ELEMINISTでは全5回にわけて、『生ごみは可燃ごみか』に書かれている内容を紹介する。今回は第3章の「焼却大国“にっぽん”」から一部抜粋。
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知識をもって体験することで地球を変える|ELEMINIST Followersのビーチクリーンレポート
私たちの社会はごみを減らす取り組みだけでは物足りず、ごみ自体を出さない仕組み──ゼロウェイスト戦略が必要だ。
世界各国の政府や自治体、企業、個人は、これ以上に地球への負担をかけないために、ごみを出さない行動を起こしている。とはいえ、まだ知識を持ち合わせていないという人もいるのではないか?
ひとりの生活者からごみの専門家となった福渡和子さんが上梓した『生ごみは可燃ごみか』を読めば、日常生活で気軽に取り組めるアクションとごみ問題に関する知識を深められるだろう。
ELEMINISTでは全5回にわけて、『生ごみは可燃ごみか』に書かれている内容を紹介する。今回は第3章の「焼却大国“にっぽん”」から一部抜粋。
出版年月日:2015年4月10日
海外の環境先進国は、ごみ処理分野に積極的に取り組んでいる。その一方で、日本は狭い国土で多くの焼却工場を稼働させており、排熱や二酸化炭素を大量に排出して環境に負荷をかけ続けている。
そんな日本の現状に対して問題提起するのは『生ごみは可燃ごみか』(福渡和子)。
家庭の生ごみが焼却処理されていることに疑問を持った筆者は、独自で調査を開始。明らかになった事実を伝えるとともに、生ごみをリサイクルする必要性を経済的、科学的な側面から紹介する1冊だ。
環境省のデータによると、日本では平成24年度、4523万tをごみとして集め、3399万tを焼却している。筆者に言わせると、目に見える“ごみ”すなわち不要なモノを、見えないモノにするため、毎年1兆円以上もの税金を投入している、まさに日本は焼却大国というわけだ。
『生ごみは可燃ごみか』の第3章では、筆者の体験をもとにこれまでの慣習やごみ処理を担当する側の利権などから、なんでも焼却しようとする公共事業への疑問を投げかけている。
東京23区では可燃ごみを無料で処理してくれるが、その裏側ではありあまった焼却工場の維持費や管理費などもかかっている。私たちが見えないところで税金が使われている事実は、忘れてはいけないだろう。
とはいえ、筆者たちによる請願提出をきっかけに「食品リサイクル法」(2000年)という生ごみのリサイクルに関する法律が制定されている。現状をより良くしていくためにアクションを起こし続ければ、社会は変えられるのだ。
Photo by Lucas van Oort on Unsplash
東京23区の場合、可燃ごみの焼却は、東京二十三区清掃一部事務組合(以下、一組という)が担っている。ごみの収集・運搬は各区がおこない、処理(焼却)を一組が、処分(埋立)を東京都がそれぞれおこなっているというしくみだ。以前、焼却と埋立は東京都清掃局がおこなっていたのだが、平成12(2000)年、可燃ごみの処理が東京都から特別区(23区)へ移管されたことにより、東京都清掃局は廃止され、代わってこの一組という組織が設置された。
一組は、23区の区議会議長を構成員とする“議会”なるものを持っているが、その議会の傍聴を欠かさず続けている人に聞くと、毎回、一組の報告だけで簡単に終了するらしい。区議会議長は選挙で選ばれた人たちだから、各区の住民の意見を代弁する者とみなして、“議会”と称しているのかもしれないが、住民は、全く蚊帳の外なのである。
一組ができる以前、ごみ問題に関心を持つ住民は、地元の区と東京都清掃局へ行けば対応してもらえた。私も仲間とともに区や東京都清掃局へたびたび出かけ、都議会議員や区議会議員にも働きかけて、焼却工場の建設計画を凍結してもらったことがある。オリンピック記念公園として知られる駒沢公園の中に、世田谷区で3つ目の焼却工場を建設するという計画が持ち上がった時だ。
当時私たちは、「資源となるものは焼却しないでほしい」と考え、リサイクル活動に取り組んでいたので、区内に三つも焼却工場は要らないという意思表示をしたかった。それで、どのように活動すればよいか先輩に学ぶため、目黒焼却工場建設反対運動を長年続けている人たちに来てもらい、駒沢公園近くに住む地元の人たちとともに勉強会をもった。その説明を聞いていて気付いたのが、「地元説明会を開催することは、事業者側が建設計画を進めるためのステップだから、地元説明会が開かれなければ、事業者たちはその計画を前へ進めることができないのではないか」ということだった。「とにかく、地元説明会に、住民は一切出席しないことにしよう」と話し合い、自治会の人たちが住民に働きかけたところ大成功で、地元説明会は、とうとう一度も開催されなかった。
加えて、都の清掃工場建設推進室からもらった都議会議事録を読んでいて、ある一文が引っかかった。それは、「今回の計画については区長の承認を得ている」というくだりである。区議会議員に聞いてみると、その件について区議会の議題になったことはないと言うのである。「世田谷区の議会制民主主義もその程度なのですか」と区議会議員に働きかけ、その一点について東京都清掃局や世田谷区へ出かけて行って説明を求め、都議会議員にも働きかけた。すると、多くの区議会議員が動き出して、この計画は、思いがけず早期に凍結にこぎつけたのである。反対運動ではなく、区の職員や議員との対話を通しての成果であった。
ところが、この一組という摩訶ふしぎな組織ができてから、ごみの処理は全く都民の目から見えないものとなってしまった。ごみ問題に関心を持つ住民は、一体、何処へ行けばいいのか、本当に途方に暮れてしまうのだ。目くらましにあったようなのである。
幻冬舎ルネッサンス新書
生ごみは可燃ごみか
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