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CO2の排出を限りなく抑えたEV(電気自動車)が世界で注目されている。しかし、日本は海外に比べてEVの普及が進んでいない。この記事では、日本のEV普及率と現状の課題、各国の取り組みについて解説する。
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EVとは「Electric Vehicle」の略であり、日本語で「電気自動車」を意味する。EVは車載バッテリーに充電した電力で駆動する電動車両であり、バッテリーに蓄えられた電気によってモーターを動かすことで走行が可能だ。
EVの大きな特徴に、CO2排出量を0もしくは限りなく抑えて走行できる点が挙げられる。したがって、環境にやさしい自動車として世界で注目されている。(※1)
ここでは日本のEV普及率と現状について解説する。
日本における2023年度の新車販売台数に占める電気自動車の割合は3.6%と、全体の中で占める割合は高くない。(※2)
また、日本自動車販売協会連合会が提出した「燃料別・メーカー別登録台数(乗用車)」によると、2024年8月のEV乗用車数は2,682件で前年比85.9%となっており、前年を下回る結果であった。また2024年は7月を除いたすべての月で前年を下回っていることから、国内のEV乗用車数はやや不調といえる。(※3)
都道府県別の補助金の推移を確認すると、2023年度にもっとも多かったのは東京で、2020年度から右肩上がりで増え続けている。次は愛知、神奈川、大阪となっており、都市部やその近辺に集中している。
一方、2023年度にもっとも少なかったのは青森だ。次は秋田、高知、鳥取、岩手となっており、東北地方は普及率がやや不調といえる。(※4)
日本のEV普及率は1%未満といわれている。国内でEVが普及しない要因に、充電インフラの不足、ガソリン車と比べてEVの購入価格が高い、充電に時間を要する、航続距離が短い、充電インフラの標準化(EVやPHEVなどの充電設備の規格統一)などが挙げられている。(※5)(※6)
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ここでは世界のEV普及率と現状について解説する。
IEA(国際エネルギー機関)のデータによると、世界のEV普及率は2023年時点で18%となっている。2020年以降は伸び率も大きく、2020年が4.2%、2021年が9%、2022年が14%、2023年が18%と上昇傾向にある。(※7)
アメリカでは電気自動車界隈をけん引してきたテスラの存在が大きく、2022年の販売台数は81万466台となっており、新車販売台数に占める比率は5.8%だ。今後もEVの普及は加速していくと考えられる。 (※8)
ヨーロッパのEV普及率は、2024年7月時点で全体の約21%を占めている。2023年に販売された車の5台に1台以上がEVであり、普及率は好調だ。なかでもノルウェーは90%近くのEVシェアとなっており、ヨーロッパでは北欧の普及率が極めて高い。(※7)
中国のEV普及率は近年急速に上昇し、世界最大のEV大国へと上り詰めた。自動車販売シェアの20%は中国が占めており、ヨーロッパが15%、アメリカが8%、日本が2%となっている。しかし2023年度の新車販売台数は79万4,000台で、前年度比から24.0%と大幅に減少した。今後どのような取り組みをとおして回復していくのかに注目が集まる。(※9)
インドのEV普及率は、2023年時点で約2%だ。2023年のEV新規国内登録台数は、前年から5割増の153万1,742台と過去最高となった。今後もますますインドのEV市場は拡大していく見込みだ。(※10)(※11)
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ここでは、なぜいまEVが注目されているのかについて言及していく。
パリ協定にて「温室効果ガス排出削減(緩和)の長期目標として、気温上昇を2℃より十分下方に抑える(2℃目標)とともに1.5℃に抑える努力を継続すること、そのために今世紀後半に人為的な温室効果ガス排出量を実質ゼロ(排出量と吸収量を均衡させること)とすること」が盛り込まれた。
このパリ協定に基づくCO2削減目標をはじめ、世界中で脱炭素化への流れが加速していることから、走行中のCO2排出量が極めて少ないEVに注目が集まっているというわけだ。(※12)
SDGsとは「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されている「2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標」である。EVは、SDGsへの貢献にも一役買う。国内のCO2排出量を部門別に分類すると運輸部門は全体の約2割を占めており、これらに使用する自動車がEVに置き換わるだけでも、相当なCO2削減につながる。
したがってEVの走行中のCO2排出量が極めて少ない点は、SDGs目標7の「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」に貢献しているといえるだろう。(※13)(※14)
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出を全体でゼロにする取り組みである。日本政府は2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指すと宣言しており、この取り組みに向けて自動車産業もCO2削減に取り組む活動を積極的に行っている。(※15)(※16)
日本政府は「2035年までに、乗用車の新車販売で電動車100%」の目標に向けて、EV・FCV・PHVを対象に購入補助事業を行っている。EVを購入の場合は最大85万円の補助を行うなど、今後も購入者へのサポートを実施していく見込みだ。(※17)
日本の自動車メーカー各社も車両の電動化を進める。スバルは2030年に全世界の市販車の50%をEV化を掲げている。そのほか、トヨタは2030年までにEVの年間販売台数350万台に、ホンダは2040年までにEV・FCEVの販売比率を100%に、日産とマツダも複数のEVモデルを導入する予定だ。(※18)
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ここではEV普及における現状の課題について解説する。
EV普及における課題として、充電インフラの不足が挙げられる。全国に充電インフラは整備されているものの、以下の3つが理由で現状も不足状態が続いている。
1.充電インフラが整備されていることへの認知不足
2.一部に空白が残っており、面的インフラ整備に向けて継続的な取組みが必要
3.都心部は基数こそ多いが、有料駐車場や自動車販社に設置されているため利用しずらい
このように、都心部は基数こそ多いものの「誰もが気軽に使える充電器」は意外と少ないのが現状だ。したがって、今後も充電インフラの不足に対しての改善が必要とされている。(※19)
EV普及における課題として、高い初期コストが挙げられる。EVはガソリン車よりも値段がやや高いため、懸念されがちだ。これに対し政府は、EV購入者に補助金を交付して購入負担を軽減するなどの施策を行っている。
電気はガソリンより安価であることから、ランニングコストも抑えられる点において、長期的に使用するうえで高い初期コストも回収できるといえるだろう。(※20)(※21)
EV普及における課題として、エネルギー供給の課題が挙げられる。たとえば配達や宅配時に使用する自動車に搭載する冷凍機器への電力供給まで十分に補えるか、将来的なEV化社会における電力消費の増加により、一定の時間帯や場所に充電が集中した場合の対応をどうするかといった、局所的な系統影響が起こる可能性への対策が必要だ。(※22)
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ここでは、EV普及を向上させるための各国・主要国の取り組みについて解説する。
EUでは2035年に全新車のゼロエミッション化を確定した。 合成燃料に関する提案が焦点となり、同年以降は内燃機関搭載車の生産を実質禁止すると決定したのだ。これにより、EVの普及はさらに広がると予想される。
ただし欧州委員会が2026年に進捗評価を実施し、プラグインハイブリッド技術などの開発状況を考慮したうえで、再び規則の見直しを行う余地を残すとしている。(※23)
バイデン米政権は、2030年までに新車の半数以上をEV、FCVとする大統領令を発令した。EV普及に向けた具体的な取り組みとして、各種助成金や報奨金などを実施。またカリフォルニア州ではゼロエミッション化(無排出化)として、2035年までに州内で販売する乗用車・小型トラックをゼロエミッション車に義務付けることを目指すとしている。(※24)(※25)
中国ではEVやPHV、FCVなどをまとめてNEV=「新エネルギー車」と呼んでいる。中国政府は2027年までに、すべての新車販売に占めるEVなどの新エネルギー車を全体の45%にする目標を掲げた。EV普及への具体的な取り組みとして、EV購入者への補助金や優遇税制などを行い支援している。(※26)
インド政府は2030年までに四輪車の3割、二輪車・三輪車の8割をEV化にする目標を掲げた。今後は商用車7割、自家用車3割、バス4割、二輪車・三輪車8割のEV化を目指す。EV普及への具体的な取り組みとして、EV購入者への補助金や登録料免除、充電インフラの整備などを行っている。(※27)
日本では自動車部門のCO2排出が、国内全体のCO2排出量において約16%を占めている。このような背景から、日本政府は「2035年までに乗用車新車販売で電動車100%」の目標を掲げ、クリーンエネルギー自動車の新規購入に「CEV補助金」を設けるなどのサポートを行っている。(※20)
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EVは走行中のCO2排出量を0または限りなく少なくできるため、多くの国民に浸透すれば環境問題の解決やカーボンニュートラルの実現に寄与するだろう。同時に国内のEV普及が進むにつれて、充電インフラの不足といった課題の解決も必要だ。
地球の環境を守るためのアクションとして、EVの導入は大きな一歩だ。自動車の購入を検討している場合は、補助金や減税などのサポートがあるいまだからこそ、候補に入れてみてはいかがだろうか。
※1 EV/PHV/FCV/HVとは?メリット・デメリットと普及のための重要点を解説|三菱ケミカル株式会社
※2 Global EV Data Explorer|IEA
※3 燃料別メーカー別登録台数(乗用車)2024年8月|一般社団法人 日本自動車販売協会連合会
※4 都道府県別 補助金交付台数(EV・PHEV・FCV・原付EV)|一般社団法人 次世代自動車振興センター
※5 日本のEV充電の状況と課題|経済産業省
※6 充電インフラの普及に 向けた取組について|経済産業省
※7 Explore and download the full data behind the Global EV Outlook|IEA
※8 2022年米新車市場と2023年見通し(後編)EVは前年から大幅に増加|JETRO
※9 中国EV市場での苦戦で利益予想の大幅引き下げとなった日産…消費者意識の変化に取り残されていく日系自動車メーカーの行く末|YAHOO!JAPANニュース
※10 世界3位の自動車市場インドでEV普及本格化…中国勢の存在感薄く、スズキやテスラ参入へ|読売新聞オンライン
※11 2023年EV登録台数が過去最高、前年比5割増の150万台超(インド)|JETRO
※12 第2節 パリ協定を踏まえた我が国の気候変動への取組|環境省
※13 1.温室効果ガス排出・吸収量|環境省
※14 SDGsって何だろう?|unicef
※15 求められる基本姿勢と取組(全事業者共通)|環境省
※16 第3節 2050年カーボンニュートラルに向けた我が国の課題と取組|経済産業省
※17 自動車の“脱炭素化”のいま(後編)~購入補助も増額!サポート拡充で電動車普及へ|経済産業省
※18 【自動車産業のカーボンニュートラル】国内主要メーカーはどう取り組んでいる?|EV-DAYS
※19 充電インフラの課題解消と拡充に向けた取り組み|経済産業省
※20 クリーンエネルギー自動車の購入補助金がリニューアル、自動車分野のGXをめざせ|経済産業省
※21 EVトラック導入によるランニングコスト削減と労働環境改善の実現|環境省
※22 EV普及拡大の期待と課題|経済産業省
※23 EU、2035年の全新車のゼロエミッション化決定、合成燃料に関する提案が焦点に|JETRO
※24 バイデン米政権、2030年までに新車の半数以上をEV、FCVとする大統領令|JETRO
※25 連邦政府のEV普及政策、成果と課題(米国)|JETRO
※26 中国、27年にEVなど新エネ車45%に 従来目標を前倒し|日本経済新聞
※27 インドにおけるEV普及に向けた取り組み ―部品や電池材料の供給が課題~当面は海外からの輸入|MITSUI&CO
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