海陸風とは? 発生する仕組みとわたしたちの暮らしへの影響

海と海岸のイメージ

Photo by Sean Oulashin

海陸風とは、海と陸の温度差によって生じる局地的な風のこと。昼間は海から陸へ海風が吹き、夜間は陸から海へ陸風が吹く。本記事では海陸風が発生する仕組みや暮らしへの影響、地球温暖化による影響など詳しく解説する。

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2026.02.21

海陸風とは?

海岸のイメージ

Photo by frank mckenna on Unsplash

海陸風(かいりくふう)の基本的な定義

海陸風とは、海岸付近で昼と夜に風向きが変化する風のこと。海と陸の暖まり方の違いによって、日中は海から陸に、夜間は陸から海に向かって吹く局地風である(※1)。

海陸風は、風が吹く時間帯と風向きによって「海風」と「陸風」に分類される。海風は日中に海から陸へ向かって吹く風のことで、陸風は夜間に陸から海へ向かって吹く風を指す(※2)。

海風と陸風の違い

海風とは(昼に吹く風)

昼間の海のイメージ

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海風は、日中に海から陸へ向かって吹く風のこと。太陽光によって陸地が暖められると、陸上の空気が膨張して上昇し、地表付近の気圧が低くなる。一方、海面は温度上昇が緩やかで、相対的に気圧が高い状態が保たれる。この気圧差によって、高気圧の海上から低気圧の陸地へ向かって空気が流れ込む。

陸風とは(夜に吹く風)

夜の海岸のイメージ

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陸風は、夜間に陸から海へ向かって吹く風。日没後、陸地は放射冷却によって急速に冷えるが、海水は温度が下がりにくい。そのため、夜は海の方が、陸地より暖かい状態となる。その結果、昼間とは逆の温度分布となるのだ。

冷えた陸地上空の空気は収縮して下降し、地表付近の気圧が高くなる。一方、相対的に暖かい海上では気圧が低い状態が続く。この気圧差により、昼とは逆転し、陸から海へ向かって空気が流れる。

風向きと発生する時間帯の比較

海風と陸風の主な違いを表にまとめると以下のようになる。

海風陸風
風向き
海→陸陸→海
吹き始める時間帯
日中(日の出から3〜4時間後)夜間(日没から1〜2時間後)

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海陸風が発生する仕組み

陸と海の比熱の違い

ビーチの砂のイメージ

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海陸風が発生する根本的な原因は、陸地と海水の「比熱」の違いにある。比熱とは、物質1グラムの温度を1℃上げるのに必要な熱量のことで、物質によって大きく異なる。

陸地を構成する岩石や土壌と、海を構成する水では、比熱が約4倍程度異なる。水は陸地よりも約4倍暖まりにくく、冷めにくい性質を持っているだ。同じ量の太陽エネルギーを受けても、陸地の方が海面よりも早く温度が上昇する(※3)。

気圧差と空気の流れ

温度差が生じると、次に気圧差が発生する。暖められた空気は膨張して密度が小さくなり、軽くなって上昇。この上昇気流によって地表付近の空気が減少し、気圧が低下する。一方、冷たい空気は密度が大きく重いため下降し、地表付近に空気が集まって気圧が高くなる。

気圧には常に均衡を保とうとする性質があるため、高気圧の場所から低気圧の場所へ向かって風が吹く。海陸風の場合、昼間は陸地が低気圧、海上が高気圧となるため海から陸へ風が吹き、夜間はその逆となって陸から海へ風が吹く(※4)。

さらに、上昇した空気は上空で水平方向に移動し、反対側で下降することで循環を形成する。昼間の海風の場合、陸上で上昇した空気は上空を海側へ移動し、海上で下降して再び海風として陸へ戻る。

一日の流れで見る海陸風

海陸風の一日の変化を、流れで見ていこう。

早朝(日の出前後)、陸地は放射冷却で冷えており、相対的に冷たい陸から暖かい海へ向かって弱い陸風が吹いている。その後、太陽が昇り陸地が暖まり始めると、陸風がしだいに弱まり、やがて風向きが変わって海風に転じる。この転換期には一時的に風が弱まったり、風向きが不安定になったりする凪の状態が見られることがある。

昼になると陸地の気温がもっとも高くなり、海風が最盛期を迎え、海岸付近では体感温度が下がり、涼しく感じられる。夕方には太陽高度が下がり、陸地の加熱が弱まる。それにつれて海風も徐々に弱まり始める。そして日没とともに海風は消失する。

夜になると陸地が冷却され始め、やがて海面温度よりも低くなる。風向きが逆転し、陸から海へ向かって陸風が吹き始めるのだ(※5)。

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海陸風が起こりやすい場所・条件

地形条件

海岸のイメージ

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海陸風が起こりやすい場所は、海岸線や湾岸部。とくに、平坦な海岸線よりも、湾や入り江のように陸地が海に深く切り込んだ地形では、海陸風がより顕著に現れる傾向がある。

気象条件

海陸風の発生には、いくつかの気象条件が必要だ。もっとも重要なのは「晴天」であること。雲が多いと太陽光が遮られ、陸地の昇温が抑えられるため、海陸の温度差が小さくなり海陸風も弱くなる。また、低気圧などによる風の強い日は海陸風が目立たなくなり、気圧の傾きが小さいときに、海陸風はより明瞭になる。

海陸風は年間を通して発生しており、日本では季節毎に特徴がみられる。春は日本付近を通過する移動性高気圧の影響で、気圧の傾きが緩やかで風も弱い状態となり、晴れて日中と夜間の気温差が大きくなる日が多くなる。海水温の日変化はほとんどなく、陸上との気温差が大きくなるため、海陸風が発生する日が多くなるのだ。

夏は、日本付近は太平洋高気圧に覆われる日が多くなる。日中の気温が35°C以上の猛暑日となることもあり、海水温との差が大きくなるため、大規模な海風となる。また、夜間でも気温があまり下がらないと海風が卓越するようになる。

冬は、西高東低の冬型の気圧配置となる日が多く、気圧の傾きが大きくなり、北よりの 季節風が強く吹くようになる。また、地上の気温も低く、海水温の方が高い状態が続くため、陸風が卓越し海陸風の発生は少なくなるのだ(※6)。

日本で海陸風が顕著な地域

瀬戸内海のイメージ

Photo by Wren Chai on Unsplash

日本は周りを海に囲まれた島国であり、多くの地域で海陸風の影響を受けている。とくに太平洋沿岸や瀬戸内地域で顕著となっている。

太平洋沿岸では、夏季の晴天日を中心に海から陸へ風が吹き込む海風が日中に観測される。(※7)。また、瀬戸内海は比較的穏やかな内海であり、周囲を陸地に囲まれているため、規則正しい海陸風が発達しやすい環境にある(※8)。

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夏に海沿いが涼しい理由

夏の暑い日に海岸へ行くと、内陸部よりも涼しく感じられることが多い。これは海陸風、とくに海風の影響による現象である。昼間の海風は、相対的に冷たい海上の空気を陸地へ運ぶため、海岸付近の気温を下げる効果があるのだ。

風速が1メートル毎秒増すごとに、体感温度は約1℃下がるといわれている。実際の気温差は2〜5℃程度であることが多いが、風速3〜5メートル毎秒の海風が吹くことで、体表面の熱が奪われ、さらに涼しく感じられるのである(※9)。

漁業・農業への影響

海陸風は漁業にも影響を与えている。とくに陸風は、夜間から早朝にかけて陸から海へ栄養分を運ぶ役割を果たすことがある。河川から流入した栄養塩類が陸風によって沖合へ拡散されることで、プランクトンが増殖し、魚類の餌場が形成される可能性があるのだ(※10)。

また、海風は間接的に塩分を含んだ風(潮風)として農地に影響することがある。日本の沿岸地域では、海の塩分を含んだ風(潮風)が農作物に付着することで、葉の変色や成長阻害を引き起こす「潮風害(塩害)」がよく知られており、これを防ぐために、防風林が沿岸農業で利用されている(※11)。

都市気候との関係

コンクリートビルが建ち並ぶのイメージ

Photo by Sean Pollock on Unsplash

海陸風は都市の気候、とくにヒートアイランド現象の緩和に重要な役割を果たしている。ヒートアイランド現象とは、都市部の気温が周辺部よりも高くなる現象。コンクリートやアスファルトによる蓄熱、エアコンなどからの排熱、緑地の減少などが原因とされる。

東京、大阪、名古屋などの沿岸大都市では、夏季の海風が都市部に冷たい空気を供給し、気温上昇を抑える効果がある。早稲田大学の研究グループによる東京駅周辺から品川にかけての大規模な風の観測では、海風と市街地内の気温差は日中で約4〜5℃あることが確認されている(※12)。また、東京都環境局の調査によれば、東京湾岸地域では30℃を超過した時間割合が低く、比較的涼しいことが報告されているのだ。

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海陸風と気候変動・SDGs

地球温暖化による影響

地球温暖化のイメージ

Photo by Brendan O'Donnell on Unsplash

海陸風は、海と陸の間の温度差をエネルギー源として発生する局地風であり、その大きさや発生のしやすさは「陸面と海面の温度差」に強く依存する。そのため、地球温暖化が進むと、海陸の温度差のパターンが変化し、発生頻度や風速・強さも変化する可能性がある。

都市化と海陸風

都市化の進展は、海陸風の性質を大きく変化させている。コンクリートやアスファルトで覆われた都市部は、自然の土壌よりもさらに暖まりやすく冷めにくい性質を持つ。このため、昼間の海風を強める一方で、夜間の陸風を弱める傾向がある。

さらに、高層ビル群は風の流れを物理的に遮断・変化させる。そのため、海風が内陸部へ侵入する際、建物群によって風速が低下したり、風向きが変化したりすることが観測されている。これにより、本来海風の恩恵を受けるはずの内陸部が、十分な冷却効果を得られなくなるケースもあるのだ(※13)。

SDGs11・13との関係

海陸風は、SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」および目標13「気候変動に具体的な対策を」と深く関連している。

SDGs目標11は「包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市および人間居住を実現する」ことを目的としている(※14)。海陸風を都市計画に組み込むことは、持続可能な都市環境の実現につながる。海風の冷却効果を活用することで、エアコンなどの人工的な冷房への依存を減らし、エネルギー消費を抑制できる。また、風通しのいい都市設計は、大気汚染物質の拡散を促進し、都市の大気質改善にも寄与するのだ。

SDGs目標13は「気候変動およびその影響を軽減するための緊急対策を講じる」ことを求めている。海陸風の理解と活用は、気候変動への適応策としても重要である。温暖化によるヒートアイランド現象の激化が懸念されるなか、自然の冷却システムである海風を最大限活用することは、都市の気候変動レジリエンス(回復力)を高めることにつながる。

海陸風と他の風との違い

季節風との違い

モンスーンのイメージ

Photo by John Fowler on Unsplash

海陸風と混同されやすいのが季節風(モンスーン)である。両者とも陸と海の温度差が原因で発生する風だが、その規模と発生メカニズムには大きな違いがある。

名古屋大学の解説によれば、モンスーンの原理は基本的に海陸風と同じだそう。大陸は暖まりやすく冷えやすい一方、海洋は暖まりにくく冷えにくいという特徴がある。そのため夏季には大陸上の空気の方が暖かくなり上昇気流を生じ、それを補うために海洋から大陸へ季節風が吹く。逆に冬季には海洋の方が暖かくなるので、大陸から海洋へ季節風が吹く。

しかし、両者は規模が大きく異なる。季節風は大陸規模で発生する風で、影響範囲は数千キロメートルにわたる広範囲におよび、季節単位で継続する。アジアモンスーンを例にとると、夏季は太平洋からアジア大陸へ向かって湿った南東風が吹き、冬季は大陸から太平洋へ向かって乾燥した北西風が吹く。一方、海陸風は海岸付近の局地的な現象で、影響範囲は数十キロメートル程度、時間スケールは一日(昼夜)である。海陸風は昼と夜で風向が変わるが、季節風は夏と冬で風向が変わる。つまり、季節風は「大規模・長期間」、海陸風は「局地的・短期間」という対比ができる(※15)。

山谷風との違い

山と谷のイメージ

Photo by Matthew Stephenson on Unsplash

海陸風と同様に、局地的な温度差によって発生する風に「山谷風(やまたにかぜ)」がある。山谷風は、山岳地帯や盆地で昼夜で風向きが変わる局地風のこと。

日中は山の斜面が谷底に比べて太陽光を受けやすく暖まりやすいため、斜面付近の空気が軽くなり、谷から山へ風が吹く「谷風」が発生する。夜間は逆に斜面の空気が冷えて重くなり、山から谷へ風が吹く「山風」が発生する。

山谷風と海陸風は、どちらも局地的な温度差によって生じ、昼夜で風向きが逆転する現象であるが、海陸風が海と陸の温度差によるのに対して、山谷風は斜面と谷底の温度差によって生じるという違いがある(※16)。

フェーン現象との違い

フェーン現象は、海陸風や山谷風とはまったく異なるメカニズムで発生する気象現象である。湿った空気が山を越える際、上昇して断熱膨張により冷却され、水蒸気が凝結して雲や雨を生じる。このとき凝結熱が放出される。山頂を越えて風下側へ下降する際には、空気は断熱圧縮によって昇温するが、水蒸気はすでに失われているため乾燥している。その結果、風下側では高温で乾燥した風が吹く(※17)。

海陸風や山谷風が局地的な温度差によって周期的に発生するのに対し、フェーン現象は鉛直運動と水蒸気の凝結に依存し、特定の気圧配置や風向きの条件が揃った時にのみ発生する。日本では春先に日本海側から太平洋側へ風が吹く際などに観測される。

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持続可能な都市づくりで注目される海陸風

海と陸の比熱の違いによって生じる局地的な風である、海陸風。昼は海から陸へ、夜は陸から海へと風向きが変わるこの現象は、私たちの暮らしに涼しさをもたらし、都市部ではヒートアイランド現象を緩和する効果がある。地球温暖化や都市化の影響を受けつつある海陸風の理解は、持続可能な都市づくりや気候変動適応策において重要な視点となるだろう。

※掲載している情報は、2026年2月21日時点のものです。

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