ソーシャルイノベーションとは? 注目される理由と世界・日本の具体的な事例を紹介

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「ソーシャルイノベーション」という言葉がよく聞かれるようになった。このソーシャルイノベーションとはどういうことを意味するのか。いまソーシャルイノベーションが求められる理由や、世界・日本での事例について紹介する。

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2024.12.03

ソーシャルイノベーションとは?

改革

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ソーシャルイノベーション(Social Innovation)とは、社会課題を解決したり、社会的ニーズを満たしたりするための革新的な事業や取り組み、アイデア、製品、サービスなどを指す言葉だ。日本語に直訳すると「社会的な技術革新」である。企業がソーシャルイノベーションをすることにより、経済的な利益を生み出すだけではなく、社会的な価値を創出できる可能性があるのが特徴だ。なお、ソーシャルイノベーションを通じて起業した人のことを「社会起業家」という。(※1)

ソーシャルイノベーションが求められる理由

ソーシャルイノベーションが求められる理由について解説する。

SDGsへの意識の高まり

2030年までに貧困の根絶や環境保護、インフラの確保など、17の目標と169のターゲットを掲げているSDGs。これらの目標は多様で複雑な社会課題を含み、従来の方法や個別の機関だけでは対応が困難な場合が多くある。ソーシャルイノベーションは斬新で持続可能な解決策を生み出し、SDGsの各目標に貢献する新たなアプローチとして注目されている。(※2)

少子高齢化

少子高齢化により、日本では人材不足が深刻な問題となっている。とくに建設業や介護といった労働集約的な業種では、人材不足が顕著となっており、事業を進めていくことが困難なケースも出ている。こうした少子高齢化や人材不足といった問題解決に、ソーシャルイノベーションの考え方を取り入れて展開する必要がある。(※3)

貧困

前述したとおり、貧困の根絶はSDGsの目標のひとつである。経済的な問題だけでなく、十分な教育を受けられない、就業機会を得られないなども貧困問題とつながっている。また、日本においても貧困は大きな問題となっている。こうした貧困問題を解決するためにも、ソーシャルイノベーションは有効だと考えられる。

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ソーシャルイノベーションの主な事例

世界、日本におけるソーシャルイノベーションの事例を紹介しよう。

世界の事例

アメリカ、インドの事例を紹介する。

Apeel Sciences

アメリカ・カリフォルニア州に拠点を置くスタートアップ企業「Apeel Sciences」は、フードロス削減に取り組んでいる。同社が開発したのは、野菜や果実の賞味期限を最長3倍まで延長できる、植物由来のコーティング剤だ。このコーティング剤で野菜などの表面を覆うことで、食材の劣化を遅らせることができる。これにより小売店での青果物の廃棄を防ぐことができ、食品廃棄物の削減や水の節約にもつながっている。(※4、※5)

SAgri

日本とインド南部のカルナータカ州に拠点を置く「SAgri」は、マイクロファイナンスを支援するデータ提供事業を行っている。インドでは農業を営む人が多数いるが、金融機関への信用がないことから融資を受けられず、やむなく高金利の高利貸しから融資を受けていた。しかし返済の目処が立たず、これが農家の貧困という社会課題につながっていたのである。

その課題に着目したのがSAgriだ。SAgriのインド法人は、人工衛星などで取得した農地の収穫高の予測データを算出し、金融機関に提供。農家が適正なレートで金融機関からお金を借りられるような仕組みを創出した。これにより、インドの農業における課題に貢献している。(※6)

日本国内の事例

日本におけるソーシャルイノベーションの事例について紹介する。

株式会社aba

千葉県にあるケアテックカンパニー「aba」は、医療・介護・福祉分野を対象としたロボティクス技術の研究開発およびサービスを提供している。

日本では介護職が人手不足となっており、いかに業務の負担を軽減するかが課題のひとつとなっていた。abaは排泄センサー「ヘルプパッド」を開発し、課題解決に挑んでいる。このヘルプパッドは、センサーが排泄のにおいによって便と尿を検知するため、おむつを開けずになかの様子がわかるのが特徴だ。これにより必要なタイミングでのおむつ交換ができ、排泄ケアの業務負担やコストの削減、入居者の心理的負担の解消にもつながっている。(※7)

フローレンス

「認定NPO法人フローレンス」は、ひとり親家庭の貧困や待機児童問題といった日本の親子における社会課題解決に向けた取り組みを行っている団体だ。日本初の共済型・自宅訪問型の病児保育事業や、寄付によるひとり親支援プラン、経済的困難を抱えた家庭と食支援を通じてつながる「こども宅食」などの支援活動をしている。(※8)

ボーダレス・ジャパン

福岡県に拠点を置く「ボーダレス・ジャパン」は、社会的課題の解決に向けたソーシャルビジネスを手がける社会起業家が集うプラットフォームカンパニーだ。13カ国、50以上の事業を展開し、気候変動や貧困、人権、地域課題といった世界中にある社会的課題への解決に取り組んでいる。(※9)

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ソーシャルイノベーションのプロセス

アイデアを出す

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ソーシャルイノベーションはどのようなプロセスを経て展開させていくのか。ここでは、そのプロセスを説明する。

社会課題の特定

まず最初に行うのが、社会課題の特定だ。社会が抱える課題の構造や発生過程を分析し、問題を特定する。(※10)

創造的な解決策の開発

特定した社会課題を解決するために、革新的な解決策の開発を行う。たとえば、新しい社会的商品・サービスの開発や、社会的課題に取り組む革新的なしくみを開発する。開発した商品やサービス、しくみを市場社会に提示する。(※10)

インパクトの評価とスケーリング

プロトタイプで得た成功と課題を踏まえ、本格的に展開していく。必要に応じてパートナーシップを構築し、資金を確保しながら影響範囲を拡大する。成功した場合は、ほかの地域や分野への展開(スケーリング)が図られる。

また成果を評価し、社会に与えた影響や持続可能性について分析する。評価結果をもとにさらなる改善を行い、学びを次のプロジェクトに生かす。

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ソーシャルイノベーションのメリットと課題

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ソーシャルイノベーションにはどのようなメリットがあるのか。また、どのような点が課題となっているのか説明していこう。

メリット

ソーシャルイノベーションのメリットは、社会課題を解決し、持続可能な発展に寄与する点にある。企業や個人が革新的なアイデアや技術を通じて、環境問題、貧困、不平等などの問題に取り組むことで、社会全体の持続可能性の向上が可能だ。また新たな市場や雇用を創出し、経済成長と社会的利益の両立もできる。さらに関係者の協力を促すことで、社会全体で共通の目標に取り組む意識が高まり、持続的かつ包括的な成長が期待される。

課題・難しさ

ソーシャルイノベーションでは、利益の追求を目的としておらず、社会貢献や社会課題の解決を目標とする活動である。その理念が銀行や投資家に十分理解されにくいため、資金調達が難航するケースがあるのが課題のひとつだ。

また、ソーシャルイノベーションの活動内容によっては、その成果を具体的な数値やデータで示す成果認識が難しいという課題も伴う。(※11)

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ソーシャルイノベーションの今後

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ソーシャルイノベーションは今後どのようになっていくのか、展望を解説する。

テクノロジーとの融合

AI、IoT、ビッグデータ、ブロックチェーンといったデジタル技術の発展により、社会問題のデータを分析し、より効果的な解決策を提供することが可能となっている。たとえばデータに基づいた医療支援や環境保護への取り組みが可能になり、課題の深層分析と迅速な対応が進むと考えられる。(※12)

グローバルな協力と持続可能性の推進

地域ごとの課題に対応するだけでなく、気候変動や貧困などのグローバルに共通する課題に対しても、世界各国の知識や技術が共有され、ソーシャルイノベーションの成果が世界規模で展開されていくことが期待されている。

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SDGsの目標達成にもつながるソーシャルイノベーション

social innovation

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ソーシャルイノベーションは、利益の追求だけでなく、SDGsの目標にもなっている社会問題への貢献を意識した取り組みである。ソーシャルイノベーションは今後、社会課題解決に不可欠な役割を担い、持続可能で共生できる未来を実現する重要な基盤として発展していくだろう。

※掲載している情報は、2024年12月3日時点のものです。

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