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EUの欧州委員会が、ファストファッションのような衣料品の使い捨てを阻止するため、ファッション業界の持続可能性を高める方針を発表。2030年までに、リサイクル繊維の使用を義務化し、売れ残り製品の廃棄を禁止する。
今西香月
環境&美容系フリーライター
慶應義塾大学 環境情報学部卒。SUNY Solar Energy Basics修了。 カリフォルニア&NY在住10年、現地での最新のサステナブル情報にアンテナを張ってライター活動中
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ヨーロッパのファッション業界が、サステナブルな方向へ舵を切った。EUの執行機関である欧州委員会は、衣料品の持続可能性を高める方針を発表。2030年までにリサイクル繊維の使用を義務付け、大量に売れ残った衣料品の破棄を禁止する方向性だ。
ユーロ圏で現在使われている衣料品と繊維製品のうち、4分の3近くは輸入品だ。2019年には、中国、バングラディッシュ、トルコなどから800億ユーロ(約11兆円)以上の衣料品を輸入。しかし、EUでの繊維製品の廃棄量は、1人あたり年平均11kgになる。
欧州委員会は「ファストファッションの流行が、持続不可能な大量生産・大量消費・大量廃棄のサイクルの一因」と指摘。衣料品や繊維製品は、耐久性を持ちリサイクル可能で、危険物質を含まないリサイクル繊維で生産されるべきであり、本方針の目的は衣料品や繊維製品の再利用と修理を促進し、根本的な廃棄の問題に対応することだ。
またこの方針では、大量生産・大量消費・大量廃棄の影にある、ファッション業界の人権問題についても言及。ファストファッションの低価格は、アジアやラテンアメリカの発展途上国での低い人件費によって成り立っているが、劣悪で非人道的な労働環境が常態化し、世界で大きな問題となっている。
そこで、アパレル産業における労働環境の改善を目指す。さらに、マイクロプラスチックの流出を抑制するための対策も盛り込まれる。
今回の方針は、「サーキュラーエコノミーを推進し、消費財はよりサステナブルで耐久性のあるもので、修理・リサイクルしやすいものを促進するべき」というEU幹部の取り組みを反映した内容だ。衣料品のほかに、スマートフォン、家具などの消費財についても同様の取り組みが必要であると述べられている。
「サステナブル」は、ラグジュアリー分野でもっともホットなキーワードだ。例えば、ステラマッカートニーやクロエなどの高級メゾンは二酸化炭素排出量削減に向けて、アップサイクルを取り入れるなど、さまざまな対策を行っている。
サーキュラーエコノミーに向けたシフトが加速するなか、ファッション産業も過渡期を迎えている。
ファッションブランドやデザイナーはもちろん、私たち消費者にとっても、世界の変容を受け止め、ファッションに対する考えを改める時期が来たようだ。
※参考
EU proposes new rules to discourage disposable fast fashion|abcNEWS
EU proposes new rules to tackle 'fast fashion'|DW
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