環境活動家とは具体的に何をする人? 活動内容やエコテロリストとの違いも

メッセージを掲げてデモが行われる様子

Photo by Markus Spiske on Unsplash

環境活動家とは環境の危機を訴える人のことだが、具体的にはどのような活動をしているのだろうか。本記事では、環境活動家の活動内容や、世界・日本の有名な環境活動家について紹介。近年ニュースを賑わせているエコテロリストについても併せて解説する。

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2024.06.28
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環境活動家とは

気候変動について訴えるメッセージを掲げた人

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環境活動家とは、言葉の通り、環境を守るために活動する人のこと。いま地球が危機に陥っているのは周知の事実だが、自分ごととして捉えている人はまだまだ少ないのが現状。そこで重要な役割を果たすのが環境活動家だ。

環境活動家の活動分野やあり方はさまざま。気候危機や森林破壊、生物多様性の崩壊などの問題を世間に伝え、人々に行動変容を促す。個人・団体どちらのケースもあり、活動資金は、寄付や支援、自身の活動報酬や事業収入などで賄う場合が多い。

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環境活動家の活動内容

講演を聴く人々

Photo by RU Recovery Ministries on Unsplash

環境活動家のふだんの活動には、どのようなものがあるのだろうか。活動は多岐にわたり、人によってスタイルはさまざまだ。以下では、活動内容として一般的なものを紹介する。ここで挙げたものに限らず、多方面からのアプローチを行う環境活動家も多くいる。

抗議活動

環境活動家の活動のひとつとして、デモンストレーションをはじめとする抗議活動が挙げられる。特定の問題に対する直接的な抗議のほか、海外では集会や行進などが盛んに行われ、大規模なデモに発展することも。抗議でなくとも、世間への問題提起として実施される場合もある。

講演

地球環境に関する講演を行うのも主要な活動のひとつ。現状を知ってもらうことはもちろん、地球の未来を考えるきっかけをつくり、聴講者に行動変容を促すのが目的だ。場所は、地方自治体のホールや教育機関などが多い。

世間への提案

環境活動家とひと口にいっても、タイプはさまざま。研究機関に所属している人もいれば、SNSに多数のフォロワーを持つ人も。それぞれのやり方で世間へ提案を行うことも、重要な活動といえる。

例えば、知見や研究結果をまとめて本を出版したり、自身が実践するライフスタイルを共有したり、個人で参加できるイベントや活動をシェアしたりというもの。わかりやすい提案を行うことで、環境問題を自分ごととして捉えてもらうのだ。

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世界の著名な環境活動家

土と植物を両手で包み込む様子

Photo by Nikola Jovanovic on Unsplash

環境活動家は、世界各国に多数存在する。ここでは、世界的にも影響力が大きい5人の活動や功績を具体的に紹介しよう。

レイチェル・カーソン

レイチェル・カーソンは、1907年にアメリカで生まれた海洋学者であり、作家。環境保護活動の先駆者として、環境問題がいまほど重要視されていなかった時代から一貫して環境問題に警鐘を鳴らしてきた人物だ。

大学時代に生物学者を志し、大学院では海洋生物学者として研究を開始。その後、連邦漁業局の公務員として勤めていた際に執筆した「われらをめぐる海」がベストセラーになり、文筆業に専念することとなった。

「潮風の下で」「われらをめぐる海」「海辺」は、海の3部作といわれ、いずれもベストセラーに。さらに、1962年に出版された「沈黙の春」には、合成化学物質と環境破壊の関係が記されており、社会に大きな影響を与えた。

1965年、没後に出版された「センス・オブ・ワンダー」では、森や海での自然体験が、表現豊かに綴られている。(※1)

グレタ・トゥーンベリ

世界でもっとも有名な環境活動家ともいわれるグレタ・トゥーンベリ。2003年にスウェーデンのストックホルムで誕生した、若き環境活動家だ。

彼女が気候変動を問題視し出したのは、7歳か8歳頃のこと。まずは、家族にライフスタイルの変化を訴えることから始めた。2018年、15歳のときには、気候変動問題を訴えるために、授業をストライキ。「フライデー・フォー・フューチャー(未来のための金曜日)」として、後に世界に広がることになる。

いまや、国連をはじめ、国際的な場で演説をすることも少なくない。タイム誌のパーソン・オブ・ザ・イヤーを最年少で受賞したり、ノーベル平和賞の候補になったりと、世界的な躍進は止まらない。(※2)

ルイーザ・ノイバウアー

ルイーザ・ノイバウアーは、1996年生まれのドイツの気候活動家。ドイツにおける「フライデー・フォー・フューチャー」の活動を支えていることで知られている。環境危機を人類の課題だと訴え、精力的に活動している。

2022年9月に主催した集会では、ショルツ首相のエネルギー政策を非難。(※3)ほか、ドイツの環境政党である緑の党の方針にも難色を示している。(※4)脱成長を支持し、本質的な気候政策を提唱している。SNSでの発信も積極的。

ヴァネッサ・ナカテ

ヴァネッサ・ナカテは、1996年生まれのウガンダ出身の気候活動家。2018年にウガンダの気温上昇を調べ、地球温暖化を実感したことをきっかけに気候活動家としての活動を始めた。2019年には、ウガンダ議会前での座り込みを開始。アフリカ大陸で、「フライデー・フォー・フューチャー」の活動を始めた人物だ。

アフリカでは、規制の厳しさや環境意識の低さから、大々的な活動をするのは難しい。そんななかで、各村に出向いて地道に声を挙げている。また、世界的な議論の場において、アフリカの声を伝えるために「Rise Up Movement」を立ち上げた。2022年9月には、ユニセフ親善大使に就任した。(※5)

レオナルド・ディカプリオ

1997年に公開された映画「タイタニック」でブレイクし、世界的な俳優として知られるレオナルド・ディカプリオだが、環境活動家としての側面を持っている。

1998年には、環境保護財団として「レオナルド・ディカプリオ財団」を設立。気候変動や生物保護などに関する、世界中の多数のプロジェクトを支援している。ほか、世界自然保護基金や天然資源保護協議会などの複数の環境保護団体の理事に就任し、精力的に活動している。

2014年には、パン・ギムン元国連事務総長に任命され、気候変動におけるピース・メッセンジャーを勤めた。(※6)

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日本の著名な環境活動家

本を手に取る様子

Photo by Christin Hume on Unsplash

以下では、近年注目されている日本の環境活動家を3人紹介する。

露木しいな

露木しいなは、「環境活動家がいない社会を目指して」をスローガンに掲げる環境活動家。2001年、横浜生まれ。15歳まで公立学校に通ったのち、世界一エコな学校といわれるインドネシアの「Green School Bali」で高校3年間を過ごした。2018年にはCOP24、2019年にはCOP25に参加している。

また、高校在学中に、肌が弱い妹のためにコスメブランドを立ち上げた。オーガニックコスメの世界基準である「コスモス認証(COSMOS認証)」を取得し、人・動物・環境に配慮した口紅を展開している。

2019年9月に慶應義塾大学環境情報学部に入学するも、現在は休学中。「大学は待ってくれるけど、気候変動は待ってくれない」の思いのもと、全国の中高生を対象に講演活動を行っている。(※7)

谷口たかひさ

谷口たかひさは、ドイツ在住の環境活動家。気候危機についてみんなが知っている状態をつくるための活動団体「Save The Planet 《 地球を守ろう 》」の代表を務めている。

2019年に始まった活動は、1ヶ月足らずで日本全国に広がった。各地の教育機関や企業での講演実績は多数。気候危機の実態や、地球と共生する生き方について伝えている。(※8)

辻信一

辻信一は、1952年東京生まれの文化人類学者であり、環境運動家。複数の職業や海外での生活を経て、明治学院大学の名誉教授を務めている。教員として、アクティビストとして、さまざまな社会ムーブメントを牽引している。

1999年に、環境=文化NGO「ナマケモノ倶楽部」を設立。「スローな社会」を目指すべく、環境運動・文化運動・スロービジネスの3つを柱とし、活動を展開している。著書も多数。(※9)

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似て非なる「エコテロリスト」

モナリザを観る人々

Photo by Eric TERRADE on Unsplash

近年、環境活動家関連のニュースが世間を賑わせている。環境活動家の過激化が「エコテロリズム」と表現されることも多く、環境活動家とエコテロリストがしばしば混同されがちだ。

環境活動家とエコテロリストは、環境保護を訴えるという点においては共通している。しかし、エコテロリストは、非合法な行為を正当化している点で、環境活動家とは区別される。

以下では、抗議が過激化したケースを3つ紹介する。

アートアタック

2022年以降、環境保護を訴える者たちによるアートアタックが相次いでいる。2022年5月には、パリのルーブル美術館で「モナリザ」にケーキがこすりつけられる事件が発生した。

また、2022年10月には、ロンドンのナショナルギャラリーにおいて、環境団体「Just Stop Oil」のメンバーが、ゴッホの「ひまわり」にトマトスープを投げつけた。世界各国の美術館で、有名絵画を標的にした同様の行為が行われている。

2023年9月17日には、ドイツのベルリンで、環境団体「ラスト・ジェネレーション」のメンバーがブランデンブルク門をスプレーで着色し、警察に14人が拘束された。(※10)

このような事件を起こす背景には、過激な行動で世間の注目を集め、気候変動対策や社会変化を前進させる狙いがあると考えられている。

交通妨害

環境保護を訴える活動により、交通が妨げられるケースも発生している。2022年11月には、ドイツのブランデンブルク空港において、環境活動家が滑走路に接着剤で体を貼り付ける事件が発生した。温室効果ガスの排出を懸念し、飛行機を利用した旅行をやめるよう訴えたという。

2024年5月には、ドイツ南部のミュンヘン空港で環境活動家が滑走路に侵入し、約60便が欠航した。政府の気候変動政策に抗議するのが目的だった。

不法侵入

発電所やエネルギー関連施設への不法侵入も定期的に発生している。

また、2023年7月には、テニスのウィンブルドン選手権において、活動家らがテニスコートへ侵入し、プレーを妨害する事件が発生した。不法侵入および器物損壊の疑いで逮捕された3人は、「ジャスト・ストップ・オイル」と記されたシャツを着用しており、紙吹雪やジグソーパズルのピースをばら撒いた。(※11)

地球のために行動する環境活動家 私たちにできることも

過激な活動を行うエコテロリストが目立っているが、地球の未来を考え、真摯に活動している環境活動家が多数存在する。私たちが行動を変えなければいけない現代において、環境活動家は欠かせない。彼らの活動があってこそ、未来が少しずついい方向に変わっていくだろう。

本来であれば、環境活動家がいなくとも成り立つ社会が理想。自分たちにできることを見つけ、積極的に生活に取り入れていきたい。

※掲載している情報は、2024年6月28日時点のものです。

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