「ゆりかごからゆりかごまで」は、製品サイクルの新しいあり方のこと。使い終わったら廃棄物として処理するのではなく、新たな製品の生産に使用するプロダクトデザインをしようというもので、ドイツの環境保護促進機関であるEPEAによる製品認証制度もある。
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「ゆりかごからゆりかごまで(Cradle to Cradle)」とは、循環型のプロダクト・デザインをし、再利用できない廃棄物を一切出さないモノづくりをするという考え方。モノがライフサイクルの最終段階を迎えたとき、ごみとして処分せず、資源としてほかのモノの生産に活かそうというものである。
もとはスイスの建築家ヴァルター・R・シュタヘルによって1980年代に提唱されたものだが、その後アメリカの建築家ウィリアム・マクダナー氏と、ドイツの科学者マイケル・ブラウンガート博士によって世に広められた。
ブラウンガート博士は、国際環境NGOグリーンピースの化学部門を立ち上げた人でもあり、人類だけでなく、すべての種が今後も持続的に暮らしていける環境を守ることを目的にこのコンセプトを提唱した。
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イギリスが第二次世界大戦後に掲げた、社会保障に関するスローガン「ゆりかごから墓場まで(Cradle to Grave)」。生まれてから死ぬまで、生涯にわたって国が社会福祉を提供すると謳ったものである。
一方のCradleは「ゆりかご」の意。「ゆりかごから墓場まで」が一方通行的な流れを示すのに対し、「Cradle to Cradle(C2C)」は資源を永続的に有効活用する製品サイクルを指す。C2Cは環境への負荷を減らすだけでなく、環境にプラスの影響を与えることを大事にしている。
これはサーキュラーエコノミーに近い考え方ともいえる。サーキュラーエコノミーとは、製品を大量生産・大量消費して最終的には廃棄するという従来型の経済とは違い、廃棄するものが出ないような製品開発をしたうえで、資源や製品をできるだけ長く使い続ける循環型経済のことを指す。
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「Cradle to Cradle認証」は、ドイツのハンブルグで1987年に設立されたEPEA(環境保護促進機関)が行っている、グローバル環境認証。従来の生産・消費・廃棄という流れを、生産・消費・生産という持続可能なサイクルにシフトすべく、ベーシック、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナの5段階にわかれた認証を行っている。
人や環境に対して、できる限り害のない化学物質を使用していること。
製品を使用し続けられるサイクルを構築し、使用後は廃棄物としてではなく、資源として再利用できるようにすること。
再生可能エネルギーを使用して製品を製造し、生産過程で出る温室効果ガスを減らしたり、ゼロを目指していること。
地域の水脈が汚染されないように保護するとともに、地球上のすべての生物が安全な水にアクセスできるように努めていること。
製品の生産によって影響を受ける人々や自然環境を尊重した上で、事業計画をしていること。
国内外での認証数はすでに8000件を超えている。アメリカの化粧品ブランドAvedaは、多数の製品において認証を取得済みだ。化粧品容器にリサイクル材を利用したり、独自に空き容器を回収するなどして、ごみを出さない工夫をしていることが評価のポイントの一つとなったようだ。
日本では、福岡県田川市の漆喰製品や建築材の企業である田川産業が、全製品のうち4製品についてC2C認証を取得している。
漆喰製品を扱う「田川産業」は、2010年にシルバー認証を受けている。なかでも焼かずにつくる新しい漆喰「Limix」は、廃棄後は原料や肥料として再利用できるうえ、従来品よりCO2の排出量を約80パーセント抑えられるとあって、温室効果ガスの削減に成功している。
ドイツの洗剤メーカー「ワーナー&メルツ社(Werner & Mertz)」は、2013年にゴールド認証を取得。製品の製造過程で出た汚泥を住宅用レンガの材料にしたり、工場内で使用する段ボールは最低20回以上は使用するようにするなど、随所に環境への配慮がなされている。
「G-Star RAW」のデニム製品は、2017年にゴールド認証を受けている。生地にオーガニックコットンを使用しているため、マイクロプラスチックが発生する心配がなく、染色工程に塩を使わないので排水までクリーンだといわれている。
モノの消費が増え続けているなか、資源の価格高騰が危惧されている。今後はC2Cの概念を取り入れた製品開発や事業展開をし、資源の市場価格の変動に強い企業運営が必要になってきそうだ。
日本ではC2C認証を受けている製品は少ないが、ビジネス面だけでなく、社会的・環境的な面にもメリットがあるので、取得する企業が増えていくかもしれない。
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