DEIとは? 意味や取り組みの具体例をわかりやすく解説

多様な働き方をしているオフィスのイメージ

Photo by Shridhar Gupta

企業経営において注目されている、「DEI(ディー・イー・アイ)」。DEIが注目される背景には、グローバル化の進展や働き方の多様化などがある。本記事では、DEIの意味についてわかりやすく解説しながら、取り組みのメリットや具体例も紹介していく。

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2024.08.31

DEIとは

さまざまな人がオフィスで働いているイメージ

Photo by Mimi Thian on Unsplash

DEI(ディー・イー・アイ)とは、企業経営において注目されている言葉で、「Diversity(ダイバーシティ)」「Equity(エクイティ)」「Inclusion(インクルージョン)」の頭文字をとったもの。多様性や公平性を尊重し、誰もが受け入れられる包括的な組織や社会を実現しようとする取り組みを指す。

これまではD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)という言葉がよく使われてきたが、社会全体の変化にともない企業の認識や考え方も変化し、近年ではDEIを取り入れる企業が増えてきている。

ここからは、DEIを構成する3つの要素について詳しく説明していこう(※1)。

Diversity|多様性

Diversityとは、「多様性」を意味し、人種や性別、国籍、宗教、価値観などが異なるさまざまな人々が、組織や集団において共存している状態を指す。

一人ひとりの違いを“個性”として互いに受け入れ、尊重し、個性に価値を見つけることで、すべての人にとって心地よい居場所があることを意味している。

Equity|公平性

Equityとは、公平な扱い、不均衡の調整をおこなう「公平性」を意味する。

一人ひとりが公平に能力を発揮できるよう、誰もが情報やツール、仕組みなどを活用して挑戦する機会を得られるように、一人ひとりに合った環境を整えることが重要、という考え方である。

Inclusion|包括性

Inclusionとは、「包括性」を意味する言葉。ビジネスでは、一人ひとりの多様性が認められ、個性を発揮し、誰もが組織に貢献できる状態であることを指す。

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DEIが注目されている背景

近年注目が高まっているDEIだが、その背景には何があるのか見ていこう。

グローバル化の進展

仕事をしている人のイメージ

Photo by Tyler Franta on Unsplash

DEIが注目されている背景としてまず挙げられるのが、グローバル化の進展である。

スマートフォンの普及やIT技術の発展により、市場がグローバル化するなか、日本的な慣習にとらわれない視点を持つ外国人労働者などの人材を活用する機会が増えてきている。

そうした背景のなか、企業で働くすべての人の多様性を受け入れ、公平に活躍する機会が与えられる環境や仕組みをつくることが重要視されているのだ。

働き方の多様化

働き方の多様化も、DEIが注目されている背景のひとつだ。

社会の変化にともない、働く人々の価値観も変化してきている。「働けば働くほどよい」といった価値観を持つ人は減少し、ライフワークバランスを重視する考え方が広まりつつある。それによって、自身の理想のスタイルを目指して転職したり、副業したり、フリーランスになったり、と働き方も多様化しているのだ。

このような多様化した働き方に対して柔軟に対応することが、いま企業にも求められているのである。

労働力の変化

女性が働いているイメージ

Photo by KOBU Agency on Unsplash

少子高齢化が進んだことによる、日本の労働力の減少もDEIが注目される背景にある。

働き手が減ったことにより、女性の社会進出やシニア層の労働力人口が増えつつあり、これまでとは労働力に変化が生じている。また、慢性的な人手不足に陥っている日本では、女性やシニア層だけでなく、性別や年齢、国籍にとらわれない多様な人材を確保することも重要である。

そしてその人たちが働き続けやすい環境に整えることも企業にとって急務であり、その上でDEIが注目されているのだ。

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DEIが企業や従業員にもたらすメリット

DEIは、企業や従業員にどのようなメリットをもたらすのだろうか。ここでは、3つのメリットについて解説する。

イノベーションの促進

DEIに取り組むことで、同じような経歴を持つ人材ばかりではなく、個性が異なる人材が集まる。さらに、以前から勤めている従業員対しても、幅広い考え方や価値観を受け入れるきっかけとなり、新しいアイデアが生まれる可能性が高まるのだ。

DEIに取り組む前にはなかったような、新しいアイデアが生まれることで、結果として企業のイノベーション促進にもつながっていくだろう。

企業価値の向上

複数の会社が並んでいるイメージ

Photo by TERRA on Unsplash

DEIに取り組むということは、“一人ひとりの個性を尊重する労働環境づくりに取り組んでいる”というアピールにもなる。

従業員が働きやすくなることはもちろん、サービスや商品を利用する生活者からのイメージアップにもつながり、企業価値の向上にも効果が期待されている。

従業員のモチベーションアップ

誰しもが、同じモチベーションで働き続けることはむずかしい。とくに、結婚や出産、育児、介護などをきっかけに、今後の働き方について考える人も少なくない。

多様な人々が働き続けられるように環境を整備することで、仕事と家庭の両立や、リモートでの勤務などが叶い、転職や退職することなく働き続けることができる。

さらに、さまざまな考え方や価値観を受け入れ、公平なチャンスが与えられる環境であれば、従業員のモチベーションもアップする。モチベーションがアップすることで、生産性が高まったり、離職率が低下したり、企業にも多くのメリットが期待されているのだ。

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DEI推進のための具体的なアプローチ

実際に、DEI推進のためにはどのよなアプローチが必要なのだろうか。具体的なアプローチ方法について説明しよう。

ビジョンと方針の明確化

まず大切なのは、ビジョンと方針の明確化である。個性が異なる人材が集まっても、組織をうまく機能させるには、ビジョンと方針をしっかりと定義し明確にすることが重要だ。

さらに、明確化するだけでなく、繰り返し伝え提示していくことも忘れてはいけない。いつでも見られるように掲示しておくほか、情報発信をおこなうなどして、混乱を招かぬように工夫が必要だ。

教育とトレーニングの実施

研修を行なっているイメージ

Photo by Headway on Unsplash

DEIを推進する目的や重要性について、会社全体で共有することも重要だ。経営層だけでなく、現場の従業員まで漏れなく共有し、目線を合わせることが不可欠である。

そのために研修をおこない、DEIを理解し浸透させるための教育プログラムやトレーニングを実施するのもよいだろう。

公平な評価制度の構築

評価をしているイメージ

Photo by Scott Graham on Unsplash

多様性を受け入れるということは、それぞれのスタートラインが違う、ということも忘れてはいけない。そのため、誰もが公平に評価される制度を構築することも、DEI推進のためには欠かせないのだ。

たとえば、子育てをしながら時短で勤務する人と、フルタイムで働く人とでは労働時間が異なる。しかし、労働時間ではなく、求められる役割や成果に基づいて公正に評価できる仕組みづくりが大切である。

そのほか、言語の違いによるコミュニケーションの壁や、リモートで働くか出社するかによる、上司と接する時間の違いなどで差が出ないように、働き方に影響されない評価項目の選定が求められる。

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DEIを推進する日本企業の例

DEIを推進する企業は年々増えている。日本企業におけるDEIの具体例を、3つ紹介しよう。

パナソニック ホールディングス株式会社

パナソニックでは、DEIの取り組みをグループ全体の経営基本⽅針の実践のひとつとして位置付け、推進している。

具体的には、グループ共通の行動指針として、「Panasonic Leadership Principles」をトップダウン&ボトムアップで議論しながら策定。チームを持つマネージャーであるかどうかにかかわらず、一人ひとりがリーダーシップを発揮し、日々この行動指針を実践している。

さらに、パナソニックグループでは、会社の取り組みとは別に、所属や職位に関係なく「経営や職場をよくしたい」という想いを軸に仲間が集まり、自発的なコミュニティ活動を展開。コミュニティのテーマはさまざまで、障がい、ジェンダー、ビジネスモデル構築、技術開発、居場所づくりなど多岐にわたっている(※1)。

エーザイ株式会社

エーザイでは、HRやサステナビリティをはじめとするさまざまな分野において、DEIに関する全社的な意識改革や取り組みが動き始めている。

2023年12月、DEIの実現に向けたCEOメッセージが発出。このメッセージでは、異なる人々が単に集まるだけではなく、相互の価値観を理解し合い、共通の目的に基づいて協力することをダイバーシティの真髄としており、エーザイが目指す方向性を明確にし、全社員にDEIの重要性が改めて伝えられた。

その後、エーザイのDEIに関わるグローバルのメンバーによるグローバルワークショップを開催。今後のDEIの取り組みの道しるべとすべき、スローガンとステートメントについて議論がおこなわれた。

そしてこれからを浸透・実行のフェーズとして、エーザイを支える大切な風土、文化として発展させてくために、DEIの意義や目的についての継続的な発信や社内外での対話を通じて、社員一人ひとりの行動や新しい価値の創造につなげることを目指している(※2)。

富士通株式会社

富士通では、「多様性を尊重した責任ある事業活動(レスポンシブルビジネス)に取り組む」「誰もが一体感をもって自分らしく活躍できる、公平でインクルーシブな企業文化を醸成する。個人のアイデンティティに関わらず、誰もが違いを認め合い、活躍できるようにする」「インクルーシブなデザインやイノベーションを通じて、社会により良いインパクトをもたらすよう努め、エンパワーし合うことで、持続可能な世界の実現を目指す」を企業の“ありたい姿”として掲げている。

それを踏まえて、従業員エンゲージメントのポイント向上や、リーダーシップレベルの女性比率の向上など、それぞれの分野において2025年度の目標を設定し、達成に向けて取り組んでいる(※3)。

DEIを推進し社会課題解決へ

少子高齢化が進む日本において、今後予想される働き手不足は非常に深刻な社会課題である。DEIを推進することで、異なる個性を持つ従業員側も働きやすくなり、離職率の低下が期待されている。多様性や公平性を尊重し、誰もが受け入れられる包括的な組織や社会を実現することで、こうした社会課題の解決にもつながっていくだろう。

※掲載している情報は、2024年8月31日時点のものです。

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