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ウォームビズとは、過度な暖房に頼らずに暖かく過ごすためのライフスタイル。地球温暖化対策の一環として、環境省が2005年から提唱している考え方だ。本記事では、ウォームビズとは何かをわかりやすく解説。ウォームビズがはじまった背景や具体的な取り組み、実践のコツを紹介する。
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ウォームビズ(WARM BIZ)とは、暖房使用時の室温の目安を20℃とし、その環境下で快適に過ごすライフスタイルのこと。環境省が2005年度から呼びかけ、地方自治体や企業でも広く取り入れられている考え方だ。
ウォームビズの目的は、地球温暖化を防止すること。環境省では地球温暖化対策として、2022年10月25日から「デコ活(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)」を提唱している。前進では「COOL CHOICE」を提唱し、CO2排出量削減のための行動として「ゼロカーボンアクション30」を提案してきた。(※1)これらの取り組みのなかで実施されてきたのが、夏季のクルービズ、そして、冬季のウォームビズというわけだ。(※2)
ウォームビズでは、暖房使用に必要なエネルギーを抑え、CO2の排出量を削減する狙いがある。
ウォームビズの実施期間は、設けられていない。2005年にはじまった当初は、11月1日から翌年の3月31日までが全国一律の実施期間として指定されていた。しかし、コロナ禍における働き方の多様化や季節外れの寒暖、地域による気候の違いなど、さまざまな点を考慮し、2021年度からは、個々の事情に応じた対策という形で呼びかけられている。
夏季のクールビズに関しても、ウォームビズ同様、柔軟なアクションとして実施されている。(※3)
ウォームビズに先駆け、2005年6月1日にはクールビズが始まった。この2005年は京都議定書が発効された年であり、環境問題への関心が高まっていた背景がある。
京都議定書は、2005年2月16日に発効された。先進国に対しCO2を含む6種類の温室効果ガスの排出削減目標を設定した内容であり、日本では2008〜2012年の5年間で温室効果ガスを6%削減することを目標に、「チーム・マイナス6%」という国民運動をスタートした。(※4)
数ヶ月後に始まったクールビズは、当時は、オフィスの冷房温度を28℃にしたうえで涼しく過ごすための夏のビジネススタイルとしての提案だった。「ノーネクタイ、ノージャケット」で体感温度を2度下げることにより、冷房使用を控え、CO2の排出削減につなげるという内容だ。(※5)同様に、暖房使用を控え、CO2の排出削減に貢献するとしてウォームビズが始まった。
日本は現在、2030年までに2013年度比で温室効果ガスを46%削減する目標を掲げている。さらに、「2050年カーボンニュートラル」も表明済み。目標達成のためには、国民一人ひとりがCO2の排出量削減を意識することが必要だ。
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ウォームビズは、ライフスタイルを少し工夫するだけで取り組める。以下で、具体的な取り組みを見ていこう。(※6)
まず一番に見直したいポイントは、暖房時の室温。ウォームビズでは、室温20℃をひとつの目安としている。体感温度は人によって異なるが、可能な範囲で室温の設定を下げてみよう。近年は、建物の性能が向上したことにより、暖房をつけなくても20℃に達するケースも存在する。暖房エネルギーの削減を意識して、温度管理をすることが大切だ。
暖かい服装を心がけることもウォームビズの取り組みのひとつ。できるだけ暖かい素材の衣類を着用することで、20℃でも快適に過ごしやすくなる。素材の見直し以外にも、重ね着や小物の活用で、暖かくすることが可能だ。
食べ物や飲み物を変えるだけでも、身体は温められる。冬の旬でもある根菜や生姜は、身体を芯から温めてくれる。冷たい飲み物ではなく、温かい飲み物を飲むことも忘れずに。
暖房で一定の暖かさに到達した後は、暖かい空気を逃さないことが重要だ。暖かい空気が窓から逃げないためには、断熱シートが有効。厚手のカーテンの使用だけでも随分と変わる。
省エネ家電を使うことで、エネルギーの使用を抑えられる。また、こたつや湯たんぽなど、暖房以外の暖房機器を活用することで、暖房の使用を最低限にできる可能性がある。
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ウォームビズの目的は地球温暖化対策だが、エコなライフスタイルを実践することで享受できるほかのメリットも存在する。以下で、3つのメリットを具体的に紹介する。
繰り返しになるが、最大のメリットは地球温暖化の防止につながることだ。暖房使用を控えたり、室温設定を低くしたりすることで、エネルギー消費が抑えられる。CO2の排出量を削減することで、温室効果ガスの削減に貢献できる。
一人ひとりの行動が与える影響は決して大きくはないかもしれないが、国民全員で実践すれば、地球温暖化防止に大きなインパクトを与えられるだろう。
ウォームビズに関するアクションを実行することは、電気代を節約することにもつながる。オフィスや家庭における暖房使用の見直しはもちろん、省エネ家電への買い替えで大幅な節約を見込める可能性も。経済的なメリットも大きいといえる。
暖房に頼りすぎない生活を送ることで、健康的な生活習慣が身につくだろう。身体を温める食生活や、しっかり温まる入浴方法、運動機会の増加などで、ライフスタイルがポジティブに変わる可能性を秘めている。
また、家族で暖房がついた部屋に集まることでコミュニケーションが増加したり、エネルギー問題・環境問題への意識が向上したりなど、プラスαのメリットもあるかもしれない。
上ではウォームビズの大まかな取り組みについて取りあげたが、ここでは、家庭とオフィス別により細かい実践のポイントを紹介する。ぜひ、実践できそうなものから取り組んでみてほしい。
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家庭においては、ウォームビズを意識したうえで、ライフスタイルを見直すことが大切。小さな工夫の積み重ねが実践のポイントになる。(※7)
部屋を暖かく保つためには、暖かい空気を逃さないことが重要。断熱材を活用して冷気を防ぐのが理想だが、難しい場合はカーテンをうまく使うだけでも随分と変わってくる。晴れの日はカーテンを開け、日光を取り込もう。反対に、夜間は冷気を逃さないためにしっかり閉めることが大切だ。
温かい食べ物・飲み物を選ぶと身体が温まる。食事には、根菜や生姜を入れた鍋やスープがおすすめ。冷蔵庫に余っている食材を活用することで、食品ロスに関わるエネルギーの削減にもつながる。
また、朝食でしっかりエネルギーを摂り、身体を温めるのも有効。その後の体感温度にも関わってくる。
お風呂ではゆっくり湯船に浸かるようにしよう。身体が芯から温まるだけでなく、リラックスできるため一石二鳥だ。
また、運動でも身体が温まる。運動が苦手な場合は、軽いストレッチで血行を促すだけでも随分と違う。
腹巻きや羽織もので寒さを対策しよう。ひざかけや毛布、毛足の長いスリッパなどの小物を活用するのもおすすめだ。首・手首・足首の「3つの首」には太い血管が通っているため、しっかり温めることで、身体全体が温まりやすくなる。スカーフやレッグウォーマーなども適宜活用しよう。
とくにお風呂上がりの防寒は必須。防寒着で冷えを防いで、心地よく眠れるように整えることが大切だ。
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大人数で過ごすオフィスは、自宅と比べて自由度が低い分、自分なりのひと工夫を模索する必要がある。しかし、アイデアしだいで格段に暖かく、快適になるものだ。(※8)
オフィスでは、ブラインドやパーテーションなどを活用し、空気を冷やさない工夫をしたい。日光が入るようにデスクの配置を整えるのもひとつの方法だ。
また、湿度を高くすることで体感温度を上げられる。加湿器や植物の設置などで、適切な湿度を保てるように工夫しよう。
オフィスでの飲み物は、温かいドリンクを心がけて。飲み物を温かい状態でキープできる真空断熱タンブラーを活用するのもおすすめだ。ランチでは、煮込み料理やスープなどの身体が温まる料理をセレクトしよう。
通勤で一駅分歩いたり、駅やオフィス内で階段を使ったりすることで、体温が上昇する。身体が温まるだけでなく、運動不足も解消できて健康的だ。
デスクでは、座ったままできる軽い運動を取り入れることで、冷え防止になる。仕事の合間には、ストレッチをして血行を促すとよい。
オフィスでは、スーツの下に薄手のニットを重ね着したり、いつもの服装にさっと一枚羽織ったりして、上手に体感温度を調整しよう。機能性素材のあったかインナーを着用するのもおすすめ。寒さの感じ方は個人によって異なるため、自分に合った服装を見極めよう。
ひざかけやカイロなどの小物を活用すると、より暖かく過ごせる。場合によっては、ネックウォーマーやフィンガーレス手袋を着用してもいいだろう。
ウォームビズは「地球温暖化対策」という共通の目的のもと、一人ひとりが意識することが大切。私たちのちょっとしたひと工夫で、未来の地球環境が大きく変わる。温かい飲み物を選んだり、一枚羽織ったりというアクションは、誰もが簡単にできるだろう。ほかにも自分なりにできることを見つけて、積極的に取り組みたいものだ。
※1 よくある質問|デコ活
※2 令和6年度クールビズについて|環境省
※3 令和3年度 ウォームビズについて|環境省
※4 「京都議定書」とは|京都府
※5 “COOL BIZ”の 使用について|環境省
※6・7 ウォームビズ(WARMBIZ)とは|デコ活
※8 平成30年度「ウォームビズ」について|環境省
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