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ISO14000は、企業や団体のための環境マネジメントの国際規格である。国境を超えて環境問題に取り組むための共通言語とも呼べるもので、日本でもISOに対応する企業が増加している。この記事ではISO14000について解説し、ISO14001との違いやメリットを紹介する。
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ISO14000とは、環境マネジメントシステム(EMS-Environmental Management System)の国際規格群を指す。この規格群は、企業や団体が自らの活動に関して環境への影響を管理し、改善するための枠組みである。
企業や団体が環境保全を推進するうえで、国際的に認められた基準を持つことで環境と経済活動の両立を目指す。
ISO14000シリーズは、環境マネジメントに含まれるさまざまな規格を包括するものだ。そのなかには、組織の活動に対して数値的な測定を行う環境パフォーマンスの評価、環境負荷の低い製品やサービスに与えられる環境ラベリング制度、生産から廃棄、リサイクルまでを管理するライフサイクルアセスメント(LCA)などが含まれている。
なかでもISO14001は、EMSの認証を取得するために必要な具体的な要件を規定しており、企業が環境負荷を減少させるための実効的なシステムを構築する際の指針となる。
そもそもISO(International Organization for Standardization)は、ジュネーブに本拠地を置く非政府機関、もしくはその組織が設定する規格のことを指す。1947年に設立された組織で、国や地域ごとに異なる製品やサービスの国際的な枠組みをつくる役割を果たしている。
技術やサービス、製品に関する国際的な基準を設定することで、国際貿易の円滑化や技術的な調和を実現することを目的としており、多くの国で国家規格として採用されている。企業にとっては、事業における信頼性を確保するための重要な指針の一つとなっている。
ISO14000とISO14001は、しばしば混同される。
ISO14000は環境管理に関する一連の規格を含むシリーズ全体を指すが、一方ISO14001はそのなかでも環境マネジメントシステムの要求事項を定める規格だ。(※1)
ISO14001は、環境パフォーマンスを改善するための具体的な手順や管理手法を経営者・運営責任者に提供し、企業が持続可能な運営を実現するための基盤となる役割を果たしている。
また、あくまで経営的な手法について定めるものであり、具体的な環境対策や製品の水準を規定するものではない。
JISQは、日本の国内規格であるJIS(日本産業規格)の中の品質管理および品質保証に関連する規格だ。(※2)これまで触れてきたとおり、ISO14000は国際規格であり、世界中で統一された基準を提供する。
一方のJISQは、主に日本国内における品質管理のための基準を定めている。またISOとJISは相互に補完関係にあり、企業は両者を組み合わせることで国際的かつ国内の市場に適した品質管理を実現することが可能だ。
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ISO14000シリーズの主な目的は、企業が環境に与える負荷を最小限に抑えるための枠組みを提供することにある。環境保全に関わる規格を設けることで事業活動における環境への影響を抑え、自然や現時点の環境を保護し持続可能な経営と社会を目指している。
企業にとっては社会的責任を果たすことにつながり、社会的信用を高めることが期待される。
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企業にとってISO14000は、競争力を高め、持続可能な経営を達成するための手段だ。持続可能な発展を遂げるためには、経済社会活動のあらゆる段階で環境への負荷を削減する必要がある。そのため、企業や組織が環境保全に積極的に取り組むことが求められており、ISO14000はそのための有効なツールとして機能している。
また、近年消費者の環境意識が高まっており、環境にやさしい商品やサービスを提供する企業が選ばれる時代になっている。環境に配慮した経営を行うことが企業にとってビジネスチャンスの拡大につながっているのだ。
さらに、環境保全に関する規制や要請は今後ますます強化されることが予想される。こうした動きに適切に対応するためにISO14000を活用することで、企業は国際的な市場の要求を満たし、これからの時代に対応できる。
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ISO14000を取得する目的は、組織が環境への配慮を具体的な行動に移すための基盤を整えることだ。(※3)国際規格を導入することで、企業は環境保護のための姿勢を示しながら効率的かつ持続可能な運営体制を確立できる。
ここでは、ISO14000を取得することで得られる代表的なメリットについて説明する。
ISO14000を取得することで、企業は市場から環境に配慮した組織であるという認知を得られる。近年では環境意識の高い消費者が増えており、商品やサービスを選択する際にエコフレンドリーな企業が選ばれる傾向がある。ISO14000の認証は、こうした市場のニーズに応える手段として効果的で、企業のブランド価値を高めることにつながる。
ISO14000を導入することは、環境マネジメントの観点からも経費の削減につながる。例えば、省エネルギーや省資源の取り組みを通じて、これまで無駄になっていた資源や工程を減らし、効率的な運用を目指せるだろう。短期的には投資が必要となる場合があるものの、長期的には経費の節減を実現し、経営の安定化を図れる。
ISO14000を取得することで、企業は最新の環境関連法規を遵守する体制を構築できる。現行法への違反による罰則や、企業イメージの低下を未然に防ぐことが可能である。
さらにISO14000のフレームワークを活用することで、環境リスクを体系的に評価し、対策を講じることができる。将来的に厳格化が予想される規制に対応可能な地盤を整えることにもつながるだろう。
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ISO14000のなかでも、ISO14001の認証を取得することは企業の環境マネジメントが国際的に認められた証となる。ここでは、ISO14001認証を取得するための流れについて説明する。
まずは、企業が環境に対してどのように取り組むかを明確にし、基本的な方針を策定する。環境方針は、企業理念に基づき、持続可能な発展を目指すための基本的な考え方だ。
またここで決めた方針は、社員やステークホルダーに周知し、外部にも公開することが求められる。
次に、環境方針を実行に移すための環境マネジメントシステムを構築する。企業の運営において環境目標を達成するための具体的な施策を設定し、施策を管理するために必要な枠組みを構築する。
またISO14001では、PDCAのサイクルを回すことが求められている。計画(Plan)→実施(Do)→点検(Check)→改善(Act)のサイクルを回し、マネジメントを達成しながら変化に対応していく。
続いて、環境マネジメントシステムを運用するためのマニュアルを作成する。マニュアルには、組織の環境目標、役割分担、プロセス、手続きを明確に記載し、すべての従業員が一貫した方法で環境保全に取り組むことを目指す。
マニュアルに基づいてEMSを運用し、計画通りに環境目標が達成されているかを内部監査によって定期的に確認する。組織内のプロセスが適切に機能しているかを評価し、必要に応じて改善策を講じることが目的となる。
これらのステップを踏み、さらに外部の審査登録期間の審査を受け登録証を発行することでISO14001の取得が可能となる。
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ISO14000シリーズは、企業の環境パフォーマンスを向上させ、持続可能な発展を支援するために必要性の高まっている仕組みでさまざまな規格がある。
ここでは、ISO14000シリーズの中から代表的な規格を紹介する。(※4)
ISO14004は、環境マネジメントシステムの実施に関する一般的な指針を提供する規格である。ISO14001で構築された環境マネジメントシステムを、さらに改善するためのガイドライン的な役割をもつ。
ISO14050は、環境マネジメントに関連する用語を標準化した規格である。異なる組織間で共通の言語を使用できることで、環境マネジメントに関するコミュニケーションが円滑になる。業界内での用語の一貫性を保つための規格だ。
ISO14010番台は、環境監査の原則や手順を定めた規格群である。ISO14010は一般原則を、ISO14011は環境マネジメントシステムの監査手順を、ISO14012は環境監査員の視覚基準をそれぞれ規定している。
そのほかにも用地に関する規定を定めたISO14015や、環境マネジメントレポートの妥当性を確認するためのISO14016などの規格がある。
ISO14020番台は、環境ラベルに関する規格群である。環境ラベルは、製品の環境特性を消費者に伝える手段として使用されている。ISO14021では自己宣言によるラベルを規定し、ISO14024では第三者機関からの認証について定めている。
ラベルの正確性と透明性を担保し、消費者が信頼できる情報を得られるようにするための基準を提供することが目的だ。
ISO14030番台は、環境への配慮を目的とした資金調達手段であるグリーン債権に関する規格である。
企業の環境評価プロセスや情報開示について定めており、投資家が環境にやさしいプロジェクトに資金を提供する際の基準を提供し、環境投資の透明性と信頼性を向上させる。
ISO14040番台は、製品のライフサイクル全体または特定の場面における環境負荷を評価する手法である、ライフサイクルアセスメント(LCA-Life Cycle Assessment)に関する規格だ。LCAは、製品の製造から廃棄までの全過程における環境影響を評価し、改善点を特定するための手法である。
ISO14066は温室効果ガスについて記された規格で、温室効果ガスの使用における妥当性確認チームおよび検証チームの力量に対する要求事項である。
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ISO14000シリーズは、企業や団体のための環境マネジメントの国際規格であり、組織が持続可能な運営を実現するための枠組みだ。これらの規格を導入することで、環境への影響を抑え、法令遵守や効率的な資源利用が可能となる。
また企業にとっては、市場からの信頼性の向上や新たなビジネスチャンスにもつながるだろう。経済的な豊かさと環境課題に対する姿勢を両立し、持続可能な成長を目指すための基盤として、ISO14000の理解と実践が求められている。
※1 ISO14001 | 総合環境政策 | 環境省
※2 JISとは|日本企画協会
※3 環境マネジメントシステム | 総合環境政策 | 環境省
※4 ISO14000 ファミリー規格の開発状況|日本企画協会
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