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企業経営において注目が高まっている、「ERG(従業員リソースグループ)」。本記事では、ERG(従業員リソースグループ)とは何かを解説しながら、その目的や仕組み、注目される背景について説明する。また、メリットにもふれながら、ERG活用事例も紹介していく。
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ERGは、「Employee Resource Group」の略で、「従業員リソースグループ」と訳される。
ERGとは、組織の中で共通の特性や価値観、経験を持つ従業員が主体となって運営するグループのことである(※1)。
ERGの起源は、1960年代のアメリカに遡る。人種間の敵対意識が高まりつつあったなか、アメリカ企業ゼロックスのCEO(当時)が黒人従業員にERGを設立するように促し支援を行なった。そして1970年に最初のERGが発足したのが始まりとされる(※2)。
一般的にERGでは、自分たちで目的やゴールを設定する。働きやすい職場環境や従業員のモチベーションアップなど、よりよい企業風土をつくるためのテーマが設けられる。関心のある従業員がいれば、グループに参加できる場合がほとんどだ。
グループのテーマは、人種やジェンダー、宗教、テクノロジー活用、ビジネスモデル構築、技術開発、居場所づくりなど多岐に渡る。
ERGはまず、グループの設立から始まる。そのきっかけは、メンバーが選挙で選ばれたり、上司からリーダーを推薦されたり、グローバル本社で実施していたERGを日本法人に導入したり、さまざまだ。
運営は従業員がボランティアで運営する場合がほとんどで、自主的な活動のため、基本的には勤務時間外でおこなわれる。
自主的な活動といっても、会社からの支援も欠かせないため、申請・登録など何らかの形で会社に認知されるほか、活動の報告も必要だ。
ERGのほかに従業員が組織するグループには、労働者が団結して、賃金や労働時間などの労働条件の改善を図る目的を持つ「労働組合」がある(※3)。
労働組合は目的が決まっているのに対し、ERGは目的を自ら決めるという点が違いのひとつとして挙げられる。
また、労働組合は企業に対して団体交渉することが法的に認められているが、ERGは企業との情報共有はしつつも法的な権利がない点も、大きな違いといえる。
ERGについて理解したところで、近年ERGが注目されている背景について解説していこう。
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ERGが注目されている理由には、人材の多様化が背景にある。年齢やジェンダー、人種、国籍など、個性が異なるさまざまな人材が同じ企業で働くと、どうしても意見の食い違いや目指す方向に齟齬が生まれてしまう。
そのような場合に、同じ特性を持つ従業員同士がグループとなり、悩みや改善点などについて話し合うことで、より働きやすい職場づくりへとつながっていく。人材が多様化するなかで、誰もが働きやすい環境を構築していくという点で、ERGは注目されているのだ。
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人材の多様化のほかに、働き方の多様化もERGが注目される背景にある。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をきっかけに、リモートワークが浸透。そのほか育児や介護による時短勤務など、働き方が多様している。
それぞれにあった働き方が叶うと同時に、勤務時間が短かったり、リモートワークで社内の人と顔を合わせなかったりすることでコミュニケーション不足も懸念されている。そうしたなかでも、共通点を持った従業員が集まるERGがあると、悩みなどを相談することもでき、モチベーションアップにもつながるなど、関係構築の場としての機能も期待されている。
ここからは、ERGがもたらすメリットについて、会社側、従業員側それぞれの立場で解説していく。
ERGの取り組みは、企業のダイバーシティ&インクルージョンの推進にもつながる。ダイバーシティ&インクルージョンとは、多様性を尊重し、誰もが受け入れられる包括的な組織や社会を実現しようとする取り組みで、グローバル化の進展や働き方の多様化、労働力の変化にともない注目が高まっている。
ERGに取り組むことで、企業が多様性を受け入れ、従業員にとって働きやすい環境づくりに積極的であるという企業姿勢のアピールにもなるのだ。
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複数の従業員もつ共通の悩みや課題の解決は、新しいサービスや商品を生み出すチャンスにもなり得る。
たとえば、子育てをしている人や介護をしている人などに向けた商品を開発したいとき、経験のある従業員から意見を聞いた方がよりターゲットに刺さるアイテムを生み出せるだろう。
特定の属性に向けた商品をつくりたいときに、同じ属性の人々に話を聞くことができるのも、ERGのメリットである。
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ERGを通じて、同じ特性を持つ人々とコミュニケーションを取ったり、悩みや課題の解決に向けて話し合うことで、業務のモチベーションアップにつながることが期待されている。
また、悩みや課題について話し合える場は、従業員にとって精神的な助けにもなるだろう。
ERGでは活動を社内に報告・発信するケースが多く、それによってグループ内の悩みをほかの従業員に知ってもらう機会になる。
「育児をしながら働いている人は、こんなところに悩んでいるのだな」「外国籍の従業員はこんなところが働きにくいのか」など、理解を示す人も増えるだろう。
ERGが活発に機能していくと、お互いの考えや価値観を受け入れる企業風土が形成され、誰にとっても働きやすい職場環境が構築されていくのだ。
ここからは、実際におこなわれている企業によるERG活用事例を紹介していく。
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Googleでは、イノベーティブかつインクルーシブなチーム、プロダクト、教育、職場をつくることを目標として、障がいに関するトピックについて発信し、意識を高め、アドバイスを共有することができるコミュニティを2012年に設立。
このグループ・障がい者アライアンスは、Google がプロダクトや職場環境、カルチャーをデザインする上での情報源としても機能している。
社内のあらゆる階層で啓発活動を行うことで、Google の障がいインクルージョンへの取り組みを改善し、働きやすい環境づくりにも貢献しているのだ(※4)。
P&Gでは、経営戦略の一環として「イクオリティ&インクルージョン(平等な機会とインクルーシブな世界の実現)」を掲げ、多様な社員一人ひとりが、等しく機会を得て能力を最大限に発揮できる組織づくりに取り組んでいる。
P&Gには「GABLE」という独自の言葉がある。これは「ゲイ・アライ・バイセクシュアル・レズビアン・トランスジェンダー・エンプロイー」の略で、LGBTQ+(性的マイノリティー)当事者と、その理解者・支援者である社員を総称するアフィニティ・グループだ。
GABLEは、LGBTQ+の社員や支援者、そしてすべての社員が安心して自分らしく、最大限の能力を発揮することができる、安全かつインクルーシブな職場環境をつくっていくことを使命としている(※5)。
グローバル企業であるIBMでは、世界中で一貫して、障がいの有無・人種・性別・思想・文化・出身地などに関わらず、各個人がその能力を最大限に発揮しビジネスに貢献できる環境を目指している。
自分らしく働ける職場や企業風土づくりへの取り組みのひとつとして、LGBTQ+当事者とLGBTQ+支援者(アライ)の会社公認のコミュニティがあり、毎年6月は「Pride Month」として、全社的にイベントを開催。LGBTQ+当事者とアライを中心に、人事とスポンサー役員が一体となって、当事者理解増進活動をおこなっている(※6)。
ただERGを設立するだけでは、期待通りの効果が得られないこともある。ERG成功のためにやるべきことを見ていこう。
ERGのメンバーが同じ目的を持ち同じ方向を向いて活動するためには、明確なビジョンと共通の目標が必要だ。ERGを設立する際には、活動の目的や、活動を通じて達成したいことをしっかり設定することが重要である。
グループでの活動は会社活動のひとつであるため、目標設定の際には、グループの目標と会社の目標を一致させることも気をつけるべきポイントといえるだろう。
目標を設定し活動を始めたら、効果測定をおこなうことも大切。活動しているだけだと、成果が実感できずモチベーションが下がってしまうことがあるほか、方向性にズレが生じる可能性もある。
定期的に効果測定をおこない改善を重ねていくことで、より効果的な活動ができ、目標達成、すなわちERGの成功に近づきやすくなるだろう。
誰にとっても働きやすい企業風土を構築することは、働き方や人材が多様化し、労働力も変化しつつあるいま、企業にとって積極的に取り組むべき課題のひとつだ。
また、ERGを活用し多様性を認め受け入れることは、SDGsの「誰一人取り残さない世界の実現」という目的にもマッチし、SDGs促進にもつながっていくだろう。
※1 ERG Resources From Catalyst | Catalyst
※2 EXECUTIVE BRIEFING SERIES(1ページ目)|BOSTON COLLEGE CENTER FOR WORK & FAMILY
※3 労働組合|厚生労働省
※4 Googleの障がい者アライアンス ERG|Google人材募集
※5 P&Gイクオリティ&インクルージョン推進への継続的な取り組み | P&Gジャパン
※6 ダイバーシティー&インクルージョン|IBM
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