カカオショックとは 原因とチョコレート値上げの影響は?

カカオショックと言われる、カカオの危機

Photo by Sara Gomes on Unsplash

チョコレートの主原料であるカカオの価格が高騰しており、2025年1月には数年前の水準の4倍にもなる過去最高値になった。カカオショックとは何なのか、意味をわかりやすく解説。カカオ価格が上がっている原因や、チョコレート値上げなどの影響、今後の見通しまで紹介する。

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2025.12.18

カカオショックとは?

カカオショックとは、チョコレートの原料であるカカオ豆の国際価格が急激に上がり、世界的に供給不安や価格上昇が起きている現象をいう。「カカオ危機」と呼ばれることもある。

コートジボワールに本部を置く国際カカオ機関(ICCO)発表のデータで、国際市場におけるカカオ価格の推移をみると、2022年までは1トンあたり2,000ドル台で安定している。だが、2023年後半から上がり始め、2024年頃から急激に上がっていることがわかる(※1)。

2024年4月には1トンあたり$9,876.58のそれまでの過去最高値をつけると、その後は若干の減少がみられたが、2025年1月には$10,709.30とさらに記録を更新した。この価格は、数年前の4倍近い。これが、カカオショックの現状だ。

カカオ月間平均価格の推移(2023年~2025年)

平均価格($)
2025年11月5,591.21
10月5,935.56
9月7,004.16
8月7,592.49
7月7,373.46
6月8,401.95
5月8,989.84
4月8,169.16
3月8,079.55
2月9,783.41
1月10,709.30
2024年12月10,353.05
11月7,930.13
10月6,582.86
9月6,421.82
8月6,791.95
7月7,164.62
6月8,380.12
5月7,763.37
4月9,876.58
3月7,435.43
2月5,640.09
1月4,452.60
2023年12月4,250.17
11月4,096.16
10月3,691.61
9月3,625.34
8月3,444.08
7月3,348.39
6月3,124.22
5月2,904.32
4月2,823.42
3月2,669.13
2月2,587.36
1月2,540.99

カカオショックが起きた主な原因

では、なぜカカオショックが起きたのだろう?考えられる主な原因を解説しよう。

気候変動

カカオショックの大きな原因のひとつが、気候変動だ。カカオに適した生育条件は、気温が32℃までで、年間降雨量が1,500~2,000 mmで、乾期が3か月以内であるという(※2)。

だが、近年の気候変動によって、極度の乾燥を引き起こすほか、降雨量や降雨パターンの変化、記録的な大雨などが起きる。

世界のカカオ生産の7割を占めるのが、カメルーン、コートジボワール、ガーナ、ナイジェリアの4か国。これらはすべて西アフリカにある国だが、カカオの生育に適さない32℃以上の暑さになる日が増加している。これらによってカカオの収穫量が落ち込む結果につながっているのだ。

病害

気候変動によって気候パターンが変わると、病害虫の蔓延も懸念される。それによって、ますますカカオの収穫量が減少する可能性がある。

需要と供給がアンバランスに

カカオの生産量は気候変動や病害などを理由に伸び悩む一方で、世界的なチョコレートの需要は堅調に推移している。

カカオは新たに植えてから収穫できるまで数年かかるため、短期間で生産量を増やすことが難しい。この構造的な制約が、需要増に供給が追いつかない状況を生み出している。

その結果、国際市場では慢性的な供給不足への警戒感が強まり、カカオ価格の上昇を招いている。こうした需要と供給のアンバランスは一時的な現象ではなく、中長期的に価格を押し上げ、カカオショックを長引かせる背景となっているのだ。

カカオショックによる影響

カカオショックで、私たちにどのような影響をもたらすだろう?

チョコレート価格の値上げ

カカオショックの影響は、すでにチョコレート価格の値上げという形で私たちの身近な生活に表れている。カカオ豆はチョコレートの主原料であるため、原料価格の高騰は製品価格に直接影響するからだ。

多くのチョコレートメーカーや菓子メーカーでは、原材料費や物流費の上昇を吸収しきれず、店頭価格の引き上げや内容量の削減といった対応を進めている。チョコレートでおなじみの明治でも、実際にチョコレートの値上げを行っている。

洋菓子店やカフェでは、仕入れコストが上昇し、商品価格の見直しや販売方法の変更を迫られている。こうした動きは今後も続くとみられ、チョコレートは以前より高価な商品になる可能性が高まっている。

カカオフリーチョコレートなどの代替品へ

スイーツ業界では、チョコレート以外でも、砂糖、乳製品、包装資材、エネルギーコストなども上昇傾向に直面しており、大きなコスト負担を強いられている。

そのため、チョコレートを使った新商品開発に対して慎重になるほか、カカオ使用量を抑えたレシピへの変更、カカオに頼らずにチョコレートのような風味を楽しめる「カカオフリーチョコレート」などの代替品への注目度も高まっている。

バレンタインやクリスマスにも影響が

チョコレートが主役であるバレンタイン、またクリスマスケーキを食べる習慣があるクリスマスシーズンにも、スイーツ類の価格が上がるなど、影響が出ている。

カカオ2050年問題

「カカオ2050年問題」という言葉がある。これは、カカオショックのほか、カカオの供給量不足によって、2050年にはチョコレートが食べられなくなるかもしれないとされる問題。気候変動がますます進めば、カカオの栽培すらできなくなるという危機もあると言われているのだ。

カカオショックはいつまで続く?カカオの相場はどうなる?

ここ数年で世界が見舞われているカカオショック。いつまで続くのか、気になるところだろう。

短期間でカカオ価格が大きく下落する可能性は低いとの見方が強まっている。その理由のひとつが、カカオの生産回復に時間がかかる点だ。カカオの木は苗木を植えてから安定的に収穫できるまで数年を要する。それに世界的なチョコレートの需要が急激に減少することも考えにくい。

上述したように、2023年から2025年の「カカオ月間平均価格の推移」を見ても、2025年1月に過去最高額を更新してから、2025年12月時点では価格が下がってはいるが、それでも数年前の水準の2倍近くだ。

さらに、近年の気候変動の進行なども考えると、カカオショックは一時的な価格高騰ではなく、中長期的な構造問題として続く可能性が高い。

今後は、天候の変化や生産支援策の進展によって価格が落ち着く可能性も考えられるが、少なくとも当面は高値の状態が続くと考えられるだろう。

カカオショックとSDGs

カカオショックは、カカオ生産の現場のさまざまな問題も原因としてある。

児童労働・低賃金労働などの「安いチョコ」の理由

カカオの主要生産地である西アフリカでは、長年にわたり児童労働や低賃金労働が国際的な問題となってきた。カカオ農家は国際相場の影響を強く受ける一方で、十分な収入を得られず、そのために労働力として子どもに頼らざるを得ない状況が続いてきた。

フェアトレードや持続可能なカカオ生産へ

そのような問題を解決するために、適正な価格で取引することで農家の収入を安定させ、児童労働の削減や教育機会の確保、生産農家の自立を支える取り組みがフェアトレードだ。カカオショックをきっかけに、価格の安さだけで商品を選ぶのではなく、生産背景を重視してフェアトレードチョコレートを選ぶという選択肢を考えてもいいだろう。

「フェアトレードのチョコレート」おすすめ15個 意外なカカオ製品も紹介

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食とサステナビリティを考え直すきっかけに

カカオショックは、異常気象や気候変動、需要と供給のアンバランスといった複数の要因が重なって起きた、世界的なカカオ価格高騰の問題だ。その影響はチョコレートの値上げにとどまらず、菓子・食品業界や私たち消費者の生活にも広がっている。

この問題の背景には、児童労働や低賃金といったカカオ産業が抱えてきた構造的な課題があり、安さを前提とした消費のあり方が限界を迎えていることも浮き彫りにしている。

今後もカカオ価格の高止まりが続く可能性がある中で、私たちは価格だけでなく、生産背景や持続可能性にも目を向ける必要がある。カカオショックを一時的なものと受け止めず、食とサステナビリティを考え直すきっかけにしてはどうだろう。

カカオに携わるすべてがしあわせに 〈ロッテ〉のDO Cacao PROJECT

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※掲載している情報は、2025年12月18日時点のものです。

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