Uターン・Iターン・Jターンとは? 違いや地方移住のメリットを解説

田んぼのイメージ

Photo by Surya Prakosa

近年注目されている、「Uターン」「Iターン」「Jターン」。生まれ育った故郷から、進学や就職を機に故郷を離れ、また故郷に戻るなど、人々の移住の動きのパターンをあらわす言葉だが、どのような違いがあるのだろうか。本記事では、違いや地方移住のメリット、支援制度などについて解説する。

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2024.09.22
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Uターン、Iターン、Jターンとは

地方の自然のイメージ

Photo by Federico Respini on Unsplash

生まれ育った故郷から、進学や就職を機に故郷を離れ、また故郷に戻るなど、人々の移住の動きのパターンをあらわす「Uターン」「Iターン」「Jターン」。近年注目されている各用語について、それぞれの定義を解説していく。

「Uターン」の定義

「Uターン」とは、生まれ育った故郷から、進学や就職を機に都会へ移住。その後、再び故郷へ戻る(移住する)ことを指す言葉である。

「Iターン」の定義

「Iターン」とは、生まれ育った故郷から、進学や就職を機に、故郷にない要素を求めて別の地域へ移住することを指す。都会から地方へ移住することもIターンに含まれる(※1)。

「Jターン」の定義

「Jターン」とは、生まれ育った故郷を離れ、進学や就職を機に都会へ移住。その後、故郷には戻らずに、故郷近くの地方都市に移住することを指す言葉である。

Uターン、Iターン、Jターンのメリット

各用語の定義がわかったところで、Uターン、Iターン、Jターンのメリットを解説しよう。

地方移住によって得られるメリット

生活コストの削減

地方の家のイメージ

Photo by Colin Maynard on Unsplash

UターンやIターン、Jターンによって地方移住をすることで、生活コストを削減できるというメリットがある。

とくに大きく変わるのは、家賃などの住居費だ。駅から徒歩でかかる時間や間取りが同じでも、都会と地方とでは月々3〜5万円ほどの差が出るのだ(※2)。

また、地方ではアパートに駐車場が付帯していることも多いほか、外食費用も都会より安く抑えられる傾向があるため、地方移住によって生活コストが削減できるといえるだろう。

時間的な余裕が生まれる

都会で通勤する場合には車を利用できる職種は限られており、多くの人が電車やバスなどの公共機関を利用している。通勤ラッシュ時には混雑で遅延することもあるため、少し時間に余裕を持って出かけている人も少なくない。

地方では都会に比べるとマイカー通勤する人が多く、職場にダイレクトにたどり着けるため、必要以上に時間をかけずに通勤できる点もメリットといえる。

そのほか、都会では、商業施設や飲食店が混雑し、待ち時間が発生することも多い。しかし、地方だと比較的待ち時間なく利用できるため、時間的な余裕が生まれる点も地方移住のメリットといえるだろう。

自然環境の魅力

豊かな自然のイメージ

Photo by Jeffrey Workman on Unsplash

自然豊かな地方へ移住することで、景色がよく、水や空気がおいしいのはもちろん、地元で採れた食材を新鮮なうちに食べる機会が多いなど、自然を堪能できる。

また、わざわざ休日に自然を感じに出かけなくとも、暮らしのなかで自然を身近に感じることができるのも、地方移住の魅力のひとつだ。

地域社会への貢献

近年、都市部への人口集中が問題視されている。人口自体が減っていることも相まって、地方の過疎化が進んでおり、全国の市町村の約半数が過疎の問題を抱えているのだ。

そうした地域に移住し、積極的に地域の人々と交流したり地域創生に協力したりすることで、地域社会に貢献もできる。

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キャリア形成における新たな可能性

地方は都会に比べて企業の数が少ないため、働き口が少ないというデメリットもある。しかし一方で、起業にチャレンジしやすいというメリットもある。都会に比べて物価や家賃が安いため、起業に必要なコストを抑えられるのだ。

また、地方で生活をして住民たちが抱えている問題を実際に感じることで、都会では気づけなかったビジネスチャンスを見出すこともできるかもしれない。

地方自治体などのサポートが受けられる

2019年4月から、国や地方自治体による移住支援政策が始まっている。

実際の支援内容やその手厚さは、各都道府県、市町村ごとに異なるが、地方への移住を検討している人はサポートを受けられる可能性があるのだ。

Uターン、Iターン、Jターンの課題

これまでメリットについて解説してきたが、Uターン、Iターン、Jターンによって地方移住する際の課題についても紹介していこう。

車がないと生活しにくい

車がないと生活しにくい土地のイメージ

Photo by Hyundai Motor Group on Unsplash

一つ目は、車がないと生活しにくいこと。都会に比べて公共交通機関が少ない、または運行数が少ないため、車を持っていないと行きたいところに行きたいときに行くことが難しい。

スーパーやコンビニ、病院なども住まいから離れた場所にあることも多く、高齢になっても運転をせざるをえない環境であることも課題である。

地域コミュニティへの適応

地域コミュニティへの対応が求められる点も、人によっては課題に感じるだろう。

都会に比べて人と人とのつながりが強く、特有のしきたりを重んじる地域もあるため、慣れるまでは負担に感じることも。都会で暮らす以上のコミュニケーションを求められる可能性があることも理解しておくとよいだろう。

働き口が少なく、給料が安い

都会に比べて企業の数が少ないため、働き口が少ないことも課題だ。

働き口が見つかっても、地方の最低賃金が都市部よりも安いこともあり、同じような職種・仕事内容でも、都会で働いていたときに比べると給料が下がる傾向にある(※3)。

自然災害により注意が必要

川のイメージ

Photo by kazuend on Unsplash

近年の異常気象による大雨や洪水、多発する地震など、どこにいても自然災害に遭遇する可能性がある。

もちろん都会でも自然災害による被害にあうリスクはあるが、山や海、川などの自然に囲まれた地方では、土砂崩れや津波、河川の氾濫などの危険性がさらに高まる。

移住の際には、有事を想定してしっかり備えておく必要があるだろう。

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実際に地方移住した人の理由とは

地方移住する人が実際に増えているかの直接的なデータは明らかになっていないが、2019年の東京都からの転出率は2.79%、2021年には3%と上がっており、少しずつ地方移住者が増えていることが見受けられる(※4)。

では、なぜ地方移住をするに至ったのか。複数の地方移住者向けアンケートの回答をもとに、理由を考えていこう。

自然に囲まれて生活がしたい

総務省が2017年に全国の移住者を対象に行ったアンケートによると、地方移住を決めた理由として「気候や自然に恵まれたところで生活がしたい」という回答が多かった。

そのほか「都会の喧騒を離れて静かなところで暮らしたかったから」「アウトドアスポーツなど趣味を楽しむ暮らしがしたかったから」との回答も多く、環境面で地方移住を決めた人が多いことがわかる(※5)。

働き方の変化

リモートワークをしているイメージ

Photo by Windows on Unsplash

同アンケートの回答で環境面に次いで多かったのが、「働き方や暮らし方を変えたかったから」である。

ほかのアンケートでも地方移住したいと思った理由について、「テレワークなど働き方の変化」との回答が5位にランクインし、実際に地方移住を決めた理由では「仕事の変化」が2位に位置している(※6)。

コロナの蔓延をきっかけに「働き方を変えたい」と考える人が増えたほか、リモートワークが普及し出社せずに働けるようになった人が増えたことなどが、地方移住者増加に影響を与えているようだ。

故郷で暮らしたい

「ふるさと(出身地)で暮らしたい」という理由で、地方移住(Uターン)を決めた人も多い。

そのほか「家族や親せきが近くにいるところで暮らしたいから」「家族(配偶者、子ども、親)と一緒に暮らしたいから」との回答も多く、環境以外にも人とのつながりという面で地方移住を選ぶ人も多いことがわかる。

ゆとりのある生活がしたい

経済的な理由で地方移住を選ぶ人も少なくない。

「都市地域より安くて広い土地や住宅が手に入るから」「金銭的理由」を移住の理由として回答している人も多く、経済的な理由で都会からの移住を決めた人も多いようだ。

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Uターン、Iターン、Jターンの支援制度

国や自治体による支援策の例

ここからは、国や自治体がおこなっているUターン、Iターン、Jターンなどの支援制度を紹介していく。

移住支援制度

「移住支援制度」とは、国や地方自治体が展開する、都市部から地方への移住を支援する制度のこと。支援事業の具体的な内容は自治体によって異なり、なかには募集していない地域もある。

地方創生起業支援

「地方創生起業支援」は、都道府県が、地域の課題解決に資する社会的事業を新たに起業等する人を対象におこなっている支援策だ。

起業などのための伴走支援と事業費への助成(最大200万円)を通して、効果的な起業を促進し、地域課題の解決を通して地方創生を実現することを目的とした事業である(※7)。

無制限で全員が受けられるわけではないため、支援を受けたい場合には、事前にしっかり調べる必要がある。

フラット35 地域連携型

住宅金融支援機構「フラット35」のなかにも、移住支援政策の一環である優遇措置、「フラット35 地域連携型」がある。

フラット35 地域連携型とは、子育て世帯や地方移住者などに対する積極的な取り組みをおこなう地方公共団体と住宅金融支援機構が連携し、住宅取得に対する地方公共団体による補助金交付などの財政的支援とあわせて、フラット35の借入金利を一定期間引き下げる制度のこと(※8)。

予算金額に達する見込みとなった場合受付を終了してしまうので、利用を考えている場合は事前に確認しておくとよいだろう。

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移住支援金や補助金の例

お金のイメージ

Photo by Mathieu Turle on Unsplash

次に、実際に支援策や補助金などの施策を取り組みをおこなっている自治体の事例を紹介しよう。

青森県八戸市

青森県八戸市では、人口減少の克服に向けて、まずは生活を営む上での基盤となる仕事づくりが重要と捉え、さまざまな施策を打っている。

その一環として、Uターン、Iターン、Jターン就職希望者を対象とする独自の移住支援補助金制度や、市の無料職業紹介所での就職支援、創業・起業希望者へのサポートなどをおこなっている(※9)。

長崎県雲仙市

長崎県雲仙市では、結婚する夫婦に、結婚に伴う新居の費用や引越費用などを補助し、新婚世帯の経済的負担を軽減する「結婚新生活支援補助金」を実施。

補助金の対象となる夫婦には、1世帯あたり最大60万円の結婚祝い金を交付している(※10)。

新潟県糸魚川市

新潟県糸魚川市では、「ちょこっと糸魚川暮らし」と題し、移住体験短期滞在者宿泊支援をおこなっている。

主に移住前の支援制度で、糸魚川市への移住を希望し、市内で移住体験を行いたい人を対象に、市内の登録宿泊施設を利用した場合の宿泊料金を支援。

対象者は、糸魚川市内の登録宿泊施設を素泊まり1人1泊2,000円(税抜)で利用でき、糸魚川市での暮らしを体験することができる(※11)。

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Uターン、Iターン、Jターンの今後

これまでの内容を踏まえて、Uターン、Iターン、Jターンの今後について考えてみよう。

地方創生におけるターンの役割

少子高齢化により人口減少が急速に進行しているなか、地方から東京圏に人口が流出。それによって、地域社会の担い手が減少しているだけでなく、消費市場・地方経済が縮小してしまう。

このようなさまざまな社会的・経済的な課題があることを受け、国は将来にわたって「活力ある地域社会」の実現に向けて、Uターン、Iターン、Jターンを含む地方移住を推進するとともに、各地域の特色を踏まえた自主的な取り組みを促進している(※12)。

今後の地方移住の動向予想

2022年に内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局が発表した、「デジタル田園都市国家構想総合戦略 (2023年度〜2027年度)」において、政府は「デジタルの力を活用して地方創生を加速化・深化し『全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会』を目指す」と掲げている(※13)。

現在、実際に地方移住はしていないものの、地方移住に関心がある人、検討している人は少なくない。政府の取り組みが進み、“全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会”に近づけば、迷っている人々が移住に挑戦しやすくなり、さらに移住者は増えていくだろう。

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Uターン、Iターン、Jターンが地方創生を後押し

少子高齢化による人口減少や東京一極集中などにより、地方社会の担い手減少がますます深刻化している近年。地方創生において、Uターン、Iターン、Jターンによる地方移住が、問題解消を後押しするアクションとして期待が集まっている。

移住を受け入れる地方都市だけでなく、移住者にも多くのメリットがある地方移住。さまざまな働き方や価値観があるいまの時代、人生の選択肢のひとつに加えてみてはいかがだろうか。

※掲載している情報は、2024年9月22日時点のものです。

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