あなたはふだん排出しているCO2の量を知っているだろうか。CO2を見える化できるアプリを活用すれば、自分のCO2排出量や削減量を調査できる。本記事では、CO2アプリの基本的な特徴を、その背景にある社会問題も交えて解説。また一部利用可能なアプリも紹介する。
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CO2排出量や削減量がわかるアプリ(以下CO2アプリ)とは、日々のライフスタイルのなかで発生するCO2の排出量や削減量を可視化できるサービスのことだ。
一人あたりのCO2排出量は、食事や移動距離、住環境などによって異なる。たとえば、通勤時の移動手段は電車通勤か自動車通勤か。季節ごとの冷房・暖房の使用頻度や温度設定はどのくらいかなど、同じ人間であってもその排出量には差が生じる。
CO2アプリを使えば、目に見えないCO2排出量の数値化が可能になる。それにより、生活の中で何を改善すればCO2の排出量を削減できるかが把握できるのだ。
日常生活におけるCO2の排出量や削減量がわかるようになれば、環境問題をより自分ごととして捉えられるだろう。
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ここでは、CO2削減に役立つ機能を備えたおすすめのアプリやサービスを紹介する。
「じぶんごとプラネット」は、自分の1年間のカーボンフットプリント量(暮らしで発生する炭素の排出量)を調べられるサービスだ。住居、食、移動、モノとサービスの簡単な4つの質問に答えるだけ。調査後は自分のカーボンフットプリント量について、日本の平均と比べて何%差があるのかを知ることができる。
「CABOCHA」は、日々の生活で排出しているCO2の量を可視化できるアプリだ。12個の質問に答えるだけで、1ヶ月に排出しているCO2の量を測ることができる。食事や住居、移動や消費財など、カテゴリーごとのCO2排出量や、平均的なCO2排出量との比較も可能だ。
北海道は全国と比べ、積雪寒冷により暖房の灯油消費量が多いことや広域分散型で自動車への依存度が高いことから、家庭における温室効果ガスの排出割合が高いため、家庭での取り組みが重要だ。そこで、2050年までの温室効果ガス排出実質ゼロを目指すゼロカーボン北海道の実現に向けて、家庭のCO2排出量見える化アプリ「北海道ゼロチャレ!家計簿」をリリースしている。
株式会社日建設計は、個人のCO2排出量や削減量をデータ化するアプリ「Asapp」(現在試験運用中)を開発した。オフィスワーカーを対象としたこのアプリは、仕事中の個人のCO2排出量を表示して、環境行動を促すことが目的だ。働く場所や移動手段などの情報から、日々のCO2排出量が可視化できる。
電動アシスト自転車や電動キックボードを借りて、街中を移動できるシェアリングサービス「LUUP」。自動車に比べて消費エネルギーが少ない電動アシスト自転車や電動キックボードは、CO2排出量削減効果が期待されている移動手段だ。LUUPのアプリでは、利用後にどの程度CO2の削減に貢献できたかを示すCO2排出削減量が表示されている。
株式会社日立製作所は、CO2排出量が少ない交通機関の利用を促すスマホアプリを開発した。このアプリでは、移動中の揺れから乗り物の種類を自動で識別して、自動車と比較したCO2の削減効果を割り出してくれる。日立製作所は2024年度にも、鉄道会社などとサービスの実証実験を実施するとしている。
参考:日立製作所、エコ交通促すアプリ CO2排出削減量を判定 - 日本経済新聞
CO2アプリが台頭する背景には、脱炭素やカーボンニュートラルに向けた世界的な動きが関係している。地球温暖化の原因や現状について紹介しよう。
地球温暖化は、大気中の温室効果ガスの増加によって引き起こされる。温室効果ガスとは、CO2(二酸化炭素)やメタン、フロンなどの気体のことを指す。これらの気体が大気中に増加すると、太陽からの熱が地球に戻りにくくなり、地球の気温が上昇するのだ。
温室効果ガスは、化石燃料の燃焼や森林伐採、廃棄物処理などのさまざまな要因によって排出される。地球温暖化への対策として、温室効果ガスの排出を可能な限り低減することが必要だ。
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2015年にフランスのパリで開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で、「パリ協定」が成立した。パリ協定とは、2020年以降の温暖化対策における国際的な枠組みだ。
パリ協定では、世界の平均気温の上昇を産業革命以前と比較して2℃以内に抑え、さらに1.5℃以内を目指すことを目標としている。(※1)
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2023年7月、世界気象機関(WMO)や欧州連合(EU)の気象情報機関は、世界の平均気温が観測史上もっとも高くなるとの見通しを発表。これを受け、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰の時代が来た」と述べた。
地球温暖化が進めば、洪水や干ばつ、海面水位の変化などの異常気象が起きることが指摘されている。原因となるCO2の削減について、個人でも取り組む必要があるだろう。
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脱炭素社会実現に向けて、国や企業が行っている取り組みを紹介する。
2021年に日本政府は、2030年度までに国内の温室効果ガス排出量を46%削減(2013年度比)することを目指すと発表。(※2)さらに、2050年までには温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目標にするとした。(※3)
再生可能エネルギーとは、太陽光発電や風力発電など、温室効果ガスを増加させないエネルギーのことだ。日本の地方自治体では、公共施設や住宅、建築物の屋根などを再生可能エネルギーの促進区域として設定した。この取り組みにより、太陽光発電がさらに普及すると期待されている(※4)
企業の温室効果ガス排出量情報のオープンデータ化が推進されている。事業者は温室効果ガス排出量を国に報告し、国はそれを取りまとめて公表する義務があるのだ。脱炭素に向けて、企業も経営をシフトチェンジしていく必要があるだろう。
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脱炭素社会の実現に向けて、私たちが個人でできる取り組みを紹介する。
自動車の利用率を減らすことは、CO2排出量の削減に効果的だ。電車やバスなどの公共交通機関を利用した移動手段を選択してみよう。
気候に合わせた服装を促すクールビズやウォームビズ。快適に過ごせる服装を取り入れることで、過度な冷暖房の使用を抑え、エネルギーを節約できる。
衣類の廃棄量は、世界的に問題になっている。いま持っている服を長く大切に着ることを意識して、サステナブルなファッションを取り入れてみよう。
食品ロスによって廃棄する食材が増えると、廃棄時に加えて生産や流通時のCO2排出量も無駄になる。食品ロスの削減には、食べきれる分だけ購入したり、保存方法を工夫したりするなどの対策が効果的だ。
レジ袋やペットボトルなど、使い捨てプラスチックの使用をなるべく減らすこともCO2排出量の削減につながる。マイバッグやマイボトルなど、くり返し使える製品を持ち歩いてみよう。
地球温暖化対策には、CO2排出量の削減が不可欠だ。そのためには、我々一人ひとりがライフスタイルを見直す必要がある。
通常CO2は目に見えないが、CO2アプリを使えばおおよそのCO2排出量をデータで把握できる。日々の生活の中で発生するCO2排出量の目安がわかれば、個人でもCO2削減のための対策ができるだろう。
サステナブルな暮らしのアイディアとして、CO2アプリを使ってみよう。
参考
※1:国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21),京都議定書第11回締約国会合(CMP11)等|外務省
※2:地球温暖化対策計画(令和3年10月22日閣議決定) | 環境省
※3:地球温暖化対策計画の改定について
※4:改正地球温暖化対策推進法について|環境省
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