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デンマーク政府は2023年10月、国民の食生活を植物性のものへとへ移行を目指す世界初の国家行動計画を発表した。同計画によれば、植物性の食生活へのシフトは、大きな経済的機会にもつながるとされている。植物性食品の開発や普及だけでなく、教育プログラムなどにも取り組んでいる。
岡島真琴|Makoto Okajima
編集者・ライター・キュレーター
ドイツ在住。自分にも環境にも優しい暮らしを実践する友人たちの影響で、サステナブルとは何かを考え始める。編集者・ライター・キュレーターとして活動しつつ、リトルプレスSEA SONS PRE…
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「植物性食品は未来だ」。デンマーク政府が世界初のプラントベースシフト政策を発表した際、デンマークのヤコブ・イェンセン食糧・農業・水産大臣はこう述べた。「農業部門における環境フットプリントを削減するには、私たちは植物由来の食品をもっと食べなければならない」
この国家行動計画では、デンマーク政府は具体的に3つの目標を掲げている。
①植物性食品の需要を高める
②植物性食品の供給を増やす
③科学者から農家やシェフ、食品社会学者、栄養学の専門家に至るまで、さまざまなステークホルダーが協力し合う体制を改善する
気候シンクタンクConcitoは、デンマークの国土の半分以上が農業に使用され、農業が炭素排出量の約3分の1を占めていると推定。また国連食糧農業機関(FAO)は、世界の温室効果ガス排出量の約14.5%は肉と乳製品によるものと推定している。
そのためデンマーク政府は、2030年までに1990年比で炭素排出量を70%削減する目標を達成するためには、肉と乳製品の消費を減らすことが重要だと考えている。
2021年に発表された研究によると、植物性食品の生産による炭素排出量は、食肉生産による排出量のおよそ半分であるという。
デンマーク政府は、「強力な植物性食品市場を構築することは、デンマーク国民の環境フットプリントを削減するだけでなく、輸出市場においてデンマークの企業のポジションを強めることにもつながる」と指摘している。つまり植物性食品への必要なシフトは、大きな経済的機会にもつながると考えられているのだ。
実際、デンマークの大学、企業、その他の組織からなる研究・イノベーション・パートナーシップであるAgriFoodTureは、もしデンマークが世界の植物性食品市場で3%のシェアを獲得すれば、最大2万7000人の雇用を創出し、135億デンマーククローネ(約3160億円)をもたらすことができると見積もっている。
またコペンハーゲン大学の調査によると、デンマーク人が気候変動に配慮したガイドラインにしたがって食事をすれば、年間1000人の死亡を防ぎ、国の排出量を31〜45%削減し、医療費120億デンマーク・クローネ(約400億円)を抑えられるという。
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この計画に基づいて、2023年11月には、植物性タンパク質の開発、プラントベース料理のシェフの養成、全国的な情報キャンペーンなど、36のプロジェクトに対して合計5820万デンマーク・クローネ(約14億円)の資金が投じられた。
例えば、スタートアップ企業のPlanetDairyは、「精密発酵」によって、ナチュラルヨーグルトやデンマークで人気の牛乳チーズであるDanboの植物性バージョンの開発に取り組んでおり、エンドウ豆やソラマメからつくられる「ミルク」タンパク質を生産している。
またデンマークのホスピタリティ・スクールでは、ベジタリアン料理専門の新しい学位プログラムを提供。ほかにも、シェフと学生のための植物性料理に関する「ナレッジ・センター」、通常は伝統的なフレンチの調理法を学んでいるデンマーク各地のシェフを訓練するための「ヴィーガン・トラベル・チーム」などの実践的な取り組みが行われている。
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一方で、デンマークは世界有数の豚肉生産国でもある。そのため、人々の食の行動変容をもたらすのは容易ではないようだ。2019年に行われた調査では、デンマーク人の約11.5%が肉の消費量を減らす意向があり、27.5%がすでに実行しているものの、57%は肉の消費量を減らすつもりはまったくないと回答した。
こうした現状を受け、植物性食品をよりよいブランドで販売する "ナッジ "アプローチや、例えばソーセージの豚肉の一部をビーツで代用するような "ハイブリッド "な選択肢を開発することも、同計画の一部となっている。
デンマークでは先ごろ、家畜による温室効果ガスの排出量を削減しようと、家畜に炭素税を導入することを発表したばかり。この家畜への炭素ガス導入もまた、世界で初めての試みとなる。
今回のプラントベースシフト政策を含め、デンマークで今度どのような農業のあり方やそれに伴った食生活が浸透していくのか、引き続き注目したい。
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