コロナで変化した「人と場所の関係性」を捉え直す 自宅以外に居場所を持つ人の“幸福度が高い理由”とは?

デスクで考える女性

Photo by Gettyimages

Elements of Social Signs

あなたにとって、居場所とは。自宅、職場、行きつけのカフェなど、もちろん人それぞれだろう。"役割"で分類されがちな居場所だが、"感情・アイデンティティ"で分類することで、新たなビジネスやより良い暮らしになるためのヒントが見えてきた。コロナ禍を経て変化した、居場所の在り方とは。

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エレミニスト編集部

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2023.10.02
SOCIETY
学び

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「居場所」と聞いて、どのような場所を頭に思い浮かべるか

自分の部屋や近所のカフェ、学校や職場を思い浮かべた人もいれば、SNSやゲームの世界などを思い浮かべた人もいるかもしれない。自信を持って居場所とは言えないが、なんだか近頃気に入っている場所や、人には恥ずかしくて大きな声では言えない自分だけの居場所を持っている人も多いのではないだろうか。

「場所」という視点で考えてみると、我々の価値観や生活様式を大きく変えた約3年間に及ぶコロナ禍を経て、私たち生活者と場所の関係性も大きく変わってきている。これまでは、休む場所だった自宅の部屋が働く場所になったり、滞在型のコインランドリーなどが街に増える中、ポストコロナの新しい働き方として、これまでは考えられなかった旅先で働くワーケーションなどの新しい単語も生まれた。

このように価値観や生活様式が様変わりしたコロナ禍を経験した今だからこそ、「人と場所の関係性」を改めて捉え直すフェーズに来ていると感じ、「私のアイデンティティと場所からビジネスを考える iBASHOレポート」を株式会社SIGNING、株式会社読売広告社、株式会社環境計画研究所の3社で発行した。このレポートは、場所を「働く場所」などの“役割”で分類するのではなく、私たち生活者の“感情・アイデンティティ”で分類することによって、新しいビジネスや私たち人間にとってより良い暮らしを送るためのヒントを探っていこうという試みである。

ibasho-report

居場所と聞いて、頭に思い浮かべる場所の数は平均「2.64ヶ所」

今回発行した「iBASHOレポート」の際に行なった調査では、10〜80代の居場所の数の平均は「2.64ヶ所」となり、年代では、20代で落ち込み、年齢が上がるにつれ居場所の数も増えていく傾向。一方で居場所の数は1ヶ所と回答した方は34%(約3分の1)という結果に。
居場所の内容を聞いてみると、多くの人が自分の部屋やリビングなどの「自宅の中の空間」と回答し、それ以外では「実家」や「職場」を自分の居場所として捉えている人が多かった。今回のコロナ禍による社会との分断によって、より一層自分自身が安心と感じる場所、居場所と感じる場所が自分たちの内側に閉じていった可能性もあるだろう。

そのような中、「自宅のみ」を居場所と感じている人と、「自宅とそれ以外の場所」を居場所と感じている人では、後者の方が幸福度が高くなっているなど、自分自身がどこを居場所と感じているかによって、個人の幸福度とも関連していることが判明した。「仕事」「人間関係」「生きがい」などの様々なウェルビーイングに関する項目のいずれにおいても、「自宅とそれ以外の場所」を居場所と感じている人の方が高い結果となり、家を居場所として捉えている人が多い中、家以外にも居場所と感じる場所を持つ人の方が、“より幸せだ”ということがわかってきている。

「それ以外の場所」についても「自宅」と同様に居場所と感じている人が“より幸せ”だという結果に着目してみると、居場所とは、「ひとりや自分以外の誰かといることによって、自分自身の感情を満たせる場所」として捉えることができるのではないだろうか。ハーバード大学が過去84年間に渡って行なっている2000人以上の追跡調査による「ハーバード成人発達研究」をもとにした書籍『グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない』(Robert J. Waldinger Marc Schulz著)によると、幸福な人生の重要要素は「よい人間関係」とも結論付けている。
私たち人間が活動する場所に対して、これからはその場所を“役割”としてだけではなく、私たち人間から生まれる“感情・アイデンティティ”の側面から見つめ、場所から生まれる感情をもとに分類してみることも大切になってくるのではないかと感じ、場所を①自分ひとりで感情を満たすための「イバショ」、②私と大切な誰かで感情を満たすための「イイバショ」、③私と複数人以上で感情を満たすための「ウィバショ」として捉え直して考えてみるのはどうだろうか。より多様な人々のこれからの幸せを場所から生み出せる兆しになるかもしれない。

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滞在時間の長さのわりに、居場所と思われていないオフィス

最後に、皆様は一週間のうち、どのくらいの時間をオフィスで過ごしているだろうか。起きている時間で考えると、家よりもオフィスで過ごす時間(働いている時間)の方が長いという社会人の方も中にはいるかもしれない。
今回のレポートでは、オフィスは最も1ヶ所あたりの滞在時間が長い場所とされている一方、居場所としての意識は、クルマ・バイクや動画配信サービスと同程度であるということが判明した。

コロナ禍を経て、私たちのオフィスのあり方も大きく変化している。日本でもフリーアドレスが導入される企業が増え、その時々の仕事の内容に合わせて、働く場所を自由に選択するABW(Activity Based Working)といった働き方をする人も増えている。

そのような中、成果としてどれだけ効率的に仕事を進めることができるかといった一人当たりの効率化が叫ばれ、かたやこれまでになかった新しいことを生み出す創造性が、オフィスではより一層求められているのではないだろうか。
そして、これらの成果を生み出すことを後押しすべく、現在のオフィスにおいては、ソロスペースやディスカッションエリアなど、“役割”から考えられていると強く感じられる。しかし、そのように場所を“役割”のみの視点で切り取って形にすることが、本当に望む理想的な状態が生まれるかについては疑問を感じている。

オフィスを自分の居場所だと感じている人は、②私と大切な誰かで感情を満たすための「イイバショ」から得ることのできる「認められる」「語り合える」「頼られる」などの感情をオフィスの空間に求めていることもわかってきている。仕事を通して自分の上司から認められたり、部下から頼られたりすることが、結果として一人ひとりの効率化や、組織全体の創造性の向上につながっているのではないだろうか。

それぞれが自分の仕事に安心して集中できる「イバショ」の要素や、周囲の同僚と切磋琢磨し、共創が生まれやすくなる「ウィバショ」の要素を生み出すためにも、まずは、同僚の人間的な側面を知ることでの相互理解やその場における安心感を意識的につくってみることが、これからのオフィスには大切だと感じている。
居心地が良く、生産性や創造性をオフィスから生み出していくためには、これまで比較的後回しにされがちであった、「イイバショ」こそ大切であると視点を少しずらし、改めて意識的に取り入れてみることによって、オフィスという空間やそこで働く人々に新たな可能性が生まれてくることを信じている。


Written by 秦 瞬一郎  from
SIGNING Ltd./YOMIKO ADVERTISING Inc. 編集/ELEMINIST編集部

<執筆者プロフィール>
2017年に読売広告社入社。営業、ストラテジックプランナーを経て、2022年から現職。社会・暮らしの中で、生活者自身から生み出された「不自然さ」を見つけるのが好き。2匹の文鳥と暮らす。

※掲載している情報は、2023年10月2日時点のものです。

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