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近年、日本で暮らす外国人が増え、接する機会も多くなっている。地域社会の一員としてともに生きていくためには、多文化共生に取り組む必要がある。この記事では、多文化共生とはなにか、そして日本の現状と取り組み、メリットや課題、私たちにできることを解説する。
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多文化共生とは、異なる国籍や民族の人々が、互いの文化的違いを認め尊重しあい、対等な関係を築きながら地域社会の一員としてともに生きていくことを指す。地域の一員として日本人も外国人もともに認め合い、互いに協力しながら社会を発展させていこうという考え方である。
なぜ、多文化共生が必要とされているのか。その理由や背景を解説する。
日本では、人口減少と少子高齢化にともない人手不足が深刻な問題となっている。この問題を解消するために、政府は2019年に出入国管理法を改正し、外国人の人材受け入れ拡充を図っている。こうした背景により、日本で働く外国人が増加し、多文化共生の必要性も高まる。
SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みの加速も影響している。SDGsの前提には「誰一人取り残さない」が掲げられており、目標には多文化共生と関連するものも多い。
例を挙げるならば、
・目標3「すべての人に健康と福祉を」
・目標4「質の高い教育をみんなに」
・目標8「働きがいも経済成長も」
・目標10「人や国の不平等をなくそう」
・目標11「住み続けられるまちづくりを」
・目標16「平和と公正をすべての人に」
・目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」
などだ。
多様性を尊重し、誰も取り残さない持続可能な社会を実現するためにも、多文化共生が求められている。
国や地域を超えて、人・モノ・金・情報が世界規模で結びつき、世界の一体化が進められている。こうしたグローバル化に対応するためにも、国際社会のなかで国や地域にとらわれず外国人と共生しながら存在感を高め合う必要がある。
多様な人種や宗教、文化や価値観を尊重し合うダイバーシティは、企業競争力アップや地域の活性化にもつながると考えられている。このダイバーシティの推進に、必要不可欠なのが多文化共生だ。多文化共生によって、多様性のある社会を実現できる。
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出入国在留管理庁のデータによると、2023年時点での日本の在留外国人は341万992人だ。そのうち外国人労働者の人数は204万8,675人で、前年よりも増加しており、過去最高の数となっている。
在留資格別の数でもっとも多いのは「専門的・技術的分野の在留資格」で595,904人、次いで「技能実習」が 412,501人となっている。そのほか「資格外活動(留学生のアルバイトなど)」が352,581人、永住者や日本人の配偶者などの「身分に基づく在留資格」が 615,934人、「特定活動(EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士候補者、ワーキングホリデー、外国人建設就労者など)」が71,676人となっている。(※1)
また外国人労働者数の都道府県別の割合は、東京が27.4%、愛知が10.4%、大阪が6.8%の順に多かった。産業別では製造業が 26.6%、サービス業(他に分類されないもの)が16.2%、卸売業、小売業が 13.1%となっている。(※2)
政府は、日本に在留する外国人が円滑に共生できるような社会の実現に向け「地域における多文化共生推進プラン」を策定して各地方自治体に通知、多文化共生を推進している。(※3)しかし言語の壁や偏見・差別、低賃金労働などの課題も多く、さらなるプランの普及や展開、法整備が必要な状況だと考えられる。
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多文化共生がもたらすメリットには、社会的、経済的、文化的な側面がある。それぞれのメリットについて解説する。
多文化共生により、異なる文化背景を持つ人々が互いに理解しあうことができる。そのため差別や偏見が減少し、社会の安定と調和が保たれる。また交流活動がさかんになることで、地域社会の活性化も見込めるのがメリットだ。
少子高齢化が進む日本社会において、多文化共生が促進すれば人手不足が解消できる。またさまざまな外国人労働者とともに働くことで、異なる文化や視点、スキルを組織に取り入れることができ、イノベーションや創造性が促進される。また市場の拡大も見込め、経済的な利益をもたらすのもメリットといえる。
異なる文化を尊重して理解し合うことで、文化の多様性を保護・促進でき、さらには新しい文化の創造にもつながる。また、国際理解や国際協力の基盤を築くことにも貢献できるだろう。
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多文化共生にはメリットがある一方、課題もある。どのような課題があるのか説明しよう。
多文化共生における課題のひとつが、言語の壁だ。異なる言語を話す人々がともに暮らす際には、言語によるコミュニケーションの障害が生じやすい。これにより、情報共有や日常的な交流が難しくなってしまう。
文化的差異や宗教への理解が深まらなければ、価値観や習慣の違いが誤解や対立を引き起こすことがある。そうすると、協力や調和、相互理解が困難となってしまう。
日本において、多文化共生を推進するための法律や制度が十分に整備されていないのも課題だ。外国人住民が法的な支援や保護を受けにくく、これが権利の侵害や不公平な扱いを招くこともある。
異なる文化背景を持つ人々に対する偏見やステレオタイプが存在し、それによって差別や不平等が生じることがある。こうした差別や偏見を解消しなければならないのも課題となっている。
外国人労働者が、低賃金や不安定な雇用条件で働かされることがあるのも課題だ。これが経済的な不平等を引き起こす可能性がある。また教育においても言語の壁があることから、十分な教育を受けられないこともある。
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多文化共生には課題があるが、その課題を改善するべくさまざまな取り組みも行われている。ここでは、多文化共生への具体的な取り組みを紹介しよう。
言語の壁をなくすために行われている取り組みが、行政や生活情報の多言語化だ。行政では、生活に関する情報を多言語で提供する取り組みをしている。
たとえば自治体のホームページでは、外国人住民が日本で生活するための情報をさまざまな言語で公表・提供している。また外国語での電話による生活相談や、観光地や公共施設において、多言語音声翻訳システムの導入なども広がりを見せている。
言語の壁をなくすために行われている取り組みに、日本語学習のサポートもある。日本語学習のサポートは自治体や企業が行っており、就労支援と連動した日本語研修の提供や、地域生活に密着した「生きた日本語」の教育、地域住民と交流を深めながら日本語を学ぶ教室などがある。また大人だけでなく、外国人の子どもを対象にした日本語学習のサポートも行われている。
地域国際化推進アドバイザー制度は、多文化共生に取り組もうとする自治体が、地域国際化推進アドバイザーを通じて多文化共生推進のための施策の構築・実施、国際協力、国際交流、国際理解教育の助言やノウハウの提供を受けることができる制度だ。この制度は、地域の実情に合わせた多文化共生を推進するために大きな役割を果たす。(※4)
「地域における多⽂化共⽣推進プラン」は、地⽅公共団体における「多⽂化共⽣の推進に係る指針・計画」の策定に資するため、総務省が策定したプランだ。内容にはコミュニケーション支援、生活支援、意識啓発と社会参画支援、地域活性化の推進やグローバル化への対応があり、各地域で多文化共生を推進する。(※5)
厚生労働省のホームページでは、日本に暮らす外国人への生活支援や、労働者、技能実習生への支援などの情報を提供している。(※6)
また安心して職業相談ができるよう、外国人専門の相談員、通訳、外国人出張行政相談コーナー、生活全般に対応できる相談窓口を設置し支援している。(※7)
多文化共生社会推進のために、各地域で活動しているNPOや民間団体もある。活動分野には、医療を受ける際の通訳や、県民との国際交流、日本語学習活動、生活相談など多岐にわたる。
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多文化共生のために、私たちにもできることがある。次のようなことをはじめてみよう。
異なる文化や価値観を持つ人々とともに生きていくためには、文化や習慣の違いを知り、受け止めることが大切だ。またていねいなコミュニケーションをとり、互いに理解し合うようにしよう。こうしたことを積み重ねて、多様性を受け入れることが多文化共生につながる。
偏見や無意識のバイアスは、相手のことを知らず、理解していないことから生まれる。こうした偏見や無意識のバイアスは、多文化共生の妨げになる。自分のなかにある偏見や無意識のバイアスに気づくこと、そして相手と十分なコミュニケーションをとって理解することが大切だ。
多文化共生を推進するボランティア活動や交流イベントは、各地域で行われている。こうしたものに参加すれば、異なる文化や価値観を持つ人々への理解を深められるだろう。
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今後、日本で暮らす外国人は増えていくことが予想される。ともに生きていくためには、多文化共生に取り組むことが重要だ。互いを理解し、尊重しあって多文化共生社会を実現しよう。
※1 外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組|出入国在留管理庁
※2 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和4年 10 月末現在)|厚生労働省
※3 地域における多文化共生の現状等について|総務省
※4 地域国際化推進アドバイザー制度について|総務省
※5 「地域における多文化共生推進プラン」の改訂等について|総務省
※6 がいこくじんのみなさんへ|厚生労働省
※7 外国人雇用対策|厚生労働省
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