住宅をオール電化にするメリット・デメリットは? 費用や導入の注意点も解説

キッチン

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「オール電化」とは、家庭内の調理や給湯などに用いるすべての熱源を電気でまかなうこと。光熱費をすべて電気代に一本化することで、節約やCO2排出の抑制や削減につながる。この記事では、自宅をオール電化にすることのメリットやデメリット、注意点について紹介する。

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2025.01.07
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オール電化とは

電球

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「オール電化」とは、家庭内の調理や給湯などに用いるすべての熱源を電気でまかなうこと。これにより、光熱費をすべて電気代に一本化できる。たとえば、ガスコンロをIHクッキングヒーターに置き換えたり、ガスの給湯器を電気給湯機(エコキュート)に置き換えたりすることで、電気のみでまかなうというわけだ。(※1)

オール電化に含まれる主な設備と特徴

IHクッキングヒーターとフライパン

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ここでは、オール電化に必要な代表的な設備について紹介する。

電気給湯機(エコキュート)

電気給湯機(エコキュート)とは、ヒートポンプ技術によって空気の熱を利用して効率よくお湯を沸かす家庭用の給湯システムの名称である。外気を本体のヒートポンプユニットに取り込み、圧縮して高温にし、この熱で貯湯タンク内の水を温めるという仕組みだ。(※2)

IHクッキングヒーター

IHとは電磁誘導加熱のことである。この技術を用いて金属の鍋やフライパン自体を発熱させて調理するのがIHクッキングヒーターであり、火を使わずに調理が可能だ。(※3)

ヒートポンプ式温水床暖房

ヒートポンプ式温水床暖房とは、大気の熱エネルギーを取り込み、1つの電気エネルギーから約3倍分の熱エネルギーを生み出す暖房システムだ。効率的で省エネであり、エコキュートと同じヒートポンプ技術を使用している。(※4)

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オール電化のメリット

緑の苗

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ここでは、オール電化のメリットについて紹介する。

全体の光熱費の削減

ガス代や電気代は、使用の有無に関わらず基本料金の支払い義務が発生するため、電気とガスの両方を使用していれば、それぞれに毎月の支払いが必要となる。

しかしオール電化にして電力を一本化すれば、基本料金は電気代のみとなるため、ガスの基本料金の支払い義務が発生しない分、毎月の節約につながるというわけだ。(※5)

深夜電力の活用

オール電化向けの料金プランは基本的に深夜の時間帯は電気代が安く設定されているケースが多い。したがってオール電化の機器を夜間に動かして蓄熱しておくことで、その熱を日中に放電して暖房などに利用すれば、深夜電力を効率よく活用して電気代を抑えることが可能だ。(※5)

火事のリスクが下がる

IHクッキングヒーターやヒートポンプ式温水床暖房などは、灯油やガス、火などを調理や暖房で使わない。したがって、ガス漏れや火災などを引き起こすリスクを抑えられる。(※5)

環境への配慮

IHクッキングヒーターやエコキュートは、すべてを電気エネルギーでまかなう。したがってガスなどとは異なり、使う時にはCO2が排出されない。再生可能エネルギーを利用した電力を選択すれば、CO2の発生を限りなく抑えられるため、環境にもやさしい。(※6)

電気とガスを一本化できる

オール電化は電気とガスを一本化できるため、光熱費の管理が容易になる。また、支払い先は1箇所のみのため、光熱費の管理や見直しもしやすい。(※7)

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オール電化のデメリットと注意点

時計

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ここでは、オール電化のデメリットと注意点について紹介する。

初期費用が高い

オール電化は導入時に設備本体の費用や設置費がかかるため、初期費用が高い。また導入する設備の種類によっては、工事が必要な場合もある。さらにIHクッキングヒーターを設置した場合は、IH対応の調理器具も必要だ。

なおオール電化の設備導入費用の目安と内訳は、IHクッキングヒーターが10〜30万円、電気給湯機(エコキュート)が20〜100万円、床暖房が30〜100万円、太陽光発電が80〜140万円となっている。(※5)

停電リスク

オール電化は電力で作動するため、停電したら使用できなくなる。したがって台風や地震などによって停電したときのために、日ごろから懐中電灯やカセットコンロなどを用意しておくと安心だ。

そのほか自立運転機能を搭載した太陽光発電を導入することで、停電などの非常時であっても基本的に1,500Wまでの電力使用が可能になる。あわせて蓄電池も導入しておけば、太陽光発電の余剰電力を蓄えておけるため、非常時にも使用できる。このように、オール電化にする際は停電リスクに備えておく必要がある。(※5)

使用時間帯の制限

オール電化の深夜電力契約は、夜間から朝方にかけての電気料金が安く設定されている。したがって夜間の使用は電気料金を安く抑えられるが、昼間(朝〜夜にかけて)の電気料金は割高となるため注意が必要だ。(※5)

昼間の電気代が高くなる

一般的なオール電化向けの料金プランは、昼間(朝〜夜にかけて)は高く、深夜帯が安く設定されている。したがって、日中は電力を多く消費する電化製品の使用はできるだけ避けたい。夜間に電気製品の使用を集中させたり、蓄電池を利用して夜間に蓄えた電力を昼間に使い回したりといった工夫を心がけるといいだろう。(※5)

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オール電化にかかる費用

お金

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ここではオール電化を導入した場合の費用の目安や、ガス併用住宅と光熱費を比較した場合のコスト面の実情について解説する。

初期導入費用の目安

オール電化は初期導入時に機器本体と工事費が必要となるため、決して安い買い物ではない。また、依頼する業者や住宅状況によって金額も大きく異なる。初期費用の負担が心配な場合は、電気と機器料金が月額定額になるサブスクプランを用意している電力会社もあるため、一度検討してみるといいだろう。(※8)

なおオール電化の設備導入費用の目安と内訳は先述したとおり、IHクッキングヒーターが10〜30万円、電気給湯機(エコキュート)が20〜100万円、床暖房が30〜100万円ほどだ。(※5)

オール電化とガス併用の光熱費比較

関西電力によると、オール電化住宅の光熱費平均金額は1人暮らしが10,777円、2人家族が13,406円、3人家族が14,835円、4人家族以上が16,533円であった。

一方、通常住宅の光熱費平均額は、1人暮らしが9,134円、2人家族が14,824円、3人家族が16,754円、4人家族以上が17,617円であった。2つのデータから比較してみると、2人家族以上であれば、オール電化住宅の方がお得になる傾向にあるようだ。(※9)

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オール電化を導入する際のポイント

データを確認している人

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オール電化を導入する際のポイントとして、昼間の電気使用が少ないか、火をとおして料理する(ガスを使う)こだわりがないか、導入資金はあるか、タンクの設置スペースを確保できるかといったことをあらかじめ確認しておくといいだろう。

一緒に導入を検討したい設備

ソーラーパネル

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ここでは、電力使用の効率化、環境への配慮のために合わせて導入を検討したい設備について解説する。

太陽光発電

太陽光発電とは、太陽の光エネルギーを太陽電池によって電気に変換する発電設備である。メリットは、太陽の光で電気をつくって利用できるため、電気代がお得になる点だ。そのほか、余った電気を売電することも可能だ。

災害などで停電した際も問題なく電気が使えるため、非常時にも強い。設置する地域に制限もないため導入がしやすく、屋根や壁などの空いたスペースを利用でき、新たに場所を設ける必要もない。

一般的な4kwの太陽光発電システムの設置費用の相場は120万円だ。主な内訳は、工事費が30万円、パワーコンディショナーが20万円、モジュール・ケーブル・モニターが70万円となっている。(※10、※11)

蓄電池

蓄電池とは、電気を蓄えておき、必要なときに使用できる電池設備だ。メリットは、太陽光発電と合わせて利用することで、昼間につくった電気を蓄電池に蓄えて夜間も使える点だ。これにより、光熱費を節約できる。

また夜間に電気代が安くなるプランに加入しておけば、割安で電気を購入して昼間の足りない電力分として補うことも可能だ。災害などで停電した際も、蓄電池に電気エネルギーを蓄えておけば非常時も問題なく利用できる。

そのほか、リース期間が満了した後は蓄電池を自身の資産として活用できる点も大きい。設置費用の相場は蓄電池本体のみで約15〜183万円、工事費を含む場合は約48〜216万円となっている(蓄電容量1~14kWhの場合で算出)。(※10、※12、※13)

電気温水器

電気温水器とは、電気ヒーターを使用して水を温めることでお湯を沸かす給湯器である。メリットは、電気料金が安くなる夜間の時間帯に大量のお湯をつくって貯蔵しておけば、24時間いつでも利用可能となる点だ。これにより、効率よく使うことでコスト削減や節約につながる。

大手メーカーの設置費用の相場は、約40〜80万円だ。ただしタンク容量やタイプによっても異なるため、一度確認しておくと安心だ。(※14)

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オール電化とはすべての熱源を電気でまかなうこと

充電中のスマホとパソコン

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オール電化とは、家庭内の調理や給湯などに用いるすべての熱源を電気でまかなうことを指す。従来のガスや灯油とは異なり、IHクッキングヒーターやエコキュートは使用時にCO2を排出しない。さらに再生可能エネルギーによる電力を選択することで、CO2排出の削減に寄与することも可能だ。

電気料金の高騰や災害時の備えとしてオール電化を検討することは、私たちにとってメリットがあるだけでなく、環境にもやさしい。お風呂や調理などで毎日使用する電力だからこそ、地球に配慮した選択を意識していきたい。

※掲載している情報は、2025年1月7日時点のものです。

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