444の自治体が宣言 ゼロカーボンシティの意味と取り組み事例を紹介

二酸化炭素排出量実質ゼロを目指す自治体、ゼロカーボンシティ

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ゼロカーボンシティは、「二酸化炭素排出量実質ゼロ」の実現を目指す自治体のこと。日本では444の自治体がゼロカーボンシティを宣言している。そこで各自治体の具体的な取り組みをあげながら、ゼロカーボンシティの目的や意味についてわかりやすく解説する。

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2021.09.30
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目次

ゼロカーボンシティとは? 意味・定義

クリーンエネルギー導入など、ゼロカーボンシティの取り組み

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ゼロカーボンシティとは、環境省が推進する温室効果ガス削減に向けた取り組みの一つ。2050年までに、二酸化炭素排出量を実質ゼロにすることを目指す自治体を指す。

我々人間が社会活動や経済活動を行う上で、二酸化炭素排出量をゼロにはできない。そこで注目されるのが「実質ゼロ」というキーワードだ。排出する二酸化炭素量を極限まで減らす一方で、さまざまな取り組みによって二酸化炭素吸収量を増やし、排出量と吸収量を相殺することで二酸化炭素排出量を実質ゼロにする。

2019年にゼロカーボンシティを宣言した自治体は、わずか4つだった。だが2021年8月までに、444自治体がゼロカーボンシティを宣言している。(※1)

環境省によるゼロカーボンシティへの支援

環境省では、各自治体の取り組みを支援するため、「ゼロカーボンシティ実現に向けた地域の気候変動対策基盤整備事業」を整えている。事業内容は、大きく以下の3つである。

・自治体の気候変動対策や温室効果ガス排出量等の現状把握(見える化)支援
・ゼロカーボンシティの実現に向けたシナリオ等検討支援
・ゼロカーボンシティ実現に向けた地域の合意形成等の支援

ゼロカーボンシティに向けた取り組みをスタートするためには、さまざまな準備が必要である。環境省では、まず気候変動対策や温室効果ガス排出量等の現状について把握し、ゼロカーボンシティ実現に向けた長期目標や具体的対策の検討などをサポート。多くの自治体がゼロカーボンシティを実現できるよう支援している。(※2)

ゼロカーボンシティを宣言している自治体

2021年8月末時点で、ゼロカーボンシティを宣言している自治体は444。東京都、大阪府、沖縄県、横浜市、札幌市、京都市、神戸市などがある。

・40都道府県
・268市
・10特別区
・106町
・20村

表明自治体の総人口は、約1億1,140万人。多くの人の自治体がゼロカーボンシティを表明しており、この取り組みは我々にとって、とても身近なものだと言えるだろう。(※1)

自治体にとってのメリット

各自治体がゼロカーボンシティに向けた取り組みを実践すれば、二酸化炭素排出量をより着実に削減していけるだろう。国際社会において、日本の責任を果たせるというメリットは極めて大きい。

さらに、各自治体がコストをかけて積極的な取り組みを行うメリットは、これだけに留まらない。地域経済を活性化させ地域貢献できるほか、再生エネルギーの積極的な導入で産業と雇用を創出し、地域レジリエンス*を向上できる。

*地域レジリエンス:地域が持つ脆弱性に対して、地域自身が対応できる能力のこと

例えば、地域に太陽光発電や蓄電設備が整備されれば、災害時や停電時に住民へ電力を安定的に供給できるだろう。また、自治体が主体となって再生エネルギー施設の運営を行えば、そこから新たな収益を得られる。

ゼロカーボンシティの取り組み事例

電気自動車(EV)導入など、ゼロカーボンシティの取り組み

Photo by Vlad Tchompalov on Unsplash

日本全国の多くの自治体が、ゼロカーボンシティの実現に向けて、さまざまな取り組みをスタートしている。だが具体的な取り組み内容は、地域の特性などに合わせて、自治体ごとに異なる。ここではいくつかの自治体の事例を紹介しよう。

埼玉県所沢市:地域の電力会社を設立

埼玉県所沢市では、ゼロカーボンシティを実現するために、地域新電力会社「株式会社ところざわ未来電力」を設立した。この電力会社では、地域の廃棄物発電や太陽光発電などで得られるエネルギーを主な電源としている。

発電で得られた電力は、市内の公共施設で活用されているほか、民間の家庭にも供給。2021年4月時点で、333件の契約を獲得している。(※3)

北海道札幌市:暖房によるCO2排出量削減

北海道のような寒冷地では、全国に比べて家庭から出るCO2の割合が高く、その多くが暖房によるものだという。そこで北海道札幌市では、札幌独自の高断熱・高気密住宅の基準である「札幌版次世代住宅基準」を策定している。住宅の断熱性能などが独自基準を満たしていると判断されれば、建築費用の一部が補助される仕組みだ。

省エネに関する住宅ルールは国が定めているが、寒冷地である札幌市においては、この基準は不十分だ。住宅のさらなる高断熱化から、エネルギー消費量の大幅な削減を目指している。(※4)

愛知県蒲郡市:ごみ減量への取り組み

愛知県蒲郡市が積極的に行っているのは、ごみ減量に対する取り組み。ごみの排出抑制や資源化の推進を図るために、2020年3月には「蒲郡市一般廃棄物ごみ処理基本計画(改訂版)」を策定。ごみ減量地域説明会も積極的に開催している。

また、より多くの住民にごみに対する意識を高めてもらうため、資源・ごみ分別アプリ「さんあーる」を配信。ごみに関する情報を手軽に受け取れる取り組みを行っている。(※5)

鹿児島県鹿児島市:電気自動車の普及促進

鹿児島県鹿児島市では、環境負荷低減のために、走行時の二酸化炭素排出量ゼロの電気自動車・燃料電池自動車の普及を促進している。公用車に電気自動車や燃料電池自動車を積極的に採用するほか、自家用車として一定の条件を満たした電気自動車などを購入した市民に、最大で30万円の補助金を交付している。(※6)

ゼロカーボンシティ実現に向けた課題

ゼロカーボンシティの実現に向けた取り組みには、まだ多くの課題があると指摘されている。その一つが、省エネに向けた取り組みを促すだけで終わってしまうことだ。地域がより主体的に、「二酸化炭素排出量実質ゼロ」のために何ができるのか、考えていく必要がある。

また、人々の生活範囲は一つの自治体内のみで完結しているわけではない。そのため、地域によっては近隣の自治体が協力して対策を行ったほうが効果的なケースがあるだろう。さらに、小さな自治体が単独で取り組もうとすると、その負担がとても大きいことも指摘されている。

このような課題を解決していくことも、2050年の二酸化炭素排出量実質ゼロを実現するためのポイントとなっていくだろう。

2050年までのゼロカーボンシティ実現に向けて

地球温暖化は、世界が抱える非常に大きな課題である。2015年に合意されたパリ協定においても、そのリスクと今後求められる具体的な対策が指摘されている。ゼロカーボンシティは、課題も残っているが、日本が目標を達成していくために効果的な取り組みになるだろう。

二酸化炭素実質ゼロ宣言によって、脱炭素化社会に向けた取り組みは、より一層身近なものになるはずだ。

※1 2050年 二酸化炭素排出実質ゼロ表明 自治体|環境省
https://www.env.go.jp/policy/zero_carbon_city/01_ponti_210831_2.pdf
※2 ゼロカーボンシティ実現に向けた地域の気候変動対策基盤整備事業|環境省
https://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/energy-taisakutokubetsu-kaikeir03/matr03-45.pdf
※3 株式会社ところざわ未来電力|所沢市
https://www.city.tokorozawa.saitama.jp/kurashi/seikatukankyo/kankyo/chiikishindenryoku/seturitu.html
※4 札幌版次世代住宅基準について|札幌市
https://www.city.sapporo.jp/toshi/jutaku/10shien/zisedai/zisedai.html
※5 「ゼロカーボンシティ」を目指す取り組み|蒲郡市
https://www.city.gamagori.lg.jp/unit/kankyo/zerocity.html
※6 「ゼロカーボンシティかごしま」に挑戦!~2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロに~|鹿児島市
https://www.city.kagoshima.lg.jp/kankyo/kankyo/kanseisaku/zerocarboncitykagoshima.html

※掲載している情報は、2021年9月30日時点のものです。

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