【2022年最新】報道の自由度ランキング 日本の順位と世界の状況

机を囲んで話す男女を撮映する女性カメラマン

Photo by Vanilla Bear Films

2022年の報道の自由度ランキングが発表された。結果からは日本を含む世界の現状が見える。懸念のひとつは日本の順位が決して高くないという点だ。また、世界でもナショナリズムの台頭が報道の自由度を制限しつつあるのではないかという見方が生まれている。日本の現状や世界の傾向について学ぼう。

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報道の自由度ランキングとは

報道の自由度ランキングとは毎年「国境なき記者団(Reporters Without Borders・以下RSF)」によって調査・発表される報道の自由に関する国際ランキングである。

世界各国の報道機関の活動や何らかの理由による規制のチェックをおこない、報道メディアの独立性や透明性をはじめとした多項目をスコア化し、順位を付ける。そのため、報道の自由度ランキングからは各国の報道・言論の自由に対する姿勢を読み取りやすい。

評価基準は?

評価方法は多項目のスコア化が基本になる。対象の項目は以下のとおりだ。なお、2021年までの項目は変更され、以下は2022年から採用された項目である。

1.政治的コンテキスト
2.法的枠組み
3.経済的コンテキスト
4.社会文化的コンテキスト
5.安全性

以上のスコアの値が高いほど報道の自由度が高いと評価される仕組みであり、ランキングに影響する。

【最新】報道の自由度ランキング2022

2022年の調査対象国は180カ国におよんだ。以下、RSFが2022年5月3日にリリースしたランキングとスコア(グローバルスコア)を記載する。グローバルスコアは100を満点とし、ハイスコアであるほど報道の自由度が高いとされる。(※1)

順位国名グローバルスコア
1位ノルウェー92.65
2位デンマーク90.27
3位スウェーデン88.84
4位エストニア88.83
5位フィンランド88.42
6位アイルランド88.3
7位ポルトガル87.07
8位コスタリカ85.92
9位リトアニア84.14
10位リヒテンシュタイン84.03
11位ニュージーランド83.54
12位ジャマイカ83.35
13位セイシェル83.33
14位スイス82.72
15位アイスランド82.69
16位ドイツ82.04
17位東ティモール81.89
18位ナミビア81.84
19位カナダ81.74
20位チェコ共和国80.54
21位ルクセンブルク79.81
22位ラトビア79.17
23位ベルギー78.86
24位イギリス78.71
25位トリニダード・トバゴ78.68
26位フランス78.53
27位スロバキア78.37
28位オランダ77.93
29位アルゼンチン77.28
30位ドミニカ共和国76.9
31位オーストリア76.74
32位スペイン76.71
33位ブータン76.46
34位ガイアナ76.41
35位南アフリカ75.56
36位カーボベルデ75.37
37位コートジボワール74.46
38位台湾74.08
39位オーストラリア73.77
40位モルドバ73.47
41位ブルキナファソ73.12
42位アメリカ72.74
43位韓国72.11
44位ウルグアイ72.03
45位サモア71.39
46位シエラレオネ71.03
47位ベリーズ70.67
48位クロアチア70.42
49位トンガ69.74
50位ガンビア69.25
51位アルメニア68.97
52位スリナム68.95
53位アンドラ68.79
54位スロベニア68.54
55位東カリブ海諸国機構68.49
56位ルーマニア68.46
57位北マケドニア68.44
58位イタリア68.16
59位ニジェール67.8
60位ガーナ67.43
61位コソボ67
62位パプアニューギニア66.66
63位モンテネグロ66.54
64位モーリシャス66.07
65位キプロス65.97
66位ポーランド65.64
67位ボスニア・ヘルツェゴビナ65.64
68位エクアドル64.61
69位ケニア64.59
70位ハイチ64.55
71位日本64.37
72位キルギスタン64.25
73位セネガル63.07
74位パナマ62.78
75位リベリア62.77
76位ネパール62.67
77位ペルー61.75
78位マルタ61.55
79位セルビア61.51
80位マラウイ61.4
81位北キプロス61.08
82位チリ60.61
83位コモロ60.16
84位ギニア59.82
85位ハンガリー59.8
86位イスラエル59.62
87位モルディブ59.55
88位レソト59.39
89位ジョージア59.3
90位モンゴル59.17
91位ブルガリア59.12
92位ギニアビサウ58.79
93位コンゴ-ブラザビル58.64
94位チュニジア58.49
95位ボツワナ58.49
96位パラグアイ58.36
97位モーリタニア58.1
98位マダガスカル58.02
99位アンゴラ57.17
100位トーゴ57.17
101位中央アフリカ共和国56.96
102位フィジー56.91
103位アルバニア56.41
104位チャド56.18
105位ガボン56
106位ウクライナ55.76
107位ブルンジ55.74
108位ギリシャ55.52
109位ザンビア55.4
110位ブラジル55.36
111位マリ54.48
112位エルサルバドル54.09
113位マレーシア51.55
114位エチオピア50.53
115位タイ50.15
116位モザンビーク49.89
117位インドネシア49.27
118位カメルーン49.1
119位カタール49.03
120位ヨルダン48.66
121位ベナン48.39
122位カザフスタン48.28
123位タンザニア48.28
124位グアテマラ47.94
125位コンゴ民主共和国47.66
126位ボリビア47.58
127位メキシコ47.57
128位南スーダン47.06
129位ナイジェリア46.79
130位レバノン46.58
131位エスワティニ46.42
132位ウガンダ46.35
133位ウズベキスタン45.74
134位アルジェリア45.53
135位モロッコ/西サハラ45.42
136位ルワンダ45.18
137位ジンバブエ44.94
138位アラブ首長国連邦44.46
139位シンガポール44.23
140位ソマリア44.01
141位赤道ギニア43.96
142位カンボジア43.48
143位リビア43.16
144位ブルネイ42.53
145位コロンビア42.43
146位スリランカ42.13
147位フィリピン41.84
148位香港41.64
149位トルコ41.25
150位インド41
151位スーダン40.96
152位タジキスタン40.26
153位ベラルーシ39.62
154位アゼルバイジャン39.4
155位ロシア38.82
156位アフガニスタン38.27
157位パキスタン37.99
158位クウェート37.87
159位ベネズエラ37.78
160位ニカラグア37.09
161位ラオス36.64
162位バングラデシュ36.63
163位オマーン35.99
164位ジブチ35.75
165位ホンジュラス34.61
166位サウジアラビア33.71
167位バーレーン30.97
168位エジプト30.23
169位イエメン29.14
170位パレスチナ28.98
171位シリア28.94
172位イラク28.59
173位キューバ27.32
174位ベトナム26.11
175位中国25.17
176位ミャンマー25.03
177位トルクメニスタン25.01
178位イラン23.22
179位エリトリア19.62
180位北朝鮮13.92

2021年の報道の自由度ランキングはこちらから

2022年のランキングからわかる世界の報道

2022年のランキングからは世界の報道状況が垣間見える。世情が大きく動いた年でもあり、報道とそれを取り巻く状況に注目したい。

「非常に低い」が28カ国 記録的多数

報道の自由度が「非常に低い(悪い)」と評価された国は28カ国にものぼった。調査開始以来、記録的と言えるほど多い数である。(※2)

その中のひとつであるミャンマー(176位)は、2021年2月に起きたクーデターが原因で報道の自由が10年後退したと言われており、政治と報道の自由の関係性について改めて考えさせられる。

ウクライナの情報に対するロシアの攻撃

2022年の報道の自由度ランキングからは、ウクライナに侵攻したロシア(155位)の非人道的行為が武力にとどまらないことも推察できる。ロシアは2022年2月のウクライナの武力侵略以前、プロパガンダとして情報戦をおこなっていた。多様性・透明性に重大な影響を与える行為だ。

また、国内の報道の自由を大きく規制し、事実上すべての報道を検閲対象とした。ジャーナリストへの理不尽な対応や報道の制限が横行中だと考えられる。

民主主義国家における社会的分裂の助長

RSFによると、民主主義国家においてメディアが社会的分裂を助長しているとの見方がある。偏向報道の傾向を持つ意見メディアの増加、情報の真偽がはかりにくいソーシャルメディアの普及が原因で社会的緊張が高まり、民主主義の弱体化と分極化があらわれつつあると考えられる。

日本の順位の原因と現状

2022年の報道の自由度ランキングにおいて、日本は71位、100を最高レベルとするグローバルスコアは64.37であった。前年の67位より4位もランクダウンしている。

名誉な順位やかんばしいスコアとはとうてい言えず、先進国ではG7国家の中で最下位という結果に。「報道の自由」よりも「報道の不自由」に着目される結果になっている状況だ。

原因は大企業の影響力がメディアに自己検閲を促す風潮だとされている。企業にとってプラスにならない情報の報道を、ジャーナリストやメディアが自主的に控えてしまうのだ。いっぽうでは公的な存在である政府からの圧力を感じるという声もある。

より報道の自由度を上げるためには、メディア自身の忖度の廃止はもちろんだが、政府による報道の自由をめぐる環境改善が求められるだろう。

報道の自由度が高い国の傾向・共通点

報道の自由度ランキングのトップ3はノルウェー(1位)、デンマーク(2位)、スウェーデン(3位)だ。RSFが「北欧諸国トリオ」と称するこの北欧3国では、報道・言論の自由度が非常に高い。

このような国では報道の自由が法律で規定されており、ジャーナリストが柔軟な報道をおこなえる環境が整えられている。公的な情報はすべて公開され、誰でも自由にアクセスできるのだ。また、情報ソースをおおやけにする必要はないとされている。

報道内容はじつに自由である。しかし、ジャーナリストが法律と自由を盾に傍若無人な報道をするわけではない。取材対象者の人権にも配慮される。ノルウェーの例を見てみよう。たとえば政治家のインタビュー記事をライティングする。

ノルウェーに限らずだが、インタビューを記事にする際には往々にしてジャーナリスト個人の解釈も入るものだ。ノルウェーのジャーナリストも同様である。

だがノルウェーでは、記事を読んだ政治家が発言の意図を誤解されていると感じれば訂正を申し出、ジャーナリストはみずからの記事を訂正こそしないが文末に「本人によれば意図が違うとのことだ」と書き添える。法的、そして社会的に、取材対象者の人権に配慮しながらも報道の自由を貫ける環境が整えられていると言えるだろう。

報道の自由度が低い国の傾向・共通点

報道の自由度が低いとされるワースト28カ国のなかでもとくに問題視されている国では、報道の自由と政権の報道意識の剥離が見える。政権が機密保持のために必要だと判断すれば情報統制をおこなう。

昨今での顕著な例はロシアのウクライナにおける非人道的行為の報道だ。ロシアは不当な殺害行為や残虐行為、ジェノサイドなどの人権侵害行為の報道を許さない。ジャーナリストへの圧力で封じ込めている。

そして果敢にも圧力にあらがったジャーナリストは罪に問われるケースすらあり得るのだ。場合によっては身の危険にさらされる可能性も否定できない。

なお、RSFではこのような環境下にあり、身の危険を感じるジャーナリストの保護にも力を入れている。現在は国連においてジャーナリストの身の安全を保護する機関の設立を目指し、各国、とくに欧州政府からの支持を受けて積極的なキャンペーンを展開中だ。(※3)

報道の自由度ランキングに見る日本と世界

2022年よりスコア化の基準コンテキストが変わったが、報道の自由度ランキングは各国の報道に対する立場や意識を教えてくれる。

G7のなかでも最下位をマークした日本の報道環境はもちろん、政権の圧力によって適切とは言えない報道環境にある国々への懸念は無視できない。今後もRSFの活動とランキングが教えてくれる報道と世界の関係に注目しよう。

※掲載している情報は、2022年6月29日時点のものです。

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