大量生産・大量消費は私たちの暮らしを便利で豊かなものにしてきた。一方で、過度な消費は自然環境に多大な負荷を与え、人間をはじめとする生物の健康や生命を脅かすほど深刻化している。大量生産・大量消費の問題点と、それにむけた国内外の解決策、私たちができるアクションを紹介する。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
わたしたちの買い物が未来をつくる|NOMAが「ソラルナオイル」を選ぶワケ
「大量生産・大量消費」とは、製品を大量に生産し、使用後に大量に消費されるサイクルのことを指す。大量生産によって市場に出回る製品の数が増大した社会では、人々の消費のスピードも加速し、大量消費が習慣化してしまう。しかし、このような消費パターンは資源の枯渇や自然環境への重大な負荷をもたらすため、世界的に問題視されている。
産業革命以降、とくに先進国では、石炭や石油などの化石燃料を主要なエネルギー源として、大量生産・大量消費の時代が始まった。これにより、人々の生活は豊かになり、繁栄を築いてきた。一方で、化石燃料の消費が急速に加速しており、将来的にはこれらの資源が枯渇する可能性が懸念されている。
また、日本では高度経済成長期における技術革新が大量生産を促進し、市場にはさまざまな新商品が登場した。これまでの天然の素材の商品に加え、プラスチック等の合成樹脂製品や合成繊維の衣類が店頭に並び、また、便利なインスタント食品や家電製品等が次々に発売された。
便利で手頃な価格の商品が次々に発売されて消費者の選択肢が広がるとともに、経済成長により生活も豊かになってきたことから、消費者が積極的に新商品を購入する、本格的な消費社会が到来した(※1)。
Photo by Antoine GIRET on Unsplash
大量生産・大量消費のサイクルは、大量廃棄につながる。廃棄物やごみの増加は、環境に大きな負担をかけるため、深刻な問題として認識されている。世界銀行の報告書「2050年に向けた世界の廃棄物管理の現状と展望」によると、2016年時点での世界の廃棄物は推定20.1億トンであり、何らかの対策を講じなければ、2050年までに世界の廃棄物の量は現在より70%も増加すると予測されている(※2)。
具体的な例として、大量に生産された衣服が着られなくなると、先進国から途上国へ大量に送られ、それによって処理場がひっ迫し、埋め立てるしかないという悲しい現状がある。このような消費サイクルを続けていると、ごみ処理場はもちろん、地球環境の存続が危ぶまれる。
大量の廃棄物が発生すると、それらを処理するための広大な土地が必要になるだけでなく、ごみの焼却によって大量のCO2が放出される。これは焼却のみならず、さまざまな生産物の製造過程でもCO2が大量に発生するため、地球温暖化の要因となっている。
現在、世界ではまだ食べられる食品が大量に廃棄されている。その量は世界で年間25億トン(※3)、日本では年間523万トンにのぼるという(※4)。
日本では、食品ロスの総量の約半数が家庭から出ていると言われており、食べ残しや食べないうちに痛んでしまった手つかずの食品(直接廃棄)、皮の剥きすぎなど(過剰除去)が主な発生要因だ。その量は日本人1人あたり年間約42キロに相当し、毎日約114グラム、おにぎり1個分のご飯を捨てている計算になる(※5)。
食品ロスは途上国の人々の飢えの要因にもなっていると指摘されており、世界の人々に食料を供給するためにも解決すべき重要な課題だ。
大量生産・大量消費システムは、発展途上国での劣悪な労働環境などの社会問題も引き起こしている。これまでに、先進国の企業は大量生産において安価な労働力を求め、発展途上国に工場を移転してきた。その結果、劣悪な労働環境や児童労働など、さまざまな問題が生じている。これらの問題を解決していくためには、大量生産・大量消費システムを抑制していく必要がある。
Photo by Katja Anokhina on Unsplash
深刻化する「大量生産・大量消費」問題の解決に向けて、日本や世界ではどのような取り組みが行われているのだろうか。いくつかみていこう。
「3R」とは、Reduce(リデュース・減らす)、Reuse(リユース・繰り返し使う)、Recycle(リサイクル・再生利用する)の頭文字のRを取った総称。環境にやさしい循環型社会を構築するため、資源を無駄なく繰り返し使うという考え方だ。2000年に制定された「循環型社会形成推進基本法」において明文化された。
「5R」は3Rに「リペア(Repair)」「リフューズ(Refuse)」という考え方を含めた概念。リペアは修理して再利用することを指し、リフューズは不要なものを断ることを意味する。これらの考え方を広め、実践することは、大量消費を抑制し、環境への負荷が少ない循環型社会を実現することへとつながる。日本では多くの自治体や企業が「5R」の取り組みを推進している。
2022年4月1日に施行された「プラスチック新法(プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律)」は、プラスチックごみによる環境負荷を軽減するため、削減とリサイクルの推進を目的として制定された法律だ。
この法律では、2030年までにワンウェイプラスチックを累積で25%削減すること、容器包装の60%をリユースまたはリサイクルすること、そして再生利用やバイオマスプラスチックの利用を倍増させることを目標として掲げている。
この法律により、製造業者が自主回収する取り組みを推進しているほか、自治体は各家庭向けのプラスチック分別収集とリサイクルを強化し、小売業者やサービス事業者などは使い捨てプラスチックを再利用可能な製品や再生プラスチック製品に置き換えるなど、ワンウェイプラスチックの削減が進んでいる。
フランスでは、2022年1月から売れ残った衣料品に対する「拡大責任者責任(EPR)法」が施行された。売れ残った衣料品は寄付やリサイクルが義務づけられ、違反した場合は最大15,000ユーロ(約190万円)の罰金が科される。この法律は、廃棄物を最小限に抑え、資源をできる限り再利用する循環型経済へ転換させることを目的としている。
数年前まで、プラスチックごみ排出量が世界第1位だった中国は、「固体廃棄物輸入管理制度改革実施案」を公表し、2017年末で廃プラスチックなど環境への危害が大きい固体廃棄物の輸入を禁止した。さらに、2019年末までに国内で代替可能な固体廃棄物の輸入を段階的に停止するとも発表した。また、これまでの回収方法や廃棄方法についての体制を見直し、早急な整備を行うことで、国内の固体廃棄物の回収率を高めるなどの取り組みを行っている。これにより、中国のプラスチックごみ排出量は大幅に減少したと言われている。
EUでは、ファッション業界の持続可能性を高めるための方針を発表。ファストファッションのような大量生産・大量消費を阻止し、サステナブルファッションへ方向転換するための方針だ。2030年までに、リサイクル繊維の使用を義務化し、廃棄を禁止する。環境への配慮のほか、労働問題や人権問題も考慮しての決定だ。
Photo by Priscilla Du Preez 🇨🇦 on Unsplash
私たち消費者がすぐに実践できる、身近なアクションを5つ紹介する。
商品を選んで買うことは、消費者としての責任でもある。買うべき商品を見極めることが、大量生産の抑制にもつながっていく。商品を購入する際は、本当に必要なものかどうか、どのぐらい長く使うことができそうか、一度立ち止まって考えよう。無駄な物を購入してしまわないように、買い物の前には自分の持ち物を整理してみるのもおすすめ。
ひとつのものを長く大切に使うことは、大量消費の抑制につながる。例えば、洋服のサイズが合わなくなった時、バッグの一部が壊れてしまった時などは、修理サービスなどを活用することで再び使用することができる。このように、お手入れなど工夫をしながら、愛着を持ってものを使い続けることを習慣づけるのもいいだろう。
3R「リデュース(Reduce)」、「リユース(Reuse)」、「リサイクル(Recycle)」を意識しながら生活するだけでも、無駄なごみが減って有限な資源を生かすことができる。マイバッグやマイボトルの活用、シェアリングサービスの利用、分別回収など、身近に実践できることはたくさんある。
現在、世界ではプラスチックごみ問題が深刻化している。スプーンやストローなどの使い捨てプラスチックは安価で便利である一方で、大量消費の要因にもなっている。買い物をする際にはマイバッグを使う、出先でペットボトルを購入するのではなくマイボトルを使う、マイスプーンやマイフォークを持ち歩くなど、日常的にできるアクションがプラスチックごみの削減につながる。
日本の食品ロスは年間で523万トンもあるといわれている。そのうち約半数が家庭から出ていると言われているため、私たちが日々の暮らしの中でできる工夫を重ねていくことが重要だ。例えば、買い物の段階で食べ物を必要以上に買わない、食べ残しを出さない、余った食材をうまく活用するなどの方法が有効だ。必要な分だけ購入し、食材を使い切り、料理をしっかり食べ切ることを意識し、食品ロスを減らしていこう。
大量生産・大量消費は私たちの暮らしを豊かにし、社会を大きく発展させてきた。しかし、同時に大量廃棄や発展途上国での労働問題、自然環境への悪影響など、社会問題や環境問題が深刻化しており、解決すべき課題が山積みだ。これらの課題解決に向けて、国内外でさまざまな取り組みが行われている一方で、私たち消費者も現状と課題をしっかりと認識し、身近にできることから取り組むことが重要だ。
※1 第1部 第2章 第1節 (2)消費と資源についての動き|消費者庁
※2 What a Waste 2.0:2050年に向けた世界の廃棄物管理の現状と展望|世界銀行
※3 世界で捨てられる食べ物の量、年間25億トン。食品ロスを減らすためにできること|日本財団ジャーナル
※4 食品ロスとは|農林水産省
※5 今日からできる!家庭でできる食品ロス削減 | 政府広報オンライン
ELEMINIST Recommends