本当の豊かさをはかるGDW(国内総充実度)とは

ひまわり畑で笑う女性達

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本当の豊かさをはかるGDW(国内総充実度)という指標がある。世界はいま、経済成長一辺倒から真の幸福を求める方向にシフトしつつある。私たちの住む日本も経済的には豊かだが、GDWでは先進各国から大きく遅れをとっている。この記事では、日本の課題に触れながらGDWについて解説する。

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2024.09.23
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GDW(国内総充実度)とは

笑う年配の男性

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GDW(Gross Domestic Well-being/国内総充実度)とは、国民の生活の質や幸福度を測る比較的新しい指標である。経済指標であるGDP(国内総生産)が国の経済活動の総量を表すのに対し、GDWは経済活動に限らない広い視点で国民の幸福さを評価するものだ。(※1)

Well-being(ウェルビーイング)とは

Well-being(ウェルビーイング)とは、個人が感じる幸福や満足感、健康状態などの総合的な生活の質を指す言葉だ。単に物質的な豊かさだけでなく、心身の健康や人間関係、社会的な立場の安定などが含まれているととらえ、その人の人生全体の充実度を反映する概念だ。経済成長だけでは捉えきれない本当の豊かさを示す言葉として、世界的に注目されるようになっている。(※2)

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GDP(国内総生産)との違い

GDP(国内総生産)は、一定期間内に国内で生産されたものやサービスの総価値を示す経済指標だ。(※3)

GDPが物質的豊かさを測る指標であるのに対し、GDWは精神的豊かさや社会的充実度も考慮する点が異なる。実際にGDPが高い国でも、国民の幸福度が必ずしも高いとは限らない。GDWはこうしたギャップを埋めるための指標でもある。

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なぜいまGDWが注目されるのか?

笑う年配の女性

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GDWが注目される背景には、従来の経済指標では測れない「真の豊かさ」を捉えようとする社会の変化がある。ここでは、その変化について注目していく。

経済指標の限界認識

経済成長が進む一方で、国民の幸福度や生活の質が向上しない「幸福のパラドックス」が問題視されている。(※4)GDPが高い国でも、社会の格差や環境問題が深刻であれば、全体としては国民の幸福度は低くなる。

ウェルビーイングへの関心の高まり

近年、ウェルビーイングに対する関心が世界的に高まっている。物質的な豊かさだけではなく、精神的な充実感や社会的安定が生活の質に大きく影響するという認識が人々の間に広がっているためだ。人々の幸福や健康をどう測り向上させるかが政策の課題となり、ウェルビーイングを考慮した指標が求められるようになった。

持続可能な社会の実現のため

持続可能な社会の実現には、単なる経済成長やエコな暮らしだけではなく、ウェルビーイングについても注目する必要がある。資源の限界や環境問題が深刻化するなかで、無制限な成長追求からの転換が求められている。そのためGDWは、持続可能な社会に向けた政策の方向性を示すための新しい指標として、経済と環境、人々の幸福をバランスよく評価するものとなるだろう。

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GDWの指標と測定方法

メジャー

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GDWの計算方法については、いまのところ国際的に統一された基準がない。ただし、イギリスのカーネギー財団が作成したGDWe(Gross Domestic Well-being)という試案的な指標が注目されている。(※1)

GDWeは10の分野にわたる統計データやアンケート調査をもとに、国民のウェルビーイングを多角的に評価する指標である。今後この方法が日本におけるGDWの基盤となる可能性もある。

GDWeにおける10の構成分野

GDWeは生活の質や幸福度を多面的に捉えるために、以下の10の構成分野から成り立っている。(※1)

・経済的安定
・健康
・教育
・社会的つながり
・環境
・雇用
・住居の質
・生活満足度
・安全性
・ガバナンス

これらの分野ごとに、それぞれ2~6種類の客観的な統計や主観的なアンケート調査を用いて評価が行われる。

GDWeにおける測定方法

GDWeは各構成分野で得られたデータを正規化し、スコアを算出することで可視化される。(※1)
データの正規化は、最大値を10、最小値を0として評価する方式が取られている。この正規化した各分野のスコアを単純平均し、最終的にGDWeのスコアとして算出する。

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GDWをめぐる世界の動向と事例

時差時計

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世界では、経済成長だけではなく人々の幸福や生活の質を重視する動きが広がっている。ここでは、各国や国際機関が取り組んでいるGDW関連の動向や事例について説明する。

経済協力開発機構(OECD)

OECDは、国民の生活の質を多角的に評価する「Better Life Index(いい暮らし指標)」を開発した。この指標は、住宅、所得、雇用、健康、教育など11の項目により構成されており、各国の生活の質を総合的に評価するものである。(※5)

日本もこの指標を活用しており、健康や安全の項目では高い評価を受けているが、労働環境や仕事と生活のバランス、周囲の人々との「つながり感」においては改善の余地があるとされている。(※6)

国際連合

国連は、幸福度を国際的に評価するための取り組みとして「国際幸福デー(※7)」に「世界幸福度調査(World Happiness Report)(※8)」を発表している。毎年発表されるこのレポートでは、各国の幸福度がランキング形式で示される。

2024年の調査では日本は51位にランクインしており、経済的な豊かさに比べ、幸福度が低いという課題が浮き彫りになっている。上位には北欧諸国が並んでおり、社会的な安定や福祉の充実が幸福度に寄与している。

ブータン

ブータンは「GNH(国民総幸福量)」を掲げ、経済成長よりも国民の幸福を優先する政策を行っている。(※9)GNHは心理的幸福、健康、教育、環境保護など9つの分野で国民の幸福を測定するもので、世界的にも注目される先進的な取り組みだ。

ニュージーランド

ニュージーランドは「幸福予算」というユニークな財源を導入し、国民の幸福度を高めるための政策に予算を割り当てている。主に心の健康、子どもの貧困、不平等の解消を重点課題とし、これらの問題に対処するための具体的な施策を実施している。(※10)

カナダ

カナダでは、GDPに代わる指標として「カナダ幸福度指標(CIW)」が導入されている。CIWはコミュニティの活力、民主主義への関与、教育、環境、健康など、8つの分野で国民の幸福度を評価するものである。(※11)

イギリス

イギリスでは、国民の幸福度を測定するためのさまざまな取り組みが行われている。その一つであり政府が進める「National Well-being Programme」では、国民の幸福度を向上させるための政策が策定されている。この政策では、教育や健康、社会的つながりなど、さまざまな分野での改善を包括して進めている。(※12)

スウェーデン

World Happiness Reportの4位に名を連ねるスウェーデンでは、若者のウェルビーイングに力を入れている。13歳〜25歳のこども・若者を対象とし、若者の生活状況を追跡するための「Ung idag」を公表している。このツールは、複数の政府機関の統計から作成される6分野66指標により構成されている。(※13)

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GDWをめぐる日本の動向と現状

神田川

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日本においても、国民の幸福度や生活の質を高めるための取り組みが進められている。ここでは、日本政府の動きや企業の取り組み、そして現状の課題について詳しく説明する。

日本政府の動き

日本政府は、2010年代後半から満足度・生活の質に関する調査を実施し、国民生活の多面的なデータを集めている。とくに日本の課題である働く環境の改善のため、経済産業省主導で企業のウェルビーイングを推進している。また新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、テレワークの普及や生活意識の変化が起こるなか、国民のウェルビーイング向上に向けた施策と連携がさらに進められている。(※14)

Well-being Initiativeの発足

日本では、複数の企業が協力して「Well-being Initiative」を発足させた。これは企業が従業員のウェルビーイングを向上させるための具体的な取り組みを行うもので、主に働き方改革によるワークライフバランスの改善が進められている。(※15)

日本のGDW・ウェルビーイングの現状と課題

日本におけるGDWは、物質的な豊かさに対して乖離が見られる。日本は経済的には発展しているものの、国民の幸福度に関する指標は他国に劣る点が多い。内閣府のWell-beingダッシュボードに基づく調査結果によれば、とくに「つながり感」や「仕事と生活のバランス」などが低く、日本社会の特徴的な課題となっている。(※6)

またOECDのBetter Life Indexにおける日本のスコアでも、経済的指標では優れている一方で、社会的つながりや生活の質に関する項目では他のOECD諸国に比べ劣ることが示されている。(※5)

これらの要因が日本におけるウェルビーイングの課題として浮き彫りとなっており、今後の政策において改善が求められている。

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日本がGDWを向上させるために

渋谷

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日本はこれまで経済的に大きく成長してきた国だ。その一方で「つながり感」や「仕事と生活のバランス」が犠牲になり、世界の水準で見ると幸福度が低い評価にある。日本が抱える課題において、GDWの指標は非常に参考になるものだ。政府が主導となり、私たち一人ひとりが生活の充実度を追求する姿勢を持つことで真の豊かさを実現できるだろう。

※掲載している情報は、2024年9月23日時点のものです。

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