ELEMINISTでは全5回にわけて、『生ごみは可燃ごみか』に書かれている内容を紹介する。今回は第4章の「ゼロウェイスト実現への取り組み」から一部抜粋。
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私たちの社会はごみを減らす取り組みだけでは物足りず、ごみ自体を出さない仕組み──ゼロウェイスト戦略が必要だ。
世界各国の政府や自治体、企業、個人は、これ以上に地球への負担をかけないために、ごみを出さない行動を起こしている。とはいえ、まだ知識を持ち合わせていないという人もいるのではないか?
ひとりの生活者からごみの専門家となった福渡和子さんが上梓した『生ごみは可燃ごみか』を読めば、日常生活で気軽に取り組めるアクションとごみ問題に関する知識を深められるだろう。
ELEMINISTでは全5回にわけて、『生ごみは可燃ごみか』に書かれている内容を紹介する。今回は第4章の「ゼロウェイスト実現への取り組み」から一部抜粋。
出版年月日:2015年4月10日
海外の環境先進国は、ごみ処理分野に積極的に取り組んでいる。その一方で、日本は狭い国土で多くの焼却工場を稼働させており、排熱や二酸化炭素を大量に排出して環境に負荷をかけ続けている。
そんな日本の現状に対して問題提起するのは『生ごみは可燃ごみか』(福渡和子)。
家庭の生ごみが焼却処理されていることに疑問を持った筆者は、独自で調査を開始。明らかになった事実を伝えるとともに、生ごみをリサイクルする必要性を経済的、科学的な側面から紹介する1冊だ。
循環型社会づくりのキーワードは「地域」と「住民協働」——。これは福岡県大木町が取り組む「ゼロ・ウェイストを目指した地域づくり」の一節だ。
『生ごみは可燃ごみか』の第4章では、札幌市や横浜市などの事例を挙げながら、ごみの出ない仕組みづくりに関する取り組みを紹介している。
なかでも、日本でゼロウェイストを宣言した数少ない自治体のひとつ、大木町の取り組みからは、信頼できる首長選びや、行政担当者との協力、その実行まで、行政と住民の協働についてヒントを得られるだろう。
町をよくしたいと考える首長選びや住民自身の意識、地域の協力など、各自治体の取り組みからは、ごみ問題へのアプローチするためのノウハウを学ぶことができそうだ。
Photo by Sigmund on Unsplash
最後に、日本でゼロウェイスト宣言をした数少ない自治体の一つ、福岡県大木町の取り組みを紹介しよう。志布志市と同様、大木町にも焼却工場はなく、どうしても燃やさなくてはならない可燃ごみは、他の自治体に持ち込んで、焼却処理費を払って処理してもらっている。
(中略)
(大木町にあるバイオガスプラント※編集部補足)「くるるん」は、平成18(2006)年11月から稼働している。それまで、し尿は海洋投棄、生ごみは隣の大川市の焼却場で焼却処分をしていた。
「くるるん」建設の背景には、最終処分地の逼迫と財政上の負担から、焼却ごみの減量が必要であったこと、そして、し尿および浄化槽汚泥の海洋投棄が禁止となったことがある。しかし、多くの自治体が同じ状況下で、国が指導するガス化溶融炉の建設を、海洋投棄ではし尿処理プラントの建設を選択したにもかかわらず、大木町が循環の町づくりへ転換したのは、当時の町長や職員の環境問題や循環型社会形成への強い想い、理念が反映している。町長や行政担当者が、将来を見通し住民の立場で考えられる人たちだったのだろう。
稼働を始めて約7年半、住民協働による生ごみなどの循環事業は、次のような多くの効果を町にもたらしている。
①生ごみを分別することで燃やすごみが半減した。
②ごみ処理施設の建設費やランニングコストが削減され、町の財政負担が軽減した。
③バイオガス消化液を有機肥料として活用し、経済的にも地域農業に大いに貢献している。
④バイオガスによる発電で、環境負荷の低減につながっている。
※発電量は750kw時/日。バイオマスセンターや道の駅施設内で消費し、回収した温水は、メタン発酵槽の加温や消化液の殺菌(70℃)、生ごみ回収バケツの洗浄等に使っている。
⑤地域ぐるみの協働事業が、住民の町づくりへの参加意識を高め、住民参加の「循環の町づくり委員会」がいろいろなアイデアを出し、実践している。
(中略)
この生ごみ循環事業を成功させた大木町は、徳島県上勝町に次ぐゼロウェイスト宣言「大木町もったいない宣言」を公表した。そして、さらなるごみの発生抑制や資源化を進めることで、10年以内にごみの焼却や埋め立て処分をしない町をめざすことを目標に掲げている。いま、その目標に向かって、資源物の25分別をおこなうとともに、燃やすごみの多くを占める紙オムツの水溶化処理による資源化にも挑戦しており、全国初の取り組みとして注目を集めている。
「小さな町だからできる、大都会では……ね」などと言い訳していては、何も改善されない。町をよくしたいと考える首長を選び、誠実で有能な、行動力のある担当者を探して育て、まずは自分自身ができることから始めてみる。小さなコミュニティの核となって、市民のために汗を流してくれる行政とともに、動き始めてみてはどうだろうか。
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