Photo by comorebi farm
広島県・尾道市因島のcomorebi farmと徳島県・上勝町のRISE & WIN Brewing Co.がコラボした「課題解決ビール」とは。comorebi farmで農業に従事する、ELEMINIST元副編集長が綴るコラム連載。
小嶋正太郎
農家 / 編集者
元ELEMINIST副編集長。2021年7月に東京から瀬戸内海に浮かぶ因島へと拠点を移す。高齢化で運営困難になった八朔・安政柑農園を事業継承し、農家として活動中。
「すだちの香り」で肌と心が喜ぶ 和柑橘の魅力と風土への慈しみあふれるオイル
こんにちは。comorebi farmという農園を運営している小嶋です。
この記事は連載「農業の危機をビールが救う? 問題解決型プロダクトができるまで」の2回目です。これは僕たちの農園と徳島県上勝町にあるブルワリー「RISE & WIN Brewing Co.」さんがつくるコラボレーションビールの開発背景を知ってもらうための連載です。
今回は1記事目でも触れた「八朔の危機」を詳しく紹介しようと思います。
RISE & WIN Brewing Co.さんとコラボレーションビールを製造するにあたって、大きな理由になっているのが、comorebi farmが八朔の危機を解決したいと考えていることでした。
そんな八朔の危機とは何か? 僕たちが畑を始めた頃に遡って、お話をしたいと思います。
東京から広島県尾道市の因島へと移住してから、僕たちはこっちでしかできないことをやりたいという想いがあったため、まずは自分たちが食べるための野菜を栽培することにしました。
畑を紹介してもらうために尾道市の農業委員会に電話したところ、いくつかの野菜畑を教えてもらったのですが、なぜか2年ほどの耕作放棄地だった八朔畑も紹介してもらいました。それがなぜだったのかはいまだにわかりません(笑)。
とりあえず八朔畑に足を運んでみたところ、雑草のなかに緑色の八朔をいくつも確認できました。仲介役の農家さんは「ここは綺麗に八朔を育てていたんじゃけど、高齢でもう育てられなくなってしもうたんじゃ」と一言。5年経ったら完全に木はダメになってしまうけど、2年〜3年なら復活させられると聞いた僕たちは、心の底から「このまま畑がなくなってしまうのはもったいない」と想い、八朔を栽培することを決めました。
Photo by comorebi farm
まずは2〜3mに成長した雑草を刈り取るところから。
慣れないながらも作業していたら、周囲の畑を管理している農家さんに「今更なんで雑草だらけのここを綺麗にするんだ?」と興味を持ってもらえました。僕たちの想いを伝えたところ「それは嬉しいのぉ」と言っていただけて、彼が八朔栽培について教えてくれるようになったのです。
蓋を開けてみると、彼は地元のガキ大将的な存在。すぐにたくさんの人に「東京から移住してきたヤツが八朔を育てとる」と噂してくれたみたいで、いつの間にか多くの農家さんたちが僕たちに農業について教えてくれるようになりました。それと同時に、頻繁に「管理しきれなくなった畑があるから引き継いでくれないか?」と言われるようになったのです。
最初に畑を紹介してもらった時には、八朔畑は1つしか出てきませんでした。ただ、よくよく考えてみると、僕たちが紹介された畑の数は10を超えます。面積でいったら1万㎡以上です。
Photo by comorebi farm
不思議に思ったので因島の商工会議所にいろいろヒアリングしてみました。畑については、後継者を探すのが大変かつ見つからないことがほとんどなので、多くの農家さんが野放しにしているそうです。
そうした会話をするなかで驚いたのが、農家の高齢化問題について。
尾道市全体の農業人口に占める60歳〜99歳の割合は93.7%だと言います。70歳〜99歳の場合は71.5%なのだとか。因島の農業人口は兼業農家を含んで372人。そのうち5年以内に農業を引き継ぐ後継者を確保しているのは約9.6%しかいません。
これらのデータと統計に入っていない農家さんの行動を一緒に考えると、20年以内に因島における八朔のつくり手は一気に減少し、生産量も同時に少なくなってしまう可能性があるのです。
これが僕たちが言っている「八朔の危機」です。
最初は「もったいない」と思っただけで畑を耕作し始めましたが、日を追うごとに僕たちは高齢化と担い手不足の問題に詳しくなるので、現在は八朔の危機を解決したい思いで行動しています。
それを一緒に解決するために手を組んでくれたのがRISE & WIN Brewing Co.さんだったのです。明日の記事では彼らがどのようなところに共感してくれて、彼らとどのように課題を解決していくのかについて紹介したいと思います。
※上記の画像は完成イメージです。
農家と醸造家。業界も業種も違うけれど、本気で持続可能なものづくりを目指しているという点は共通していました。そんな両者の出会いから生まれたコラボレーション。
"課題解決ビール"と呼んでいるこのビールには、生産、加工、流通、販売などで出てくる課題を、ビールというツールを通して消費者の方々に少しでも知ってもらいたいという提供者側の思いが詰まっています。
comorebi farmの八朔の果汁も皮も丸ごと使用して造ったビールは 「甘味、渋み、香り」それぞれにフォーカスして、八朔の特徴をそのまま感じられるように仕上がっています。 スッキリしていてグビグビと飲みやすく、八朔の程よい渋みと香りが夏にピッタリです。
そして、僕たちは予約販売を取り入れることによって、販売期間を長くし、なるべく食品ロスを出さないように心がけています。下記のページから予約販売を受け付けておりますので、ぜひチェックしてみてください。
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