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貧困に苦しむ人がいる一方で、毎日大量の食品が捨てられ、無駄になっている。本記事では食品ロスの取り組みについて解説。企業・自治体の事例と家庭でいますぐできる対策を紹介する。食品ロスの現状や影響もあわせて確認してみよう。
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食品ロスとは、食べられるにも関わらず捨てられてしまう食品のこと。国連では、生産・加工・流通の段階で発生する食品のロスを「Food Loss(フードロス)」、小売・飲食・消費の段階で発生する食品のロスを「Food Waste」と定義している。日本では、すべてまとめて食品ロスと表現することが多い(※1)。
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世界では年間約13億トンの食料が廃棄されている現状がある。では、日本の状況はどうだろう。以下では、日本の食品ロスの現状について見てみよう。
農林水産省・消費者庁・環境省が公表している令和3年度推計値によると、日本における食品ロス量は年間523万トンだった(※2)。国民1人当たりに換算すると年間で約42kg、毎日お茶碗1杯分にあたる約114gを捨てている計算になる。
2000年度の食品ロス量は980万トンだった。政府では、食品ロス量を2000年度と比較して2030年度に半減することを目標としており、具体的な達成目標として489万トンを掲げている。2021年(令和3年)度は523万トンだったため、数値だけ見ると目標値に近づいているように見え、2000年度と比べて大きく減少しているのは事実である。
近年食品ロス量が減少傾向にある一方で、2020年度から2021年度にかけては増加している。2020年度の食品ロス量は522万トンであり、2021年度はプラス1万トンという結果だった(※3)。推移を大きく見ると減少傾向ではあるが、増減を繰り返しているのが現状。目標達成に向けて、取り組みを強化する必要がありそうだ。
食品ロスは、事業系食品ロスと家庭系食品ロスの2つにわけられる。事業系食品ロスは、製造や販売などの事業活動を通して発生する食品ロスのこと。規格外品や小売店での売れ残り、飲食店における客の食べ残しなどがこれにあたる。一方で、家庭系食品ロスは、家庭で発生する食品ロスを指す。家庭での食べ残しや期限切れ食品の直接廃棄、食べられる部分を取り除いて捨ててしまう過剰除去などのことである。
2021年度の食品ロス量の内訳は、事業系が約279万トンで53%、家庭系が約244万トンで47%。つまり、食品ロスの約半数は家庭から排出されているのだ。食品ロスを削減するためには、事業者と家庭の双方が当事者として取り組みを行う必要がある。
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食品ロスの問題点は大前提として食品が無駄になることだが、影響はそれだけにとどまらない。以下では食品ロスが与える影響として、代表的なものを3つ紹介する。
1つ目は食品が浪費されることだ。上述したように、日本の食品ロス量は年間約523万トン。国連世界食糧計画(WFP)による2021年の食糧支援料は約440万トンなので、約1.2倍に相当する。また、日本の食料自給率は38%。日本は食料の多くを輸入に頼っている現状がある。海外から多くの食料を輸入しているにも関わらず、食べずに廃棄しているのだ。
世界の人口が増加するなか、食料不足問題が深刻化している。日本も含め、世界には貧困により十分な食べ物を食べられない人が多く存在する。そんな状況下で大量の食品ロスが発生している事実を、いま一度頭に入れておきたい。
2つ目は環境への負荷である。食品ロスの発生で無駄になるのは、食品だけではない。食品の生産や製造時に使われたエネルギーや資源が無駄になったということだ。さらに、輸入や廃棄時の焼却では二酸化炭素が排出される。焼却後の灰の埋め立てに関しても、地球に負荷がかかっている。
また、世界では、食品を廃棄する際に埋め立て処理を行う国が多い。それにより発生するメタンガスも地球温暖化に大きく関わっているとされている。
3つ目は、経済的な損失。食品が生産者から消費者のもとに届くまでには、生産・製造・配送・販売など、さまざまな人が関わっている。食品ロスの発生により、過程を含めた労働力やコストが無駄になっているといえる。また、食品ロスを含む一般廃棄物の処理費用には、年間約2兆円が使われている。捨てるのにもお金がかかるのだ。
食品が適切な量だけ生産され、流通するようになれば、人的リソースの無駄遣いが減る。そうすると、労働時間も調整され、関わる人々の働き方にポジティブな影響があるだろう。
食品ロスを解決することは、SDGsの目標12「つくる責任つかう責任」の達成と深く関わっている。目標12は、平たくいうと、生産者側も消費者側も地球環境や人々の暮らしのために責任ある行動をとろうということだ。大量生産・大量消費の風潮を見直し、持続可能な生産・消費を行うことが求められている。
目標12.3には「2030 年までに、小売・消費者レベルにおける世界全体の一人あたり食品廃棄を半分にし、収穫後の損失を含めて生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減らす」と、食品ロスに関する直接的な記述があることからも関わりの深さがうかがえる。
また、食品ロスを削減すると、食品を生産・廃棄するために使われる資源を削減できる。地球の資源を守ることにもつながっているのだ。ほかにも、食品ロス問題は、目標2「飢餓をゼロに」や目標13「気候変動に具体的な対策を」などの複数の目標と密接に関わっている。
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政府広報をはじめ、食品ロスを減らす動きが加速するなか、独自の取り組みを行う企業や自治体も増えてきた。以下では、5つの事例を紹介しよう。
ファミリーマートは、全国47都道府県でフードドライブの活動を行っている。実施店舗2495店舗(2023年9月時点)に食品の回収ボックスを設置。誰もが気軽に、家庭で食べきれない食品をボックスに入れることができる。集まった食品は、こども食堂やフードパントリーなどに届けられる。
活動を通して、2021年4月から2023年2月に集まった食品は92.2トンにおよぶ。多くの食品が有効活用されており、食品ロスの削減に貢献している事例である。
「Kuradashi(クラダシ)」は、期限が近い商品や規格外商品を扱っている通販サービス。消費者はまだ食べられるのに捨てられてしまう商品をお得な価格で購入できる。Kuradashiはまさにソーシャルグッドマーケットであり、買い物が社会や地球をよくする仕組みをつくり出している。また、売上の一部が社会貢献活動の支援に充てられている。
愛媛県では、県内での家庭系食品ロスの割合が高いことを踏まえ、2022年10月から12月にかけて「食品ロスゼロチャレンジ事業」を実施した。家庭から出た食品ロスの種類や量を記録してもらい応募を募り、抽選でオリジナル保冷バッグをプレゼントするというものだ。記録をつけるための食品ロスゼロシートは、県内のスーパーで配布。県民に家庭系食品ロスについて考えてもらうことで、食品ロスをより一層削減する狙いで行われた。
「タベスケ」は、まだ食べられるものと地域住民をつなぐフードシェアリングサービスだ。ユーザーは食品をお得に購入でき、協力店は余った食品や料理を出品することで収益を確保できる。マッチングが成立すると、食品ロスの削減ができるというわけだ。
タベスケは、宮城県仙台市や長崎県佐世保市など、多くの自治体と提携してサービスを提供している。食品ロスの削減だけでなく、地域の活性化にも貢献するサービスだ。
石川県では、食品ロスの削減を推進するためにさまざまな取り組みを行っている。そのひとつが「もったいない市」である。出展者を募り、イベント時にあわせて食品の端材や規格外品などを販売。定期的に開催されており、これまでに多くの事業者が参加している。売上の一部は、フードバンク団体に寄附される。
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先にも述べたが、食品ロスの約半数は家庭から排出されている。つまり、食品ロスを削減するために消費者としてできる対策も多くある。以下で具体的な内容を5つ見ていこう。
食品ロスを出さないためには、余らせないことが大原則。買い物前にストックを確認したり、買い物リストをつくったり、必要な分だけ購入する習慣をつけるようにしたい。空腹時に買い物に行かないことも、買いすぎを防ぐために有効だ。
陳列棚の手前に並んでいる商品を積極的に購入する購買行動を「てまえどり」という。期限が長いものを買うために棚の奥から商品を購入する人もいるかもしれないが、すぐに食べる食品は期限が近いものから購入しよう。訳あり商品を購入するのも、食品ロス削減のためのひとつの方法といえるだろう。
冷蔵庫や冷凍庫を整理しておくと、どこに何が入っているかがわかりやすく、食品の期限切れを防ぎやすい。ふだんから食品の保管場所を決めておくことを意識しよう。
一口に期限といっても「賞味期限」と「消費期限」には違いがある。比較的日持ちする食品には賞味期限が設けられている。「賞味期限はおいしいめやす」というキャッチコピーがあるように、賞味期限は食品をおいしく食べられる期限である。賞味期限が過ぎたからといってすぐに食べられなくなるわけではない。一方で、弁当や洋菓子などの傷みやすい食品には消費期限が設けられている。消費期限の場合は、期限を過ぎたら食べないほうがいい。
また、いずれも未開封で適切に保管されていた場合の期限を指すことを頭に入れておきたい。食品の開封後は速やかに食べきるようにしよう。
食品ロスを削減するために、食品の保存方法を改めて見直そう。すぐに食べる予定がない食品は、冷凍保存を積極的に活用したい。冷凍には、長期保存ができたり、必要なときに必要な分だけ使えたりとメリットが多い。農林水産省のホームページでは、冷凍を含めた冷蔵庫での食材の保存方法が紹介されている。
食品ロスを減らすためには、私たち一人ひとりの取り組みが欠かせない。とくに家庭から排出される食品ロスに関しては、心がけしだいで大きく減らすことも可能だろう。
食品ロスは「もったいない」だけで済まされる問題ではなく、地球や社会と大きくつながっている。地球を守るためにも、持続可能な社会を実現するためにも、周囲と協力しながら取り組みを進める必要がある。
参考
※1令和5(2023)年度版 食品ロス削減ガイドブック P28-29|消費者庁 消費者教育推進課 食品ロス削減推進室
※2 最新の食品ロス量は523万トン、事業系では279万トンに|農林水産省
※3 令和5(2023)年度版 食品ロス削減ガイドブック P16|消費者庁 消費者教育推進課 食品ロス削減推進室
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