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カーボンニュートラル実現に向けた取り組みのひとつとして、日本政府は2035年までにガソリン車の新車販売の廃止を目指している。本記事では、政策について詳しく紹介しながら、そこに至った理由や背景、世界の動向についても言及。私たちの生活にどのような変化があるのかも考えていく。
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100年以上もの間、世界中で人々の交通手段として活用されてきたガソリン車。しかし、環境面への配慮から、いま世界中でガソリン車廃止の動きが起きている。
日本政府は、2035年までにガソリン車の新車販売終了を目指しており、乗用車においては、2035年までに新車販売で電気自動車100%を目標に掲げている(※1)。
2023年のデータによると、燃料別新車販売台数(普通乗用車)の割合において、ガソリン車は35.77%(※2)。これを電気自動車に変換することで、ガソリン車によるCO2(二酸化炭素)排出量を削減する狙いがある。
2035年にガソリン車の新車販売終了が実現した場合、その後はどうなっていくのだろうか。2035年以降に起きること、起きると予想されることを紹介しよう。
2035年に廃止を目指しているのは、ガソリン車の新車販売が対象。
ガソリン車の新車販売終了が実現しても、中古車市場ではその後もガソリン車が流通するため、中古車であれば2035年以降も購入が可能だ。
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2035年以降、ガソリン車を使えなくなってしまうのでは?と心配している人も少なくないだろう。しかし前述した通り、廃止の対象はあくまでガソリン車の新車販売。持っているガソリン車は、引き続き使うことができる。
しかし、カーボンニュートラルの実現に向けて、燃料税の引き上げや、車両税の増税、CO2排出量に基づく課税などの実施が予想されるため、ガソリン車を所有していると経済的な負担が大きくなる可能性があるだろう。
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東京都では、2019年に公表した「ゼロエミッション東京戦略」において、CO2の排出量を2050年までに実質ゼロとする計画を示している。
公表後、電気自動車やプラグインハイブリッド車、燃料電池車について、都内の乗用車の新車販売の割合を2030年までに50%にすることを目標に、購入費の補助などをおこなってきた。
2020年には、小池百合子都知事が、都内でのガソリン車の新車販売について、乗用車は2030年までにゼロにすることを目指すと表明している(※3)。
政府が策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」よると、「運輸部門のCO2排出量の86%を占める自動車のカーボンニュートラル化に向け、燃料・エネルギーのカーボンニュートラル化の取り組みを通じて、多様な選択肢を追求し、2050年に自動車の生産、利用、廃棄を通じたCO2ゼロを目指す」という目標が掲げられている(※4)。
つまり、2050年にはガソリン車の利用廃止を目指す、ということ。少しむずかしい目標のようにも思えるが、すでに普通車の新車販売の50%以上がハイブリッド車であることを考えると、実現できる可能性も大いにあるだろう。
そもそも、なぜガソリン車を廃止する必要があるのだろうか。廃止に向けた動きの背景について説明しよう。
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まず挙げられるのは、ガソリン車によるCO2排出量の多さだ。
2022年度における日本のCO2排出量(10億3,700万トン)のうち、運輸部門からの排出量(1億9,180万トン)は18.5%を占めている。自動車全体では、運輸部門の85.8%を占めており、これは日本全体の15.9%にもおよぶのだ(※5)。
これだけ多くの割合を占めていることから、ガソリン車の新車販売廃止や利用廃止が実現すれば、かなりの量のCO2排出量を減らせることが想像ができるだろう。
またCO2だけでなく、ガソリンを燃やしてエネルギーにするときに排出されるガスには、一酸化炭素(CO)や窒素化合物(NOx)など、多くの化学物質が含まれている。それらは大気中で、人間や生物に害のある物質に変化し、酸性雨や光化学スモッグなどの大気汚染を引き起こしてきたとされるほか、森林や農業などにも悪影響を与えているのだ。
ガソリン車の新車販売終了や利用廃止などの目標を掲げている「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」。政府がこれを策定したのは、パリ協定がきっかけにある。
パリ協定とは、2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みのこと。パリ協定では、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすることを世界の共通目標に掲げており、そのためには、CO2をはじめとする温室効果ガスの排出量をできるだけ早く減らす必要があるのだ。
ここまで日本における目標や動きを見てきたが、世界では、ガソリン車の新車販売廃止や利用廃止に向けてどのような動きが起きているのだろうか。
ここからは、ガソリン車廃止に関する世界の動向と現状について紹介していこう。
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世界で最初にガソリン車販売禁止に関する規制を発表した国は、ノルウェー。ノルウェーでは、2025年までにガソリン車の新車販売を禁止するとしており、国際エネルギー機関(IEA)によると、2022年の新車販売における電気自動車の割合は約8割と、非常に高い割合を占めている。
ノルウェーに次いでEV先進国と呼ばれるのが、スウェーデン。2019年1月に、2030年からのガソリン車の新車販売を禁止する法案を可決した。さらに、首都ストックホルムでは、市中心部でのガソリン車とディーゼル車の通行を2024年12月31日より禁止にすることが決まっているそうだ。
ドイツ、イギリスは日本同様、2035年までに販売禁止を目指している(ドイツでは、合成燃料「イーフューエル(e-fuel)」対応の車に限り、継続的に販売が可能とされている)。
そのほか、フランス、アメリカ、カナダ、中国など、世界中でガソリン車の新車販売をなくし、段階的にガソリン車を廃止していく流れが起きている。
EUの執行機関である欧州委員会は、2021年に乗用車や小型商用車の新車によるCO2排出量を2035年までにゼロにする規制案を発表した。
しかしその後、BMW、メルセデス・ベンツ、アウディ、フォルクスワーゲンなど多くの自動車メーカーを抱えるドイツが、グリーン燃料で駆動されるエンジンは許可するように主張したことで、2035年以降も条件付きで販売を認めることとなったのだ。
その条件とは、イーフューエル(e-fuel)のみを使用する車両であること。イーフューエル(e-fuel)とは、再生可能エネルギー由来の水素と二酸化炭素を合成してつくる液体燃料のことで、燃焼時にCO2を排出するが、工場などから出るCO2を原料とするため排出量全体としては減らすことができ、脱炭素につながる燃料として期待されている。
ガソリン車の新車販売終了後、なにがガソリン車の代わりとなるのだろうか。ここからは、ガソリン車に代わる自動車について紹介していこう。
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電気自動車とは、名前の通り、ガソリンではなく電気で動く自動車のこと。外部から電気を充電することで、エネルギーを補給している。
バッテリーに蓄えられた電気でモーターを駆動させる仕組みで、走行時にCO2が発生しないので、環境負荷の低減に貢献する車といわれている(※6)。
燃料電池自動車(FCV)とは、燃料電池で水素と酸素の化学反応によって発電した電気エネルギーを使って、モーターを回して走る自動車のこと。電気でモーターを回して走るという点で、電気自動車の一種といえる。水素ステーションで、燃料となる水素を補給するところも特徴のひとつだ。
燃料電池自動車(FCV)の走行時に発生するのは水蒸気のみ。有害な排気ガスを発生させないことから、エコカーとして世界中から注目されている(※7)。
プラグインハイブリッド自動車(PHEV)は、ガソリンと電気の両方を使って走る自動車のこと。メーカーなどによっては、「PHV」と表記される場合もある。
プラグインハイブリッド自動車には、電気で動くモーターとガソリンで動くエンジンの両方が搭載されており、電気のみでもガソリンでも走ることが可能だ。そのため、バッテリーが切れてしまったときに走れなくなってしまうリスクが少ない(※8)。
外部の電源からバッテリー充電ができる点も特徴のひとつだ。
ハイブリッド自動車(HV)は、プラグインハイブリッド自動車同様、エンジンとモーター、2つの動力を搭載しているのが特徴だ。
PHEVまたはPHVのように外部からの充電はできないが、速度が遅いときは電気で動くモーターを、安定した速度のときはガソリンで動くエンジンを、というように走行スピードなどによって効率的に使い分けたり、組み合わせたりすることで、低燃費を実現している。
“脱ガソリン車”の実現には、さまざまな課題がある。ここからは解決すべき課題について、考えていこう。
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ガソリン車に代わる自動車として期待が集まる電気自動車。しかし、走行時にCO2を排出しない一方で、製造時に発生するCO2排出量がガソリン車の倍以上になることが問題視されている。
とくに、多くのCO2が排出されるのは、バッテリーの製造時。電気自動車のほとんどで、駆動用バッテリーには大容量のリチウムイオン電池が使われており、このリチウムイオン電池の製造工程や電池原料の製造段階で、多くのCO2が発生してしまうのだ。
バッテリーをはじめとする、電気自動車製造時のCO2排出をどれだけ減らすことができるかが、"脱ガソリン車"に向けて解決すべき課題のひとつである。
電気自動車の価格が高いことも、"脱ガソリン車"の実現において課題となっている。
2023年のデータによると、軽EVを除いた国産EV車両の平均価格は約511万円。普通車の場合、人気車種の多くは200~300万円台だそうで、ガソリン車と200万円以上の価格差があることがわかる(※9)。
これだけの価格差があると、電気自動車の普及が加速しないのも頷ける。しかし、電気自動車の価格のカギを握るリチウムイオン電池の価格が近年下がってきていることもあり、今後技術開発が進んだり、新技術が開発されたりすることで、価格が下がる可能性も期待されている。
走行時にCO2を排出しないことがメリットである一方で、電気自動車のエネルギーとして充電する電力を火力発電に依存していることも課題のひとつだ。これによって、結果として間接的にCO2排出してしまっている。
しかし、少しずつではあるが、充電時のエネルギーを再生可能エネルギーで賄うサービスの展開も増えてきており、今後のさらなる普及が期待されている。
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"脱ガソリン車"を実現するためには、代わりとなる電気自動車の充電スポットを充実させることが不可欠だ。
2023年におこなわれた「EV充電サービス利用時に不便なこと・困っていること」に関するアンケートによると、電気自動車ユーザーの6割近くが「充電スポットの少なさ」に困っていると回答している(※10)。
また、充電スポットの数はもちろん、設置場所も重要。都市部や幹線道路沿い、観光駐車場など、交通量や滞在時間に応じた充電スポットを設ける必要がある。
ガソリン車の完全なる廃止には、課題も多く、まだまだ時間がかかることが予想されている。では、それまでに私たちが個人でできるは何があるのだろうか。自動車によるCO2排出の削減につながるアクションを考えてみよう。
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日常的に自家用乗用車を利用している人は、公共交通機関を利用することを選択肢に入れてみてはいかがだろうか。
もちろん、住んでいる地域によってはむずかしい場合もあるが、そうでない場合はバスや電車を利用することで、1人あたりのCO2排出量を減らすことができる。
移動手段に、車ではなく徒歩や自転車などを使うのも、私たちができることのひとつ。いつも車で行くところを自転車に変えれば、CO2の削減になるほか、運動にもなり一石二鳥だ。
最近ではシェアサイクルの普及も進んでいるため、自転車を持っていなくても、気軽に自転車を移動手段として選びやすい環境が整いつつある。
住んでいる環境やそれぞれの事情があり、車を使わざるを得ない人も多いだろう。その場合は、いま乗っているものよりも環境にやさしい車種への移行を検討してみてはいかがだろうか。
車の使用頻度が高い人こそ、少しの違いでも徐々に積み重なって大きなCO2の削減につながるはずだ。
ガソリン車の新車販売終了のニュースを聞き、驚いた人も多いだろう。しかし、突然ガソリン車が買えなくなったり、使えなくなったりするわけではない。
「不便になる」というネガティブなイメージではなく、カーボンニュートラルの実現に向けたポジティブな変化と捉えて、一人ひとりができることを考え、行動していくことが重要だ。
※1 自動車・蓄電池産業|経済産業省
※2【2024年最新】EVの普及率はどのくらい?日本と世界のEV事情を解説|EV DAYS
※3 東京都も2030年までに「脱ガソリン車」知事が表明|朝日新聞デジタル
※4 「トランジション・ファイナンス」に関する 自動車分野における技術ロードマップ(案)(16ページ目)|経済産業省
※5 環境:運輸部門における二酸化炭素排出量|国土交通省
※6 電気自動車とは?|日産自動車
※7 燃料電池自動車(FCV)のしくみ|水素・燃料電池実証プロジェクト
※8 PHEV(PHV)とは?ハイブリッド(HEV)車やEVとは何が違う?|LEXUS TOKYO
※9 電気自動車は高い?ガソリン車と車両価格、電気代・燃料代を比較|中古車のガリバー
※10 EV充電サービスの利用時に困ることは?今後の課題と対策
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