FCV(燃料電池自動車)のメリットは? 仕組みやEVとの違いも解説

FCVのイメージ

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カーボンニュートラル実現に向けて世界中で注目されている、「FCV(燃料電池自動車)」。本記事では、FCVのメリットやデメリット、仕組みについてわかりやすく解説しながら、市場規模、EVやハイブリッド車との違いについても言及する。

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2024.09.21

FCV(燃料電池自動車)とは

FCVのイメージ

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「FCV」とは、「Fuel Cell Vehicle(燃料電池自動車)」の略称。

燃料電池内で水素と酸素を化学反応させて発電し、その電気エネルギーを利用してモーターを動かし走行する自動車のことを指す。

FCV(燃料電池自動車)の仕組み

FCV(燃料電池自動車)では、外から取り込んだ空気(酸素)と水素を燃料電池内に送り、化学反応によって電気と水を発生させる。発生した水は車外へと排水。電気はモーターに送り、そのモーターの回転によって車が走る仕組みだ(※1)。

電気を発生させるために必要な水素は、ガソリン車がガソリンスタンドで燃料を補給するように、水素ステーションで燃料となる水素を補充する。

EV(電気自動車)やハイブリッド車との違い

充電しているEVのイメージ

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FCV(燃料電池自動車)は、エンジンではなく電気モーターを駆動して走行する自動車という点で、EV(電気自動車)の一部として分類されるが、一般にいうEVとFCVではモーターを動かすために必要な電力の供給元に違いがある。

EVの場合は、外部から供給される電力をバッテリーに充電して、モーターの動力源にしているが、FCVは自動車に搭載された燃料電池内で発電をおこない、その電力でモーターを動かしている。

また、EVやFCVといった電気自動車と同様に注目されているハイブリッド車は、2種類以上の動力をハイブリッドした(かけ合わせた)車のことを指す。一般的には、ガソリンと電気を動力とする車を指すことが多く、ガソリンで動くエンジンと電気で動くモーターの両方を車に積んでいるのが特徴であり、この点が電気自動車との違いである(※2)。

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FCV(燃料電池自動車)のメリット

ここからは、FCV(燃料電池自動車)のメリットを紹介する。

走行中の二酸化炭素排出ゼロ

車が走っているイメージ

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地球温暖化の抑制のため、さまざまな業界で二酸化炭素などの温室効果ガス排出削減の取り組みがおこなわれている。

自動車業界も例に漏れず、ガソリン車のような二酸化炭素を多く排出する車から、二酸化炭素の排出量が少ない車への転換が進められている。なかでも環境にやさしいとされているのがFCV(燃料電池自動車)だ。

FCVの走行中に排出されるのは、水(水蒸気)のみ。二酸化炭素や大気汚染につながる窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)を排出しないことがFVCを選ぶ大きなメリットのひとつである。

エネルギー効率が高い

エネルギー効率の高さも、FCV(燃料電池自動車)のメリットである。ガソリン車のエネルギー効率が10数%程度であるのに対して、FCVは30%程度と約2倍の高いエネルギー効率を実現している。

また、ガソリン車では効率が落ちる低速域でも、FCVならば高効率を維持することが可能だ(※3)。

静音性が高く、加速がなめらか

EV同様、モーター駆動車ならではの静音性の高さも特徴だ。加速もなめらかで、発進から中速度域まで、優れた加速性能を発揮する。

充電が不要

電気自動車といえば、長時間の充電が不可欠なイメージがあるが、FCV(燃料電池自動車)は充電不要。ガソリン車と同様に短時間の燃料充填が可能だ。

また、1回の充填による走行距離も電気自動車より長く、将来はガソリン車と同程度になると予測されている。

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FCV(燃料電池自動車)の課題

FCV(燃料電池自動車)のメリットについて理解したところで、課題についても見ていこう。

水素ステーションの数が少ない

水素ステーションのイメージ

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まず挙げられる課題は、FCV(燃料電池自動車)の発電に必要な水素を充填する水素ステーションが少ないこと。

水素ステーションの数は、2024年8月時点で日本全国に152ヵ所。EVステーション数が全国におよそ21,000拠点、ガソリンスタンドが全国におよそ27,000拠点あることと比較すると、その少なさは一目瞭然だ。

車両価格が高い

車両価格の高さも課題のひとつ。FCV(燃料電池自動車)は、燃料電池にレアメタルを使用しており、製造コストが高いため、車両価格自体が高くなる。

国からの補助金を利用した場合でも、一般的なガソリン車と比べて高くなってしまうのが現状だ。

水素の製造過程で二酸化炭素が排出される

走行時には二酸化炭素を排出しないFCV(燃料電池自動車)だが、発電に必要な水素を製造する過程では二酸化炭素を排出してしまう。

環境にやさしい車とされながらも、完全に二酸化炭素排出ゼロにはできていないことも課題として挙げられるだろう。

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FCV(燃料電池自動車)の現状と市場動向

ここからは、FCV(燃料電池自動車)の現状や市場動向について解説しよう。

FCV(燃料電池自動車)の市場規模

世界の電気自動車市場規模は、2020年時点で2,467億ドル、日本円にして約35兆円の規模だ(※4)。環境問題対策としてガソリン規制がおこなわれている国も多く、今後さらに市場規模が拡大すると予想されている。

FCV(燃料電池自動車)においても、2040年度は世界市場で10兆8,580億円と、2022年度比で130.3倍と予測されるなど、注目度や期待値の高さがうかがえる。日本市場でも2040年度は1兆3,870億円と、2022年度の533.5倍もの規模に拡大すると予測されているのだ(※5)。

FCV(燃料電池自動車)の主要メーカー

日本国内でFCV(燃料電池自動車)の乗用車を市販しているメーカーは、トヨタ自動車とヒョンデ、ホンダの3社。

ホンダは、水素を燃料とするFCV「クラリティ FUEL CELL(フューエル セル)」の生産を2021年に終了。しかし、2024年7月、新型燃料電池自動車として、外部から充電可能なプラグイン機能を持つ「CR-V e:FCEV(シーアールブイ イーエフシーイーブイ)」を、燃料電池自動車の普及促進に協力している自治体や企業、ならびに一般客へリース形式で販売を開始した(※6)。

2014年にトヨタが「ミライ」を世界初の量産燃料電池自動車として市販化。ヒョンデの「ネッソ」は、2018年に販売を開始し、日本では2022年に販売を開始した。

公共交通機関での導入事例

バスのイメージ

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FCV(燃料電池自動車)は公共交通機関にも導入されている。

たとえば、東京都交通局は2024年4月時点で、トヨタが開発を手がけるFCバス「SORA(ソラ)」を、国内バス事業者のなかで最大となる75両を運用(※7)。

また京王電鉄バス・京王バスのグループが運営する京王バスや、京急グループの京浜急行バスなどが環境への取り組みとして燃料電池バスを導入している(※8)。

今後の展望

経済産業省が2023年7月に発表した「モビリティ分野における水素の普及に向けた中間とりまとめ」によると、今後の対応の方向性において、「燃料電池自動車は、自動車分野におけるカーボンニュートラルの実現に向けて不可欠な技術の一つ」と記載している。

車両や水素の価格が高いこと、水素ステーションの整備といった課題はあるものの、今後は、乗用車に加えて、トラックやバスなどの商用車での需要が拡大していくことを期待しているという(※9)。

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FCV(燃料電池自動車)が求められる背景

FCV(燃料電池自動車)が求められるのには、世界中が目標に掲げているカーボンニュートラルの実現が背景にある。なぜFCVがカーボンニュートラル実現に向けて、注目されているのか、詳しく解説しよう。

運輸部門の二酸化炭素排出量は日本全体の15.9%

輸送に使われるトラックのイメージ

Photo by Sander Yigin on Unsplash

自動車やトラック、バスなどの運輸部門における二酸化炭素の排出量は、2022年のデータで世界全体で年間約80億トンにもおよび、排出量がもっとも多い部門のひとつである(※10)。

また、2022年度における日本の二酸化炭素排出量(10億3,700万トン)のうち、運輸部門からの排出量(1億9,180万トン)は18.5%。さらに、自動車全体では運輸部門の85.8%(日本全体の15.9%)もの割合を占めているのだ(※11)。

カーボンニュートラル実現に向けて

日本において2050年までにカーボンニュートラル実現を目標に掲げるいま、二酸化炭素排出量の多くの割合を占めている自動車やトラック、バスなどの運輸部門において、二酸化炭素排出削減に取り組むことは必要不可欠である。

そんななか解決方法のひとつとして、走行時に二酸化炭素を排出しないFCVが期待されているのだ。

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FCV(燃料電池自動車)も選択肢のひとつに

走行時二酸化炭素を排出しないことから“究極のエコカー”とも呼ばれているFCV。さまざまなメリットがある一方でまだまだ課題も多く、すぐにはガソリン車のように普及することはむずかしいかもしれない。

しかし、購入時には補助金を受けられるなどサポートもあるので、車の購入を検討している人は、環境問題解決へのアクションとしてFCVも候補に入れてみてはいかがだろうか。

※掲載している情報は、2024年9月21日時点のものです。

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