EUとは その歴史と加盟国、国際社会への影響

欧州旗

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EU(欧州連合)とは、27の加盟国から成る、経済的および政治的協力関係を持つ民主主義国家の連合体である。近年イギリスが脱退したことも話題となったが、加盟国にはさまざまな恩恵があり、国際社会への影響力も強い。この記事では、EUについてその歴史や影響を改めて紹介する。

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2024.10.28
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EU(欧州連合)とは

海辺の街

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欧州連合(EU)は、27の加盟国から成る、経済的および政治的協力関係を持つ民主主義国家の連合体である。各国は主権国家でありながら、その一部の主権をEU機構に譲渡し、共通の政策や法律を制定するという独自の仕組みを持っている。この国境を越えた共同体は、平和、繁栄、そして市民の生活向上を目指しており、経済だけでなく、政治、安全保障、環境、社会福祉など多岐にわたる分野で協力が行われている。(※1)

EUの目的

EUの主な目的は、加盟国間の平和と安定を確保し、経済的な発展と繁栄を推進することだ。人権の尊重、民主主義、法の支配といった価値観を共有し、社会的な統合とともに国際的な影響力を強化することを目指している。さらに単一市場の創設を通じて、物、サービス、人、資本の自由な移動を実現し、経済的な競争力を高めている。

経済・政治的な統合体としてのEUの特徴

EUは、経済と政治の両面で強力な統合を進めている。経済的には、ユーロという共通通貨を導入している20の加盟国が「ユーロ圏」を形成しており、欧州中央銀行(ECB)が管理している。また「シェンゲン協定」により、多くの加盟国間で国境検査が廃止され、移動の自由が保証されている。政治的には欧州議会、欧州委員会、欧州理事会といった主要機関が、EU全体の政策立案と実行を担っており、加盟国の政府間での協力を基盤に、共通の方針が決定される。

世界におけるEUの位置付け

EUは世界の主要な経済圏の1つであり、貿易、環境保護、人権問題において国際社会に大きな影響力を持っている。また共通外交・安全保障政策(CFSP)を通じて、世界各地での紛争解決や人道支援に積極的に関与している。近年では気候変動問題においてもリーダーシップを発揮し、再生可能エネルギーの普及や温室効果ガス削減に向けた取り組みを主導している。

EU加盟国と加盟条件

EUに加盟するためには、民主主義、法の支配、人権の尊重、そして少数派の権利を保護するという基本的な基準を満たす必要がある。さらに安定した市場経済を持ち、EUの経済的および通貨政策に対応できる能力が求められる。また加盟国はEU法を遵守し、その実施を確約する必要がある。これまでに27の国々がEUに加盟しており、欧州大陸の広範囲にわたって影響力を持っている。

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EUの設立の歴史

夜の街

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EUの歴史は、第二次世界大戦後の欧州再建にさかのぼる。戦争による甚大な被害と経済の停滞を背景に、欧州諸国は共同体としての平和的な再建を目指した。その出発点は、1951年にフランス、西ドイツ(当時)、イタリア、ベルギー、ルクセンブルク、オランダの6カ国によって設立された「欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)」であった。石炭と鉄鋼という、当時の軍事力の基盤を共同管理することで、戦争の再発防止と平和維持を目指した。(※1)

欧州共同体(EC)とマーストリヒト条約

欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)はその後、1957年の「ローマ条約」によって「欧州経済共同体(EEC)」と「欧州原子力共同体(EURATOM)」が設立され、これにより経済統合がさらに進展した。こうして形成された「欧州共同体(EC)」は、経済的なつながりを強化し、加盟国間の関税を撤廃するなど、共通市場の創設に向けた歩みを進めた。その流れを経て、1993年に発効した「マーストリヒト条約」により、欧州共同体は「欧州連合(EU)」へと発展し、政治統合も進むこととなる。

ユーロの導入とEUの拡大

2002年には共通通貨「ユーロ」が導入され、現在では20の加盟国がユーロ圏に参加している。ユーロの導入により、通貨統合が実現し、EU内での経済的な結びつきは一層強固なものとなった。また冷戦の終結後、東欧諸国のEU加盟が相次ぎ、EUは東ヨーロッパへと拡大していった。2004年には10カ国が新たに加盟し、EUは史上最大の拡大を遂げた。

拡大と多様性の受容

2004年の東欧諸国を含む10カ国の加盟は、冷戦終結後の欧州全体の安定と統合に向けた歴史的な進展であった。これに続き、2007年にはルーマニアとブルガリア、2013年にはクロアチアが加盟し、現在のEUは27カ国に拡大した。この過程で、民主主義や人権、法の支配といった基本的価値観が、加盟国に求められる重要な条件として強調されている。

リスボン条約と現代のEU

EUは、2009年に「リスボン条約」を発効させた。この条約は、EUの意思決定を行うためのプロセスを効率化し、より民主的で透明性の高いシステムを構築することを目的としていた。リスボン条約では、欧州理事会の常任議長の創設や欧州連合外務・安全保障政策上級代表の設置が定められ、外交政策と安全保障政策が一層強化された。また欧州議会の権限も拡大され、EU全体の意思決定において市民の声がより反映されるようになった。

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EUの主な機関とその役割

列車

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EUの運営にはいくつかの重要な機関が存在しており、それぞれが特定の役割を担っている。(※1)(※2)

欧州委員会(EC)

欧州委員会は、EUの政策立案と実施を担う執行機関である。各加盟国から選ばれた委員が集まり、EUの法律や規制の提案、実施、管理を行う。またEU法の順守を監視し、違反があった場合には是正を求める権限も持っている。欧州委員会はEU全体の利益を代表する機関であり、加盟国政府の意向とは独立して活動する。

欧州議会(EP)

欧州議会はEUの市民を代表する立法機関であり、加盟国の市民が直接選挙で選出した議員で構成される。欧州議会の役割は、欧州委員会が提案する法律を審議し、必要に応じて修正を加えたうえで採択することである。また、EUの予算を承認する権限も有している。

欧州理事会

欧州理事会は、各EU加盟国の国家元首や政府首脳が集まり、EUの全体的な政治方針や優先事項を決定する場である。年に数回の首脳会議を通じて、欧州理事会はEUの戦略的方向性を示し、主要な政策課題に関する決定を下す。その決定は、各加盟国の政策に大きな影響を与える。

欧州中央銀行(ECB)

欧州中央銀行はユーロ圏の金融政策を担当する機関であり、物価の安定を確保することを主要な目標としている。ECBはユーロ圏内の銀行を監督し、金融システムの安全性と安定性を保つための措置を講じる。またECBは金利政策を通じて経済の調整を行い、インフレを抑制しつつ経済成長を促す役割を担っている。

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EUの主要政策と活動

並んだ国旗

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EUは経済や環境、農業などさまざまな分野で統合的な政策を展開している。これらの政策は加盟国間での協力を深め、EU全体の持続可能な発展を目指している。

共通通貨ユーロの導入と経済統合

ユーロは、EU加盟国間の経済統合を象徴する共通通貨である。現在ユーロ圏には20カ国が加盟し、経済通貨同盟を通じて経済政策を調整している。(※1)

関税同盟と単一市場

EU加盟国間では国境や関税の壁が取り除かれ、自由な取引が可能である。EUの関税同盟も、域外からの輸入に共通の関税を適用し、域内市場を保護する役割を持つ。(※1)

共通農業政策(CAP)や地域政策

共通農業政策(CAP)はEUの重要な政策の1つであり、農業従事者の所得を保障し、農業の持続可能な発展を目指している。CAPは価格・所得政策と農村振興政策の2本の柱で構成され、とくに環境保護や気候変動への対応を強化している。またEUの地域政策は、経済的に遅れをとる地域の発展を支援し、地域間の格差是正を図る。(※3)

気候変動対策や環境保護に関する取り組み

EUは、気候変動対策においてもリーダーシップを発揮している。2030年までに温室効果ガス排出量を1990年比で55%以上削減する目標を掲げ、再生可能エネルギーの普及やエネルギー効率の向上を推進している。またEUの「グリーン・ディール」は、持続可能な経済成長を目指す重要な政策であり、気候変動の影響を最小限に抑えるための具体的な取り組みが進められている。(※4)

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EUのメリット

並んだ欧州旗

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EUに加盟することで、各国は多くの恩恵を享受している。

経済的メリット

EUの単一市場によって、自由な貿易と労働力の移動が可能となり、加盟国の経済が大きく成長している。関税が撤廃され、企業はEU域内でのビジネスをスムーズに展開できる。また労働者も他の加盟国で働く機会が増え、経済的な豊かさを享受している。(※1)

政治的メリット

EUは、加盟国間の政治的安定を促進する役割も果たしている。とくに平和維持や国際協力の強化が図られており、EU加盟国は一体となって外交政策や安全保障問題に取り組んでいる。これにより、対外的な影響力も強化され、国際社会での発言力が向上している。(※1)

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イギリス脱退の理由と背景

時計塔

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イギリスがEUを離脱した背景には、移民問題やEUからの規制に対する不満があった。とくにEU域内からの移民の増加が、イギリス国内での労働市場や社会福祉制度に影響を与えたと考えられている。さらにEUの政策決定に対する独立性を求める声も強く、2016年の国民投票の結果、離脱が決定された。(※5)

EUが直面する課題

群衆

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EUは統合の過程で数々の利点を享受してきたが、依然として多くの課題に直面している。以下のような課題に対する具体的な対応や政策を進めながら、EUはより強固な連携を目指している。

規制の多様性

EU加盟国はそれぞれ独自の法律や規制を持っており、これがEU全体での統合を進めるうえで大きな障害となっている。とくに金融や税制、労働法などにおける各国の規制の差異は、経済活動の統一性を損なう要因となっている。

政治的調整の難しさ

EUには27の加盟国があり、意思決定の場面で各国の利害が対立することが頻繁に起こる。例えば経済政策や移民政策、安全保障に関する決定には、全加盟国の合意が必要なため時間がかかる場合が多い。

イギリスの離脱後の変化

イギリスのEU離脱は、EUにとって大きな打撃となった。単一市場からのイギリスの撤退は、貿易や金融の分野での影響が大きい。この影響を最小限に抑えるため、イギリスとの「EU・イギリス通商協定」を締結し、今後の経済関係を規定した。この協定は関税を基本的に撤廃し、自由貿易を維持するものの、特定の分野では引き続き交渉が必要とされている。

移民問題への対応

2015年の難民危機以降、EUは移民や難民の大量流入に対応するための統一的な政策を模索している。2011年から続くシリア内戦などを背景に、多くの難民が欧州に流入し、一部の加盟国で社会的な負担が増加した。(※6)

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EUと日本の関係と環境問題への対応

スマホとケーブル

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EUと日本は、自由や民主主義、法治主義といった基本的価値を共有し、経済や安全保障、環境問題など多方面の分野で協力関係を強化している。なかでも気候変動対策やエネルギーの持続可能な利用においては、EUと日本が協力して取り組むべき課題が多い。EUのグリーン政策や温室効果ガス削減目標に向け、日本も技術や知識を共有し、再生可能エネルギーの普及や環境技術の開発で貢献している。距離は遠いが、理念や政策など共通している部分が多いため、日本の政策の参考にもなるだろう。今後の動向や日本とEUとの関係にもぜひ注目していきたい。

※掲載している情報は、2024年10月28日時点のものです。

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