ウェルビーイングとは、Well(良い)と、Being(状態)が組み合わさった言葉。ただどういった状態が良い状態なのかは多種多様。一人ひとりのウェルビーイングを高める社会を作るために何ができるのか、オリジナルの大規模調査を実施した結果、多様性に溢れた日本人独特の幸福感が見えてきた。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
最近よく耳にする言葉、「ウェルビーイング」。ポストSDGsともいわれ注目を集めて、その捉え方や実現の仕方は人それぞれで実に多種多様だ。そんな少し捉えづらい言葉かもしれないウェルビーイングだが、日本人的ウェルビーイングとはどのようなものなのだろうか。
日本の2023年の世界幸福度ランキングは47位。
前年よりも7つ順位を上げたものの、世界基準の幸福度でみるとまだまだ低い水準である。
上位に目を向けてみると1位はフィンランド、2位はデンマーク、3位はアイスランドと北欧諸国が並び、上位には欧米諸国が並んでいる状況だ。
ただ、そもそもこの世界幸福度ランキングは、調査の手法的に日本やアジア圏の国は国民性的に順位が低くなりがちであるという話もある。
ということは、これらの調査では見えてこない日本人的な幸福のあり方があるのかもしれないし、今の日本人が感じている幸福を調べてみることで、みんながウェルビーイングになるヒントもあるかもしれない。
日本全体がよりウェルビーイングな国になるための兆しを見つけるために、筆者が所属するSIGNINGはHakuhodo DY Matrixと共同で、日本人のウェルビーイングは今現在どのようになっているのかを調査した。
ザ・ウェルビーイングレポートVol.1
(※α世代から100歳までの日本人10,000人以上を対象に大規模調査を実施。海外と日本の比較ではありません。)
まず初めに、今日本人はどのくらい幸せを感じているのだろうか。
そんな、日本人のウェルビーイングスコアを知るために
「Q.あなたは今どのくらい人生がいい状態だと思いますか?100点満点で何点くらいか選んでください」
と聞いてみると、もっとも多かったのは70-80点という回答だった。
日本人ならではの奥ゆかしさも出ている気がする回答である。
では、そこにはどのようなことが影響しているのだろうか。
心身ともに良好な状態であることを指す言葉がウェルビーイングだが、皆さんは自分のウェルビーイングな状態を作っているものはなんだと考えるだろうか。
健康・人間関係・お金や仕事など様々なものが混じり合いそれぞれのウェルビーイングが形作られていて、人によって影響しているものは大きく違っているだろう。
まずは、その影響を与えている要素を分類してみるところから考える。
仕事/お金/生きがい/センス/人間関係/健康/娯楽の7つをウェルビーイングに影響を与える要素としたのだが、実はこれは日本人が古くから親しんでいる七福神の考え方に通じていることを発見した。
商売繁盛を司る恵比寿天は仕事、打出の小槌を持つ大黒天はお金というように、幸福に影響を与える7つを下記のように七福神に当てはめて擬人化をしてみよう。
仕事=恵比寿天 / 金=大黒天 / 毘沙門天=生きがい / センス=弁財天 /人間関係=福禄寿 / 健康=寿老人 / 娯楽=布袋尊
そこからさらに先行研究を見ていくと、1つの幸福要素の中にも、安定を求めたり、上昇することを求めたり、多様な幸せの価値観があることを確認した。さらに、それぞれに7つの幸福価値観を当てはめてみた。
先ほどのウェルビーイング七福神と7つの幸福価値観を掛け合わせて49項目のマトリクスを作り、どの要素が日本人のウェルビーイングへの影響が高いのか綿密に分析していく。
それぞれの項目について10段階でウェルビーイングへの影響度を答えてもらったのだが、もっとも影響が大きかったのは「家族・健康・お金」の「安定・調和」で、次いで「娯楽・生きがい・センス」の「愛と笑」だった。
対してもっとも影響が低かったのは「仕事・お金・生きがい」の「上昇」。仕事の成功や大儲けなどは。
ではなぜこのようなランキングになっているのだろうか。
自由回答のアンケート結果から考察してみると
①嫌なことがあっても日常が安定していたら幸せ
②大きな達成感よりも日常の小さな幸せの方が印象が強い
ということが見えてきた。
これらの結果から
日本人のウェルビーイングな人生とは、大きな目標達成だけではなく日々の小さな幸せの積み重ねも大切。
ということがわかった。
大きな目標達成のために真っ直ぐ突き進むより、寄り道をしながら小さな幸せも積み上げていく方が最終的な幸せ総量が増えていくのでは?とみんな思っているのかもしれない。
ではウェルビーイングスコアが高い人と低い人の間には、どんな違いがあるのだろうか。
ウェルビーイングスコアが平均以上の人と平均以下の人について、先ほどの49項目のどの指標が影響が高いのかを見てみると、TOP15のうち13項目が同じと、影響を与えている項目にはほとんど差がないことがわかった。
ただ、異なっていたのは選んでいた項目の数である。ウェルビーイングスコアが高い人は低い人と比較して、6倍以上も多くの項目でウェルビーイングへの影響が高いと答えており、ウェルビーイングスコアが高い人ほど、幸せを感じる項目が多い結果になったのである。
ここから見えてくるのは、いまウェルビーイングな人生を送っている人とは「ベース+αでいろんなことに幸せを感じられる人」なのではないだろうか。
何か一つに絞って満足を目指すのではなく、いろんなところでちょっとずつ幸せを感じながら生きていく、そんな生き方をしている人がウェルビーイングな人生を送っているようだ。
ウェルビーイングな生活を送っていくためのキモとなるのは幸せの軸を増やすことであり、色々なことに幸せを感じられることなのである。
このレポートを書いたのちに、我々は朝日新聞社とHakuhodo DY Matrixと共同でWell-being AWARDSという賞を立ち上げた。Well-being AWARDSについての詳細はこちら。
このアワードは、多様化する幸福の価値観に向き合い、生み出された新しい商品、サービス、活動を称え、表彰し、広げていくことで、ウェルビーイングな社会への推進に貢献するということを目標としている。
審査基準を作り審査会を運営する中でも、この「多様化している幸せの軸」を肯定し後押しするためには、どのようなものが評価されるべきなのだろうということを常に考えていた。
目指すものは日本が今よりもっとウェルビーイングなっている未来であり、みんながそれぞれに幸せを感じられる世の中だ。
そんな「最大多様の最大幸福」を実現するためには、誰か一人の悩みを解決して幸せを作っていくことも必要であり、その積み重ねが幸せな世の中を作っていくことができるのではないだろうか。
そしてそうやって一人の悩みを解決するためや、幸福を叶えるために考えられた商品やサービスは、きっとそれ以外の人にとっても幸せを生むものとなり、ウェルビーイングの輪を広げていってくれるはずだ。
あなたの、ウェルビーイング七福神はなんだろうか?幸せの軸はどれくらいあるだろうか?ぜひまずはそこから考えてみてほしい。
Written by 佐藤克志 from SIGNING Ltd. 編集/ELEMINIST編集部
<プロフィール>
2017年博報堂入社後、官公庁、物流、飲料メーカー、健康食品メーカーなど幅広い業界のビジネスプロデュースを経験。近年はWell-being関連業務も多数担当し、2023年よりSIGNINGに複属出向。「そんな仕事も広告会社がやってるんだ」と言われる仕事をすることに大きなやりがいを感じ、既存の手段に囚われない課題解決に取り組む。
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