エアコンの適正な温度設定とは? 快適な温度にする工夫やCO2排出量の関係を解説

エアコンのある快適な部屋

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酷暑日や猛暑日が9月まで続く近年、命を守り、快適に生活するためには家庭用エアコンは欠かせない。一方、電力の消費に伴うCO2排出や地球温暖化の問題も無視できない。本記事では、エアコン利用時の適正な設定温度と、快適な室温と省エネを両立するための工夫を紹介。

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2024.10.10
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快適なエアコンの温度設定とは

air conditioner

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まずは、快適なエアコンの温度設定について説明する。

室温は「夏季28℃、冬季20℃推奨」

環境省が推奨している室温は、夏季28℃、冬季20℃である。この室温を推奨している理由は、快適性を損なわない範囲で省エネルギーを目指すためとしている。(※1)

室温を推奨されている温度にするために、エアコン設定温度も夏季28℃、冬季20℃にすればよいとは限らない。エアコン気流の循環の状態や断熱性などの室内の環境によっては、室温が設定温度になるとは限らないからだ。そのため空気循環や湿度のコントロールなどの工夫をし、室温が推奨する温度に近づくようにすることも大切だ。(※2)

設定温度と室温の違い

環境省が推奨している温度をエアコンの設定温度だと勘違いしているケースが見られる。設定温度とはエアコンの操作上で設定する温度のことを指すが、室温が必ずしも設定した温度と同じになるとは限らない。

そのため、設定温度を28℃にした場合、暑く感じる人も少なくないだろう。手元に温度計を置いて測ってみるのがおすすめだ。環境省が推奨しているのは設定温度ではなく、室温である。

家庭におけるエアコン利用と温度設定の実態

環境省では、家庭で使われているエアコンの設定温度や使用時間などのデータを公表している。

暖房機器のなかでエアコンをもっともよく使っている世帯の暖房時の設定温度の平均は23.1℃であった。半数以上の世帯は、温度23℃以下にしている。

また冷房時の設定温度の平均は26.6℃で、なかでも多くの世帯で27℃に設定していることがわかった。なお、27℃以上に設定している世帯は全体の約6割を占めている。さらに暑い時期のエアコンの使用時間は、4~8時間未満の割合が全体の約3割弱を占めており一番多かった。(※1)

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室温を適正かつ快適な温度に保つための工夫

thermometer

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では、室温を適正温度かつ、快適な温度に保つためにはどうしたらいいのか。エアコンの機能を活用した方法を解説する。

自動運転モードの活用

エアコンには、自動運転モードという機能が搭載されている。自動運転モードは、設定温度になるように、室温や屋外の温度に応じて冷房、暖房、除湿などのモードの切り替えや風量の調整を自動で行う機能だ。この機能を使えば、効率よく快適な温度になるよう稼働できる。(※2)

除湿や加湿の利用

湿度を調整すれば、快適さが格段にアップする。暑い時期には除湿機を、寒い時期には加湿器を利用することで、人にも住まいにもちょうどいい40〜60%の湿度を保つようにすれば、快適に過ごすことができる。(※3)

熱帯夜は夜間もつけっぱなしにする

節電対策や身体への影響を不安視して、就寝時には「切タイマー」を設定する人も多いだろう。しかし、近年の夏のような熱帯夜ではエアコンをつけっぱなしにするのがおすすめだ。快適な室温は質の高い睡眠を提供してくれる。また、熱帯夜や朝から気温が上昇するような酷暑日では、寝ているあいだの熱中症のリスクも回避できる。(※4)

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エアコンの温度設定とCO2排出量の関係

air conditioner

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エアコンの温度設定と、CO2排出量の関係についてみていこう。

夏は一般家庭の消費電力の6割がエアコン

資源エネルギー庁の調査によると、夏の日中(14時ごろ)の一般家庭における電力消費は、エアコンが全体の約6割を占めるという結果であった。(※5)

エアコンは電力を使って運転する。この電力は日本の場合、約8割を火力発電(石炭や天然ガスなど)によって生み出している。火力発電はCO2を排出するため、エアコンの使用によって消費される電力が多くなるほど、間接的にCO2排出量が増えてしまう。(※6)

設定温度1℃変更で変わるCO2排出量

エアコンの設定温度は1℃変更するだけで、消費電力を約10%削減できる。消費電力を削減できれば、CO2排出量も減らすことができるわけだ。

具体的には、外気温度31℃の場合、エアコン(2.2kW)の冷房設定温度を27℃から1℃上げると(使用時間:9時間/日)、年間で電気30.24kWhの省エネになり、CO2削減量は14.8kgとなる。外気温度6℃の場合は、エアコン(2.2kW)の暖房設定温度を21℃から20℃にした場合(使用時間:9時間/日)、年間で電気53.08kWhの省エネになり、CO2削減量25.9kgとなる。エアコンの設定温度を無理のない範囲で、夏は高めに、冬は低めに設定し、省エネルギー効果を高めよう。(※7、※8)

エアコンの一生のなかで、CO2排出量がもっとも多いのは使用時

エアコンの製造から廃棄までに排出されるCO2の量のなかで、CO2排出量がもっとも多くなるのはエアコン使用時である。実に89%もの量が、使用時に排出される。よって消費電力の少ない製品を選んだり、エアコン使用時に設定温度を調整することで、電力の消費を抑えてCO2排出量を減らせる。(※6)

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CO2排出量を抑えるエアコンの節電方法

electric fan

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エアコンの節電方法にはいろいろある。いくつかの方法を組み合わせて、節電に取り組もう。

扇風機やサーキューレーターを併用する

扇風機やサーキューレーターを併用すれば、設定温度を変更することなく快適に過ごせる。夏の時期には、エアコンから来る風を背にして、風を送る方向に扇風機やサーキュレーターを向けて回せば、遠くに冷たい風を送ることが可能だ。また人に向けて扇風機などの風を送れば体感温度が下がり、涼しく感じる。直接風にあたりたくない場合には、扇風機の風を壁や天井に当てて、跳ね返ってきたおだやかな風を利用するとよいだろう。

寒い時期にもサーキュレーターは活躍する。サーキュレーターを使って足元の冷たい空気と天井付近にたまる暖かい空気を撹拌することで、室内の温度のムラを解消して部屋全体を暖めることができる。(※3)

フィルター掃除をこまめにする

エアコンのフィルターが目詰まりしていると、空気を吸い込む量が少なくなり、部屋を冷やす力が弱くなる。そうすると、部屋を冷やすためにたくさんの電気が必要となる。これを解消するためには、フィルター掃除をこまめに行うことが大切だ。2週間に一度の頻度でフィルターの掃除をしよう。(※3)

風量の変更で体感温度を調整する

部屋が暑いと感じた場合は、エアコンの設定温度を下げるのではなく、風量を調節するとよい。風量を強くすれば体感温度を下げることができ、快適に感じる。また、風の向きを自分の方に向けるのも有効だ。(※3)

自動運転を活用する

自動運転モードを活用すれば、快適な室温になるよう効率よく風量を調節してくれる。たとえば、部屋が冷えるまでは強風で、ある程度冷えたら微風になるといった具合だ。自動運転モードを使うことで余分な電力を使わずに済み、電気代を抑えることができる。(※3)

室外機の周りに物を置かない

エアコンの室外機の周りに、物を置いていないかチェックしよう。室外機の周りに物を置いたり、カバーで覆ったりすると、吹き出し口がふさがれて放熱がうまくいかず、熱風を再び吸い込んで冷却効率が低下する場合がある。そうならないためにも、室外機の前は十分なスペースを空け、周りに物を置かないようにしよう。また雪が多く降る地域では、室外機の雪対策を行い、吸込口が雪で目詰まりしないように気をつけたい。(※3)

室外機は日陰に置く

直射日光や地面からの照り返しによって、エアコンの室外機が高温になると熱を捨てる効率が低下し、電気を余分に使うことがある。これを避けるためには、室外機を日陰に置くことが有効だ。ただしすでに日が当たる場所に設置されている場合には、室外機から1mほど離れたところに、よしずや植木などを利用して日陰をつくるとよいだろう。この場合、室外機の吹出口をふさがないように注意しよう。(※3)

冬場は太陽熱を部屋に取り入れる

冬場は、日中の太陽熱を利用して部屋を温めるとよい。太陽熱を部屋に取り込むことで、暖房の効率を上げることが可能だ。日中に取り込んだ太陽熱を逃さないように、夜間は厚手のカーテンや断熱シートなどを利用しよう。カーテンを利用するときには、上部や下部にすきまができないよう、天井から床いっぱいまでカーテンで覆うようにすると保温効果を高められる。また暖色系のカーテンで視覚的に体感温度を上げるなど、ちょっとした工夫もプラスしよう。(※3)

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エアコン+工夫で、室温夏季28℃、冬季20℃に

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環境省が推奨している室温は、夏季28℃、冬季20℃である。この室温を目安にすることで、省エネや、CO2削減につながる。エアコンの設定温度に加えて、サーキュレーターを活用したり、フィルター掃除をしたりといった工夫をし、推奨している室温で快適に過ごせるようにしよう。

※掲載している情報は、2024年10月10日時点のものです。

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