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「電気と同時にお湯をつくる」を家庭で行えるシステムがエネファームだ。電気が発電所から家庭に送られる過程ではその多くが失われてしまうが、この問題を解決できる。この記事ではエネファームについて、エコキュートとの違いや仕組み、メリット、導入する流れを紹介する。
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エネファームとは、電気をつくるのと同時にお湯を沸かす家庭用燃料電池のこと。英語の「エネルギー(energy)」と、農場を意味する「ファーム(farm)」を組み合わせてできた言葉。エネルギーを家庭菜園のように各家庭でつくりだすことができるため、利用効率が高く省エネである点が特長だ。
エネファームと混同されやすいシステムに、エコキュートがある。いずれもお湯を沸かせる機能は同じだ。2つの違いは、エネファームがガスに含まれる水素を原料にした燃料電池であるのに対して、エコキュートは電気を利用したヒートポンプ式の給湯器な点である。エコキュートはわずかな電気量でお湯を沸かせるため、エネファームと同じく省エネだ。
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次に、エネファームの仕組みを見ていこう。エネファームは燃料電池で電気をつくり、その熱でお湯を沸かすのが基本的な構造だ。燃料電池と発電の仕組みをそれぞれ確認していく。
エネファームの燃料電池とは、都市ガスやLPガスから取り出した水素と空気中の酸素を反応させて電気をつくる装置である。電池といえば、蓄えられた電気を取り出す乾電池や充電池を思い浮かべるかもしれない。しかし燃料電池はこれらの電池とは異なる、いわば発電装置だ。
燃料電池の本体は、板状のもの(セル)が積み重なってできている。これをセルスタックといい、1つのセルで電圧約0.7ボルトの電気がつくられる。1キロワットの電気をつくるためには、50枚ほどのセルが必要だ。
エネファームの発電の基本的な仕組みは、水素と酸素を化学反応させて電気をつくり、そのときに発生した熱でお湯を沸かすというものだ。発電からお湯を沸かすまでの一連の流れは次のとおり。
①燃料電池ユニット内に引き込んだ都市ガスやLPガスから水素を取り出し、空気中の酸素と反応させる→電気がつくられる
・燃料電池の化学反応は、水の電気分解とは反対の原理である。
【燃料電池の化学反応】
2H2+O2→2H2O
②燃料電池ユニット内で発生した熱を使って、貯湯ユニットの水を温める→お湯を沸かす
つくられた電気は、家庭の照明やテレビ、冷蔵庫、エアコンなどに使用される。そしてお湯は、キッチンやお風呂、洗面所などの給湯のほか、ガス温水床暖房、浴室暖房などに使うことができる。
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エネファームの仕組みから、家庭で効率的に発電ができるほか、熱を有効利用できることがわかる。ここではあらためて、エネファームを導入するメリットを挙げてみよう。
1つ目のメリットは、電気代の節約になることだ。エネファームで発電した電気やお湯を利用すれば、電力会社から購入する電力を減らすことができる。
2つ目は、環境負担の低減になることだ。日本において発電所の電気は、主に石炭や石油といった化石燃料を燃やしてつくられている。エネファームの発電に使われる都市ガスやLPガスは、石油や石炭に比べ燃焼時の二酸化炭素の排出量が少なく、さらに硫化物やすすなどの有害な物質がほとんど発生しないというメリットがある。
また、発電所の電気は運搬の際に一部が失われてしまう一方、エネファームは運搬の必要がないため、そのほとんどを電力として使用できる。つまり、発電の際にかかる環境負担が少なく済む。
3つ目は、発電と給湯を両立できることだ。発電の際に発生する熱でお湯を沸かすことにより、電気をつくりながらの給湯が可能である。エネルギーを有効利用することで省エネになるほか、本来ならお湯を沸かすときに必要だった電気やガスの使用量を減らすことができる。
4つ目は、停電時にも使えることである。停電時発電継続機能付きのエネファームなら、都市ガスと水道が供給されていれば継続して使うことができる。災害などで停電になっても電力が確保できるほか、給湯も可能だ。
ただし、停電時にエネファームが発電中の状態であることが条件になる。発電を停止している状態で停電が起こると使用できないため、その場合は蓄電池や発電機、車のバッテリーといった外部電源と接続し、エネファームを再起動させ、発電できる状態にしなければならない。
災害などで停電すると、照明やテレビの使用、スマホの充電ができなくなるほか、機種によってはお風呂などの給湯も使えない。そんなとき、電気とお湯が使えるシステムを備えていれば心強いだろう。
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エネファームには多くのメリットがあり、導入を検討したいという人もいるだろう。そこで、大まかな流れをSTEP1~4に分けて紹介する。
STEP1は、エネルギー消費量の把握だ。エネファームは、家庭で使用する電気とお湯の量で運転時間が決まる。そのため、使用量が多ければ、家族の人数が少なくても費用対効果はある。目安は3人以上の家族とされている。
まずは家庭で使用する電気とお湯の量を調べ、本体購入と設置費用、運転・維持費などを含めて、採算が取れるのかを確認しよう。運転費用については、各社がエネファーム向けの料金プランを用意している。さらに、光熱費のシミュレーションができるページを設けている場合もあるため、具体的な節約効果などを知るための参考にするといい。
STEP2は、設置場所の確認と準備だ。エネファーム本体を設置するためには、ある程度のスペースが必要だ。近年、コンパクトなタイプも登場しているため、限られたスペースでも設置できる場合も多い。
また設置場所の他に、配管、配線経路の確保も必要だ。これらの確認は、業者に依頼する。分電盤や給湯器、他の発電設備なども業者の確認の対象だ。都市ガスを使用しているならガス事業者、LPガスなら最寄りの販売店に連絡をして依頼しよう。業者によっては、STEP1の節約効果を試算してくれる場合もあるため相談してみるといい。
STEP3は、補助金や助成金制度の確認と活用。2024年に国が行っている補助金制度は「給湯省エネ2024事業」だ。(※1)
この事業は、エネファーム本体を購入する際、条件を満たしていれば補助金を受けられるというもの。条件とは、一般社団法人燃料電池普及促進協会(FCA)が公表している登録機器リスト(※2)に登録されている製品であること。補助額は1台につき18万円、その他の加算要件を満たしていればプラス2万円の合計20万円を受給できる。
その他に、自治体が行っている補助金事業もある。例えば鹿児島市では、「太陽光deゼロカーボン促進事業補助金」を実施し、個人住宅向けの家庭用燃料電池の補助金として条件を満たした場合に7万円を支給している(2024年6月時点)。(※3)補助金制度のある自治体は限られているが、自分の住む地域にあるかを調べてみるといいだろう。
STEP4は、購入と設置工事である。設置場所の確認を業者に依頼することは前述のとおりだ。これと同時に、本体購入と設置費用などの必要な経費について、業者から見積もりをもらう。購入が決まれば、契約書を交わして設置工事を行うという流れだ。
またその他に、電力会社への系統連携の申込みも必要だ。系統連携とは、発電した電気を電力会社の電力系統に接続して、受電できるようにする手続きだ。こうしてエネファームを利用する設備や環境が整い、運転を開始して導入が完了する。
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エネファームは、電気をつくるのと同時にお湯を沸かす家庭用燃料電池だ。利用効率が高いため、家庭でできる省エネとして有効である。またガスと水道が止まっていなければ、停電時にも利用できるのもメリットだ。環境に対する配慮や災害への備えとして、電気やお湯を家庭でつくることが当たり前になる時代も、そう遠くはないかもしれない。
※1 給湯省エネ2024事業【公式】
※2 燃料電池普及促進協会(FCA)
※3 太陽光deゼロカーボン促進事業補助金(太陽光発電システム等の補助)|鹿児島市
参考
・エネファーム(家庭用燃料電池)の仕組み|一般社団法人 日本ガス協会
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