「バイオマスマーク」とは、数ある環境ラベルや認証のうちのひとつで、レジ袋や食品容器、衣料品や事務用品などに表示されている。このマークにはどのような意味があるのだろうか。この記事では、バイオマスマークを表示することのメリットや、求められる背景などについて説明していく。
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レジ袋や食品容器、衣料品や事務用品など、幅広い商品に表示されていることがある、「バイオマスマーク」。ここでは、バイオマスマークの意味や特徴について確認していこう。
バイオマスマークとは、生物由来の資源(バイオマス)を活用し、品質および安全性について、関連する法規、基準、規格等に適合している環境商品について付与されるマークのこと(※1)。
含まれているバイオマスの割合が、乾燥重量10%以上、かつ品質および安全性が確認されたバイオマスマーク認定商品に表示することができる。
バイオマスマークに記載されている数字は、バイオマス含有率を表す「バイオマス度」。10から始まり、5%刻みで最大100まで設定されている。
バイオマスマークは、数ある「環境ラベル」のひとつだ。環境ラベルとは、私たちが商品やサービスがどのように環境負荷を低減することに役立つかわかりやすくするために、製品や包装などについている目印のこと。商品やサービスを買ううえで、環境負荷の低いものを選ぶ参考になる。
バイオマスマークの認定商品は、1926点(2023年12月4日時点)。日用品、事務用品、繊維、土木、建築まであらゆるものに利用されている。その中でも、バイオマスマーク認定商品が多いのは、物流や包装関連だ。
「バイオマス」と聞くと、環境にやさしいプラスチックとして知られている「バイオマスプラスチック」を連想する人も多いだろう。
バイオマスプラスチックとは、再生可能な生物由来の資源を原料としてつくられているプラスチックのこと。具体的には、サトウキビやトウモロコシなどの食べられない部分を有効活用している。石油資源のように枯渇する心配が少なく、基本的には持続的に生産することが可能とされている(※2)。
さらに原料となる植物が育つ過程で、光合成により二酸化炭素を吸収して育つので、カーボンニュートラルな資源であるともいえる。
バイオマスマークの意味や特徴を理解したところで、ここからはバイオマスマークのメリットについて説明しよう。
前述したようにバイオマスマークのついた商品やサービスは、植物をはじめとした生物由来の資源を活用している。原料が育つ過程で大気中の二酸化炭素を吸収するため、廃棄時や処分時に二酸化炭素を排出しても、差し引きすると二酸化炭素量が増加しない「カーボンニュートラル」である資源といわれている。
バイオマスマークが表示された商品が増えたり、バイオマスマークを目印に商品を購入する消費者が増えたりすれば、カーボンニュートラルな世の中に一歩近づくことができるだろう。
近年、地球温暖化などによる異常気象が深刻化してきている。世界中の国や企業が、この問題の解決を目指し取り組んでいるが、バイオマスマークの取り組みは、SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」の達成につながるといえるだろう。
異常気象の大きな原因のひとつが、地球の平均気温の上昇。現時点で、産業革命(1880年頃)から地球の平均気温は1.1℃上昇している。これは地球の歴史でみればとても短い間に起きている急激な変化で、産業革命以降、人間が石炭や石油などの化石燃料を利用したことによって排出された二酸化炭素が影響しているといわれている。
そこで、再生可能な生物由来の資源を原料としていることを表すバイオマスマークがついた商品やサービスが増えることで、前述したようにカーボンニュートラルが期待でき、SDGs目標13の達成に一歩近づくといえるだろう。
一般消費者500名を対象に実施したアンケートで、「商品・サービスを購入するときに、環境にやさしいか否かで選ぶか?」聞いたところ、「環境にやさしい商品・サービスを必ず選ぶ」が3.3%。「場合によっては環境やさしい商品・サービスを選ぶ」が61.5%と、過半数を超える結果となった(※3)。
また、「場合によっては環境にやさしい商品・サービスを選ぶ」と答えた人のうち、「価格が高くても、環境への配慮が素晴らしいと思えば購入する」が7.1%。「価格が同じなら、環境への配慮があるものを購入する」が84.3%となり、環境にやさしい商品の方が、消費者の購入意欲が高まることが明らかとなった。
つまり、バイオマスマークを表示することで環境に配慮された商品であることをわかりやすく消費者に伝えることができれば、商品への購買意欲を高めることが期待できるのだ。
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バイオマスマークが求められる背景として、カーボンニュートラルや脱炭素に向けた世界的な動きが影響している。ここではその背景を説明しよう。
地球温暖化に関する世界中の専門家の科学的知見を集約している、国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)。この第6次統合報告書によると、パリ協定では、地球の平均気温上昇を産業革命前に比べて1.5℃に抑えると定めたが、現時点ですでに1.1℃まで上昇しており、今後10~15年で1.5℃に達するおそれがあると指摘。
気候変動は、猛暑や洪水、干ばつなどを引き起こし、人や自然が適応できる限界にまもなく達しようとしている。少しでも気温上昇を抑えるためにも、カーボンニュートラルや脱炭素が求められているのだ。
日本をはじめ、世界中が温室効果ガス排出削減に取り組む背景には、2015年にパリで開催された気候変動枠組条約締約国会議(Conference of Parties)で採択された、「パリ協定」の存在がある。
パリ協定とは、2020年以降の気候変動問題に関する、国際的な枠組みのこと。たとえば、産業革命以前と比較し、世界の平均気温の上昇を2℃より低く保ち、かつ1.5℃に抑えることを目標とする「1.5℃目標」の策定や、主要排出国を含むすべての国が削減目標を5年ごとに更新して提出することなどが項目にある。
これらを達成するには、バイオマスマークを始めとする、カーボンニュートラルや脱炭素への取り組みが必要不可欠なのだ。
2050年カーボンニュートラルの実現、また、2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指し、日本政府はさまざまな取り組みをおこなっている。ここからは、日本が脱炭素に向けておこなっている取り組み事例を3つ紹介していこう(※5)。
地球温暖化対策の推進に関する法律を踏まえて、2050年二酸化炭素実質排出量ゼロに取り組むことを表明した地方公共団体は増えつつある。ゼロカーボンシティを表明した地方公共団体は、2023年9月末時点で991にものぼる。
環境省では、地方公共団体の脱炭素化への取り組みを支援するため、計画策定のためのマニュアルや各種ツール、参考事例などを取りまとめて、ホームページで公表している。
衣食住や移動といった、ライフスタイルに起因する温室効果ガスの排出量は、日本全体の排出量の6割以上を占めるという分析があり、一人ひとりの行動がカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に影響しているといえる。
環境省ではライフスタイルに関係の深い住宅の脱炭素化や電気自動車の導入支援などをおこない、地球温暖化対策に役立つ“賢い選択”をできる社会の実現に向け取り組みを進めている。
パリ協定をきっかけに、企業が気候変動に対応した経営戦略の開示(TCFD)や脱炭素に向けた目標設定(SBT、RE100)などを通じ、脱炭素経営に取り組む動きが進んでいる。そこで環境省では、TCFDの報告書に沿ったシナリオ分析、SBT、RE100のための取り組みなどをガイドする、脱炭素経営の総合情報プラットフォーム「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」を作成。企業による脱炭素経営の取り組みを促進している。
バイオマスマークは、消費者が脱炭素社会に向けて貢献できるチャンスを知らせてくれる、大事な目印でもある。これまで意識をしたことがなかった人も、今後は意識的にバイオマスマークに目を向けて、より環境に配慮した商品やサービスを選んでみてはいかがだろうか。
※1 バイオマスマーク|一般社団法人日本有機資源協会
※2 バイオプラスチックとは?|環境省
※3 「企業の環境配慮」と「生活者の購買意欲」との関係性についての調査結果|新井紙材株式会社
※4 環境に優しい商品であれば売れる?データから考える「生活者の購買意欲」と「企業の環境配慮」の関係性|環境と人
※5 国の取組 - 脱炭素ポータル|環境省
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