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長らく日本の水族館でお馴染みだったラッコが絶滅危惧種に指定された。地球温暖化や環境の変化によって、彼らの生息域が脅かされているのだ。現在日本には3頭しかおらず、今後も輸入は禁止される方向だ。この記事では、ラッコが絶滅危惧種に指定された背景や絶滅を回避するための対策を紹介する。
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ラッコはその愛らしい姿から水族館の人気者だったが、現在では国際自然保護連合(IUCN)で絶滅危惧種に指定されている。(※1)
とくに日本国内での個体数は急激に減少し、絶滅の危機に瀕している。ここではラッコが絶滅危惧種となった理由や、日本における現状について詳しく見ていく。
ラッコは、つぶらな瞳やお腹の上で貝を割って食べる仕草など、その愛くるしい姿で多くの人々を魅了してきた。かつては日本の多くの水族館で飼育されており、一時期は全国の28施設で122頭が展示され、水族館の顔ともいえる存在であった。(※1)
しかし現在では、日本国内で飼育されているラッコはわずか3頭にまで減少している。(※2)その原因は、輸入規制や飼育環境の変化、高齢化による繁殖の難しさにある。ラッコは非常にデリケートで神経質な動物であり、繁殖が難しいことから個体数の減少が進んでいる。
日本国内のラッコの個体数減少に拍車をかけたのが、1998年に米国からのラッコ輸入が禁止されたことである。ワシントン条約による取引規制によりラッコの国際的な取引が制限され、日本国内でのラッコの増加が困難になった。(※1)
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ラッコが絶滅危惧種に指定されるに至った背景には、いくつかの要因がある。乱獲、環境汚染、捕食者の増加などがその主な要因であり、これらが複合的に影響し、ラッコの生息数が大幅に減少した。ここでは、それぞれの要因について詳しく見ていく。
ラッコの毛皮は非常に高価で、その断熱性の高さから18世紀以降、毛皮目的で多くのラッコが乱獲された。その結果、ラッコの個体数は急激に減少し、19世紀末には絶滅寸前まで追い詰められた。
ラッコの生息地の海洋環境が、汚染の影響を受けている。1989年にアラスカ沖で発生したタンカー事故による原油流出は、ラッコの個体数に大きな打撃を与えた。原油によって海域が汚染されたことで、ラッコが生息できない環境となってしまったのだ。(※3)
ラッコの個体数減少には、自然界の捕食者の影響も無視できない。環境の変化により、シャチやホホジロザメなどの大型捕食者がラッコの生息域に進出し、ラッコの生存が脅かされるようになった。
ラッコは非常に神経質で繊細な動物であり、飼育下での繁殖が難しい。日本国内の水族館でも繁殖を試みたが、その多くがうまくいかず、個体数が増えない要因の一つとなっている。
ラッコが減少することで、生態系のバランスに影響を与える。ラッコに捕食されるはずだったウニが増加することも環境に影響を与える要因のひとつだ。ウニは海藻を食べ尽くし、海藻の生息域を破壊する。そのため海藻のもつ二酸化炭素を吸収する能力が低下してしまう。さらに海藻が減ることで他の海洋生物の生息地が失われ、全体的な生態系の変化を引き起こす。この連鎖的な影響が、地球環境に深刻な影響を及ぼす可能性がある。(※4)
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ラッコを保護するために、国内外でさまざまな取り組みが行われている。それぞれの取り組みはラッコの生存を支え、ひいては生態系の保全につながっている。
水族館は、ラッコを含む海洋哺乳類の保護活動を積極的に行う施設でもある。例えばアメリカのモントレーベイ水族館は、怪我や病気で保護されたラッコのリハビリを行い、可能な限り自然に返す活動を行っている。また同水族館は孤児となったラッコの子どもたちに自然での生存技術を教える取り組みも行っている。(※5)
アラスカに拠点を置く非営利組織、Alaska SeaLife Center(ASLC)は、海洋哺乳類の保護とリハビリテーションを行うボランティア団体だ。2020年1月、雪に覆われた状態で浜辺に取り残されていた生後わずか2週間のラッコの子どもが地元住民によって発見され、同センターに運ばれた。ASLCは24時間体制でラッコの世話を行い、健康を取り戻すためのケアを行った。(※6)
北海道沿岸では、ラッコと漁業の共存を探る研究が進められている。ラッコはかつて北太平洋沿岸に広く生息していたが、乱獲により絶滅寸前まで減少した。保護活動の結果、徐々に個体数が回復し、北海道でも目撃されるようになったが、その復活は漁業者にとって新たな課題をもたらしている。ラッコが商業価値の高いウニを食べ尽くしてしまうおそれがあるのだ。
ただし現時点ではラッコがウニよりも二枚貝を好んで食べていることが確認されており、漁業への直接的な影響は小さい。今後ラッコの食性が変化する可能性も考慮し、継続的な調査とバランスの取れた対策が求められている。(※7)
アメリカでは、1972年に制定された海洋生物保護法(Marine Mammal Protection Act)や、1973年の絶滅危惧種保護法(Endangered Species Act)によってラッコを保護している。これらの法律はラッコを含む希少な野生動物が適切に保護されることを目的としており、許可を得た専門家のみがラッコに接触したり保護活動を行うことができる。
違反者には罰則が科されるため、一般市民がラッコを発見した際には専門機関に連絡し、直接手を出さないことが求められる。この厳格な法律の枠組みにより、アメリカではラッコの保護が行われている。(※8)
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私たち一人ひとりの行動もラッコの保護につながる。以下の方法で、私たちもラッコを守るための貢献をしていこう。
持続可能な消費は、ラッコの生息環境を守るために有効である。例えば海産物を選ぶ際には、環境に配慮した漁法で採取された製品を選ぶことが大切だ。またプラスチックごみを減らすことで、ラッコや他の海洋生物が汚染された海域で生き延びる可能性を高められるだろう。
ラッコの保護団体に寄付することや、ボランティア活動に参加することも一つの方法である。ASLCのようなボランティア団体の多くは、支援者からの寄付で成り立っている。保護活動の資金が確保されることで、救助やリハビリテーション活動が継続される。またボランティアとして直接保護活動に関わることで、ラッコの未来を支えられるだろう。
ラッコが生息するためには、綺麗な海の環境が不可欠だ。家庭での化学洗剤の使用を控える、料理に使用した油を適切に処理するなどの小さな努力の積み重ねが、海洋環境の保護につながる。また地元の河川や海岸の清掃活動に参加することで、よりクリーンな生息環境を保てるだろう。
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ラッコは環境の変化や人間活動の影響で、いまや絶滅の危機に瀕している。温暖化による環境の変化や、海洋汚染が彼らの生息地を脅かし、徐々に生息域を奪っているのだ。多くの団体や機関がラッコの保護を進めているものの、私たち一人ひとりの行動も大切だ。
日々の小さなことから海の環境を守るための選択をすることで、ラッコの生息地を守ることができる。個々の小さな行動が集まることで、より大きな変化を生むだろう。
※1 水族館の人気者ラッコ、見られなくなるかも? 輸入規制で残り4頭に|朝日新聞デジタル
※2 野生ラッコ、北海道に約50頭生息か なぜ増加? 施設では3頭のみ|朝日新聞デジタル
※3 環境白書|環境省
※4 ラッコが気候変動の抑制に貢献する?!その理由とは - グリーングロワーズ | 安心安全で 環境に優しい水耕栽培レタス
※5 Back Button
※6 Alaska SeaLife Center Admits First Stranded Animal of the Decade - Alaska Sealife
※7af Magazine〜旭硝子財団 地球環境マガジン〜 の第17回「希少種ラッコの保全と沿岸漁 業の共存は可能か。人の営みを含めた生物多様性を考える」|旭硝子財団
※8 NATIONAL OCEANIC AND ATMOSPHERIC ADMINISTRATION
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