動物愛護とおしゃれを両立するエコファーとは

ファーを巻いた人

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環境負荷が大きく動物の命を犠牲にする毛皮製品の代用として注目されているエコファー(フェイクファー)。環境や動物愛護意識の高まりからさまざまなシーンで用いられるようになっている。この記事ではメリットやデメリットを紹介し、身近なエコファー製品やお手入れの方法などについても解説する。

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2024.12.25

エコファーとは

丘の上の人と雲

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エコファーとは、動物からとられたファー(毛皮)ではなく化学繊維でつくられたファーのことを指す。元は毛皮の代用品として使われ始めたエコファーだが、動物愛護やSDGsの観点からいまでは広く普及している。(※1)

エコファーが注目される背景

とくに動物愛護への意識の高まりから、ファッション業界などでも動物の毛皮(リアルファー)の使用を避ける考えが浸透し始めた。そこでリアルファーの代替として着目されたのがエコファーである。その普及につれて、有名ブランドのエコファー使用宣言や製造技術の向上による新しい価値の創出などにより、注目はさらに高まっている。(※1)

フェイクファーとの違い

「エコファー」はあまり聞いたことがなくとも、「フェイクファー」という言葉に馴染みがある方は多いだろう。実のところ、エコファーとフェイクファーはどちらも人工的に化学繊維でつくられた毛皮を意味する。世界的にサステナブル志向が高まるなかで「フェイク(偽物)」という言葉を避け、よりポジティブなイメージの「エコファー」という呼び方が定着しつつある。(※2)

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エコファーのメリットと魅力

鹿

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社会問題の解決策としてだけでなく、リアルファーにはないデザインなどで新たな価値を生み出しているエコファー。また消費者視点でも価格、維持コストの面で手に取りやすい製品が多く展開されている。

動物愛護への配慮

世界には毛皮を取るためだけに繁殖させられ、劣悪な環境で飼育されてついには命を奪われてしまう動物たちが多く存在している。そういった動物たちを減らすため、メーカーが「脱リアルファー」を宣言しエコファーの使用を促進する動きが広まりつつある。また一般の消費者もこの問題に関心を持ち、リアルファーかエコファーかを主体的に選択する考えが高まっている。(※3)

お手頃な価格設定

リアルファーは実際の動物から採取する都合上、サイズや柄にばらつきがある。それに比べてエコファーは質的・量的にも安定した生産供給が望める。そういった背景から、均質に大量生産が可能なエコファー製品の方が比較的手頃な価格で販売されることが多く、普及の要因のひとつにもなっている。

手入れのしやすさ

専門工場でのクリーニングが必要なリアルファーに対して、フェイクファーはアイテムによっては家庭で洗濯することができる。自宅でも適切なメンテナンスを心がければ、コストを抑えて長くきれいに使い続けられるのもエコファーの利点のひとつである。詳細な手入れについては、各商品に記されている表示を確認してほしい。

リアルファーにはないデザインやカラフルさ

元々「模造品」としてつくられていたエコファーだが、生産技術の向上により品質のみならずエコファー独自の特長を追及している。その特長のひとつが、本物の毛皮にはない色・デザインである。

世界的にも注目されている日本のメーカー「岡田織物」では、要望に応じてさまざまな質感・色・デザインに対応できることを目指し、常時数百種類の生地をストックしているという。(※4)このような技術に対する情熱から、今後も素晴らしいエコファー製品の登場が期待される。

環境負荷の低減に寄与するものも

エコファーの利用は動物愛護のためと捉えられがちだが、それだけではなく環境問題に対しての解決を提案するメーカーも存在する。

例えばメーカー「ECOPEL(エコペル)」では多数のエコファーを生産している。そのカテゴリーは以下のとおりだ。(※5)

・ペットボトルや海洋廃棄プラスティックをリサイクル利用した『RECYCLE』
・バイオマス原料を使用することで通常のナイロンよりエネルギー使用量・CO2排出量を削減できる『KOBA』
・多くの飼料と農薬を必要とせず、僅かな水分だけで短期間に成長する植物を使用した『VEGAN WOOL FUR』

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エコファーのデメリットと課題

たんぽぽ

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さまざまなメリットを持つエコファーであるが、同時にいくつかのデメリットと課題も指摘されている。私たちがファー製品を選ぶ際にはぜひ意識しておきたい。

石油由来の素材による環境負荷

動物素材であるリアルファーとは異なり、石油由来の化学繊維でつくられることが多いエコファーは廃棄しても自然に分解されない。つまりは多くのプラスチック製品と同様に、マイクロプラスチックとなって生態系への影響を及ぼすことが懸念される。(※6)

耐久性や保温性の課題

リアルファーは正しく取り扱えば数十年にわたって使用できるといわれている。エコファーは手入れが容易であるが、リアルファーほどの耐久性はなく同様の寿命を得るのは難しい。また細かな毛が密集したリアルファーと比較して、エコファーは保温性の面でも劣ってしまう。さらに熱によって縮むと元に戻らないため注意したい。(※7)

本物との見た目や触感の違い

今日の技術革新により、エコファーは一見してリアルファーと遜色ない品質に近づきつつある。だがやはり細やかな動物の毛の形状や弾力を再現するのは難しく、よく見比べると光沢や手触りが劣るなどの課題が残されている。

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エコファーはどのようなシーンで使われる?

梅

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現在エコファー製品は広く普及し、とくに冬季向けのさまざまな製品として流通している。また一般向けにも素材として入手しやすく、幅広い用途に利用されるようになった。

ファッションブランドアイテムでの利用

とくに冬用の、全面にエコファーを使ったコートやカジュアルジャケットのフード部分を彩ることが多い。また小物使いとしてマフラー、スヌードなど耐寒性を重視したものもある。さらにバッグやアクセサリー(イヤリングやピアスなど)にワンポイントとしてあしらい、季節感のあるアクセントにするのも人気がある。

インテリアや家庭用品

クッションカバーやカーペット・ラグなどの多様な生活雑貨に用いられている。手入れの簡単さや手ごろな価格、多彩なバリエーションから気軽に購入しやすく広く普及している。

ペット用商品や玩具

人間だけでなく、家庭で生活するペットもエコファーの恩恵を受けている。ペット専用ベッドの内側に柔らかなエコファーが使われ、気持ちよさそうにくつろぐ姿もSNSでたびたび話題にのぼる。エコファー製のぬいぐるみを気に入って離さない犬や猫もいるそうだ。

ハンドメイド素材

エコファー素材が広く普及したことによって、一般の人々の趣味の手芸素材としても身近なものになった。自作のアクセサリーやファッション小物、さらにはぬいぐるみなど多種多様な作例が紹介されている。(※8)

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長く大事に使うためのエコファーのお手入れ方法

ブラシ

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デメリットのひとつとして「廃棄時の環境負荷」が挙げられる以上、エコファー製品は短いスパンで使い捨てることなく、長く使えることが求められる。エコファー製品をできるだけ長く大切に使用する方法をまとめた。(※9)

着用後はブラッシング

着用した後はファー部分に外気の汚れや皮脂が付き、そのままにしておくと毛先が絡まりやすくなる。衣服用のブラシなどでやさしくブラッシングして汚れを取り除くことで、ゴワゴワになるのを防げる。

汚れたら水で手洗い

エコファー製品は家庭での水洗いが可能な場合がある。その際の注意点は下記のとおり。

1.洗濯表示を見て水洗い可能であることを確認する
2.水洗いの際は中性洗剤を用い、手洗いで行う
3.乾燥機は使わず、自然乾燥させる
4.乾燥後はブラッシングで毛並みを整える

保管の際の注意

風通しのいい場所で、できるだけ圧迫せずに保管したい。ポリ袋などに入れて保管すると、湿気によって結露したりカビが生えたりすることがある。

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脱リアルファー宣言をした代表的なブランド

ショーウィンドウ

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世界の有名なファッションブランドのなかで「ファーフリー(脱リアルファー)」を宣言し、エコファーにシフトする動きはすでに広まっている。(※10)今後もファーフリーに共鳴し、賛同するブランドは増えるであろう。

ケリング

革製品を広く扱うケリングでは2022年フォールコレクション以降、グループのすべてのブランドで動物の毛皮を使用しないことを決定した。(※10)

ケリングが展開するブランドには、アレキサンダー・マックイーンやバレンシアガ、ボッテガ・ヴェネタなどがあり、いずれもファーフリーを宣言している。

グッチ

2017年にファーフリーを宣言。ファーに関する施策について、消費者が買い物をする際に十分な情報に基づいた選択ができるようにするための国際的な取り組みにも参加している。(※11)

アシックス

アシックスの製品は、絶滅危惧種やエキゾチック種、毛皮が使用されていない。またすべてのレザー、スキンは食品産業からの得られたものを利用している。(※12)

シャネル

2018年からのファーフリーを宣言。同様にリアルレザーについても使用を廃止すると宣言した。(※13)

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エコファーという選択肢

並木通り

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エコファーは動物愛護の理念、簡便性、手頃さなどから広く普及した。リアルファーに近い高品質な製品やエコファーならではのデザインにより、高級ブランドでも多く使用され、もはや『フェイク』と呼ぶにとどまらない発展を見せている。消費者として「リアルファーかエコファーか」という選択を主体的に考えたい。またエコファー製品についても、リアルファー同様に適切な手入れをして長く大切に使っていきたい。

※掲載している情報は、2024年12月25日時点のものです。

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