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サステナブルな企業とは、どんな企業を指すのだろう。持続可能な社会を実現するための取り組みが加速する現代において、目先の利益だけにとらわれないサステナブル経営を行う企業が評価される傾向だ。本記事では、具体的な企業事例のほか、サステナブル経営のメリットについても解説する。
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サステナブル経営とは、環境・社会・経済の3つの観点において持続可能性に配慮し、長期的に事業活動を続けていくための経営を指す。
地球温暖化や海洋汚染などをはじめとする環境悪化が世界規模で深刻化するなか、企業にもサステナブルな経営が求められている。サステナブル経営は、いわば、企業が今後も成長を続けるために不可欠なのだ。
目先の利益を追求するのではなく、事業においても持続可能性を考慮した仕組みを構築し、実践すること。これこそが、企業が今後も事業活動を続けていくための唯一の方法ともいえるだろう。
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サステナブルな社会を実現するための国際的な目標としてSDGsがある。帝国データバンクが行った「SDGsに関する企業の意識調査(2022年)」によると、SDGsへの取り組みによる効果を実感した企業は66.5%。(※1)
サステナブル経営にはさまざまなメリットがあるが、ここでは3つの具体例を紹介する。
「サステナブル」という言葉が浸透するなかで、消費者だけでなく、株主や取引先などのあらゆるステークホルダーが企業の取り組みに関心を寄せている。企業が積極的にサステナブルな取り組みを実践すると、ステークホルダーからの評価が向上するだろう。結果として、投資を受けやすくなったり、取引が増えたりというメリットにつながる。
また、管理システムや製造ラインの見直しによって、リスクに適応できるようになるかもしれないし、事業コストの削減につながるかもしれない。さらには、サステナブル経営を推進することで、新たなビジネスチャンスに恵まれる可能性もあるのだ。
サステナブル経営の実践は、企業イメージの向上とも深く関わっている。企業の社会的責任を意味する言葉として「CSR(Corporate Social Responsibility)」がある。CSRは法令遵守や社会貢献においての企業指針を示したものであり、社内外から注目されている。
消費者意識が変化しつつある現代社会において、消費者の関心は、企業が提供するプロダクトやサービス内容だけにとどまらない。企業が環境や社会に対してどのように向き合っているのかという姿勢が問われるのだ。エシカルな価値観を持ちあわせる消費者は、CSRに限らず、企業のサステナブルな取り組みを重視する。ブランドへの共感や企業を応援する気持ちが購買行動につながることも少なくない。
サステナブル経営により、企業イメージが向上したり、社内環境への配慮が行われたりすると、それが従業員の働きがいにつながるだろう。自社への愛着は、エンゲージメントの向上に直結する。従業員のエンゲージメントが向上すると、さらなる事業の成長にもつながるかもしれない。
また、サステナブル経営を行うことで、サステナビリティに関心を持つ層が集まりやすくなる。働きやすい環境づくりを同時に進めることで、優秀な人材の確保や離職率の低下、採用コストの削減にもつながるだろう。
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カナダの調査会社「コーポレート・ナイツ社」が、毎年「世界でもっともサステナブルな企業100社(Global 100 Index)」を発表している。同レポートは、世界経済フォーラム(WEF)の年次総会である「ダボス会議」にあわせて発表されるもの。2023年で19回目を迎えた。
売上高が10億を超える世界の上場企業約6000社が対象とされ、環境・社会・ガバナンスの3つの観点からパフォーマンスを総合的に評価してランク付けされる。財務状況や製品カテゴリーにおいてスクリーニングされた企業が、サステナブル売上や経営陣の女性比率などの複数の指標にのっとって評価される仕組みであり、評価内容は適宜改定される。
2023年版の1位は、アメリカの製造業「シュニッツァー・スチール・インダストリーズ」。次いで、2位にデンマークの製造業「ヴェスタス・ウィンド・システムズ」、3位にオーストラリアの物流会社「ブランブルズ」が続く。(※2)
地域別では、ヨーロッパと北米の企業が約75%を占める。アジア・太平洋エリアからも22社がランクインしており、昨年より増加傾向だ。
2023年は、日本からは4社が選出された。50位に「コニカミノルタ」、53位に「エーザイ」、80位に「リコー」、84位に「積水化学工業」という結果だ。
コニカミノルタは、5年連続6度目の選出。2003年の統合以来、サステナビリティを経営の中核に据え、さまざまな変革を行ってきた。独自の「サステナブルソリューション認定制度」を設けて、SDGsの視点で社会課題を解決するための製品・サービスを創出している。
エーザイは、2023年が7回目の選定となる。53位という結果は、グローバル製薬企業で最上位だ。同社は、「患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考える」ことを理念としている。ESGへの取り組みを強化し、非財務価値を高めることにも重きを置いて、持続的な事業活動を行っている。
リコーは、通算11度選定されている。目指すべき社会の姿を経済(Prosperity)・社会(People)・地球環境(Planet)のバランスが保たれた社会「Three Ps Blance」と表現し、実現に向けた具体的な課題と目標を設定。日本における再エネ導入加速への取り組みも積極的に行っている。
積水化学工業は、6年連続8回目の選出。積水グループは、気候変動課題をはじめとする社会課題の解決に積極的に取り組んできた。2018年には化学業界初となる、温室効果ガス排出量削減に対する国際認証「SBT認証」を取得。2023年の選出においては、サステナブル投資やサステナビリティと報酬の連動などの項目で高い評価を受けた。
今回選出されたいずれの企業も、同ランキングの常連だ。それぞれがサステナビリティを重視して、独自の取り組みで社会課題と真摯に向き合っている。
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以下では、サステナブル経営に取り組む企業やブランドの事例を見ていこう。企業が実践する施策とともに、10の事例を取り上げる。
ロート製薬では、2021年にサステナビリティ委員会を設置。取締役副社長を委員長とし、ESG、SDGsをはじめとする課題や方針、対策について議論を行っている。
同社では、会社を「社会の公器」と表現し、生活者や将来世代を含め、さまざまなステークホルダーに支えられて成り立っていると考えている。すべてのステークホルダーと共栄し、Well-beingな社会の実現や環境問題の解決に貢献することを行動指針としている。
環境負荷を減らす取り組みとして、独自の基準をクリアした製品に「R・ecoマーク」を表示している。例えば、スキンケアブランド「肌ラボ」では、ボトルやパウチの材料として再生可能なバイオマスプラスチックを採用。世界20カ国以上で販売している化粧水ボトルの規格をグローバルで統一し、生産ラインの効率化に努めている。ほかにも、ラベルレスのecoボトルを発売。2005年に先駆けて化粧水の詰め替え商品を発売して以来、環境に配慮した取り組みを続けている。
「R・ecoマーク」は、同社が今後も責任ある行動をしていくという決意の証。地球の健康も実現するという思いを込めて、子どもが前向きに歩く様子がデザインされている。(※9)
明治は、社会に必要とされる存在であることこそが社会的責任であると捉え、経営を行っている。目指すべき企業像を示した「明治グループ2026ビジョン」においては、サステナビリティの推進を最重要テーマのひとつに位置づけている。
「こころとからだの健康に貢献」「環境との調和」「豊かな社会づくり」の3つのテーマのほかに、「持続可能な調達活動」という共通テーマを掲げ、国連機関や関連団体と連携しながら取り組みを進めている。
世界中のカカオ産地が抱える木の高齢化や児童労働、森林減少などの問題と向き合う取り組みを行っている。明治では、農家支援を実施した地域で生産されたカカオ豆を「サステナブルカカオ豆」と定義。2026年度までにサステナブルカカオ豆の調達比率100%を目指すとして、カカオ産地に直接足を運び、技術指導や寄贈を通しての教育支援などに取り組んでいる。持続可能なカカオ生産を実現するための取り組みだ。
シチズンの理念は「市民に愛され市民に貢献する」。シチズンは、サステナビリティという言葉が浸透する以前から、100年近くにわたって、サステナブルな時計づくりを行っている。
シチズングループは、毎年「サステナビリティ・CSR報告書」を発表。2020年に「サステナビリティ委員会」を設置し、サステナブル経営を本格的に推進している。事業のコンセプトには「サステナブルファクトリー」を掲げ、循環型社会への貢献や人権の尊重など、複数の項目においてロードマップを策定している。
シチズンでは、「犠牲を生まないこと」を基準とした素材選びをスタートさせている。地球環境だけでなく、安全性や労働環境などの人権面にも最大限配慮する形で、使う人にもつくる人にも寄り添う選択だ。
例えば、レザーは、厳格な審査をクリアし、LWG(レザーワーキンググループ)から認証を受けたタンナーから調達する。現在60%であるLWG採用率を、今後90%以上にすることを目標としている。また、ボックスや保証書、パンフレットには、適切な森林管理のもと生産された「FSC®認証紙」を採用。グローバルでも取り組みを進める方針だ。
ZOZOは、環境や社会をよくする新しいファッションの世界を目指すべく、地球の課題を革新的な方法で解決すると約束している。
「サステナブルなファッションを選択できる顧客体験の提供」「廃棄ゼロを目指す受注生産プラットフォームの構築」「ファッションに関わるすべての人のダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン推進」「持続可能な地域づくりへの貢献」の4つを重点取り組みとして策定し、概念図として可視化している。同時に、「楽しく働く」ために、社内のサステナビリティの推進にも努めている。
年間1,000万人以上が利用するECサイト「ZOZOTOWN」上に、常設コンテンツ「elove by ZOZO」を開設。ファッションブランドのサステナビリティに関する取り組みやファッションにまつわるTIPSなど、サステナブルな選択を楽しむためのコンテンツが多数公開されている。同取り組みは、同社の重点取り組みのひとつである「サステナブルなファッションを選択できる顧客体験の提供」と紐づいている。
ファミリーマートは「with Sustainability!」を掲げ、独自のサステナビリティに関する取り組みを推進している。コンビニエンスストアという生活者に近いビジネスだからこその視点を活かした地域・社会づくりを使命とし、5つの重要課題と4つの基盤を設定。各項目に紐づいたさまざまな取り組みを行っている。
「ファミマフードドライブ」は、家庭にある食品をファミリーマートに持参してもらい、地域のパートナーの協力のもと必要とする人のもとに寄付する仕組み。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により、地域の居場所づくりが難しくなったことがきっかけで開始された取り組みだ。実施店舗は、2023年6月時点で全国47都道府県2,240店舗にのぼる。
ユニクロは、服のビジネスを通じて社会の持続可能な発展に寄与するとして、さまざまなサステナビリティ活動を行っている。取り組みは、サプライチェーンの見直しや多様性の尊重など、4つの約束のもと推進され、「PLANET」「SOCIETY」「PEOPLE」の分野において多数のプロジェクトが進行している。
世界10カ国・19店舗で「RE.ユニクロスタジオ」を展開している。RE.ユニクロスタジオは、服の新たな未来を追求するための場所。大切な服のリペアやリメイク、着なくなった服のリユース、資源としてのリサイクルなど、服の活用方法を提案する。日本では、「世田谷千歳台店」「天神店」「前橋南インター店」で実施されている取り組みだ。
「100年のワクワクと笑顔を。」をテーマに掲げるアサヒ飲料は、「健康」「環境」「地域共創」の3つのマテリアリティを設定し、それぞれに紐づいた取り組みを行っている。同社の「三ツ矢」「ウィルキンソン」「カルピス®」は100年以上続くブランドだ。100年つなげることの価値を知る同社は、将来世代のことを想い、人々が笑顔になる社会をつくることを使命としている。
自動販売機を活用したCO2の資源循環モデルの実証実験を開始。2023年6月から「CO2を食べる自販機」を展開している。CO2を食べる自販機には、庫内にCO2を吸収する特殊材が搭載されている。自動販売機の大気を吸い込む仕組みを利用して開発され、1台当たりのCO2吸収量は、稼働電力由来のCO2排出量の最大20%を見込んでいるという。
実証実験では、関東・関西エリアを中心に約30台を設置し、2024年からの本格展開を予定している。CO2吸収能力が高い素材の開発も同時に進め、カーボンニュートラルを実現する自動販売機の開発・展開を目指す。
花王は、「Kirei Lifestyle」を掲げ、世界中の人々がこころ豊かに暮らすための取り組みを推進している。「快適な暮らしを自分らしく送るために」「思いやりのある選択を社会のために」「よりすこやかな地球のために」の3つの柱を設定し、2030年までの同社のコミットメントを定めている。取り組みを実行するための基盤づくりとして、誠実で清廉な事業活動を行うための社内環境の整備も推進している。
プラスチックボトルレス化などのリデュース、詰め替えの促進によるリユース、持続可能な素材へと転換するリプレイス、再資源化を促進するリサイクルの4Rの観点でさまざまな活動を推進している。
2050年までに「ごみネガティブ」を実現するとして、ロードマップを公表し、取り組みを進めている。ごみネガティブとは、花王のプラスチック包装容器使用量よりも、プラスチック再資源化に関与した量のほうが多い状態を指す。リサイクル技術の開発や再生プラスチックの活用を通して、実現に向けた取り組みを加速する。
サステナブルな方法で原料を調達し、商品の提供を通じて家庭でのサステナブルな生活をサポートしているイケア。事業活動におけるサステナビリティ戦略においては、2030年までの大きな目標を掲げ、とくに、「健康的でサステナブルな暮らし」「サーキュラー&クライメートポジティブ」「公平性とインクルージョン」を重点分野に設定。それぞれのテーマに沿った取り組みを行っている。
また、社会にポジティブな変化を与えるべく、活動や信念を積極的に発信している。
イケアでは、サーキュラービジネス(循環型ビジネス)の実現に取り組んでいる。現在、イケア製品の約60%が再生可能な素材で製造されている。また、10%以上がリサイクル素材を含んだ製品だ。イケアでは「廃棄物ゼロ」の考え方を大切にしており、廃棄物に第二の人生を与え、資源として活用する方法を日々模索している。
2019年には、回収した製品3,900万個に第二の人生を与えた。3,200万個の製品をアウトレットで再販売、800万個以上を再梱包して安価に販売した。また、スペアパーツを送料無料で届ける取り組みも行っている。
無印良品を展開する良品計画グループが掲げるのは、「感じ良い暮らしと社会」。商品を通して生活を簡素に美しく整えることによって、地球人としての課題の解決をするという思いで事業活動を行っている。
良品計画は、1980年のブランド創生以来、ものづくりにおける「素材の選択」「工程の見直し」「包装の簡略化」の視点を大事にしている。環境に配慮した生産プロセスの導入や倫理的な原料調達はもちろん、すべてにおいて無駄を省くことで地球環境の負荷を軽減している。生活者や生産者のことを考えた商品を無印良品として具体化し、社会へ貢献しているのだ。
無印良品では、服を回収し、リサイクルする取り組みを2010年から行っている。対象は、無印良品の下着を除く衣料品やタオル、シーツなど。全国の店舗で預かった商品を、着ることができるものはリユースし、着るのが難しい場合はリサイクルする。
2015年からは、回収した服を藍色や黒に染め、「染めなおした服」として販売している。ほか、「洗いなおした服」と名した古着やリメイクを施した「つながる服」などのシリーズも展開。廃棄物の削減や資源の循環化のための取り組みである。
SDGsが徐々に浸透し、サステナブルな生活を実践したいと望む消費者やエシカルな価値観を持ちあわせた生活者が増えている。そんななかで企業に求められるのは、商品やサービスの質だけではない。サステナブルな社会の実現を目指す現代において、選ばれる企業になるためには、サステナブルな思想が必須ではないだろうか。
サステナブルな暮らしをガイドする「ELEMINIST」は、豊富な知見と実績のもと、多くの企業の事業活動に伴走してきた。記事タイアップによるプロモーション施策やエシカルマーケティング支援などを通して、サステナブル領域に関する企業の課題解決をサポートしている。具体的な取り組みの事例は、以下のページにまとめている。興味がある方はチェックしてみてほしい。
※1 SDGsに関する企業の意識調査(2022年) P1|帝国データバンクhttps://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p220811.pdf
※2 The 100 most sustainable companies are still outperforming in tumultuous times|Corporate Knights
https://www.corporateknights.com/rankings/global-100-rankings/2023-global-100-rankings/2023-global-100-most-sustainable-companies/
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