Photo by Vanilla Bear Films
2022年の報道の自由度ランキングが発表された。結果からは日本を含む世界の現状が見える。懸念のひとつは日本の順位が決して高くないという点だ。また、世界でもナショナリズムの台頭が報道の自由度を制限しつつあるのではないかという見方が生まれている。日本の現状や世界の傾向について学ぼう。
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2022年のランキングからは世界の報道状況が垣間見える。世情が大きく動いた年でもあり、報道とそれを取り巻く状況に注目したい。
報道の自由度が「非常に低い(悪い)」と評価された国は28カ国にものぼった。調査開始以来、記録的と言えるほど多い数である。(※2)
その中のひとつであるミャンマー(176位)は、2021年2月に起きたクーデターが原因で報道の自由が10年後退したと言われており、政治と報道の自由の関係性について改めて考えさせられる。
2022年の報道の自由度ランキングからは、ウクライナに侵攻したロシア(155位)の非人道的行為が武力にとどまらないことも推察できる。ロシアは2022年2月のウクライナの武力侵略以前、プロパガンダとして情報戦をおこなっていた。多様性・透明性に重大な影響を与える行為だ。
また、国内の報道の自由を大きく規制し、事実上すべての報道を検閲対象とした。ジャーナリストへの理不尽な対応や報道の制限が横行中だと考えられる。
RSFによると、民主主義国家においてメディアが社会的分裂を助長しているとの見方がある。偏向報道の傾向を持つ意見メディアの増加、情報の真偽がはかりにくいソーシャルメディアの普及が原因で社会的緊張が高まり、民主主義の弱体化と分極化があらわれつつあると考えられる。
2022年の報道の自由度ランキングにおいて、日本は71位、100を最高レベルとするグローバルスコアは64.37であった。前年の67位より4位もランクダウンしている。
名誉な順位やかんばしいスコアとはとうてい言えず、先進国ではG7国家の中で最下位という結果に。「報道の自由」よりも「報道の不自由」に着目される結果になっている状況だ。
原因は大企業の影響力がメディアに自己検閲を促す風潮だとされている。企業にとってプラスにならない情報の報道を、ジャーナリストやメディアが自主的に控えてしまうのだ。いっぽうでは公的な存在である政府からの圧力を感じるという声もある。
より報道の自由度を上げるためには、メディア自身の忖度の廃止はもちろんだが、政府による報道の自由をめぐる環境改善が求められるだろう。
報道の自由度ランキングのトップ3はノルウェー(1位)、デンマーク(2位)、スウェーデン(3位)だ。RSFが「北欧諸国トリオ」と称するこの北欧3国では、報道・言論の自由度が非常に高い。
このような国では報道の自由が法律で規定されており、ジャーナリストが柔軟な報道をおこなえる環境が整えられている。公的な情報はすべて公開され、誰でも自由にアクセスできるのだ。また、情報ソースをおおやけにする必要はないとされている。
報道内容はじつに自由である。しかし、ジャーナリストが法律と自由を盾に傍若無人な報道をするわけではない。取材対象者の人権にも配慮される。ノルウェーの例を見てみよう。たとえば政治家のインタビュー記事をライティングする。
ノルウェーに限らずだが、インタビューを記事にする際には往々にしてジャーナリスト個人の解釈も入るものだ。ノルウェーのジャーナリストも同様である。
だがノルウェーでは、記事を読んだ政治家が発言の意図を誤解されていると感じれば訂正を申し出、ジャーナリストはみずからの記事を訂正こそしないが文末に「本人によれば意図が違うとのことだ」と書き添える。法的、そして社会的に、取材対象者の人権に配慮しながらも報道の自由を貫ける環境が整えられていると言えるだろう。
報道の自由度が低いとされるワースト28カ国のなかでもとくに問題視されている国では、報道の自由と政権の報道意識の剥離が見える。政権が機密保持のために必要だと判断すれば情報統制をおこなう。
昨今での顕著な例はロシアのウクライナにおける非人道的行為の報道だ。ロシアは不当な殺害行為や残虐行為、ジェノサイドなどの人権侵害行為の報道を許さない。ジャーナリストへの圧力で封じ込めている。
そして果敢にも圧力にあらがったジャーナリストは罪に問われるケースすらあり得るのだ。場合によっては身の危険にさらされる可能性も否定できない。
なお、RSFではこのような環境下にあり、身の危険を感じるジャーナリストの保護にも力を入れている。現在は国連においてジャーナリストの身の安全を保護する機関の設立を目指し、各国、とくに欧州政府からの支持を受けて積極的なキャンペーンを展開中だ。(※3)
2022年よりスコア化の基準コンテキストが変わったが、報道の自由度ランキングは各国の報道に対する立場や意識を教えてくれる。
G7のなかでも最下位をマークした日本の報道環境はもちろん、政権の圧力によって適切とは言えない報道環境にある国々への懸念は無視できない。今後もRSFの活動とランキングが教えてくれる報道と世界の関係に注目しよう。
※1 Methodology used for compiling the World Press Freedom Index|国境なき記者団 (Reporters Without Borders)
※2 RSF’s 2022 World Press Freedom Index : a new era of polarisation|国境なき記者団 (Reporters Without Borders)
※3 Protect journalists For a protector of journalists|国境なき記者団 (Reporters Without Borders)
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