生ごみの臭いを抑えられる保管容器「カラット」 ドイツの事例を参考に開発

ごみゼロの未来に向けて

ELEMINISTでは全5回にわけて、『生ごみは可燃ごみか』に書かれている内容を紹介する。今回は最終章の「通気性生ごみ保管容器“カラット”の開発と普及」から一部抜粋。

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2021.05.29
BEAUTY
編集部オリジナル

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私たちの社会はごみを減らす取り組みだけでは物足りず、ごみ自体を出さない仕組み──ゼロウェイスト戦略が必要だ。

世界各国の政府や自治体、企業、個人は、これ以上に地球への負担をかけないために、ごみを出さない行動を起こしている。とはいえ、まだ知識を持ち合わせていないという人もいるのではないか?

ひとりの生活者からごみの専門家となった福渡和子さんが上梓した『生ごみは可燃ごみか』を読めば、日常生活で気軽に取り組めるアクションとごみ問題に関する知識を深められるだろう。

ELEMINISTでは全5回にわけて、『生ごみは可燃ごみか』に書かれている内容を紹介する。今回は最終章の「通気性生ごみ保管容器『カラット』の開発と普及」から一部抜粋。

『生ごみは可燃ごみか』とは?

『生ごみは可燃ごみか』の表紙

出版年月日:2015年4月10日

海外の環境先進国は、ごみ処理分野に積極的に取り組んでいる。その一方で、日本は狭い国土で多くの焼却工場を稼働させており、排熱や二酸化炭素を大量に排出して環境に負荷をかけ続けている。

そんな日本の現状に対して問題提起するのは『生ごみは可燃ごみか』(福渡和子)。

家庭の生ごみが焼却処理されていることに疑問を持った筆者は、独自で調査を開始。明らかになった事実を伝えるとともに、生ごみをリサイクルする必要性を経済的、科学的な側面から紹介する1冊だ。

行政の課題解消を果たす「カラット」

『生ごみは可燃ごみか』の最終章は「活動の軌跡」という切り口で、筆者の長年にわたる通気式生ごみ保管容器「カラット」の開発と普及活動について紹介されている。

2000年、筆者の尽力もあり「食品リサイクル法」が制定されたにもかかわらず、自治体への「生ごみの資源化」の規制までは及ばなかったという。家庭の生ごみは、家庭で保管している間に腐敗が進むから優れた堆肥の生産を期待できない——そんな行政側の課題に対して筆者のとった行動が、本書でもたびたび登場する「通気式生ごみ保管容器“カラット”」の開発だ。

いち個人だった筆者は、いまやカラットの開発に10年以上を費やし、自治体や市民団体に向けて出前講座までをも積極的に行う「生ごみの専門家」となった。

「私たちの日々の生活の中で、今日から家族で始められる温暖化対策に取り組もう」——。

シンプルな言葉ではあるが、筆者の行動力と実践力を通して語られるからこそ、いまの自分たちの生活について再考するきっかけになるはずだ。

生ごみの腐敗を抑えるには(*本文から引用)

生ごみカラットの画像

生ごみカラット

平成12(2000)年、「食品リサイクル法」が制定されたが、規制対象となるのは大規模な事業所から出る食品廃棄物だけで、一般家庭や小規模事業所から出る生ごみに対しては、何ら規制は盛り込まれなかった。

そして、その翌年には、農林水産省を事務局とする「家庭系食品廃棄物リサイクル研究会」が設置されたが、そこで結局確認したことは、「家庭の生ごみは、家庭で保管している間に腐敗が進むので、良い堆肥の生産を期待できない。自治体に資源化の規制をかけることは時期尚早」ということだった。

確かに生ごみは、家庭で保管している間に腐敗する場合が多い。それでは、家庭で保管している間に腐敗しないようにできないだろうか、腐敗しないようにするにはどうすればよいだろうか、と考えていて、ふと思いついたのが、「生ごみを臭くするのは嫌気性微生物である」ということだった。それでは、生ごみを臭くする嫌気性微生物が活動できない条件をつくればよいのではないか……と、考え、つくったのが、通気式生ごみ保管容器「カラット」である。

嫌気性微生物は、密封された、しかも水分の多い環境を好む。であれば、その逆の環境をつくればよい。すなわち、風通しが良くて水分を乾かす容れ物、通気性の良い生ごみ専用の保管容器をつくればよいのだ。そう考え見まわしてみたが、日本の一般家庭では生ごみを分別すらしておらず、ましてや、乾かすなどといった習慣はないので、参考になりそうなものはなかった。

ドイツにはすでに、通気性のある生ごみ収集容器があった。容量が120ℓという大きなものだ。私はすでにそれを入手し、堆肥化容器として使っていたが、通期式容器のすばらしさをすでに実感していたので、

「この小型版をつくってみてはどうだろうか?」

と、生ごみ全国ネットの会合で提案し、検討した結果、次のようなメリットが理解された。

①生ごみの水分を取れば腐敗を防ぐので衛生的であり、公衆衛生上も非常に合理的であること。

②生ごみの水分を取ることは、収集での運搬効率、焼却炉での焼却効率が良くなり、二酸化炭素の排出削減につながり、堆肥化が難しい大都市域では低炭素社会になじむごみ処理方法の選択肢の一つであること(農村地域では、堆肥化あるいはバイオガス化とその消化液の活用など、選択肢は多くなる)。

③焼却する場合、少なくとも含水率60%程度にしておくと自燃するので、省エネルギーであること。エネルギーを多く必要とする白煙対策にもなる。

④堆肥化する場合、含水率60%程度にしておくと水分調整材が少量で済むこと。腐敗した生ごみから良い堆肥は生産できないので、家庭で保管中、水分を減量しておくことは腐敗を抑制するので合理的である。

これを機に、生ごみ全国ネットが組織として開発することを理事会で決め、平成17(2005)年より取り組んできた事業である。

幻冬舎ルネッサンス新書

生ごみは可燃ごみか

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※2021.05.17現在の価格です。

※掲載している情報は、2021年5月29日時点のものです。

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