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サーキュラーエコノミー(循環型社会)とは、なにか。具体的な商品の事例をもとに解説する。さらにサーキュラーエコノミーの3原則や5つのビジネスモデル、3R・シェアリングエコノミーとの違い、C2C認証とのつがりなどについて詳しく解説していく。
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「サーキュラーエコノミー」とは、直訳すると「循環型経済」のこと。
これまでの経済活動は、製品を生産し、消費し、廃棄するというのが主な流れだった。モノを消費した後は再利用することなく廃棄されるため、これは直線(リニア)型経済活動と呼ばれる。大量生産・大量消費型の経済活動は直線型で、大量の廃棄物を出すことになる。
それに対して、サーキュラーエコノミーは消費されたモノを資源としてリサイクルし、再び資源として使う経済活動をいう。資源や製品を円を描くように循環させることで、廃棄物を最小限にできる。
リニア型経済活動(左)は直線的であるのに対し、サーキュラーエコノミー(右)は円を描くように資源を循環させる。再利用型(中)については後述。 資料:A Circular Economy in the Netherlands by 2050
環境省の「環境白書(令和3年版)」でも、リニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへの移行の必要性が明記されている。(※1)
同白書では、2015年の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で採択されたパリ協定が、2020年から本格運用されたことに言及。日本の2050年のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みのひとつとして、サーキュラーエコノミーの重要性を説いている。
また、サーキュラーエコノミーはSDGs(持続可能な開発目標)の17のゴールの中で、「12.つくる責任 つかう責任」や「13.気候変動に具体的な対策を」などと、重なる部分が多いこともあわせて知っておきたい。
サーキュラーエコノミーの定義を聞いてもいまひとつピンとこない……と思う方もいるかもしれない。そこで、サーキュラーエコノミーの理解を深め貢献できる商品の事例を紹介しよう。
着古した服を捨てるのではなく、「土に還す」循環型ファッションがある。それが、シンクスドットデザインが2021年6月から行っている「Syncs.Earth(シンクスドットアース)」の、100%土に還る服のサブスクリプションサービスだ。
素材には土に還る和紙糸やオーガニックコットンが使われ、着古した服は回収して、同社の自社農園で土に還す。和紙糸は土に返る過程で微生物を増やすことから、耕作地の土壌改良に役立てられるという。同社では、着古された服とあわせて、製造過程で出た残布の分解を行っている。
商品には、シャツ、ロングTシャツ、スウェットパンツ、リブキャップ、リブソックスなどがラインアップ。サブスクリプションサービスでは商品ごとに最低利用期間が異なるが、月1,960円で新品が届き、着古したら別アイテムと交換OK、無期限レンタルが可能だ。
さらに通常購入して着用し、着古したら自分で土に還すこともできる。着古した服を土に還す。新しいファッションのカタチとして、注目されている。
サーキュラーエコノミーの理解を深めるなら、『サーキュラー・エコノミー - 企業がやるべきSDGs 実践の書』がおすすめだ。
ミシュラン、グッチ、アディダス、アップルなどの世界的な企業が、リニア型経済からサーキュラーエコノミーへと転換し、各業界を牽引する企業であり続ける理由を探る。また、どのような方法でサーキュラーエコノミーを実践しているか、SDGsを達成しようとしているか、さまざまな業界の最先端の取り組みを知ることができる。
日本の産業とサーキュラーエコノミーとの関係や見通しについても詳しく述べられており、ビジネスの側面からサーキュラーエコノミーを理解できる一冊だ。
サーキュラーエコノミーをもとに新しい発想で生み出されたサービスや製品が、ビジネスを広げるチャンスにもなっているいま、働く人すべてのヒントになるだろう。
家庭から排出されるごみのうち、生ごみが占める割合はとても大きい。例えば、大阪市が行った家庭ごみの分析調査で、生ごみが約30%だった。(※2)
この生ごみを削減できるのが、生ごみから堆肥をつくるコンポストだ。例えば『LFCコンポストセット』は、トートバッグ型のスタイリッシュなデザインで多数のメディアに紹介される人気アイテム。自宅に庭がなくてもベランダで利用できて、できた堆肥は家庭菜園などに利用できる。
手軽に生ごみを堆肥化できて、家庭ごみの量を削減。サーキュラーエコノミーに貢献できる取り組みのひとつになるだろう。
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サーキュラーエコノミーが注目される理由は、気候変動の問題があることが大きいだろう。パリ協定で、世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて1.5℃に抑える目標が位置づけられた。このように、地球温暖化による気候変動は、世界が抱える深刻な問題だ。
これに対し、日本は2050年までにカーボンを実現することを宣言。そのためには、製品生産のライフサイクルを通して二酸化炭素の排出を削減するなど、社会全体の仕組みを変換していく必要がある。
これまで世界は大量生産・大量消費の拡大を続け、そのために資源をむさぼり、そして廃棄し続けてきた。そのつけとして、資源は枯渇し、廃棄物が海や陸にあふれてきている。また、このような経済システムが地球温暖化を引き起こす要因となり、異常気象が後を絶たないのはご承知の通りだ。
リニア型経済から脱し、廃棄してきたごみを資源として見直し循環させるサーキュラーエコノミーに転換しなければ、人類はいずれ立ち行かなくなるだろう。
また、サーキュラーエコノミーを進めるには、さまざまな業種や地域が連携しなければならない。いままでにない連携が生まれるなかで、新しい発想や技術、ビジネスチャンスがもたらされるという側面があることも、注目されているひとつの理由だろう。
イギリスに拠点を置き、世界のサーキュラーエコノミーを推進する「エレン・マッカーサー財団」。同財団では、サーキュラーエコノミーについて「気候変動、生物多様性の損失、廃棄物、汚染などの地球規模の課題に取り組むシステム」と説明している。(※3)
さらに同財団では、サーキュラーエコノミーには以下の3つの原則があるとし、それに基づいて推進している。
・廃棄物と汚染を出さない
・製品・素材を(もっとも価値の高い状態で)循環させる
・自然を再生する
これらは、再生可能なエネルギーと材料への移行によって支えられるものだ。サーキュラーエコノミーは、有限な資源の消費とは切り離して考えられた、人や環境にとって柔軟な経済システムである。
資料提供:Accenture
従来型のバリューチェーンでは、調達、製造、販売、利用、廃棄などは“供給”の視点で組み立てられた経済システムだ。しかしながら、サーキュラーエコノミーは“利用”の視点でビジネスを構築。既存の資産を循環的に使うことで、モノや資産の潜在価値が最大限発揮されると考えられている。
ダボス会議で「サーキュラー・エコノミー・アワード」をサポートする総合コンサルティング企業・アクセンチュアでは、 サーキュラーエコノミーを5つのビジネスモデルに捉えている。(※4)
製品を売り切るビジネスから、サービスビジネスに転換することで、企業はこれまで以上に再利用、長寿命化、信頼性の向上に注力でき、顧客価値と事業収益の向上をはかれる。
低稼働のモノ・設備・ケーパビリティ(企業成長の原動力となる組織的能力や強み)を広くシェアして活用することができる。
修理、回収サービスなどで課金制にすることで 、製品の寿命を延ばし、顧客価値と事業収益を向上させる。
生産から消費のすべての過程で中間廃棄、副産物、製品廃棄が発生する。これらを最大限に再利用・再生し、2次転用して活用する。
リサイクル可能な原材料を用いて、リサイクル使用することで価格変動や供給リスクを大幅に軽減する。循環型サプライ材料の利用によって、コストの削減と環境への影響について軽減を両立する。
サーキュラーエコノミーと混合されやすい言葉に、「3R」や「シェアリングエコノミー」がある。それぞの違いについて見てみよう。
3Rとは、 Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)の3つのRの総称。使う資源やごみの量を減らし、使用済みの製品を繰り返し使い、廃棄されたものを再利用することをいう。
一方で、サーキュラーエコノミーは、そもそも資源を最大限に使い廃棄物を出さないことが前提となっている。廃棄物が出ることを前提として考える3Rとは、その点が大きな違いだ。
シェアリングエコノミーとは、モノ、スキル、場所などを共有する経済システム。既存のものを可能な限り使いまわすという点で、サーキュラーエコノミーの概念と近く親和性も高い。
シェアリングエコノミーはスタートアップが拡大しているケースが多いが、シェアリングエコノミーは既存メーカーによる取り組みが多いところが、両者の違いだろう。
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サーキュラーエコノミーの原点といえるのが、「Cradle to Cradle」の考え方だ。「Cradle to Cradle」は、「ゆりかごからゆりかごまで」の意味。
イギリスが第二次世界大戦後に掲げたスローガン「Cradle to Grave(ゆりかごから墓場まで)」は、一方通行的な流れを示したものだ。それに対して、「Cradle to Cradle(ゆりかごからゆりかごまで)」は、資源を永続的に有効活用するサイクルをいう。
「Cradle to Cradle認証」は「C2C認証」と呼ばれ、「生産→消費→生産」という持続可能なサイクルへの移行に関する国際的な認証制度だ。1987年、ドイツのハンブルグで設立されたEPEA(環境保護促進機関)が運営を行っている。
C2C認証の基準は、「原材料の健康性」「原料・部品のリユース」「自然エネルギー利用とカーボンマネジメント」など、5つ。認証はベーシック、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナの5段階にわかれている。
国内外で高まるサーキュラーエコノミーへの意識や期待。ただ、データなどからは足踏みしている現状や課題も見えてくる。(※4)
たとえば、食品ロス。国内では年間約600万tの食品ロスがあると言われるが、これはあくまでも可食部のみの数値。日本の食品廃棄量は約2,500万tに上るとも言われ、それとは別に生産段階で約400万tが廃棄されているという。
さらに、物流段階で生じる食品ロスも問題だ。どれくらい売れるかの予測精度の低さや商品寿命が短いことなどが原因だ。近年は、POSデータや人工知能(AI)を活用し需要予測の精度を上げる取り組みが行われるようになってきた。
また廃棄される家電製品の問題もある。経済産業省によれば、2016年度の廃棄小型家電は約60万t。そのうち 約38%の23万tがリサイクルに収集されたが、再資源化できた金属資源は約3万t。理論上、再資源化率の上限は43%だが、実際はわずか5%しか再資源化できていないことになる。
そのほか、ペットボトルなどのプラスチックごみなど深刻な問題も考えなければならない。
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「サーキュラーエコノミー」と聞くと、なんとなく難しそうに感じてしまうかもしれない。だが、地球温暖化が進みさまざまな問題が起きているいま、循環型の社会にシフトしなければならないことは明白だ。
自然にとっても、そして自分たちにとっても心地いい暮らしを実現するために、できるだけごみを出さない、ごみを出ないモノを選択するといったことを心がけてはどうだろう。
※1 令和3年版 環境白書|環境省
※2 令和2年度の家庭系ごみ組成分析調査結果について|大阪市
※3 エレン・マッカーサー財団
※4 サーキュラーエコノミー|2030年を見据えたイノベーションと未来を考える会 イノベーション・エグゼクティブ・ボード(IEB)
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