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SDGsは、これから先の企業戦略に欠かせないキーワードである。さまざまな企業の取り組み具体例やメリットを紹介する。企業がSDGsに取り組む上で、注意しなければならない「SDGsウォッシュ」についてもわかりやすく説明しよう。
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2015年9月に採択されたSDGs(持続可能な開発目標)。2030年までに、持続可能でよりいい社会の実現を目指すための国際目標である。17の目標と、より具体的な169のターゲットが定められており、国はもちろん、企業や一般消費者まで「誰一人取り残さない」取り組みが求められている。
SDGsで取り上げられている目標は、どれも国際社会が抱えている深刻な問題だ。2030年の達成に向けて、待ったなしの状況とも言われている。
こうした状況のなか、企業がSDGsを考慮せずに利益のみを追求すれば、社会全体から冷ややかな目線を向けられるだろう。企業としてのイメージが落ちれば、競争力も低下する。エシカル消費に興味を抱く人々が増えているいま、商品やサービスの質と価格だけでは選ばれない時代がやってきている。
また投資家たちにとって、SDGsを考慮しない経営スタイルは、非常に大きなリスクである。持続可能性に配慮しない事業形態を、そのままの形で継続させるのは難しい。先々を見据えて投資先を選ぼうと思えば、こうした企業は論外とも言える。事業資金を集めるのにも苦労するはずだ。
SDGsの前身であるMDGs(Millennium Development Goals)は国や国際機関が主導してきたのに対して、SDGsは企業の役割を重視している。大企業から小規模事業者まで、それぞれの目標を打ち出した上での、具体的な取り組みを求めているのだ。
こうした状況のなか、SDGsの取り組みを自社の強みとして積極的にPRする企業も増加。企業の成長戦略を考える上でも、SDGsは欠かせないキーワードとなっている。
今後の企業経営に、SDGsは欠かせない視点である。とはいえ、具体的にどのようなメリットがあるのかわからないなかで、予算を組むのは難しいだろう。3つのメリットを具体的に解説するので、参考にしてみてほしい。
SDGsに掲げられた各種社会問題を解決するためには、新たな視点や技術が必要になるだろう。既存の戦略だけにこだわらない、新たなビジネスチャンスの創出につながる。実際に、SDGs関連の新商品や新サービスの提供をきっかけに、飛躍を遂げる企業は多い。SDGsに対する注目度が高まっているいまだからこそ、非常に大きなチャンスと言えるだろう。
また、SDGsへの取り組みを通じて新たな関係が生まれるケースも多い。地域社会との関係性が深まり、新たな取引先や事業パートナーの獲得にもつながるだろう。これまでにない関わりのなかで、新たなイノベーションやパートナーシップを育んでいける。
SDGsに対して各企業がどのような取り組みを行っているのか、国際社会からの注目度は高い。「自らの責任を果たす、社会貢献度の高い会社」というイメージが向上すれば、そうしたイメージにひかれ、優秀な人材が集いやすくなるだろう。
少子高齢化が進む日本において、優秀な人材をどう確保するのかは、非常に重要な課題である。SDGsへの取り組みで注目されるのは、大企業だけではない。ユニークで画期的な取り組みが注目されれば、中小企業にとっても非常に大きな強みとなる。
またSDGsという共通の目標には、「社員に一体感を抱かせる」という効果も期待できる。社会問題解決に向けた努力は、モチベーション向上にも役立つだろう。
SDGsの取り組みを積極的にPRすることは、社会問題に関心の高い優良顧客の獲得につながる。商品やサービスの質と価格だけではなく、それを提供するまでの企業姿勢にも注目してもらえるだろう。他社との差別化につながり、過度な価格競争に巻き込まれる恐れもない。
SDGsへの取り組みを評価し、企業やブランドに共感してくれる消費者は、商品やサービスを継続利用してくれる可能性が高い。簡単には離れない「ファン」と言ってもいいだろう。企業と消費者の間に良好な関係性を築きやすく、ファンを通じて別の顧客を獲得できる可能性もある。SDGsの取り組みを、売上アップにつなげていけるはずだ。
企業がSDGsに取り組む上で、注意しなければならないのが「SDGsウォッシュ」である。実態が伴っていないにもかかわらず、「SDGsに対して積極的に取り組んでいる」と見せかけることだ。SDGsに対する注目度が上がっているいまだからこそ、SDGsウォッシュに対しても厳しい目線が向けられている。企業の取り組み方法やその見せ方によって、「ウォッシュである」と判断された場合、致命的なダメージを負う恐れがあるのだ。
SDGsウォッシュと判断される事例は、主に以下の3つである。
・SDGs関連の取り組みを掲げているにもかかわらず、具体的な行動を起こしていない
・取り組みに対する実績を誇張して記載している
・プラスの側面だけを過度に強調している
SDGsが注目されるいま、企業ホームページにて、具体的にどのような取り組みを行うのか掲げるケースも多い。しかし、目標を掲げるだけで取り組みの実態がない場合、信頼度は大幅に低下する。「SDGs」という言葉で、イメージ向上だけを狙っていると捉えられかねないだろう。
SDGsへの注目度が高まっているなかで、「とりあえずホームページに掲げてみたものの、準備に手間取り具体的な行動を起こせていない」というケースもあるだろう。この場合も、第三者の目線で見ればSDGsウォッシュだ。
また実際に取り組みを行っている場合も、その報告方法には注意が必要だ。実績以上に誇張報告すれば、やはりそれもウォッシュである。プラスの側面だけに注目して報告するのも、非常に危険だ。
たとえば、「CO2削減」をSDGsへの取り組みとして掲げ、実際に再生エネルギーの活用や電気自動車の導入を進める企業は多い。しかしその反面、化石燃料を扱う企業に投資していれば、それは見せかけだけのSDGsと判断されてしまうだろう。ステークホルダーをだまそうとする意識はなくても、サプライチェーン内での情報確認不足や社内での認識の違いから、こうした問題につながってしまうケースは多い。
SDGsウォッシュで企業イメージやブランド価値を低下させないためには、SDGsの本質を正しく理解する必要がある。その取り組みを企業にとってのメリットにできるよう、注意深く進めていこう。
SDGsへの注目度が高まるとともに、表面化してきたSDGsウォッシュ。SDGsウォッシュという言葉が使われるようになったきっかけは、1980年代に問題視されたグリーンウォッシュである。
環境問題への注目度が高まっていた当時も、「環境にやさしい経営方針」をアピールする企業は多かった。しかし実際には、見せかけだけの取り組みで実態が伴っていないケースも少なくなかったのだ。
日本国内には、SDGsと関連する課題がまだまだ多く残されている。SDGs達成に向け、よりいっそうの努力が求められるだろう。こうした課題に注目し、具体的な取り組みを行う企業を3つ紹介する。
大手コンビニチェーンのセブン-イレブンは、子育て中でも安心して働ける環境を整備するため、保育園を開設した。保育施設の不足は、「働きたい」と願う人たちにとって非常に重要な社会課題の一つだ。東京都大田区・世田谷区・町田市、広島県広島市、宮城県仙台市、京都府京都市の6カ所に保育園を開設している。
セブンなないろ保育園を利用できるのは、オーナーや従業員だけではない。地域の人々も幅広く受け入れることで、待機児童問題の改善やジェンダー平等、働きがいといった視点で、SDGs達成に貢献している。
SDGsにおいて、カゴメがとくに重視しているのが「8.働きがいも経済成長も」である。社員それぞれのワークライフバランスを保っていきいきと働けるよう、「働き方改革」を超える「生き方改革」を推進。人事制度改革が行われている。
希望の勤務地で働ける仕組みを整え、副業も解禁。在宅勤務制度や選択制時差勤務制度も導入し、企業にて自分らしく働き続けられる環境を整備した。社員それぞれのパフォーマンスを高め、生産性向上につなげている。
ユーザーが無料で不用品をあげたり、人を募集したりできる地域密着型のWebサービス「ジモティー」。同社がとくに力を入れているのは、SDGsの目標のひとつである「1.貧困をなくそう」である。独自調査により、日本のひとり親世帯の約半分(約65万世帯)がサイトを利用している事実を確認。CSR活動の一環として、企業協賛の支援物資をジモティーに掲載し、ひとり親家庭を優先とした物品受け渡し会を開催している。
ジモティーの特徴は、一時的ではなく継続的な支援策を実行している点だ。貧困層の自立支援を行うグラミン日本のコーポレートサポーターにも加盟している。廃棄予定の野菜や家庭内の余りものなどが、地域内で循環する仕組みも確立。サイトユーザーの実情を踏まえた上での取り組みが、高く評価されている。
SDGsは、国際社会が一体となって取り組むべきものだ。事業活動の国際化が進むいまだからこそ、SDGsのため海外支援を積極的に行う企業も多い。具体的な取り組み事例を3つ紹介する。
オフィス用品の通販事業を手がけるASKULは、社会貢献活動の一環として、開発途上国の子どもたちへの学用品寄付を行っている。2009年にスタートした取り組みで、国際協力NGOである公益財団法人ジョイセフを通じ寄付を実施。2021年にはノート約1,593冊、筆記用具類約1,610本を寄贈した。(※1)
ASKULの取り組みは、「世界には学校に通えず、文字を読み書きできない人も多い」という事実を知った社員から、自発的にスタートしたもの。プロジェクトの発端や過程について、積極的に情報公開することで、企業イメージの向上にもつなげている。
世界各地で事業を展開しているENEOSグループでは、事業活動を行う地域での対話・連携・協働を重視。地域社会と強固な信頼関係を構築し、継続的な発展を目指している。そのために、SDGsの一環として取り入れられているのが、ベトナムにおける教育支援である。
具体的には、学校の建設や経済的に恵まれない生徒への奨学金授与、創作童話コンテストの開催などの社会貢献活動が挙げられる。2002年から2018年までに、合計で13もの学校を建設。若年層の社会参加を促し、現地の事業活動への理解を深める取り組みである。(※2)
大手スーパーイオンでは、フェアトレードによる生産国支援を行っている。SDGsのうち、「10.人や国の不平等をなくそう」「12.つくる責任 つかう責任」「1.貧困をなくそう」などを達成するための取り組みだ。
イオンでは、「イオン持続可能な調達原則」に基づいた商品調達を実施。とくにカカオ豆には力を入れており、プライベートブランドで販売するすべてのカカオを、持続可能性の裏付けが取れた原料にすることを目標にしている。フェアトレードなど、国際的な認証ラベルを取得した原料調達を拡大し、生産者や労働者が抱えている各種問題の解決を目指す。
企業がSDGsに取り組む上で欠かせないのが、消費者との関係性である。消費者との関わりのなかで、具体的な取り組みを推進している企業も多い。「SDGsをより効果的なマーケティングに」と望むなら、ぜひ注目してみよう。
アート引越センターが利用者向けに提供しているのが「エコ楽ボックス」である。紙資材を一切使用せず、食器をそのままパッキングできる特製ボックスを、利用者向けに無料レンタル。引越しで排出されるごみや、利用者の荷造り・荷ほどきにかかる手間を大幅に削減している。
ごみ削減や資源の節約でSDGsを取り入れるとともに、利用者負担の軽減によって、他社との差別化を実現。「お年寄りから子どもまで誰でも楽に引越し準備ができるボックス」として、注目されている。
LION(ライオン)では、オーラルケアを通じてSDGsの取り組みを行っている。社会・環境問題に対して、具体的な活動を実施。口内トラブルを抱える割合が高いと言われる経済的困窮世帯の子どもに向けた、オリジナル体験プログラムを提供している。体験を通じてオーラルケアを学ぶことで、子どもの自己肯定感を育む狙いもある。
LIONがとくに力を入れているのは、SDGsで掲げられているゴールのうち「3.すべての人に健康と福祉を」の達成である。オリジナル体験プログラムに参加した団体数は全国540団体、参加者数は4万人以上を数える。(※2022年時点)企業から消費者への一方的な押し付けではなく、子どもたち自身が楽しめるプログラムとして高い評価を得ている。(※3)
「環境に配慮した商品を選びたい」という顧客の声に応え、アサヒ飲料ではラク&エコ ラベルレスボトルという新たな仕組みを導入した。ペットボトルのラベルをなくすことで、環境に配慮。また「捨てる際のひと手間がない」というメリットも付加した。
ラベルをなくすことでプラスチックごみを削減できる。ひとつひとつは小さくても、販売量が増えれば増えるほど、その効果は大きくなっていく。アサヒ飲料の人気商品にラベルレスボトル商品を展開することで、消費者の意識改革にもつながった。
2030年までの達成を目指すSDGs。国際社会共通の課題であり、「誰一人取り残さない」が大きなテーマだ。企業にとっても他人事ではなく、「企業活動のなかで、具体的にどのような取り組みを行っているのか?」が、消費者からも投資家からも注目されている。SDGsを無視し、利益だけを追求する姿勢は、長期的な目線で見れば悪手と言わざるを得ないだろう。
今回は9つの企業のSDGs取り組み事例を紹介した。もちろんこれらは一例であり、そのほかにも多種多様な取り組みがある。それぞれの企業活動の特色を生かし、具体的に何をするのか決定してみるのが大切だ。
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