が推進している「ふるさとテレワーク」は、地方への誘致のための新たなテレワーク。限られた人が限られた期間にのみ行う限定的なものではなく、地方でも首都圏と同じように働くことができる本質的なテレワークを指している。地方のオフィスで本社機能の一部を担う、個人事業主として都市部の仕事をテレワークで実施するなどが具体例だ。(※8)
また、ICTの活用で地方と都市部がフラットになることで、地方からの情報発信がしやすくなったり、地方発のビジネスが育ちやすくなったりというメリットも。
ICTは、ジェンダー平等の実現にも大きく関わっている。SDGsの目標5には「ジェンダー平等を実現しよう」があり、達成するための方法として、5-bには、女性の能力を高められるように、ICTなどの技術を活用する旨が記されている。
前述の通り、ICTを活用することによって、柔軟な働き方が可能となる。テレワークは、子育てや介護で忙しい女性の選択の幅を広げるだろう。出産や介護、配偶者の転勤などで退職せざるを得ない女性が、就業の継続を考えられるようになるかもしれない。ワークライフバランスの向上により、人生の質をも向上させる可能性があるのだ。
ICT技術やさまざまなデータを活用し、生活の向上を目指す都市や地域を「スマートシティ」と定義し、政府や自治体がさまざまな取り組みを進めている。
なかでも総務省では、2012年〜2014年度に「ICT街づくり推進事業」を実施。次いで、2014年度からは、人口減少を克服し、地方創生を推し進めるための「ICTまち・ひと・しごと創生推進事業」を開始した。さらに、2017年度からは「ICTスマートシティ整備推進事業」によって、スマートシティの推進を加速化。実施地域は多岐にわたっている。
福島県会津若松市では、2019年4月に、雇用創出やICT人材の定着などを目的に、オフィス環境として「スマートシティAiCT」を開所した。企業や行政、会津大学などで連携し、さまざまな分野でICT化を進めている。例えば、観光分野では、「VISIT AIZU」で国籍に応じた観光コンテンツを提供。また、地域活性化として、中山間地域において各世帯のテレビを活用した生活支援システムを構築した。情報閲覧やバス予約などが可能であり、住民の利便性の向上に寄与している。(※9)
少子高齢化や医師不足が喫緊の課題であり、地域によっては医療過疎が深刻化している。ICTの利活用により、都市部と地方での医療格差を是正することが急務であり、誰一人取り残さない医療のための整備が進められている。
面積が広大かつ、雪による悪天候の影響を受けやすい北海道では、かねてより遠隔医療の推進が模索されてきた。旭川医科大学病院遠隔医療センターでは、専門医により、地域の拠点病院の医師に対して伝送画像を用いた遠隔診断支援を行ってきた。少しずつ支援を拡大し、現在では、北海道内の複数医療機関が遠隔医療ネットワークでつながっている。(※10)
人材不足や離職率の高さなどが課題となっている福祉分野では、ICT化により、間接業務を減らしたり、魅力ある職場をつくったりすることが期待されている。実際に、職員のスケジュールの一元化や、拠点間のテレビ会議システムの導入など、さまざまな取り組みが行われている。(※11)
生産性が上がり、時間を捻出できるようになると、それだけサービスの質を高められる。多様なニーズがあるなかで、支援ニーズと福祉人材不足のギャップが大きい福祉分野。ICT化を進めることが、福祉サービスの充実につながっていくだろう。
ICTとは、あらゆる人やモノがつながる手段。SNSやWebサイトの閲覧などにとどまらない、これからの未来に必要不可欠な技術である。ICTがもっと身近になり、誰もが活用するようになれば、いまは想像ができないような未来が訪れるかもしれない。誰もが参画しやすい持続可能な社会を実現するために、ICTに関する知識を深め、正しく活用していきたいものだ。
※1 Society 5.0|内閣府
※2 介護現場におけるICTの利用促進|厚生労働省
※3 ICTの全面的な活用|国土交通省
※4 農業分野におけるICT等の先進技術の活用の推進 P2〜12|農林水産省
※5 沿岸漁業におけるICTの活用|水産庁
※6 「Lアラート(災害情報共有システム)」の普及促進|総務省
※7 GIGAスクール構想の実現へ P2〜3|文部科学省
※8 新たなテレワークの推進に向けた方策 P10|総務省
※9 総務省におけるスマートシティの取組 P6|総務省 情報流通行政局
※10 (6)医療分野におけるICT利活用に向けた取組~遠隔医療|総務省
※11 障害福祉サービス事業所のICTを活用した業務改善ガイドライン P6|厚生労働省障害者総合福祉推進事業
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