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エシカルな企業の製品やサービスを選ぶ人が増加傾向にある昨今、エシカルマーケティングを取り入れる企業が増えている。本記事では、エシカルマーケティングについて、ポイントやメリットを交えてわかりやすく解説。取り入れ方の参考になる実例も紹介する。
ELEMINIST Editor
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エシカルは、「倫理的な」という意味を持つ。言い換えると、「正しいと思うこと」や「良識的な」などである。2015年に設立された一般社団法人エシカル協会によると、エシカルは「人や地球環境、社会、地域に配慮した考え方や行動」だと捉えられている。(※1)
エシカルは、地球上に生きる人々の良心や道徳心にもとづいた考え方がベースとなる概念だ。法的な縛りや基準はなく、罰則があるわけでもない。
2015年に国連総会でSDGsが採択され、いま、私たちは世界全体で持続可能な社会の実現を目指している。サステナブルな社会を実現するためには、エシカルな視点が欠かせない。これからの未来をよりよいものにするために、エシカルな行動が必要なのだ。
近年、「エシカル〇〇」という言葉を耳にする機会が多いが、エシカル消費もそのひとつ。上記の意味を踏まえると、エシカル消費は倫理的な消費であるが、消費者庁はエシカル消費を以下のように定義している。
「消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費行動を行うこと」。(※2)
市場に出回るもののなかには、労働者が劣悪な環境で働くことで成り立っていたり、生産過程で地球に大きな負荷をかけていたりするアイテムが潜んでいる。消費者は、社会や環境に配慮したものとそうでないものを見極めて、選ぶことが重要なのだ。フェアトレード商品や環境に配慮した認証を取得した商品は、エシカル消費の対象例として最たるものだろう。
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エシカルマーケティングとは、売り上げに貢献する仕組みであるマーケティングに、エシカルな視点を取り入れること。エシカルマーケティングにおいては、消費者やユーザーにとっての価値訴求のほか、環境や社会への影響もプラスの要素として考慮しながらマーケティング施策を実行する。もちろん、地球や社会だけでなく、消費者を含め、人にとってもやさしいことが大前提だ。
エシカル消費という言葉があるように、昨今は、消費者がエシカルな視点で物事を判断することが増えてきた。企業のCSRや環境への取り組みの部分に惹かれて、応援する企業を決めるケースもあるだろう。消費者の行動や意思決定にエシカルな視点が入ることにともなって、企業側にも変化が求められている。マーケティングにおいても、以下のようなポイントを意識して、倫理的なマーケティングであるように努めたい。
・持続可能性を意識する
目先の利益を追うのではなく、長期的な視点で物事を捉えたい。事業活動や世に出す商品・サービスが、自然環境や社会に配慮したうえで成り立っているのかを改めて考えよう。SDGsの取り組みが世界的に推進されるなか、地球や人に配慮した企業指針が今後のスタンダードになっていくだろう。
・透明性を確保する
誤解を招く表現や大げさな訴求を避け、消費者に伝えるべき情報は最大限提供しよう。消費者にとってデメリットになるような内容であっても、不足なく正直に共有するほうが、長期的に見て信頼度を上げることができる。
エシカルマーケティングは具体的な手法というよりは、概念に近いといえる。上記はいずれも、すぐに売り上げにつながる即効性はないかもしれないが、企業と消費者の信頼関係を築くためには欠かせない。一見普遍的ではあるが、長期的に見たときに企業のブランド価値の向上や利益につながるものばかりだ。
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消費者が企業の倫理観や取り組みを重要視する現代、企業は利益の追求だけでなく、企業活動が社会や地球環境に与えるインパクトについても同時に考える必要がある。
企業がエシカルマーケティングを実践すべき理由もそこにあり、SDGsの推進や消費者ニーズの変化、ESG要因の重視傾向など、昨今の潮流を考慮するとエシカルマーケティングがいかに必要かがよくわかる。
まず1つ目は、2015年に国連で採択されたSDGsの影響だ。世界全体で持続可能な社会を目指し、シフトする動きが加速するなかで、消費者一人ひとりの意識も高まっているといえる。企業活動やマーケティングにおいても、SDGsの流れを汲んだ持続可能な方法の模索が必要だ。
2つ目は、消費者ニーズの変化である。これまでは、「すぐれた商品を手に入れたい」という消費者に対応すべく、商品をいかに魅力的に見せるかという観点でブランディングやマーケティングが行われてきた。しかし、SDGsの影響もあり、人々の消費行動や消費者ニーズが変化してきている。「買い物は投票」といわれる現代、消費者が手に取る商品やサービスを自らの価値観と照らし合わせて検討する傾向が加速している。
3つ目に、ESG投資やESG経営など、ESGの考え方が広まっていることがある。ESGは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(統治)」を組み合わせた言葉であり、いまや企業の持続的な成長に欠かせない要素とされている。ESGが注目されたきっかけは、2006年に国連責任投資原則(PRI)が発表された際に、当時の国連事務総長コフィー・アナン氏がESG要因について紹介したこと。ESGはいわばグローバルスタンダードであり、環境問題や社会課題が表面化する現代において、「自社さえ儲かればいい」という姿勢は敬遠される。経営戦略や慣行にESGの観点を盛り込むことは、企業が長期的に成長するうえで必須といえる。
倫理的な価値観を持ち、取り組みを実践する企業が愛される時代。企業側は、時代の流れを注視しながらマーケティングを実行する必要がある。現代においては、エシカルマーケティングの実践が、愛される企業であるためのひとつの要素なのかもしれない。
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倫理観にもとづいたエシカルマーケティングの実践は、企業にさまざまなメリットをもたらすだろう。以下では、エシカルマーケティングのメリットを3つ紹介する。
環境問題や社会課題と真摯に向き合う企業とそうでない企業とでは、消費者からの見え方がまったく異なるだろう。ESGの観点からも、地球をよりよいものにしようという配慮は現代におけるスタンダードになりつつあり、キャッチアップできない企業は淘汰される可能性すら考えられる。
仮に、社会的責任や倫理観を重視した企業活動やサービス開発を行っていたとしても、消費者に届いていないケースも考えられる。エシカルマーケティングを効果的に実践すると、消費者が企業の新たな一面を発見してくれるだろう。
企業がエシカルな取り組みを行っていたり、消費者に寄り添う倫理観を持ち合わせていたりすることがわかると、消費者にとっての企業イメージが向上することは想像に難くない。
エシカルマーケティングは、企業ブランドや商品に対する愛着の形成にも大きく関わってくるといえる。「電通グローバル・ビジネス・センター」と「電通総研」が共同で実施した「サステナブル・ライフスタイル意識調査2021」によると、企業の社会課題への取り組みや倫理観を意識している層が一定数いることがうかがえる。(※3)
また、エシカルマーケティングによる企業イメージの向上は、よいよい人材の採用につながったり、社内環境が向上したりなど、社内にもいい影響や循環をもたらすに違いない。
エシカルマーケティングを実行することで、これまでは顧客でなかったターゲットの獲得も可能になるだろう。マーケティング事業を展開するトレンダーズ株式会社が行った「エシカルな消費に関する意識・実態調査」では、半数以上の人がSNS経由でエシカルな商品やサービスに興味を持った経験があると回答している。(※4)消費者のエシカル意識が高まるなかで、ターゲットとは異なる属性にいる人が、エシカルつながりで新たな顧客になることは大いにありそうだ。
また、新しいターゲットの獲得によって、アイデアの幅が広がったり新しいビジネスにつながったりする可能性も考えられる。
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以下では、エシカルマーケティングの実例を3つ挙げる。売り上げへの貢献やブランディングの強化のための具体的な施策としてチェックしてみよう。
SNSの普及にともない、消費者との交流や情報発信のツールとしてSNSを活用する企業が増えている。SNS経由で顧客を獲得するために、SNSマーケティングに力を入れる企業も増加傾向だ。
エシカルマーケティングの実例として、エシカルインフルエンサーマーケティングがある。エシカルインフルエンサーとは、社会課題や環境問題に関する情報を発信するSNSユーザーのこと。フォロワーには社会課題への意識が高いユーザーが集まる傾向があるので、エシカルインフルエンサーに企業の商品やサービスをPRしてもらうことで、意識が高いSNSユーザーにダイレクトにアプローチが可能となる。
また、同時に、エシカルインフルエンサーのエシカルな部分以外の肩書きや姿に興味を持つユーザーへのアプローチが叶う点も特徴だ。
エシカルインフルエンサーマーケティングでは、企業の商品やサービスそのものの情報だけでなく、企業のエシカルでサステナブルな取り組みに注目したPRが可能。新たな切り口での発信を実現できるのが、エシカルインフルエンサーマーケティングのメリットだろう。
メディアへの露出は、企業の認知度を上げる方法のひとつである。しかし、企業の意図しない文脈での取り上げられ方だとマイナスイメージにつながる可能性もはらんでおり、親和性が高いメディアを選ぶことが必須である。エシカルマーケティングにおいては、社会的な課題意識を持つ人やエシカル分野に感度が高い層が集うメディアを選ぶことが重要だ。
また、キャンペーンやコンテンツは、エシカルやサステナブルな観点に配慮した内容であるべきだ。信頼性や透明性を重視した内容になっているかどうかもあわせてチェックしたい。
課題の解決に興味・関心を持ってもらうには、問題への理解が必要だ。株式会社電通が行った「エシカル消費 意識調査2022」では、エシカル消費やきっかけづくりの内容を理解することで、具体的なアクションにつながる可能性について触れられている。(※5)
問題への理解を深める場としては、トークイベントやワークショップなどのイベントの開催が適している。また、顧客と持続的な信頼関係を構築するために、企業の価値観や目標を共有する場を積極的に設けることも有効だろう。オンオフ問わず、顧客や消費者とダイレクトに交流する場をつくることもエシカルマーケティングの施策として検討してみよう。
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地球一丸となってサステナブルな社会の実現を目指す現代においては、企業活動にもエシカルな視点が必要だ。企業の利益だけでなく、社会的価値が評価される時代、選ばれる企業や愛されるブランドであるためには、エシカルマーケティングが欠かせない。倫理観にもとづいたエシカルなマーケティングをいま取り入れるかどうかが、事業の前進、ひいては企業の長期的な発展のカギになるだろう。
マーケティングを成功させるためには、知見や実績があるパートナーに頼るのも方法のひとつだ。サステナブルな暮らしをガイドする「ELEMINIST」は、記事タイアップをはじめとするプロモーション施策や、エシカルインフルエンサーが所属する読者コミュニティを起点とするマーケティング施策などを通して、さまざまな事業活動をサポートしている。
サステナブル・エシカル分野の最新トレンドや知見を活かしたサポート内容については、以下のページにまとめている。エシカルマーケティングに興味がある方は、ぜひ一度チェックしてみてほしい。
※1 エシカルとは?|一般社団法人エシカル協会
※2 「倫理的消費(エシカル消費)」とは?|消費者庁
※3 エシカル消費をリードする日本の若年層。その消費と価値観に迫る!|電通報
※4 「エシカル消費」に関する意識・実態調査を実施 若い世代ほど「エシカル」の認知度は高い傾向 「エシカル」に積極的な企業は「良い印象」が9割以上|トレンダーズ株式会社
※5 電通、「エシカル消費 意識調査2022」を実施 P2|株式会社電通
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